小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2021/12/19

湖西から京都へ2021秋 2021年11月

緊急事態宣言の移動制限が緩和されてから1か月。勤務先に無理を言って取れた平日休みと週末を合わせてもっと遠出するつもりでした。
ところがその休みの1週間前の週末、突如尿管結石という病気を発症、深夜激痛に悶絶し救急搬送という事態に。結石の自然排出を優先する治療方針でしたが、体力の消耗が激しく、旅の日程を短縮し行き先も近県へ変更。
数日間はどうにか小康状態で安堵していたのが前日夕刻になって暗転、腎臓痛から膀胱痛へ、質の違う痛みを発症。初め痛いというより苦しい感覚が強かったためどうすればよいかわからず苦痛に脂汗を流すのみ、夜間救急診療も考えるくらいで、同行予定だった妻も「もう旅には行けんね」と諦めた様子。そのうちに苦しいよりも痛みが強くなってきたため、病院で処方された鎮痛剤を服用し、翌朝の様子を見て判断することにしたのでした。


幸いにも鎮痛剤が効き、断続的ではありますが多少は眠ることができました。膀胱痛もどうにか我慢できるレベルになっています。よし、行こう。医師からも運動を勧められていることだし、妙なことにはならないはず。
慌ただしく準備を終え、鎮痛剤を携えて走り出しました。ふだんは何でもない振動がキツイ。いちいち膀胱に響く感触です。30分が経つ頃、臨界状態に達しましたが、ふとラクになる瞬間が見られるようになり、そのまま走行、1時間弱で新幹線三河安城駅に着きました。さっそくトイレです...


新幹線こだまで京都へ


湖西線和邇駅で降り、自転車を組み立て

前夜はトイレ直後も苦しかったですが、今は大丈夫そう。よかった。20分ほどで輪行作業を終えて新幹線こだま号に乗り込みました。車内は半分以上席が埋まり、大半が若い世代。アクティブシニアが非常に少ないほか、驚いたのは平日なのにビジネス客がほとんど見られなかったこと。たまたまなのかもしれませんが、コロナ禍の影響をここでも実感しました。
膀胱の苦痛を我慢しながら京都駅で湖西線へ乗り換え、和邇駅で降りて自転車を組み立てました。

まずは腹ごしらえ。前年の琵琶湖半周の際に寄った老舗の食堂へ。小さくはない食堂で、前年はトラックやバンなどビジネス客が大勢だったのに、今回はガラガラ。緊急事態宣言の影響が、老舗の食事処にまで及んでいるかと思うとやりきれない気持ちがします。


老舗の食堂


日替わりランチが豪華

この日の日替わりランチはトンカツとエビフライという豪華版。家庭的な、安心の味。小鉢に盛られたおでんのお出汁が美味しく、麦味噌の味噌汁の優しい風味と相まって近畿圏に来た実感が湧いてきます。
これで¥800税込み。近所だったら通ってしまうことでしょう。ずっと元気に営業されることを願いつつ、食堂を後にしました。

和邇を西へ、いきなり上りです。私もそうですが、運動不足気味の妻が面食らっております。それでもゆっくりゆっくり上っていき、国道477号へ合流。上りがキツくなっただけでなく、交通量が多く、特に大型車両が頻繁に追い越していく厳しい道。おまけに西日本には珍しくない、狭い路肩の脇に側溝かつガードレールなしという区間も。上り勾配推定7%前後でしょうか、大型車両は速度を落としたくないばかりに対向車が来ていようが、片側1車線の狭い国道を、スレスレの間隔で私たちを追い越していきます。1度接触したと感じ、よろけて足を着くと、後ろの妻も後方の大型車両も驚いたのか一瞬止まっていました。
妻は降りて自転車を押しています。確かによろけて側溝に落ちるよりは、地に足を着いて進んだほうがまだマシです。すまない、こんな道を選んでしまって。もっと下調べするべきでした。危険を感じさせる大型車両の運転を責めるつもりは毛頭ありません。ダンプやトラックは仕事、こちらは遊び。悪いのは自転車や歩行者の通行を一切考慮していない道路行政でありますから。

神経をすり減らしつつ国道367号鯖街道に合流、さらに上っていきます。妻は脚が限界でもう乗れないと言い出しました。そうですよね、上りばっかり。しかも危険な区間に神経が消耗し心が折れかけています。
補給用のパック入りゼリーを飲んで、先へ進みます。次の難関は途中トンネル。歩道は人がすれ違えないほど狭く、車道を走らざるを得ない上、ずっと上り勾配。途中で足を着くのはかなり危険なので、一気に走り抜けるしかありません。脚が張って動かないという妻と、やっとの思いでトンネルをクリア。へたれこんでしまいました。
7%前後の勾配が続きますが頂上まであとわずか。しばし休憩しパック入りゼリーを補給、妻は自転車を押して峠へ。出発地点の和邇との標高差は350m近くでしょうか、ふだんバリバリ走っていれば何てことはない標高差ですが、運動不足だと100mでもキツイ。上れたことに感謝です。


危険な登坂もどうにか峠へ


コーヒーとバタートースト

後は下り、ずっと下り。気温17℃程度、暑さを感じた上りと違って、急に身体が冷えていきます。しまった、膀胱痛が... 見かけたカフェで休憩します。

さっそくトイレをお借りし、ああ、少しラクになった。妻はグロッキー状態。コーヒーとバタートーストを補給しました。
もう下っていくだけです。途中で国道を逸れ、分岐を古地平方面へ。大原に入ると里山の穏やかでのどかな空気に、心がほぐれてまいります。妻の機嫌も急に良くなり、心安らぐそうです。よかった、これで京都まで走れそう。


大原は里山の穏やかな空気


鴨川沿いをゆっくりと

大原を過ぎて国道に合流、京都市内に入る頃には車両も自転車も歩行者も多くなってきました。鴨川沿いの道を見つけ、さっそく川べりへ下ります。
歩行者が多く、路面はダートや石畳。スピードを出して走る道ではありませんけど、ママチャリレベルの速度でゆっくり走るには申し分ありません。疲れた心身にはこのゆったり速度がちょうど良い。
鴨川沿いを南下していき、現在位置がよくわからなくなったところで川べりを逸れ、市街に戻ると御池通りに出ました。もう宿泊先は近い。少々迷いつつ狭い道を進み、宿に到着。よかった、結石を抱えたまま走りきることができました。


翌朝用のパンを調達


今宵の宿

先に翌朝用のパンを買いに行きます。ちょっとした有名店だというベーカリーに行ってみると、私好みの小さな個人店。神社仏閣ばかりじゃない。京都はこうした小さなお店が数多く、楽しみの一つだと思います。
宿泊先でチェックイン。今回は “限界突破セール素泊まりプラン” を利用。1人あたり1泊¥2,205(!!)+京都宿泊税¥200。格安で利用させていただき、申し訳ない。客室を遊ばせておくよりは、赤でも何でも稼働率を上げたいという厳しい事情かと想像します。
フロントのおねえさんによると、緊急事態宣言真っ只中のときは近隣があり得ないほど静まり返り、現実とは思えなかったとのこと。以前ほどではないにせよ、徐々に人通りが戻ってきて嬉しいと話してくださいました。想像以上の痛ましい光景だったのですね。お察しします。

夕食は徒歩で、賑やかな通りを避け、少し落ち着いた木屋町へ。自転車乗りの格好ですし、華美なお店にはそもそも縁が無い私。狭い路地の、小さなラーメン店に入りました。


路地にあるラーメン店で夕食


餃子定食がすばらしい!

開店時刻から30分弱過ぎたころ、暖簾が掲げられました。個人店ですから時間通りにいかないときもあることでしょう。夕食にいただいたラーメンと餃子、小ライスの餃子定食¥1100税込みがすばらしい!! 丁寧に作られた味が疲れた身体に沁みていきます。化学調味料で誤魔化してない、真面目な味。餃子も作り置きせずその場で包んでいたところがすごい。美味しかった! 気持ちのこもった手作りの料理を食べると満たされますね。

「ウチは認証取れてないねんから、気ぃ遣わんでええよ」
外していたマスクを食後会計のときに慌てて着けると、大将が声をかけてくださいました。「飲んだ帰りの客がメイン。ご機嫌に酔っている客に検温してチェックなんて、ムリやねんな」 その通りですね。温かい手作りの味を求めて来店する酔客たちを、この小さなお店が優しく満たし続けることを願っています。
すっかり満足しました。もう後は何も要りません。早々に宿に戻り、汗を流して就寝...のはずが、鎮痛剤がなかなか効かず、弱っているうちに眠りに落ちました。
この日の走行距離:約45km。


次の日は帰るだけ。前日走っただけで十分、体調的にも無理しません。

前日に買っておいたパンを朝食に。サラミ風の何とか豚とドライトマト、カマンベールチーズの入ったパンも、ブルーチーズとクルミ、ハチミツのパンもハード系で他所にはない味。さすが京都です。このパンをまた食べに来たくなります。


パンがおいしい


堀川通りを南下

京都駅まではまず狭い通りを西へ西へ。狭い道路でも交差点では必ず停止して左右を確認、地元車両優先です。一旦停止しない地元自転車が多いし、何よりも子供乗せ電動アシスト自転車は最強でしょう。万一接触した場合、仮に私に交通法規上の非が無かったとしても、道義的には私に非があることになるでしょうから。
堀川通りに出たら、あとはまっすぐ南下していきます。見通しも良いし、自転車通行帯があって比較的走りやすい。
西本願寺近くでカフェに寄りました。ちょっと帰るのが惜しくなっただけ。


らせん階段を上って


モーニングのトーストセット

狭いらせん階段を上り、トーストセットのモーニングを。パンがおいしい、さすが京都。もっと驚いたのはハンドドリップのコーヒー。すばらしい! おしゃれなコーヒースタンドでもなく、決して立地が良くはないだろう個人店ですけれど、味を大事にする京都の心意気を感じた気がしました。また来たいです。

京都駅で輪行作業。15分ほどで終え、新幹線こだまに乗り込みました。
うーん、往きよりも座っていて辛い。微妙な気持ちのまま車内で昼食のお弁当を食べ、三河安城駅で自転車を組み立てました。体調はあまり良くないけれど、走っていれば気が紛れます。自宅まで1時間弱、短い旅でしたが無事(?)全行程を走り終えました。
この日の走行距離:約20km


帰宅した日の夜はなぜか膀胱痛が軽く、鎮痛剤が要りませんでした。しかし、数日後にはまた痛み止めに頼らざるを得ない日々...

約10日後、私を苦しめた結石がついに排出されました。その大きさは凶悪な6.5mm×4mm、いびつな形をしておりました。
                           (おしまい)