小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2013/06/16

一宮〜笠松、岐阜 2013年6月

梅雨入りしたというのに雨の少ない日が続いていて、昨年この時期に味わった、あのハンバーガーを食べに行きたくなってしまいました。暑くなってきてはいますが湿気はそれほどでもなく、ハエや蚊も少ない、いい季節です。


まだ本格的な暑さではないものの、まだ体が暑さに慣れてないのか、どうも少々体が重い。こんなんで真夏になったらどうなってしまうのだろう、私の場合、そんな心配をするくらいなら体を動かして汗をかいたほうがいいようです。

いつものように最寄り駅で輪行。同行した妻は一部手順を忘れてしまっていましたが、最低限の補助で作業できました。もう何度かこうした機会があれば、完全に自力でできるようになるでしょう。
電車へ乗り込み、一宮へ向かいます。車内が混み合っていた車内は名古屋を過ぎると一転。ガラガラ状態で、地方の風情満点になりました。

昨年工事中だった一宮駅はきれいに改装され、都会的な雰囲気の中、輪行袋を担いで出口へ。整然とし過ぎていて、どこで自転車を組み立てるか迷いましたが、駐輪場入口のすぐそばで組み立てました。


一宮駅を出発


真清田神社

アーケード街を抜けて、真清田神社で参拝します。やはり空気が違う。厳か過ぎない、優しい、親しみのある雰囲気に、とても落ち着くことができます。境内は広く、ここでボーっと過ごすのも悪くありません。

さあ、お楽しみのハンバーガーを。今回は少々ぜいたくにもスープまで注文してしまいました。マンゴーとミルクの冷製スープが例えようもないほど素晴らしく、暑さで火照った体をやさしく鎮めてくれるのでした。


ここです!


フィッシュバーガー

フィッシュバーガーがまた絶品! それだけで十分メインディッシュとなるタラのポワレを、新鮮で活き活きとした野菜とあわせて、香りの良いパンズに挟み、ぜいたくにもかぶりついてしまうのですよ。タラの豊かな風味を壊さないタルタルソースだって、少々塩気の効いたチーズだって、たまらない。
Lサイズを堪能し、すっかり元気になってしまいました。これでどこへでも走っていけそうです。ありがとうございました。

ここから木曽川を目指してスタート。交通量の多い県道150号も何のその。速度は控えめですけれど、すっかり元気になっているのでグイグイ走っていきます。
このあたりは広大な濃尾平野の一部。坂はほとんどありません。東海道本線や名鉄線を越える高架の上から下を眺めれば、区画整理された平地を遠くまで見通すことができます。点在する田畑がきれいでした。
木曽川にかかる、その名も木曽川橋を越え、岐阜県へ入ります。


木曽川橋


笠松の街並み

岐阜街道 笠松の古い街並みを見物した後は木曽川沿いから外れ、濃尾平野の只中を抜けて境川沿いを西へ向かいます。ここは旧美濃街道という脇街道にあたります。旧東海道が名古屋〜桑名の間が海路であり、鈴鹿峠を越えねばならないのに対し、旧美濃街道は海路も峠も無く、比較的安全に通行できたことから、多くの旅人が利用し、物流も多かったことでしょう。
今では景観も乏しい、ひっそりとした、静かで細い道ですけれど、どこか温かく、包まれるような感じすらしてくる、味わいのある道でした。


旧美濃街道


長良川

長良川に出ました。木曽三川のひとつだけあって、雄大な眺めであります。風向きは南。追い風で速度が乗ります。
河渡橋からは長良川左岸サイクリングロードへ。確かにサイクリングロードだけあって、走りやすいことに疑いはありませんが、景色はよくないし、何よりつまらない。橋が近づくと寸断され、自転車を降りて階段を押し上げる羽目になることもありますし... これなら側道のほうがよほど味があると思います。

金華山の手前で折れて、岐阜市街へ向かいました。
岐阜県には何度も足を踏み入れていますが、岐阜市街に来たのは初めてのことです。岐阜県の中でも愛知県にほど近い濃尾平野にあって、名古屋にも近いために名古屋の影響下にあるような印象がありますが、こうして実際に来てみるとそうではないことがわかります。
駅ビルや銀行、大きなホテルが建ち並び、高島屋もそびえる大都市なのに、なぜか騒々しくないというか、尖っていない、柔らかさすら感じる雰囲気です。競争よりも調和な空気で、大通りにも小さな個人店が多い。旧くて小さなお店も排除されないようです。新しいブティックと、半世紀以上は営業しているであろう “道具屋” の看板を掲げた昭和なお店が混在し、ホストらしき派手な服装の兄ちゃんが座り込んでタバコをふかす横を、自転車の小学生が走り抜ける、素敵な街でした。

パッと見では何もわからないながら、建物は密集していてもゴミゴミしていないというか、太平洋側の大都市のような、どこか粗野だったり雑然とした雰囲気がほとんど無い印象です。隅々まで手が行きとどき、心が通っていて、名古屋よりもむしろ北陸や京都の影響を受けている気がしました。


ここまで走り続けてきたのですから、休憩しましょう。味のある落ち着いたカフェへ。汗くさい、ジャージ姿の私たちは断られるかと思いましたが、大丈夫でした。チーズケーキと、マンゴー・パッションのムースが素朴でおいしかったです。どう見てもこのお店の雰囲気にそぐわない、リュック姿の軽装なおじさんが一人で入店し、コーヒーを飲んでいくのを目にして、この街の包容力の一面を見た気がしました。


小さなカフェへ


ケーキを2品

柳ケ瀬 あとは名鉄岐阜駅まで走って終了。自転車を分解していると、初老のご婦人が話しかけてきました。「まあまあ、ちょっと、こうやって自転車を分解するのね。少し見ていていいかしら」と言いつつ、喋りまくるおばさん。
息子さんが折り畳み自転車を手に入れたものの、体躯の大きい息子さんには乗りづらいらしいこと。お孫さんは見向きもしないこと。知人が私たちと同じように輪行して各地へ出かけているらしいこと。
おばさん自身も以前は自転車に乗っていたこと、その前は東京の世田谷にお住まいだったこと、管理栄養士をされていたおばさんは昭和30年代、中野の病院に勤めていて、関取衆がときどき入院していたこと、のみならず政治家や芸能人まで入院することがあったなどと、次から次へと楽しいお話を聞かせていただきました。
おばさん、ありがとうございます。

家から最寄り駅までも含めて、走行距離はこれまでたったの40kmほどとはいえ、初めての道で疲れも出たのか、岐阜からの電車内ではしばし眠りこんでおりました。

帰宅後、体が猛烈に炭水化物を欲していて、近所の弁当屋で大盛りを買い込み、妻が半分以上残した白米も残さず平らげましたとさ。
あれ? 前日に食べてエネルギーを蓄えるほうが正しい順番なのでは、と思いましたが、まぁいいではありませんか...ビールもウマイし。
                           (おしまい)