小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2015/11/01

GIANT DEFY3インプレッション(2015年モデル)

2009年にデビューしたDEFY3はGIANTのラインナップ上、しばらくローエンドの位置づけでありましたが、2013年にコンポーネントに新型SORA(3500系)を採用しローエンドをDEFY4へバトンタッチ、少し本格派へ転向しました。2014モデルからハブが32Hに、2015モデルでサブレバーを廃止、カセットスプロケットをワイドレシオ化して間口を広げ、上位モデルと共通のハンドルバーへ変更し下ハンを持ちやすくするなど年々改良が加えられています。なお、2016モデルはBBが圧入式となったため、素人が手を入れるのが困難になったようです。

最初にお断りしておきますが、まともなロード乗りのインプレではありません。近距離/通勤用としてカスタマイズ、ロングライド向けなのにロングライドしておらず、特に速く走ろうともしていませんので使い方が間違っているかもしれません。

GIANT DEFY3 エントリークラスでロングライド向けとされていることから、マルチに使えそうで、実際使えないこともありません。しかし数km程度の移動では真価を発揮できず、少なくとも10km前後以上走ったほうがDEFY3の良さを体感できると思います。廉価といえども決してクロスバイクの代わりにはならず、まともなロードバイク。他人と競うことのない私にとって、舗装路を人力で移動する乗り物としては相当に高水準なように感じます。

3500系SORAは3400系に比べて剛性感が上がり、上位グレードと比べると変速レスポンスがわずかに遅れるときがあるものの、他車と秒単位で競うわけでなければ不満はありません。ロードバイクとしてはやや重めなゆえに鋭い加速は望めませんが、30km/hからでも難なく加速するダイレクト感が私には十分です。上り坂でのロスも非常に少なく、短い上り坂でしたら、ダンシングすることで何の苦労もなく上りきってしまうほど。長めの下り坂で50km/hに迫ろうとする速度であっても、車体が跳ねる傾向なのはしかたないとして、あまり不安感がありません。
特に意識しなくても20km/h台後半で巡航でき、ほどほどに体力があって荷物を積載しなければ30km/h巡航も可能。私のような体力のない中年でも、体力温存を考えなければ平地での瞬間最高速は40km/h台半ばに達します。昨年購入したRALEIGH CRNよりも効率に優れ、速く走れます。
ただし、これだけの剛性を誇るフレームですから、全くのビギナー向けというわけにはいかず、ある程度筋骨格ができている人向けな印象があります。ですのでペダリングの反動もそれなりにあって、ビギナーが力まかせに乗っていると膝を傷めるかもしれません。乗り初めの頃、私も少々膝が痛くなりまして、サドルのポジションをミリ単位で調整しました。
一方、乗り心地はアルミフレームにしては悪くありません。低速で路面がきれいならばアルミのデメリットを感じないばかりか、クロモリフレームよりも良いと錯覚するほど。荒れた路面になるとやや跳ねる傾向にはなりますが、決して尖ってはおらず、作り手の良心を感じます。
ハンドリングも良くできていて、クイックすぎずに程よく直進性があり、安心感があります。25km/h以下なら、進路変更もレスポンス良好。もっとも30km/h前後に達すると直進性がやや強く感じられ、レスポンスが鈍化しますが、疲れにくさとの相反でありましょう。

廉価版にしてはしっかりと作りこまれた車種であり、コスパが高いだけでなく、悩んだとき選んで間違いのないロードバイクだと思います。


ここからは非常に個人的な、好みの部分について触れていきます。旧いタイプな自転車乗りの戯言ですので、この先は読んでくださらなくてけっこうです。

ロングライド/コンフォート系に分類されるDEFY3ではありますが、日帰り前提の中〜長距離ライドに向いていて、数泊以上の旅にはあまり合わないように感じます。荷物を積載するのが容易でないだけでなく、旅気分にならず、リズムが違う。
高効率の裏返しか、良くも悪くもドライなのです。カチっと、しっかりしていてスピード感が薄い。周囲とのシンクロ感も少ない。充実感を得ようとすると、ゆっくり流すよりも、己の肉体にある程度負荷をかけて汗をかくことになります。疲れた体にはあまり優しくなく、いえ、疲れたら早めに休憩し、体力が回復したら走り出すスタイルでしょう。疲れてもそのままストレスなく走り続けられるRALEIGH CRNとは方向が異なります。

GIANT DEFY3 DEFY3は大変まともなロードバイクです。
健全なサイクリストが市民権を持って、団体で活動したり、あらかじめ決められたコースを走破するのにピッタリです。おそらく欧米の文化・思想をベースに作られていて、日本の旧い自転車乗りのややウエットな要素が排除されているのでしょう。
地方を気長にソロツーリングをするような絶対的価値観が合わず、比較対象や数値など目標を設定する相対的価値観に基づいている印象が強い。それが好みかどうかは人それぞれでありましょう。
一人でのんびり流していてもあまり落ち着かず、到達時間目標を設定したり、競う相手が欲しくなったりします。フラリとどこでもいいから走り続けるのではなく、目標を定めてそこへ向かう性格です。街乗りでも原付や四輪車と己を比べたりしてしまいます。街中でもロングライドでも、見た目に似合わず自制心が求められると言っていいでしょう。私にとっては、一般的な日常生活や暮らしのリズムとは相容れない印象で、日常のシーンに被ると少なからず不協和音を感じていました。非日常を楽しむための車種なのだと思います。それが相対的価値観であろうと。

オートバイを例に出してすみませんが、個人的には1980〜90年代のレーサーレプリカを連想します。レプリカとはいえ、ツーリングにも行けるし工夫すれば荷物も積載できる。街乗りも十分可能。ですが、そのような場合、多くのシーンで自制心が求められ、我慢しなければなりません。高速道路を淡々と走るときも。
極端に交通量が少ないワインディングにしょっちゅう通うわけでもなければ、日常的には充実するシーンが大変少ない。それが好みかどうかは人それぞれですが。


2015年5月に購入し近距離/通勤用として運用中、7月四輪車との事故に遭い、約1ヶ月の修理期間を経て再開したものの、10月上旬に対向右折四輪車との事故で残念ながら廃車となってしまいました。
せっかくDEFY3に体が慣れてきて、相対的価値感が楽しめるようになってきたというのに正味3ヶ月ほどしか乗ってあげることができず、申し訳ない。非常に短い期間ではありましたが、私のような使えない中年サイクリストに付き合ってくれたDEFY3に感謝します。