小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2017/04/16

八百津の桜と祭り 2017年4月

今年の春は天候が不順で彼岸を過ぎても寒く、ようやく暖かくなったところで菜種梅雨で、特に週末雨が多くて困ります。
前日、夕刻からは特に強く降った雨は、予報では明け方に止むはずだったにもかかわらず、朝に一時止んだかと思うとまた降り出す始末。当日朝の予報では昼前に曇り、午後は晴れだというのに。この雨の中を行くのはやはり止めておいたほうが賢明でしょうか。ずれ込んだ予報はさらにずれ込むことだってあり得ることですし。グジグジと悩みに悩んだ私は強行することに。自転車を積んだマイカーを走らせ、東海環状自動車道を岐阜県方面へと向かったのでした。
かすかな期待に反して高速道路走行中もずっと雨は止む気配がありません。可児御嵩ICで降り、可児駅近くのコインパーキングに車を止めた時点で、小雨になっていた雨がようやく霧雨ほどに弱まってきました。しぶとい雨に閉口しつつ自転車を下ろし、組み立て作業を終えようとする頃、逆に雨の勢いが盛り返してまいりました。帰路夕立に遭うのとは違い、ヘタレな私はとても走り出す気分にはなれませぬ。出鼻をくじかれた妻と共にとりあえず近所の店舗の軒先をお借りし雨宿りすることに。


可児駅付近も雨


小降りの中を出発

やや小降りになったのでスタートしました。地元を走ってばかりだと飽きるとのたまう妻も文句を言わずに走ってくれています。
路面がヘビーウエットなため、マッドガードのない私たちはなるべく泥はねしないようノロノロとママチャリ並みのスピード。車道を行き交う四輪車の乗員から見れば、雨に打たれながらトロトロ走る自転車は惨めな要素もあり、若いころは恥じることが多かった。今でもそう思うことが無くもないですが、惨めだと蔑む人もいる反面、中には羨ましいと感じる人たちもいて、何も卑屈になることなどありません。

雨が止んできました。ゆっくりと、木曽川沿いの街道筋を遡上していき、可児駅から11〜12kmほどでしょうか、1時間近くかけて八百津町中心部へ到着。今まで数度訪れたことがり、毎回静かで落ち着いている八百津の小さな街に、地元の人たちに加え観光客が大勢、考えられないほどの人数が集まっています。役場の前に集結した3台の山車が、これから大舩神社へ向かうべく、ちょうど向きを変えるところでした。


巨大な山車


方向転換

滑らかな転回機構など備えていない、巨大な山車を威勢よく人力だけで方向転換させる姿は、見ているだけでも熱くなってきます。無事方向転換が終了すると見物人たちから一斉に拍手喝采。実際に生で見ることで伝わってくるものがありますね。若いころにはほとんど理解できなかった伝統的な祭りには、何だか尊いエネルギーがあるかのようです。そのエネルギーが何なのかは愚かな私にはわかりませんけれど。


商店街での方向転換


山車が去ると静かな街並みに

もっと見ていたかったのですが、もう限界です、腹が減って。こじんまりとした地域のお祭りですもの、ただでさえ少ない飲食店は軒並み休業。地元の人に訊くと、祭りのお弁当を準備するため、休業が当然だそうです。そりゃそうですよね。食料を持たずにのほほんと走ってきた私たちがアホでした。しかし奇跡的に営業している昭和な喫茶店を発見! フード系は期待できそうにありませんでしたが、ほかに選択肢は無く、入ってみることに。軽食はありました。助かった。チキンピラフというよりチキンライスな軽食は、ゴテゴテすることなく素朴で悪くないお味でございました。


昭和な喫茶店


チキンピラフ

お土産に栗羊羹を購入した後、町はずれの蘇水公園へ。桜が満開とまではいかず、七分咲きでしたが、初々しさのようなものを感じました。今年の春はいつまでも寒かったのに、よくぞこうして咲いてくれた。ありがとう。
見事な桜が並んでいても、人影はまばら、それでいて寂寥感など全く無く、穏やかな静けさが心地よい。ゆったりと落ち着いた気分で花見ができました。八百津のユルいリズムがそうさせるのかもしれません。そろそろ引き上げるとしましょう。


蘇水公園の桜


風情ある山門

道中、昭和初期まで商家が軒を連ねたという兼山の街道筋は寺社が多い。以前から少々気になっていた常照寺に寄ってみました。こじんまりとしていますけど、きれいに手入れされ静かで落ち着くお寺。近くに、室町時代は木曽川の始発駅であったと言われる兼山湊跡があり、またの機会に行ってみようと思います。

完全にドライコンディションとなった路面を快調に走り、可児市外へと戻ってまいりました。そして... あれ?いったいどこ走って行くのッ!と言わせるような箇所を曲がり、狭い道を走り、お気に入りのカフェへ到着。
約半年ぶりだというのに中へ入ると、カフェのママさんが私の顔を見るなり「あ、いらっしゃい」とすぐにこやかな応対をしてくださいました。ありがたいことです。
八百津のこと、可児のこと、旅のこと... ママさんに負けじと初訪問の妻も喋りまくっております。女性同士で盛り上がると、おじさんの私が出る幕は無し。ママさんは話題が豊富だし、自分が出すぎることなく、逆に抑制しすぎることもなく、分け隔てなくある程度相手に合わせるさじ加減が素晴らしいです。心が大きくて広く、柔軟なのでしょう。狭い心で小さな私にはとてもできないこと。尊敬いたします。


お気に入りのカフェ


ツナトーストとコーヒー

そうそう、ツナトーストが他所ではまず味わえない、マスタードの効いたおいしさが予想外でしたし、コーヒーは香りが良く、ほのかな酸味と深みのある苦みが私好みで、すっかり満足したのでした。

たかだか往復20km少々、UP-DOWNも少なめで走り系サイクリストの方々にとってみれば走った勘定に入らない程度のサイクリング。お祭り見物に花見、カフェでの楽しいひとときなど、走りの要素はほとんどなく、全行程四輪で走ったほうがはるかに効率よく回れるのかもしれません。
でも走り以外が充実したサイクリングだっていいではないですか。たいしたことない距離でも自転車で走るからこそ充実するような気がします。
                           (おしまい)