ZZR250カスタム後インプレッション 2: マニア仕様
カスタムコンセプトは「ワインディングを快適に」。
ノーマルでは苦手なワインディングを不安なく走れるようにしてあります。
最高速や加速それに長距離ツーリングは この仕様の対象から外してあります。
2004年後半から この方向を進めています。
総合
おすすめ度 <☆☆☆ >
スムーズ&パワフルならぬ、スムーズ&フラット。決して力感モリモリとか、パワーたっぷりとか、そんな感覚ではなくて、アクセルを開けるとスルスルっと走ってしまい、どんどんスピードが乗っていきます。
250ccのバイクなんて、アクセルをガンガン開けて乗るもの、しかも高回転型エンジンだから常に回していないと、と思っている諸兄も多いと思いますが、その思い込みを見事に裏切ってくれます。
マフラー以外は一見ノーマル車両なのに、良くも悪くも おっとりとした “のんびりツアラー” が全く違うマシンに変わってしまいました。ノーマルだと、それなりに加速したい時には アクセルをガバっと開けてからしばらく待つか、シフトダウンしなければなりませんが、このマニア仕様はそんな必要は無く、アクセルを開け始めた瞬間から加速が始まります。高回転型エンジンだなんて、普段は感じません。
アクセルレスポンスが非常に敏感な上、その正確さに パワーが上乗せされたような感覚です。のんびりした、おおらかなフィーリングはどこかへ行ってしまいました
加速感がスゴイわけではないのですが、吹け上がりがノーマルとは段違いに早い。
以前乗っていたZXR250に比べると超高回転域のパワーは劣るものの、10,000rpm以下の低中速域は ZXR250の12,000rpm以下を圧倒するパフォーマンスになっていると思います。しかし...
ノーマルの感覚でアクセルを開けると、周囲の流れと協調できなくなってしまい、普段はアクセル開度を相当抑える必要があります。そのため けっこう飛ばさないと充実感がなくて、4サイクル250ccには似合わない自制心が必要です。
ところが人間って、こういうのにだんだん慣れてしまうんですね。で、たいして開けてないのに スゴイ加速を求めていたり...
他に、路面の凹凸をそれなりに拾う前後サスペンションの挙動と 前傾度を増した乗車姿勢がノーマルとは かなり違い、緊張を強いるかのような雰囲気が出ていて、ノーマルの良さであったおおらかさが無くなりました。そしてワインディングは確かに快適になったものの「充実感」はというと...はぁ、カスタムって難しい...
燃費はなぜかノーマルよりも良くなり、22〜29km/L 程度です。無意味に飛ばすと21km/L程度。最高記録は32.3km/L。エンジン始動性も全く問題ありません。
クルージング
おすすめ度 <☆☆ >
[動力性能は十分なのだが...]
ノーマルのように「パワーが足りない」と思うことは滅多にありません。そのおかげで余裕を持って走れるといえば そうかもしれません。ただし、60km/h+αまでの定速走行では 敏感なレスポンスのせいもあって、250ccには似合わずに 極端に少ないアクセル開度を維持しなければならず、“まったり流す” には右手に相当神経を集中する必要があります。また、あまりにもエンジンがスムーズすぎて、鼓動感など無く、むしろ苦痛すら感じることもあるような... しかもフラットなエンジン特性のため、5速や6速に入れっぱなしのまま、起伏があっても、ちょっと流れが滞っても、4,000rpmも回っていれば十分加速でき、やることが少ない... 40km/h・3,000rpmに落ちても、アクセルを開ければエンジンは苦しげな音も出さずに 多少の吸気音と共にそこから加速していきます。
乗り心地は安定感が高くなっています。サスペンションのプリロードを強くしたわけではないので、多少路面が悪いところでペースを上げても凹凸は拾うものの、そこそこ快適です。また、普通の段差での衝撃は それほどでもないですが、高いバネレートのためにバネ上の上下動が速く、さらに前傾姿勢が強くなっているため、神経質なライダーは これだけでも疲労の原因になるかもしれません。それとノーマルのときはダート走行で少々前後が滑っても何てことはなかったのに、このマニア仕様では なるべく滑らないよう、特にフロントの挙動に神経を使う場面が多くなりました。
とにかく、80km/h以下で流しているような状態だと あまりスピード感がなくて、“走ってる” 感じがあまりにも少なく、ZZR250の ひとつの特徴でもあった “ゆったり旅気分” は激減してしまいました... ああ...
高速道路
おすすめ度 <☆☆☆☆ >
[まずまず快適で、小型ツアラーとして合格レベル]
下道ほどではないものの、100km/h巡航ではアクセル開度が非常に少なく、やや不完全燃焼感があります。でも、エンジンの振動や騒音が非常に少なく、強くニーグリップしなければ、ほとんど振動が伝わってこない感じなので、慣れてしまえば快適です。一方、路面からの細かい入力がダイレクトに伝わってくる感触があり、ここでもバネ上の挙動が速いのでゆったり気分は減少しました。フロントは落ち着いていますが、ノーマルのような自己直進性は感じにくくなり、好みが分かれるところです。
4輪の流れを乱さないような法定速度前後の範囲内なら十分な動力性能のため、 車線変更し追い越しをするときも 6速に入れっぱなしで何も問題ありません。ノーマルが1.5〜1.6Lの4輪セダン程度の力感だとすれば、カスタム後は1.8Lセダンや2.0Lミニバンあたりと同等の動力性能と言えるかもしれません。もし、さらに加速したい場合は10,000rpm以上に入れれば 4サイクル250ccとは思えない加速力を見せます。
とはいえ、やはり250cc。法外な高速域で 感動するほどの加速力はありません。高速走行に面白さを求めようとするには多少無理があると言えます。高速道路でブッ飛ばす人は排気量の大きいバイクにした方が無難です。
ワインディング
おすすめ度 <☆☆☆☆ >
[ツアラーを感じさせない足回りですが...]
このマニア仕様の焦点が ワインディング。ノーマルが苦手とするワインディングが快適になりました。リアの車高UPにより、バンク時に自然にフロントの舵角がつくようになり、強化された前後サスペンションとの相乗効果で 旋回中の安定感は格段に上がりました。少々路面が荒れていても うねっていても、ハンドリングに影響しにくくなり安心です。
ノーマルや おすすめ仕様では、カーブ入口の強いブレーキングでフロントがグイっとノーズダイブ、そのまま旋回に入ると アンダーが出てしまうため、早めにブレーキをリリースする必要があり、旋回中のフロントブレーキは厳禁でしたが、このマニア仕様は違います。フロントのノーズダイブが抑えられ、それだけでも安定感が増えている上、フロントに旋回力があるために、フロントブレーキを当てながら旋回に入ったり、旋回中ある程度の進路変更も可能。極端な旋回力は持たせていないものの、多少はスポーツバイクのハンドリングに近づいています。
これ以上 旋回重視にすると 前傾がきつくなるのと、タイヤの剛性が欲しくなるのと、ステアリングダンパーが欲しくなるのと、何よりも直進性をこれ以上落としたくないので、このあたりまでにしておこうと思います。
鋭い突っ込みが可能なわけではないし、バンク角が増えたわけでもないし、豪快な立ち上がりとも無縁で、限界もそれなり。一般的に “わかりやすい” 性能は 感じられないかもしれません。一方、マニアには たまらない。前述した安定感、限界付近のわりと穏やかな挙動、路面情報の適度なフィードバック、トラクションが抜けない安心感...
しかし... ノーマルとは話にならないほど、おすすめ仕様と比べても、ビビリミッターが大幅に効かなくなってしまいました...。改善されたハンドリングの代償ですね。4サイクル250ccらしからぬ自制心が必要です... ここでも “走ってる” 感が少ない... 実際はバンクしているのに あまりバンクしていないかのような錯覚があり、旋回中にボヤッとしながらシフトアップしてしまって、靴のつま先が地面にひっかかるというミスをすることも...
そして最大の問題が、「すごく楽しいのか?」という点。安定感が増えて融通も利くために さぞかし楽しいのかと思いきやそうでもない。なんだかカワサキのバイクに乗っている感じではないのです。瞬間絶対スピードは別として、ワインディングでは昔乗っていたZXR250よりもはるかにイージーに安定して走れます。で、充実感を求めようと、もっとペースを上げると それまでのイージーさが徐々に消え、ライダーに正確な操作が要求されるようになります。ヘタレの私には急に難度が上がるような感じなのです。登坂のワインディングでもグイグイとまではいかないものの、250ccにしては それほどもどかしさを感じない加速が助かるのですが、逆に、ノーマルではもっと!と あれほど全開にしていたコースでも、怖くて開けれない... スムーズなエンジンに戸惑って、不必要に低いギヤに落としてしまい、無用なエンブレを効かせてしまうことも。
ノーマルやおすすめ仕様のような “そろそろアブナイよ” というような車体からのメッセージが乏しいので、ライダー自身の感覚を研ぎ澄ませて スピードに対処しなければなりません。H社のバイクは難なくコーナーをクリアし、自分自身が上手になったかのような錯覚を感じるのですが、このマニア仕様は あるペースを超えると、バイクの運動能力を生かしきれない自分に気がつくというか...
フルノーマル:「これ! あまり飛ばすでない」
おすすめ仕様:「ほどほどにしておくのが楽しむコツじゃ」
マニア仕様: 「どうした? その程度か。情けないのう」
と、言われている感じなのです。
それに、“流す” 走りも あまり楽しくはなくなりました。
ライダーの積極的な操作を必要としない分、なんだか...
街乗り
おすすめ度 <☆☆☆ >
[ストップ&ゴーのストレスが無いものの、楽しくはない。]
エンジン始動はセル一発。暖機時間もノーマル車より少なく、十分に暖気していない状態で走りだしても、少々パワー感が足りないだけで、エンストしたり、エンジンから異音が出たりすることもありません。冬以外なら暖気時間はヘルメットとグローブをつけている間の1〜2分で済みます。この点は便利。
発進時にあらかじめ回転を上げる必要も無ければ、エンストしそうになるといったストレスも全くありません。普通の発進では 目の前の信号が青になったら アクセルを少し開け始めると同時にクラッチレバーをリリース。2,000rpm前後でクラッチミートすれば するすると前へ進みます。4輪の流れをリードするなら3,000rpm以上で、ゆるりとスタートするなら1,500rpmでクラッチミート、あとはそのままアクセルを開けていき、5,000rpm前後でシフトアップしていけば法定速度に達します。単気筒車ほど低速の力強さはありませんが、“スッ” と前へ出る感覚で、とても扱いやすくなりました。
流れのゆるい道路での発進は逆に少々気を使います。発進加速時とはいえ、アクセル開度を相当絞らないと前車との距離が詰まってしまうのです。アクセル開度があまりに微妙なため、微妙にアクセルを開けているつもりが、実は微妙に閉じていたりして、加速中に失速したりすることも...
信じられない方々もお見えでしょうが、2〜3速なら走行中に2,000rpmに落ちても、いえ、1,500rpmでも そのままアクセルを開ければ加速していきます。流れが緩い市街路なら4,000rpmを超えなくても充分だし、少々速くても街中で6,000rpmを超える機会はほとんど無くなりました。
ただしアクセル開度が非常に少ないせいか、街乗りでは充実感が無いどころか、消化不良を起こしそう。ノーマルの感覚でアクセルを開け、普通にシフトアップしていくと、周囲から浮いた存在になり、「あの人なに頑張っちゃってんの?」と言われるかもしれません。信号待ちで車列の先頭に出たい衝動も、よく感じます。
また、ノーマルのようなフロントの軽快感がほとんど無く、気軽に進路変更するような感覚ではなくて、ラインを決めてから バイク全体で曲がる感覚になったため、通常の街乗りでは うっとうしいと感じるときもあります。果たしてこの状態、街乗りに向いているのか、向いていないのかよくわからない...
↓主要カスタム内容一覧(赤字の部分がマニア仕様)
エンジン
- エンジン本体
- (フルノーマル)エンジンヘッドフルオーバーホール済
カムチェーンテンショナーのスプリングを追加補強 - エンジンオイル
- NUTEC NC-50+NC-51
- エンジンオイル添加剤
- パパコーポレーション スーパーZOIL
点火系
- スパークプラグ
- DENSO イリジウムプラグ IUF24を使用
- プラグコード
- 永井電子ULTRAシリコンパワープラグコード
電装系
- 電圧安定供給装置
- 桑野 DPS Mini Ra 低回転域用
- 〃
- TRICK STAR PPSトップアドバンテージ高回転域用(お好みで)
- ヒューズ
- SP忠男 ウルトラヒューズ ZZR1100(D)用
- アーシング
- (汎用キット)
吸気系
- キャブレター本体
- (フルノーマル) 混合気セッティング・同調済
- ジェット類、ニードル
- メインジェット#103→#132 パイロットジェット#38→#35
ジェットニードル KENSO バクダンキット オーダーメイド2号 - エアクリーナー
- K&Nカスタムフィルター(汎用)
排気系
- マフラー
- 月木 アレーテヴォルテックス アルミサイレンサータイプ
駆動系
- チェーン&スプロケット
- RKエキセル BL520RX & SUNSTAR Zスプロケット
ドリブンスプロケット44T
足回り
- タイヤ
- ブリヂストン BT39 100/80-70、140/70-17
- フロントサスペンション
- スプリングレート変更(特殊加工)&MEチューニング
- リアサスペンション
- PENSKE RACING SHOCKS 8981オーダーメイド、車高UP
ブレーキ
- フロント ブレーキパッド
- デイトナ ゴールデンパッド
- ブレーキホース
- グッドリッヂ ステンメッシュホース
- ブレーキキャリパー
- bremboキャスティングキャリパー 40mmピッチ
- ディスクローター
- サンスター ホールタイプ KC-301H
- リア ブレーキホース
- プロト SWEGE LINE ステンメッシュ
- ブレーキパッド
- デイトナ ゴールデンパッド
その他
- シート
- ノーマルをベースに全面加工 オーダーメイド
- ステップ
- トリックスター セットバックプレート Ninja250R用
- ハンドルグリップ
- POSH RACING GRIP
- タンクパッド
- 汎用ゴムシートを自家加工