小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2020/03/29

冬の旧東海道〜尾張國編 2020年2月

前年12月、名古屋から岡崎市まで自走したことでヘンな自信がついた一方、地図もなく無計画だった点は褒められたものではありません。
もっと自走に合ったルートを確認しておきたい。四輪やオートバイとは違って、のんびり走る自転車には旧東海道が合っているのではなかろうかという思いから、今回は事前にきちんとルートを確認した上で走ってみました。


夜が明けた頃、気温は1℃。まだ薄暗い中を走ると指先が痛くて千切れそう。耳も。でも少しの我慢です。日中はきっと気温が上がってくるから... 最寄り駅での輪行作業は手先が冷えて思うようには進みません。真冬にこんなことをしているほうがおかしいのです。重量級のARAYA Diagonaleを収納した輪行袋を担いでホームへ、電車で移動し神宮前駅で降りました。


神宮前駅で自転車を組み立て


モーニングセットで温まる

相変わらず寒さがキツイ中、自転車を組み立てて、小さな飲み屋が並ぶ、朝は静かな神宮前小径を散歩します。レトロな小径にクラシック風のARAYA Diagonaleが溶け込むようです。
シャッターが目立つ神宮前商店街の一角のカフェに入りました。冷えた体を温め、これから走るエネルギーを補給します。パンにはバターたっぷり、ゆで卵の黄身が半熟だし、サラダのドレッシングはビネガーの風味があってお得感いっぱい。オシャレなカフェですが、朝の早い時間帯だからか年配客ばかり。中高年の私が浮いてしまうことはありませんでした。
神宮前商店街から、まず七里の渡しに来てみました。9年前に来たことがあって、すごく寒かったのを憶えています。当時に比べれば寒さはずいぶんマシ。
熱田橋を渡ってから国道1号に合流、すぐに県道を進み、道を間違えつつも山崎橋を渡っていきます。


七里の渡し


東海道を呼続へ

呼続に入り、静かな道をゆるく上ってからゆるく下り、笠寺観音に到着しました。週末の朝は静かで、なんだかタイムスリップしたかのようです。
きっと高揚感とか虚飾の時代が過ぎたのでしょう。いいではないですか、無理しなくて。ゆっくりと参拝するとともに心が落ち着ついていきます。この地域の住民が羨ましい。小さな喫茶店があって、飾らない静かなお寺がある。カッコつけなくていい。


笠寺観音


笠寺一里塚

笠寺一里塚を過ぎて天白川を越え、細い県道へ。数年前、オートバイで走ったことがあり、不思議な印象を受けた道です。大都市にしては道が直線でなく見通しも悪く、やや走りにくいのに、なぜか荒んでない道。自転車で走ってもその印象は変わりませんでした。

鳴海駅に差し掛かりました。国道1号や付近の幹線道路とは完全に趣が違り、落ち着いています。上昇志向とか同調圧力を感じません。世間についていかなくてもいいのです。現代の道路事情に合わない自転車乗りにとっては、なんだか癒されるかのようでした。
左京山から有松へ入ると、観光地として整備されている光景に少し戸惑いました。団体観光客も個人客も大勢そぞろ歩いています。観光面では好ましい状況なのですけれど、街道の景観に商売っ気が前面に出てしまっているようで、私には止まるきっかけも無いまま走り抜けてしまいました。中京競馬場前のハンバーガー店に強く惹かれましたが、時間的に中途半端なので通過してしまいました。次は寄ります。

前後駅とその周辺は意外にも昔ながらの小規模な街の駅風情です。再開発を免れた結果なのでしょうか、温かみのある空気が残っています。UR団地の一角にある喫茶店でお昼にしました。外からはスペイン語らしき外国語も聞こえてきます。年配客ばかりなせいか、BGMは古き良き映画音楽。しばし聴き入ってしまいました。


団地の喫茶店


ピラフセット

ハンバーグのピラフセット¥800(税込)は、田舎ではない都市部の家庭料理そのものの風味。限られた材料でできるだけのボリュームをと考えられているように感じて好印象です。


境川〜尾張國より三河國へ入る


知立の松並木

前後からは国道1号を横断しつつさらに東へ進み、境川を越えて尾張國から三河國へと入っていきます。殺風景な区間が増えていきながら旧道を刈谷〜知立〜安城〜岡崎と走りました。

これといった見所が随所にあるわけではない、というか、ほぼありません。道は狭く、わかりにくく、住宅街が多くて速度は出ない。だけど交通量が少なく、慌ただしい娑婆から隔離されたかのような静かな道でした。名古屋というとどうしても交通の便が良い商業集中地域に行くことばかりで、特に何の風情も感じないことが多いですけれど、今回のサイクリングで考えを改めました。大都市で味わいのあるサイクリングができるなんて意外です。尾張圏と三河圏の違いも何となく肌で感じることができました。旧街道の周辺だけでしょうが、いわば土地の有力者の影響力が残っているかのような三河地方に対し、外国人を含め流れ着いた人々も多く暮らし、互助的な側面を見せる尾張地方。まぁ、私の勝手な思い込みです...

今回の走行距離約35km、所要時間約3時間。効率や所要時間を優先するとあり得ないルートでしょう。だけどゆっくりと人々の生活を感じながら、タイムスリップしたかのようで、慌ただしい世間とは完全に別の次元を過ごすかのようなルート。これはこれで私のような古い自転車乗りには魅力的だと思いました。
                           (おしまい)