DAHON Visc P18インプレッション(2012年モデル)
2022年現在、DAHONブランドにラインナップされているVisc Evoの2代前のモデルに相当するVisc P18。折りたたみ自転車の中でもスポーツ志向に位置づけられている印象です。
タイヤサイズが20インチでもETRTO406サイズ、コンポが旧式Shimano Tiagra (4500系)、シフターがやや操作性に劣るmicroshift製と、Visc Evoに対してどうしても見劣りしてしまいますが、当時としてはこれでも充実したスペックでした。
既に過去のモデルというだけでなく、約9年間の屋外放置からの再生状態であることに加え、近距離買い物仕様へカスタマイズしたことから、興味を持たれる方はいらっしゃらないでしょうが、個人的なインプレを記録しようと思います。
私自身、他の小径車はBD-1ほか試での経験しかなく、比較対象は主にクロスバイク:2016 RALEIGH RFLになります。なおDAHON Visc P18の定価は¥100,000(税別、2012年購入当時)、RALEIGH RFLは¥59,000(税別、2016年購入当時)
再生にあたり小径車のデメリットが気になっていましたが、思ったよりはよく走ります。直進性も安定感も悪くありません。
とはいえ走行性能は折りたたみ小径車として価格相応に感じます。クロスレシオ化により無風の、起伏が少ない平地ならばクロスバイクに迫る走りを見せる一方、登坂も降坂も、向かい風もクロスバイクに比べてガクリとペースが落ちます。発進加速で目立った軽快さを感じることもありません。走行性能はママチャリ以上、クロスバイク未満。
DAHON Visc P18にしばらく乗り続けて慣れてきたころ、なかなかどうして、クロスバイク並みに走れるぞと感じてきてから、クロスバイクのRALEIGH RFLに乗り換えて同じコースを走ると、わっ進む! とあらゆる場面で感じます。上り坂や向かい風だとラクではないものの、同じ労力で前に進んでくれる感触。さらに重量級ツーリング車のARAYA Diagonaleに乗り換えると発進こそもたつくものの、巡行も上り坂も向かい風も、一段と効率的に進んでくれると感じます。
ここでDAHON Visc P18に乗り換えると... なぜか決して悪くありません。クロスバイク並みではないかと感じる場面も多いです。
取り回しが良く、乗り出しの気楽はが秀でているものの、乗り心地の面では小径車らしく路面の凹凸がはっきり伝わり、快適性が低いだけでなく、ある程度ダイレクト感あるアルミフレームの影響か、良くも悪くもゆったり走りを楽しむキャラではありません。ただしスピードが上がると車体が跳ねるような挙動が出てきて悩ましい。
最大の特徴である輪行との親和性ですが、実際に運用してみると残念ながらそれほど使いやすくはありませんでした。確かに折りたたんでコンパクトにする作業、元に復元する作業は簡単で、作業時間も数分。でもメリットはそれだけです。
輪行袋に入れて持ち上げると常時片手が塞がってしまうため、自転車以外の荷物を携えながら鉄道の改札を通るのに難儀することも。折りたたんでコンパクトになったとはいえ幅は嵩み、公称11.5kgの重量を手にもって歩くのは予想外に疲れます。特に数泊分の荷物を抱えた自転車旅の場合、デメリットが目立ちます。
鉄道の列車内でも、折りたたみ車の優位性を享受できるのは特急列車の最後部スペースに収めやすいことだけ。通勤車両のようなロングシートの場合、幅が嵩むために車両中央部には置けず、出入り口付近に置くことになります。ロードバイクやクロスバイクの縦型輪行なら大きく見えてその存在が認知されるのに対し、DAHON Visc P18の折りたたみ状態は背が低いため、他の乗客が認知しにくく、混雑時はつまづく原因になり得ます。購入してわずか1年で妻がGIANT AVAIL2へ乗り換えたのも、輪行のデメリットが大きな原因のひとつでした。
細かい部分について。
ブレーキはDAHON SpeedStop Vブレーキに、Avid FR5のブレーキレバーの組み合わせで、何の不都合も感じません。
変速性能、リアは9速かつクロスレシオに換装したこともあって、9年間の放置にもかかわらずレスポンス良好です。4500系のSHIMANO Tiagraのリアディレーラーは十分以上。一方、フロントはクセがあります。クランクがSHIMANOでなくProwheel、フロントディレーラーがSHIMANO Tiagraではなくmicroshift、おそらくFD-R42。変速レスポンスは良く、8速のRALEIGH RFLより早く変速完了するばかりか、10速のRALEIGH CRNよりも早いです。しかし、レスポンスが良すぎてインナーからアウターへ変速する際にチェーンが外れます。外れないようにフロントディレーラーを調整すると、今度はリアがトップに入りづらい。トップに入ってもチェーンがフロントディレーラー内壁に接触する事態に。
どうにもならず、リアトップを使える状態調整に、インナーからアウターへの変速はチェーンが外れないよう慎重に、ゆっくりとシフターを操作することにしています。
ちなみにDAHON Visc P18は2013年にマイナーチェンジ、リア10速化されたと同時にフロントディレーラーがmicroshiftからSHIMANO Tiagraに変更されました...
実際の運用に話を戻します。
数ある自転車群の中では、どちらかというとファッション性やマニア性、おもちゃ感が強めな印象。走りに楽しさや味はありません。残念ながら価格約半分のクロスバイク以下。片道2〜3km程度までなら乗る気持ちになりますが、往復10km以上走るとなるとクロスバイクのRALEIGH RFLを選んでしまいます。
2022年7月時点ではサイクリング用途での価値を見いだせず、輪行することもなく、実用面でもクロスバイクと被ってしまう。クロスバイクに無い買い物用の装備をすることでどうにか運用できているというのが現状です。
もっとも、個人的にあと数年で定年を迎え、四輪車を手放すことを考えていて、このDAHON Visc P18は雨天時の近隣移動にも活用しようと思っています。前傾姿勢が浅く、フラットペダルにトゥクリップなし。雨合羽+長靴着用状態とさほど相性が悪くはなさそうです...
[追記 22/08/07]
放置期間以前からだったのかわかりませんが、リアホイールの回転がやや渋い。車体から外してハブシャフトを触るとゴリゴリで、玉押しを締め込みすぎな印象。
フロントハブはカートリッジベアリングですが、リアハブは通常のカップアンドコーン構造なので分解してみたところ、走行距離が少ないせいか、約9年間放置していたにもかかわらず汚れは少なめでグリスはほぼ残っていました。異常はここから。
フリー側のベアリング鋼球は9個なのに、反対側は8個。粉砕した跡は無く、マグネットピックアップツールを使って中空ハブの中を探るも見つからず。新車時点から1個欠品だったとしか考えられません。生産管理はおおらかなのかもしれません...
後日ベアリングの鋼球新品を購入、不足していた1個を補充。初めからその場所にあったかのごとくピタリと収まりました。(作業実施 22/5月)
[追記 22/08/28]
屋外放置からの再生直後は特に違和感がありませんでしたが、しばらく乗っているうちにハンドルにガタを感じるように。折りたたみ自転車はヘッドが緩みやすいとも言われるようで、調整のついでにヘッドパーツをグリスアップしてみました。
一般的なロードバイクで採用されているアヘッドステムと同構造ではありますが、肝心のベアリングはカートリッジタイプ、しかもフレームに圧入されていて取り外せず、素人は手出し無用のようです。
しかたがないので分解せずに隙間からグリスを押し込みました。グリスアップにはなっていないかもしれません...(作業実施 22/7月)
[追記 23/02/05]
ステムの緩みを調整してから2か月ほど、今度はガタではなく、ハンドルがグラグラしてきました。再度ステムを調整してみましたが直りません。折りたたみレバーを締め直してみましたがダメ。というよりも折りたたみレバーの手応えが弱い感触。
ネットで情報収集し原因判明しました。ハンドルポスト(Radius Handlepost)のロック機構の緩みでした。このロック機構を調整すると、グラグラしていたハンドルがガッチリと安定し、安心して走れるようになりました。本来こうだったんですね。