松江と出雲 2014年4月
出雲地方を自転車で旅してみようと計画していた2014年のGW前半はあいにくの雨模様。わざわざ雨の中を走ることはありません。残念ですが、今回は公共交通機関+機会があればレンタサイクルを利用することにしました。
何も印象的なことなど無かった旅ですけれど、ご興味のある方はご覧ください。
まず1日目は松江市街を観光します。しかし愛知県からでも島根県は遠い。特急でも岡山から中国山地を越えるのが長いです。松江に到着したのはお昼をとうに過ぎてから。この日は幸い晴れていたので駅前でレンタサイクルを借りました。ごくありふれたママチャリです。
京店商店街を抜けて松江城北側の小泉八雲旧邸と記念館に行ってみました。意外にこじんまりとしています。それでも当時としては長屋住まいの庶民から見れば豪邸なのでしょう。しかし観光客が多く、落ち着かない気分です。せっかくですが早々に退散いたしました。
自転車を趣味とするサイクリストからは忌み嫌われることも多いママチャリですが、力まずに10〜15km/h程度で流せば、これほど快適な乗り物はないと思えるほど。少々の段差を越えても、荷物を積んでも安定していますし。
京店商店街に戻ってみたものの、私のようなオッサンにはあまり興味が湧くところがありません。つまらないので市街外れの岸公園へ行ってみることに。松江市も規模は大きいながら、疲弊しつつある地方都市の一つなのでしょうか、それとも休日だからか、京店商店街以外の店舗群はひっそりとしておりました。
松江城お堀端
岸公園
空いている岸公園で宍道湖の風に吹かれつつ、静かなさざ波の音をぼーっと聞いている夕刻が、実はとてもぜいたくな時間なのかもしれません。
公園の南西に見えるのは嫁ヶ島でしょうか。北西は宍道湖温泉街、悪趣味に思えてしまう大型ホテルが建ち並びます。
夕食は街をブラついて目についた、路地にある小さな焼き鳥店で。ここがアタリ! 串焼きはもちろんのこと、揚げ出し豆腐だって抜群においしかったです。
風情ある寺町
夕食はここで
2日目は朝からどんよりとした雲行き。
松江しんじ湖温泉駅から一畑電車に乗り、雲州平田駅で降車、木綿街道を散歩してみます。人もまばらで静かな木綿街道は、都会から来る人たちには少々とっつきにくいと感じるかもしれませんが、時間がゆったりと過ぎる、いいところです。ここで雨足が強くなって、あまり散歩気分でもなくなってしまったのが残念。人生思うようにはいかないものです。
木綿街道の街並み
情緒ある風情ですね
再び一畑電車に乗り込み、いよいよ出雲大社へ。その前に腹ごしらえと、賑やかな門前町を避け、わざわざ徒歩15分もかけて住宅街の中の蕎麦屋へ。ここの割子そば、甘めのつゆに辛みのあるもみじおろしが絶妙でウマいです。そば湯もおいしくいただきました。
一畑電車
出雲そば
出雲大社
旅館に投宿
いよいよ出雲大社へ。さすがに本殿は空気が違い、厳粛な気分になります。が、連休中のせいか随所に警備員が配置されていて物々しい雰囲気にどうも落ち着かない。
しかし寒い。前日は日中暑いほどだったのに、雨が強いだけでこんなに冷えるとは。風邪を引きそうです。あまりブラつくこともせず、早めに投宿しました。
この日の宿は出雲市駅近くにある、やや古めの旅館。宿の大将は学生時代に名古屋にいたことがあるそうで、赤味噌に驚いたことや、みそかつが懐かしいと仰っていました。飛び石連休の谷間だったこの日の旅館はガラガラ。TVでは島根県の人口が減少し、70万を割り込んだと報道されていました。
この宿は掃除が行き届いており、とてもキレイで快適です。年齢的なこともあるのでしょうが、バス・トイレ別ではありますけれど、ビジホよりよほど落ち着き、ぐっすり眠れました。
3日目。幸い雨は明け方に止んだようです。
この日は須佐神社へ行ってみることに。私の下調べがまずくて朝イチのバスが休日運休。出雲市駅で2時間以上待ちました。まぁ、こういうこともあるわけで。
雨は完全に上がり、晴れ間すらのぞくようになりました。10:10発のバスに乗り込むと休日なのにガラガラ。客は3組のみでした。終点前の須佐支所で降り、スサノオホールでレンタサイクルを借りて自力で神社まで向かいます。といっても電動アシスト車なので、なんだかズルしている気がしないでもないですが。
この日は電動アシスト車
須佐神社
道中は自然がいっぱい。野鳥の声はもちろん、蛙の鳴き声も大きい。
ほどなく須佐神社に到着し、参拝してから裏手のほうにまわってゆっくりとしていると、すごく落ち着いてきました。己の神経が解きほぐされていくのがわかります。
あれ? 何か変だぞ。自分のリズムがおかしい。旅の疲労感が失せた。でも、元気が出るわけではありません。逆に体に力が入らないのです。ゆっくりと、スローペースでしか動くことができません。なんだか思考というか、自我が薄れていくようです。自分の体をコントロールできない感覚で、いえ、コントロールしなくていい気がしました。この不思議な感触は神社を出るまで続きました。
昼食はすぐ近くの店で鴨そば定食を。調味料に頼らない、しかし深い味でした。
神社裏手
周囲も清々しい
山間部にある神社の周囲には田畑が点在し、奈良の飛鳥村に似ているようにも思えます。出雲の神々がおわすところは、おそらく神社の境内だけではなく、周囲の自然だってそうではないかと思えてくるのでした。
スサノオホールに戻り、レンタサイクルを返却。しばし若い職員とおしゃべりしました。一時都会に出ていたが、故郷の良さがわかり、戻ってきたとのこと。ここは自然の音が豊か。野鳥や蛙、虫の音だけでなく、夜間、裏手の竹藪をガサゴソするのはイノシシだったり、ツキノワグマまで出るとか。それでも、須佐も過疎に悩んでいて、何とかしたいと感じてみえるそうです。
バスで出雲市駅まで戻り、JR山陰本線で松江へ。ここからシャトルバスで境港へ向かいました。
ベタ踏み坂
境港の駅
個人的に全く期待していなかった水木しげるロードでしたが、意外や意外。数々のブロンズ像のレベルが高くて、原作に対するリスペクトを感じます。原作が大事にしていると思われる、日本の古い因習や文化へのリスペクトまで。相対的に周囲の商店街がブロンズ像たちに負けてしまっているように見えますが、じっくりと見て歩くと、類型的な土産物店は元気が無く、逆に手作りの品々を並べる店やオタク的な模型ショップが活き活きとしているようでした。妖しいものや、理解困難なものを分析したり、解明したりせずにそのままに認める空気がここにはあるのでした。
高いクオリティ
雰囲気ある店舗も
夕食は宿の主人おすすめの居酒屋へ。地の物の泥エビはもちろん、ヒラマサやアジ、イサキ煮付けなんて抜群でした。
4日目は帰路に着きました。
妖怪列車に
ねずみ男と砂かけばばあ
JR境線の妖怪列車、欧米人が見たら噴飯ものでしょうねえ。
神戸ベーカリーで買い求めた妖怪パンを昼食に。実物を見るとこれがまた楽しげでして、奇をてらわないオーソドックスな風味でした。
(おしまい)