小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2011/07/17

旧東海道 御油宿〜岡崎宿 2011/6月

未明に激しく降った雨は、朝には小降りになりました。今日は戸外で過ごすのは無理そうです。せっかく平日にとることができた休みだったけれどしかたありません。
ところが雨が止み、黒い雲の切れ目から夏の太陽が時折顔をのぞかせると、冷静ではいられなくなってしまいました。おバカなサイクリストはこれだから困ります。
天気予報によると各所で雷注意報が出ていて、激しい雨に注意と言っていますけれど、いいのです、雨具があれば冷えることへの心配は無用ですし。
9:30過ぎ、雨具をテキトーにフロントバックに突っ込み、準備もそこそこに出発したのでした。


郊外
市街地を抜けて

乙川
乙川を渡る

岡崎から豊川まで、往きは東名高速のわき道を走ってみることに。走ったことのある人なら容易に想像がつくと思いますが、高速道路は比較的なだらかではあっても、脇を走る細い道はアップダウンの繰り返しであることが多いです。
このあたりも例に漏れず、上っては下り、の繰り返しです。

今日は体が重い。景色も重い。空気も重い。そのせいなのか何となく息苦しい。やけに空気抵抗が大きい気がして、下りになってもスピードが出ません。しかも走行中でも湿気のせいでゴーグルが曇ってきます。おまけに美合にさしかかるころから南東の風が強く吹き付け、完全な逆風の中を進む羽目になってしまいました。

向かい風
向かい風の中を進みます

紫陽花
紫陽花が綺麗でした

本宿を過ぎると、路面は全面ウエットに。慎重に走りたいところですが、相変わらず繰り返されるアップダウン。下りで勢いをつけ、少しでも上りをラクにするべく、構わずに水しぶきを上げつつ走りました。

豊川の市街地が近くなり、交通量が増えると路面が乾き始めました。
白鳥町で折り返し、国道1号線を越えて国府から旧道へ入りました。

国府
国府

御油
御油

決して観光地として整備された場所ではないので、派手なものが立ち並ぶわけではありませんけれど、国道からわずかに逸れただけなのに驚くほど静かで、寂寞感すら漂う通りが続きます。
理容店

営業しているのかどうか、外見ではわかりづらい、古びた理容店と、その年季の入ったすりガラスに貼られた、『支えあう日本』と書かれた政党のポスターが対照的に見えました。


松並木入口
松並木入り口

松並木
松並木


赤坂宿
松並木を抜けると赤坂宿

大橋屋
大橋屋

御油宿も赤坂宿も、街道沿いの建物は ほぼすべてが低層で色彩に乏しく、くすんでいて、あたかも風化の過程であるかのようでした。
中山道あたりの有名な宿場町とは違う雰囲気です。
活気がない、というか動きのあるものがほとんどありません。失礼ながら生気が薄い、という感触すら受けてしまいます。ひっそりとして、時間までもが淀んでいるかのようでした。平日の昼前後という時間帯のせいなのか、動きのある物体は猫くらい。他には慌ただしく行き交う車だけ。もちろんその車群に生気は無く、そもそも止まらないから別世界の物体のようでもあります。
だからといって見どころやその周囲を整備し、観光客用の店舗を構え、大型駐車場を準備するような類型的発想では、かえって風化が加速するような気がします。そもそもホームラン級の観光資源があるわけではなく、街道それ自体は通り過ぎるものなのですから。

でもこうした、今では廃れつつある旧い街道にこそ、地域の方々の思いが投影されると思います。ふるさとを愛し、大事にする気持ちは、旅する者の心を癒すのです。

もう正午。いい加減腹が減っていて、食事処を探しながら走っていたものの、見事に無いわけでして、あっても休業中の札が掲げられてばかり。
ようやくたどりついたのが『どんぐり茶屋 あかり』でした。

あかり
あかり

チャーハン
素朴なチャーハン\500

入ってから知ったのですが、ここは障がい者の活動を支援する作業所。活気があって騒々しい店舗とは異なり、優しいBGMが流れる静かな店で、ゆっくりできました。
素朴な味が気に入った私は、おやつにと ごまクッキーも購入。もっとゆっくりしたかったのですが、少々後ろ髪を引かれる思いで出発しました。ここは街道の宿場町。数多くの人々が足を止め、去っていったように、私も通りすがりの者なのです。

赤坂を出るころには雲が切れて、夏の日ざしが照りつけるようになりました。

音羽
音羽

長沢
長沢

暑さでなんだかバテてきたような気がします。情けない、もう体力が尽きてきたのでしょうか。それとも夏の高温多湿に体が慣れておらず、思うように動かないのでしょうか。
とりあえず持参していたゼリー食品を食べると再び脚に力が入るようになりました。

国道1号
国道1号線に合流

本宿
本宿へ

本宿から旧道へ入ると、そこは比較的新しい、戦後の住宅街の雰囲気でした。時流の変化にうまく対応している例かもしれません。それまで ほとんど見かけなかった、食事処や喫茶店も点在していました。

再び国道1号線を少々走って藤川宿へ到着です。

牛乳店
名古屋ウルトラ牛乳って?

藤川
藤川宿 東棒鼻


藤川宿
風情のある街並み

松並木
ここにも松並木が

藤川宿を過ぎ、美合にさしかかるころには再び脚に力が入らなくなってきました。まぁ、先を急ぐわけでもないですし、ゆっくり行きましょう。
大平町に入ると暑さも増して、さすがにバテバテになってきてしまいました。日陰のある場所のそばに自販機があるのを見つけ、休憩をとります。

クッキー お昼に買った、ごまクッキーを頬張ると、思わず笑みがこぼれる味でした。あまりにも素朴で、単純な、手作りの味。バターが少なく、凝った調味料・香料はいっさい使ってありません。自然なごまの香りと、砂糖、それに塩は入れ過ぎ。
共同作業で、わいわい言いながら楽しく作業した甘みと、己の意志とは無関係に障害を抱えたが故に経験する辛苦に涙した塩味と、そんないろんな思いが渾然一体となっているかのようでした。(勝手な妄想で申し訳ありません)

照りつける日ざしは変わらないものの、何だか力が出てきました。
クッキーのおかげです。ありがとう。これでまた元気に走れます。

大平
大平一里塚

二十七曲がり
二十七曲り

市街地を抜け、当初避けようとしていた5%以上の坂もグイグイ上り、平地はフロントをアウターギアに入れ、バテていたのが嘘のように快調に走って帰宅しました。
ふだんもう少し自転車で走り、夏向きの体づくりをしていきたい、そう感じた一日でした。
                         (おしまい)