真冬の本宿と幸田 2021年2月
1月に発出された緊急事態宣言。自宅で過ごす機会が増えたことから体を動かす機会が減り、精神的に好ましくない状況になりつつあります。年齢的にも動かないと体が固くなる一方ですし、健康維持のためにもソロで走ってまいりました。
最低気温は連日氷点下。走り出す前にしばらくグズグズしていて、日が出て時間が経ってから、おそらく-1℃から0℃に届くころ出発しました。
氷点下を避けたとはいえ、寒さが体に刺さる感触です。ゆっくり走ると寒くてしかたないですけれど、逆に飛ばすと冷風が直撃するだけでなく汗をかいて冷えるため、無理せず汗をかかない程度に調節しながら走っていきます。こうした悪条件の下で走るのは、レスポンスがやや鈍く、少し気を抜いて走れるARAYA Diagonaleが合っているようで、真冬は乗車機会が増えます。まぁ変人の独り言であります...
東名高速 美合PA側道
本宿付近の冬景色
力を抜きつつ抜き過ぎない微妙なペースなせいか、いくつかアップダウンを過ぎたのに体が温まってきたのは走り出してから45分も経過してから。それでも足先や耳は強烈に冷たく、しもやけになりそうです。
旧東海道へ出て、本宿のカフェでひと休み。たまに訪れることでちょっとだけ顔なじみでして、ママさんが優しく迎えてくださいました。
カフェでひと休み
モーニングサービスを
年配の常連客が集まっていて賑やかです。大声でしたので小さなカフェの中に話し声が響いていました。子供や孫、ひ孫の話題が多いのですけれど、自慢話はほとんど無く、悪い気分はしません。年齢的に昔話も多く、この地域の昭和30〜40年頃らしき暮らしぶりが興味深く、勉強になります。
「当時結婚は親が決めるもの。好きな人とは結婚できんかった。どこぞの家はお母さんがずっと具合が悪くて困っとらっせる、人助けで(お嫁に)行った。そういうもんだった。
だけんど洗濯機を買ってくれんとどうしても嫁にはいかんと言い張った...」
私にあれこれ意見する資格はありません。常連さんたちの交流には何の棘もなく温かみがあって、最近読んだ小説の一節を思い出しつつ、私までほんのり温まってくるのでした。
バァバの答えは、真樹には信じらんないものだった。
「知り合ったもなにも、あたしたちの結婚は親が決めたからねぇ」
次の言葉は、もっと信じられなかった。なんでそんな話をオーケーしちゃったの、と尋ねたら、オーケーという言葉の意味に、少しのあいだ首をかしげてから、のんびりした口調でこう言った。
「あの頃はみんなそうだったもの」
嘘! 時代劇じゃあるまいし。昔々、そういう時代があったことは真樹も知っているが、何百年も前の話だと思っていた。 荻原浩著『千年樹』「バァバの石段」(集英社文庫)より
カフェを出るころには気温は5℃に達したのでしょうか、走っていて体がラクになった感触です。日差しもあってありがたいことです。旧東海道を逸れ、マイナールートを幸田町へ向かいました。
幸田方面へ
峠道
交通量は少ないもののゼロではなく、時折速度差が大きい車両に追い越されます。でも私はゆったりまったり走れました。のどかでいい道です。
と思っていたら、じきに上り一辺倒になり、ややキツイ上りを経て切り通しを過ぎ、下ったところで大井池に出ました。
大井池
三ヶ根
季節柄、寒さがいっそう増すかのような薄暗いプチ峠道でしたけれど、ちょっとだけ非日常感があって、とにかく自然たっぷりな中を走る感覚が心地よいです。
プチ峠区間はすぐ終わり、幸田市街へ入りました。市街を抜けて国道23号旧道を西へ走っていきます。とっくに収穫を終えて裸木となっているばかりの筆柿の木々の中に、収穫されずに放置状態の筆柿も見かけました。渋柿なのか、あるいは生産者側に何か事情があるのかちょっとだけ気になります。
幸田 道の駅
味噌ラーメン
道の駅はそこそこの人出でした。ここでお昼にします。少しラクになったとはいえ、体が冷え切っているので味噌ラーメンをチョイスしました。しかし... 類型的な味でおそらく業務用冷凍モノのようです。私のわがままで申し訳ない。舌が痺れる化学調味料と、後を引く酸味の保存料がどうしても気になってしまって。それでも体が温まりました。ありがたいです。
このまま自宅方面へと走るついでに別のなじみのカフェに寄る予定でしたが、気が変わってもう少し走りたくなりました。ソロですもの、予定なんてあって無いようなもの。そのときどきの己の内なる感覚に従うことができれば、それでもいいのです。道の駅からさらに西へと走り出しました。おそらくこの時点で当日の最高気温約7℃。後は気温が下がる一方であります。
平原では厳しい北風
北風に冷え切って
北へと向きを変え、建築物がまばらな平原地帯を進むと厳しく吹きつける北風で全身が冷えていき、腹痛を起こしてしまいました。予定を翻し遠回りしたことがが裏目に出たようです。こういうこともあります...
痛む腹を抱えつつ何もない平原を抜け、ようやく建物がポツポツ見られるように。どこか暖かい屋内に入りたかったのですが、運悪く道筋の喫茶店は休業。途中にあった小規模なスーパーにでもとりあえず入ってしまえばよかったのでしょうが、速度が落ちて建物の陰に入り北風を避けると腹痛が収まることもあって、判断力が鈍ったまま走り続け、コンビニのトイレをお借りしました。他所を探す気もなくそのままコーヒーを買って戸外でひと息入れる羽目に。
たしか10年ほど前も同じようなことがあったような... チェーン店でラーメン食べて腹痛を起こして。学習能力のない自分に呆れてしまいます。
この日の走行距離51km。寒さ厳しい中、この程度のサイクリングがちょうどいいのかもしれません。コース自体は手ごろでプチ峠もあって好感触。手ごろなルートを開拓できた気がします。次回は昼食処をしっかり事前調査して走ろうと思います。
(おしまい)