小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2024/10/20

スポーツサイクルのメンテナンス [ライトユース]

ロードバイクやクロスバイクを長く快適に乗るためのメンテナンス情報です。

2006年に趣味としての自転車を再開してから15年以上。何度かの乗り換えを経て、ロードバイクやクロスバイクをメンテナンスしつつ乗り続けています。ハードに乗ることはなくホビーライド中心、ときどき通勤や旅に出るライトユース。それでも快適に乗り続けるためにメンテナンスが欠かせません。
スポーツサイクルなんて、所詮3年程度で劣化が目立つようになり、5年も経てば乗り換えを検討するもの、なんてお考えの方々もお見えでしょうが、手入れし続けることで長持ちします。
できるだけ長く快適に乗り続けるための 私なりのポイントをご紹介します。

愛車の整備(特にDIY)は皆様自身の責任でお願いします。
私個人の事例を記載していて、万人にあてはまるわけではないと思います。ご容赦ください。

日常のお手入れ

ポイントはタイヤの空気圧とチェーンの管理

タイヤのパンクを避けるためにも、長持ちさせるためにもタイヤの空気圧管理は大事です。5〜6bar以上で運用している場合、少なくとも2週間に1度は空気圧をチェック、補充したほうがいいでしょう。太いタイヤで3〜4bar程度の場合は月に1度でいいかもしれません。
チェーン注油が重要 タイヤの空気圧管理と同じくらい重要なのがチェーン。1〜2か月に1度は軽く清掃、注油することでチェーンの劣化を遅らせることができます。私のようなライトユースの場合、チェーンを外したり、あるいは本格的にディグリーザーを使って清掃までしなくとも、まずウエスで軽く汚れを拭き取り、チェーンに注油、それからウエスで余分な油分を拭き取るだけでふだんは十分に感じます。

強風以外の晴天しか走らない場合でも半年〜1年に1度くらいはチェーンチェッカーで伸びを測定し、パーツクリーナーなどの溶剤と歯ブラシなどを使って清掃し、溜まった埃や泥を取り除くのが良さそうです。
チェーン清掃も重要 雨天走行後に砂泥が付着した場合- 雨具を着なければならない降りかたの中を30分〜1時間以上走った後などはできるだけ早い機会に清掃して砂や泥を除去し、注油するほうがよいでしょう。放置するとすぐに錆が浮いてきますし、異物で摩耗します。
雨天に乗らなくても、何年も放置すると頑固にこびりついた汚れがチェーンやスプロケットの摩耗を進めてしまうようです。面倒でもまめに手入れすることが長持ちのコツです。
見た目と汚れにくさではドライタイプのチェーンオイルに軍配が上がりますが、私は長期間の油膜保持を重視しウエットタイプのチェーンオイルを使っています。チェーンが汚れて表面に油分が見られなくなったらメンテナンス時期です。
チェーンのメンテナンスをサボると早期にチェーンが摩耗し、交換サイクルが早くなってしまいます。交換すればいいとお考えの方もいるでしょうから、メンテナンスの考え方は人それぞれかもしれません。

なるべくいつもキレイに

よほど汚れた場合を除き、洗剤を使わずにできる範囲でまめに汚れを落としておくとよいと思います。なるべくキレイな状態を保つことで各部の劣化を見つけやすくなります。特にフレームの錆びやキレツは、無いことが望ましいのは当然ですが、あったとしてもできる限り早く見つけたいですし。

パンク予防に絶対は無い

運悪くパンクすることもある パンクしても構わない人はいないでしょう。適切な空気圧維持や、道路の隅を避ける、段差は慎重に、などパンク予防策は数々ありますが、最終的には運次第だと思います。雨天時や大雨の後は流れてきた異物を避けにくく、また拾いやすく、リスクが高くなります。耐パンクベルト/レイヤーがあっても長い異物が刺されば貫通パンクを起こします。パンクに遭っても当人のせいではありません。たまたま運が悪かったのです。
それよりもパンクしたときを想定しておいたほうが現実的。スペアチューブや工具、携帯型空気入れを携行すると安心です。携行しない場合、パンクしたら押し歩きするか、家族を呼ぶか... この場合、行動半径は自宅から数km圏内が無難ですね。

消耗品の交換

新車のうちはすべてがピカピカでも、年月が経つにつれ各部が劣化していきます。一見丈夫そうに見える自転車でも、あらゆる部分が消耗品だらけといってもいいでしょう。面倒だからと消耗したパーツを交換しないでいると、本来交換不要な部分にもダメージが及んでしまうでが、長く乗り続けるにはなるべく早めに消耗品を交換することが重要になってきます。

※各項目の頻度はあくまでも目安です。乗り方や使い方で変わってくると思います。

タイヤ・チューブ交換

>2〜3年毎または3,000〜5,000km毎

趣味として自転車に乗り始めて15年以上の経験から、自転車のタイヤは概ね賞味期限1年、消費期限2〜3年、チューブの消費期限2〜3年、リムテープの消費期限2年。7(bar)以上の高圧を常用するとリムテープの消費期限は1年程度に感じます。
タイヤに求める性能はグリップ力や乗り心地、耐パンク性能などいくつもあり、高価な全方位タイヤ、あるいは決戦用とトレーニング用を使い分ける方々は別として、ホビーユースまたは通勤通学で運用する場合、コストも大事な性能になってきます。廉価版、2〜3,000円台以下のタイヤの場合、諸性能をいいとこ取りした製品は無く、いずれかの性能を取捨選択することになります。
これまでの経験から、廉価版のタイヤは概ねコンパウンドが硬い系と柔らかい系に分かれる印象です。ケーシング:TPIの違いはあまり気になりません。コンパウンドが硬いと耐摩耗性や耐候性(経年劣化)に優れる反面、グリップ力や乗り心地が犠牲になりやすく、柔らかいとグリップ力や乗り心地に優れる反面、耐摩耗性や耐候性に劣り、運悪く1年程度で表面がひび割れてくるケースもあります。柔らかいコンパウンドは耐パンク性に劣るものの、耐パンクベルトを装備したり、ゴムの肉厚を増してカバーしています。
摩耗したタイヤと新品 定評あるSCHWALBE MARATHONを使ったこともありましたが、走行約5,000km、3年経過でひび割れがひどくなり、トレッドから耐パンクベルトがのぞくようになって限界を迎えました。コンパウンドが硬くても運悪く早期にひび割れが見られたり、柔らかくてもグリップ力が今ひとつだったり、1年経つと硬くなって乗り心地が悪化したりするケースがあり、タイヤ選びは難しいです。

使用経験はこちら↓ いずれも700C
Panaracer
 GRAVLE KING(26C)、PASELA JACKET(28C)、CLOSER PLUS(25C)、TOURER PLUS(26C、廃版)、TOURER(28C、廃版)、TOURKINIST(28C)

IRC
 JETTY PLUS(28C)、METRO(28C)

BRIDGESTONE
 DISTANZA(28C、32C)

SCHWALBE
 MARATHON(28C)、DELTA CRUISER(28C)

CONTINENTAL
 ULTRA SPORT 3(28C)、ULTRA SPORT 2(23C、廃版)

BONTRAGER
 H2(28C)

タイヤローテ・リムテープ交換

>1〜2年毎または1,000〜2,000km毎

リムテープ劣化
リムテープの消費期限は約2年。7(bar)以上の高圧を常用すると消費期限は1年程度に感じます。SCHWALBEなど有名どころの製品であれば寿命に大きな差は無い感触です。リムテープ交換のついでに前後のタイヤをローテションすると、タイヤ前後の交換時期を揃えやすいです。

ハンドルバーテープやハンドルグリップ

>2〜3年毎

ハンドルグリップ交換 バーテープは汚れて破れ、ボロボロになっていき、ゴム製のハンドルグリップはベトつくようになり、破れたり穴が空いたり。乗らなくても経年劣化します。タイヤ同様、交換サイクルの短い消耗品です。作業には手間と時間がかかりますが、自分で交換すれば部品代は安価。グリップはロックリング付きのタイプが比較的ラクな作業でしっかりと固定できます。はめ込みタイプのほうは安い反面、作業に力と根気が要るだけでなく、ボンドを使わないと取り付け後に固定が甘く、グリップが回ってしまうことがあります。

ブレーキシュー

>2〜3年毎

ブレーキシューも消耗品 ロードバイクやクロスバイクなど、キャリパーブレーキもVブレーキもスポーツサイクル用のブレーキシューは特に、晴天時はともかく雨天時にシュー自身が溶けるごとく摩耗が進みます。雨天でも構わず頻繁に乗る場合はとても1年もたないでしょう。走行距離が少なく雨天時は乗らない場合でも、経年劣化に伴ってゴムが硬化。リムへの攻撃性が高くなりリムが摩耗してしまうため、シューのほうを早めに交換したほうが良いです。消耗品と割りきりましょう。

ブレーキワイヤー・シフティングワイヤー

>3年毎

ワイヤーも劣化します 金属製なので劣化しないと考えてしまいますが、アウターワイヤーもインナーワイヤーも経年で劣化していきます。特にインナーワイヤーがアウターワイヤーから露出している部分の劣化が早く、しなやかさが無くなって硬化したり、より線がほつれて切れてしまったり。硬化が進むと変速性能が悪化しますし、より線が切れ始めると早期にワイヤーがちぎれることも。画像はより線のうち2本程度が切れた状態で、残りの線でもちこたえられるのは時間の問題、すぐに交換が必要です。
ちなみに昔々... 当時乗っていた自転車のフロントブレーキワイヤーがほつれて2〜3本切れていたのに「まだいける」とそのまま使っていたら、下り坂でブレーキレバーを握り込んだとたん、「バツッ」と残りの線がすべて切れてフロントブレーキが効かなくなり、パニックになった経験があります。

チェーン

>2〜5年毎

チェーンは消耗品です。使い方によりますが、タイヤやブレーキシュー並みに消耗すると捉えていいと思います。チェーンチェッカーで測定し、1.0%を超えていたら即刻交換になります。
スプロケットまでも摩耗 自転車旅が主用途のRALEIGH CRNは推定5,000kmで1.0%に達しチェーンを交換。一方、通勤や街乗り用途のRALEIGH RFLはチェーンチェッカーでの点検をサボり、限界を超えていたことに気づかないまま使い続けて推定6,000〜7,000km、伸びすぎてチェーンチェッカーが逆に入らない状態に達し、気づいた頃にはスプロケットもチェーンリングも摩耗してしまい、歯飛びが酷く、まともに走れなくなってしまうという大失敗をやらかしました。
チェーンだけでなく、スプロケットとチェーンリング、さらにディレーラーのプーリーまで新調するはめに... 歯飛びするような症状が出る前に、チェーンチェッカーで測定し、限界を迎える前に交換するのが肝心ですね。

サドル

>3〜5年毎

サドルももれなく経年劣化していきます。
サドルも消耗品 クッションがヘタるだけでなく、全く乗っていなくても表皮が劣化して破れてきたり、ポロポロ剥がれてきたり、消耗品です。劣化したサドルに我慢して乗っているよりは交換したほうがよほど快適です。
私の経験上、最長でも10年が限界でしょう。人によっては自転車自体の乗り換えを考える時期でもありますね。
一般的ではありませんが、革サドルは手入れを怠らなければ10年どころかもっと長く使えます。RALEIGH CRNで使っている革サドルは、2023年11月でもう12年になりますが、まだまだ現役です。

ディレーラーハンガー

>変形していたら

リアディレーラーに大きな負荷がかかった場合にフレームへのダメージを防ぐために緩衝材の役目を果たす部品で、経年劣化することはほぼ無いとはいえ、使い方や運不運で左右されます。やや重めで輪行する機会のないクロスバイク:RALEIGH RFLは7年以上交換したことはありませんが、妻のロードバイク:LIV AVAIL2は10年間で3度も交換しています。
ディレーラーハンガーの交換 立てかけた自転車が強風で倒れたり、輪行して運ぶ際に階段の角にぶつけたり、輪行した後に組み立てる際にチェーンが絡まったままリアホイールを取り付けて走り始めたとたんにロック... ほかにも駅の駐輪場などで隣の自転車が倒れてきたり、別の自転車が後から無理やり押し込まれたり、など負荷がかかることもあるでしょう。消耗品だと割り切ってとらえたほうがいいようです。

ホイール交換

>使用限度に達していたら

リムブレーキ車の場合は特に、リムは消耗品。埃の無い晴天使用のみであれば消耗を抑えられますが、砂埃が多かったり、雨天走行が多い使い方だとブレーキシューに砂が噛み込む機会が増え、その砂でリムが削られていきます。ブレーキシューが経年で硬化してもリムを削る一因となり得ます。リムのウェアインジケーターと呼ばれる小さな穴や凹みが消えたら使用限度です。
ホイールの交換 ホイールの他のパーツ:ハブやスポークに異常が無ければリムだけ交換したいところではありますけれど、分解はともかく組み立てに加えて振れ取り作業は道具と手間とスキル、さらに時間と根気が求められることから、ハブ本体にこだわりが無い限りはホイールごと交換するのが現実的です。
妻のLiv AVAIL2に標準装備されていたGIANTオリジナルホイールは、2024年9月時点で推定走行距離10,000km以下でしたがブレーキシューに砂が噛み込んだまましばらく使ってしまい、一気に摩耗が進んで使用限度を超えてしまいました。そこで完組ホイールとして最も安価なSHIMANO WH-R501へ交換。ホビーユースですので十分だと思います。GIANTオリジナルホイールよりも公称でわずかに軽いようですが、大きなメリットはSHIMANOハブのシール性が良さそうなこと。比較的雨水に強く、メンテナンス間隔が伸びることでしょう。

たまのお手入れ

徐々に劣化が進行するので気づきにくいですが、手入れすることにより、新車に近い状態かそれ以上に感じることも。一方、メンテナンスサイクルが長いため、手入れよりも新品に交換という考え方もあります。予算とお好みでどうぞ。

※各項目の頻度はあくまでも目安です。乗り方や使い方で変わってくると思います。

ハブベアリングのグリスアップ

1〜5年毎

競技でもなく趣味や普段使いだからハブベアリングのメンテナンスなんて不要というご意見もあることと思います。私の経験上ライトユースで雨天時はなるべく乗らず、屋内保管、SHIMANOハブのClaris以上のグレードでしたら、5年に一度、いえ、10年に一度くらいのメンテナンスサイクルでも問題ないのでは、と感じています。SHIMANOのサイトによると、TIAGRAグレード以上ののハブのシール構造が「Labyrinth and Contact」、CLARIS(2400系)とSORA(3500系)は「Single Contact」ですが、大雨の中を何度か走っても、2015 ARAYA DiagonaleのClarisハブには雨水の侵入は無いように見えました。もっとも経年によるグリスの固化は避けられないので、気になる方は早めに分解、グリスアップしても良いと思います。
ハブベアリングのメンテナンス
一方で、ライトユースでも屋外保管で雨天もときどきやむを得ず乗る場合、SHIMANOでもTOURNEYグレード以下のハブでしたら、1〜3年に一度はメンテナンスしたほうが良さそうな感触です。2016 RALEIGH RFLのSHIMANO TX800系ハブはシールされてないため雨水や埃が侵入、何年も放置するとダメージが拡がる印象です。非シマノのハブは一見シールされているようでもエントリーグレードのロードバイクやクロスバイクに採用されているハブの場合、分解すると雨水が侵入していて内部に錆が見られるなどダメージが発生していることも。
数年で乗り換えるなら、あるいは数年でホイールごと交換するのならメンテナンスせず放置という選択肢もあるとは思います。

BBの点検

>異音など気になる場合に

スポーツサイクルの多くが非分解タイプのカートリッジ式を採用している昨今、BB自体のグリスアップはほぼ不可能というか消耗したら交換という位置づけになると思います。BBの締め付け具合の点検も必要です。
2014 RALEIGH CRNの場合、8年後の2022年6月に点検すると左側のBBには特に異常が見られませんでしたが、右側のBBがゴリゴリと大変渋い状態で寿命でした。それよりBBの締め付けが完全に緩んでいて、もっと早く点検し適切に締め付けるべきでした。
BBの点検
2012 DAHON Visc P18の場合、長年の放置状態を経て2022年初めに再生、再び乗り始めて約半年の7月、ペダルを踏み込むとBB付近から異音がするようになり、BBを点検したところ、BB本体には異常が見られませんでしたが、締め付けは左右とも緩んでいました。ネジ部に薄くグリスを塗って再組み付けし異音は解消しました。

ペダルのグリスアップ

>2〜3年毎または5,000km毎

ペダルOH RALEIGH CRNもRFLもペダルから異音がするようになり、分解してみるとベアリング部分のグリスが劣化し酷く汚れていました。清掃してグリスアップ、踏み心地も滑らかに。ペダルも消耗品の一つではありますが、定期的にメンテナンスすることで長く使えます。



ヘッドパーツのグリスアップ

>雨天走行数回後または3〜5年ごと

不調を体感するころにはダメージが酷くなっていることがあるので、定期的に分解清掃するのが理想ですが、駆動系と違って、メンテナンスに意識が向きにくいですね。

ヘッドパーツのグリスアップ 2016 RALEIGH RFLの場合、2年ほど経ったときにグリスを補充、6年半経過した2022年に開けてみると、グリスは残っていましたが酷い汚れっぷり。カバーをかけただけの屋外保管に加えて幾度も雨天走行しているせいでしょう。古いグリスを拭き取り、新しいグリスをたっぷり塗布して組み直しました。

2015 RALEIGH CRNの場合、購入してから8年近くそのままでしたが、2022年に分解してみると、そこそこ汚れてはいましたがグリスは残っていて、ベアリングもレースもキレイでした。屋内保管で、雨天走行も数えるほどだからでしょうか。古いグリスを拭って新しいグリスを塗布して組み直しました。

フリーボディの注油

 

ブレーキ本体の点検と注油

 

ディレーラーの点検と注油

 

デュアルコントロールレバーやシフターの点検と注油

 

ホイールの振れ取りとスポーク調整