春の各務原〜犬山 2019年4月
2019年の春はいつまでたっても、彼岸を過ぎても冷え込む日が多く、特に数日前まで冬の冷え込みだった反動か、暖かい日が数日続くと待ちわびていた生き物たちが爆発するかのような変化を見せ、桜たちも躍動というか、炸裂しているかのようでした。木曽川流域に限ったことではありませんが、春というよりも、“SPRING” という言葉のほうがぴったりな気がします。
最寄り駅で自転車を輪行し岐阜へ。岐阜駅と周辺は大きな都市であり、行き交う人も車も多く、高い建物が並ぶにもかかわらず、どこか品が良いというか、穏やかな空気が好きです。名古屋のような太平洋側よりも、何となく福井や敦賀の空気に近いような気がします。中山道のみならず北国街道の影響も残っているのかもしれません。
自転車を組み立て、岐阜駅から東へ向かいます。この日は西風。追い風を受けて快調に進みました。途中ただ通過するはずだった各務原市民公園はすごい人。交通規制が敷かれ、とても自転車では通り抜けれそうにありません。公園西側の新境川も大混雑でしたが、それでもやはり穏やかな空気でした。いい所です。川沿いには見事な桜。単なる大規模観光地と違って、人々と暮らしを共にしてきた重みを感じるのでした。
各務原市民公園西の新境川
ハンバーガーショップでお昼
以前に一度来たことのあるハンバーガー店でお昼にします。
大将が「あっ!」という反応。前年秋に一回来ただけなのに私のことを憶えていてくださっていたようでありがたい。そればかりかスタッフのおねえさんまで憶えていてくださっていたことに驚きました。
ハンバーガーは良質の肉を存分に感じる豊かな風味で、パティだけじゃなく、パンズもオニオンも、調和というよりもそれぞれが主張するかのような元気な味です。店主はご機嫌だし、スタッフのおねえさんは若いのに力んでおらず、柔らかい雰囲気で穏やか。自然体で我欲が無いんですね。いいお店です。
エッグバーガー
各務原大橋
混雑した各務原市内を抜けて南へ。新しい各務原大橋を渡って木曽川を越え、川沿いの道に入りました。フラワーパークの平和な空気が微笑ましいです。ここでも穏やかな春じゃなくて爆発、炸裂といった印象を受けましたが。
西風を背に受けながら、木曽川沿いのサイクリングロードを進んでいきます。他の地域では味気ないサイクリングロードが少なくないのに、ここは程よく人の手が入り続けているようで、なんだか温かい気持ちになります。
愛知県江南市から犬山市へ。木曽川沿いに凛として立つ桜に呼び止められた気がしました。群れておらず、人に媚びておらず、孤高な姿が美しい。風雅という言葉が当てはまるようです。
木曽川流域の桜
犬山城
犬山城下にやってきました。が、メインストリートは大混雑ならぬ超満員状態。それもそのはず、犬山祭りの真っ最中だったのです。知らなかった... しかたない、ゆっくりと山車を見物しながら、目的地のカフェに行こう。しかし、山車が何台もある上に、人混みがすごくて身動きが取れません。
「だいじょうぶ、行けるよ」と妻は自転車を押しながら中心街をを強行突破していきます。私がためらっていると、祭りのスタッフが私のところへ飛んできて、「自転車は進入禁止! 出てってくれ」と注意され、中心部から撤退を余儀なくされました。
妻とはぐれてしまったので携帯で連絡するも、つながりません。後で聞きましたが、こんな時に限って妻は携帯を忘れてきたそうです。どうするか? 犬山駅へ行くべきか? 中心部を大きく迂回し、カフェに近づこうとしてもあちこち規制ばかりでなかなか近づけず、混乱しているうちにだんだん現在地がわからなくなってくる始末... それでもどうにかカフェ近くの十字路までたどり着くことができました。ただし規制がかかっていて先へ進むことができません。どうしようか思案していると、奇跡的にもここで妻と落ち合うことができました。人混みに疲れてしまった私たちは、人だらけの中、トボトボ歩いて犬山駅まで歩きました。
犬山祭り
コーヒーでひと息
市営駐輪場に自転車を置き、駅前のカフェで一息入れます。あまりの人の多さにカフェのスタッフも大わらわ。なんだか気の毒です。私が高校生だった頃の、大衆系ステーキハウスでのバイト時代を思い出しました。大混雑のときに慌てても解決しないのです。急いでやろうとしても結局何ひとつ早く片付くことはありませんでした。ひとつひとつ無理しないペースでこなすしかない、そんなことを思い起こしながら、心の中でスタッフの方々を応援していました。
さて帰りましょう。
輪行作業を始めると、祭りの法被を着たおじさんが話しかけてきました。ちょうど山車が犬山駅ロータリーで一時休止状態なこともあり、祭りの実行委員関係者のようです。私と同年代のようにも見えました。
「私もRALEIGHに乗ってるんですよ」 そう話すおじさんは、ほかにもブルホーンハンドルに改造したBASSOのクロモリロード、それにKHSの折り畳み車を所有していて、あまりガンガン走ることはせず、木曽川沿いをのんびりと流すそうで、輪行は専らKHSだとか。私の輪行作業に少し興味がありそうでしたが、聞いてほしかったのでしょう、とにかくおじさん自身のことをずーっと話し続けていました。祭りですもの、きっと酒が入って日頃の抑制が緩んだんですよね。
他人は自分を映す鏡、という言葉があります。私自身にもこうしたことがあります。己の自己主張が過ぎないよう、改めて気を付けようと思いました。
(おしまい)