小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2022/01/09

RALEIGH RFLインプレッション(2016年モデル)

2015/10月にGIANT DEFY3乗車中に対向右折車に撥ねられて重傷を負ったことから勤務先までの自転車通勤を家内に止められ、公共交通機関での通勤を余儀なくされました。しばらくの間、最寄り駅までARAYA Diagnaleを使っていたのですが、駐輪場でのややタフな環境には向いてない部分が多く、近距離/チョイ乗り用途に日常性を有するRALEIGH RFLを増車。注文した当初、納車まで2.5〜3ヶ月待ちと言われましたが、実際は1.5ヶ月程度でした。

GIANT ESCAPE RXシリーズやTREK 7.4FXのような、太いダウンチューブに曲線を採り入れたトップチューブやシートステーを組み合わせ、効率やマッチョ感を訴求するスピードクロス系ルックスとは異なり、GIANT ESCAPE R3あるいはRITEWAY SHEPHERD CITYのようにベーシッククロスに近く、さらに落ち着いたクラシック要素も醸すルックスは、上質感こそあるもののファッション性が低く、あまりビギナーには受け入れられないかもしれません。
そんな街乗り系で控えめなイメージのRALEIGH RFLに乗り始めた頃はそれほど良い印象はありませんでした。でも乗り込んでいくうちに徐々に好転していき、半年以上経つ頃には、かなり好印象を抱くに至っています。

RALEIGH RFL ロードバイクのようなイケイケ、オラオラ気分は皆無。気負うことなく気楽に走り出せます。ゼロ発進はそれなりに重いものの程よくフレーム剛性があって、この手のクロスバイクにしてはロスが少なく昔乗っていたSpecialized Sirrusより確実に質が高いように感じます。
乗り味はアルミフレームらしく、しっかりしていてカタイ感触。同じアルミでもGIANT DEFY3のほうがマイルドで快適でした。

乗り始めの頃はペダリングに対するレスポンスも悪くなく、一般的にはARAYA Diagonaleより走りやすいと感じることもあるものの、MTB系のクランクはQファクターが広く大柄に感じることや、上りでロスする感触があって失速しやすいこともあって、思ったようにペースが上がらずに違和感がありました。
しかし乗り慣れてくるとこのクロスバイク用の筋肉ができてきたのか徐々に快適に走れるようになり、上りでロスする感触も少なくなりました。直進性が良くゆっくり走っていて快適です。ダイレクトな反応のロードバイクと違い、急かされる感覚もありません。それと速度域は低いものの、上りでのダンシングが意外にマッチします。カッチリしたフレームが程よく反応し、短い上りならクロスバイクにしてはあっさりクリアできてしまいます。

平地でもダンシングすれば、ロードバイクには到底及ばないとはいえ、ベーシック系クロスとは思えない速度を維持できます。絶対使わないだろうと思っていたアウター48Tに、リア15Tも13Tも使えます。もっともそれなりに体力を消耗しますけど、積極的に走るのもまた楽しく奥が深い。
長めのトップチューブも、エルゴでないハンドルグリップも、やや細いタイヤも、ちょっと長めに感じるハンドルでバーエンドバーを容易に追加できるようにしてあるのも、頑丈な8速も、速度を上げると悪化する乗り心地も、すべてこのためだったのかと納得します。個人的には変速レバーはサムシフターのほうが好みですが、ダンシングしながら変速するにはこのラピッドファイアーにアドバンテージがありますね。
信頼の台湾製であり、しっかり造ってあって、底が深い自転車です。だけど走り系ロードバイクでもあるまいし、街乗り用クロスバイクでダンシングなんて、勘違いなオッサンが頑張っちゃってるように見られるのは恥ずかしいかもしれません。

各パーツを細かく見ていきましょう。
2014年に刷新されたというフレーム、ベーシックよりもややスピード系に振ったようで、ある程度の剛性感があって速度をのせやすい反面、衝撃吸収性はそれほど期待できません。ですので、ハンドルグリップやタイヤを選ぶ面があり、標準装着パーツがベストバランスであると思われます。フォークもアルミ製で衝撃吸収性が低いはずですが、標準装着パーツの状態なら何の不満も感じず、しっかり直進安定性が確保され、落ち着いたハンドリングとなっています。個人的にはフルサイズのマッドガード装着状態で、ペダルに取り付けたトゥークリップとほとんど干渉せず、安心して運用できるのがすばらしい。
ホイールのハブはSHIMANO TOURNEYグレードながら、ロスが少なく滑らかに回転し気分が良いだけでなく、ARAYA AR-713リムの剛性が程よく確保されていて安心感があります。
標準装着のタイヤ:SCHWALBE MARATHON 700×28Cは漕ぎ出しは重めですが、パンクの心配が非常に少ないだけでなく、走り出してしまえば意外に軽快でグリップもクッションも程よく、街乗り用途なら他のタイヤに換装する必要は無いでしょう。
ショートアームVブレーキ:SHIMANO BR-R353は穏やかな効き味でタイヤがロックする心配は少ないですけど、握り込んだときの制動力はキャリパーブレーキよりもしっかりしていて街中でも安心です。この感触も標準装備のタイヤが良い方向に作用している気がします。
ハンドルバーは540mm。長くはありませんが、バーエンドバー装着すると私にとってはちょうど良い。もし坂が少ない街乗り専用ならバーエンドバーを使わず、長さを少し詰めてもいいかもしれません。
標準装備のサドル:SELLE-ITALIA Q-BIKは少々カタめ。私の場合、硬さよりもサドルの形状が尻の形に合わず、他のもう少し柔らかめのサドルに交換しました。
ドライブトレーンは廉価版MTB系のSHIMANO ALTUSで揃えられています。105グレード以上のような軽い操作感には及びませんが、ちゃんと調整すれば至極まっとうに変速動作し細かいレスポンスなど気にしなければ何の不満もありません。

RALEIGH RFL RALEIGH RFLは他メーカーのようなシリーズ展開やヒエラルキーも無く、これはこれで一つの完成形。標準装備品の質が良く、それほどカスタマイズする必要を感じません。価格の割に落ち着いたルックスに加え、作り手がしっかり実走して設計されたであろう、クラスを超える品質感があります。
私の場合、カバーをかけただけの屋根無し屋外保管にもかかわらず、梅雨と秋雨を越しても後付けパーツ以外の本体に錆が見られません。唯一ディレーラーハンガーのボルトの頭だけわずかに点錆があった程度です。
趣味性は低いものの、実用的で日常性を大事にし、ゆとりある走りかたが合っていて、GIANT ESCAPE RXシリーズやTREK 7.4FXのような「走り」を前面に出したキャラクターではないとはいえ、ほどほどのスポーツ性を備えています。
スポーツサイクルとしては少々わかりにくい性格かもしれません。

近距離用途では上記のように好印象で10km〜 20kmの連続走行も苦になりません。ではもう少し足を伸ばすと...
乗り手の体力に大きく左右されるのでしょうけれど、中高年の私の場合、概ね30km前後で脚に疲労を感じるようになります。単純に脚力に乏しいだけでしょうが、やや剛性のあるアルミフレームならではの反動が脚に来るともいえます。40km〜50km走行すると、まとまった休憩をとらないとそれ以上走り続けるのがつらくなります。質感が良くても疲れるものは疲れる。ロングライドが快適で、疲れていてもそれなりに走れてしまうクロモリフレームのRALEIGH CRNやARAYA Diagonaleとはやはり方向が異なります。
このあたりは好みの問題ですので、体力さえあれば、荷物を積載してロングライドという使いかたにもRFLは応えてくれるでしょう。


[追記 20/5/10]
上述のインプレは購入後1年未満のときの文章。4年半近く経過した現在も実用車として愛用していまが、少々印象が変化してきましたので追記します。

印象が変わったきっかけとなったカスタムが次の3箇所。ハンドルステム上下を入れ替え、ハンドルポジションが下がって前傾姿勢を少し深めに、タイヤをPanaracer PASELA JACKETへ換装、それからクランクをロード系のFC-RS20に交換したこと。
トップスピードやアベレージスピードが速くなったわけではありませんが、少しラクに走れるようになりました。特に上りが幾分ラクになった気がします。いえ、ラクというよりもペダルを漕いでいるとあまり苦しまずに上りをクリアできると言うべきか... 平地でもフロント46Tにリア15Tを使う機会が少し増え、追い風だと13Tを使うことも。もっとも、向かい風はそれなりにキツイです。マイナスポイントは前輪の荷重配分が増えたせいか、前輪の接地感にやや神経質になった気がします。
大きな変化として、連続走行距離が伸びるようになりました。時間はかかりますが、30kmくらいは何でもありません。50kmや60kmもさほど苦痛ではなくなり、ロードバイクのようなスピードや効率の良さには到底及ばないものの、ご近所買い出しから、ちょっとした遠乗りまで概ね何でもこなすようになってきています。手元に1台だけ残すとしたら、結局こういう実用性の高い自転車が良いのかもしれません。

[追記 20/7/5]
カバーを被せるだけの屋外保管にもかかわらず、購入後4年半ほど経過した時点で、あちこち汚れは目立つようになったものの、錆や塗装の劣化はほとんど見られず、長期間にわたって愛用できる自転車だと思います。
ハブベアリングのグリスアップ そんなRFLでも気を付けなければならないのがホイールハブベアリングの点検とグリスアップ。2016年モデルではSHIMANO HB-TX800/FH-TX800というTOURNEYグレードのハブが採用されていて、他社によく見られるノーブランド/サードパーティ品よりはるかに耐久性がありそうですが、上位グレードとは異なり、防水シールがありません... ノーメンテだと修理不可能なトラブルを抱えてしまい、ホイール交換が必要になるかもしれません。
雨天走行していなくとも最低でも2〜3年に一度は分解清掃し、ベアリング球や玉押し、玉受けを点検、グリスアップしておくと安心して長く使えるでしょう。

[追記 22/1/9]
購入から約6年、カバーを被せるだけの屋外保管にもかかわらず、年数なりの汚れは見られるものの塗装の傷みも錆も極端に少なく、飽きさえしなければ長くつきあえる自転車だと感じています。
数少ない劣化部品のひとつ、リア側の変速ワイヤーに若干の錆が発生、目立って硬化してきました。よく使う位置から1速アップ/ダウンは特に気になることはありませんが、2速ダウンするとインデックスが合ってないぽいガラガラと異音が発生するようになりました。 インナーワイヤーを新調
アウターはそのまま、インナーワイヤーだけを新調。作業は特に難しくありません。シフターにワイヤー先端のタイコ部分ををはめるのに若干手間取っただけ。交換後は変速がシャキッと、8速なりに新品に近い状態になりました。
費用はアストロプロダクツブランド2本セット¥420のうち1本分。(21/10月、税別)