DIO110ベーシック(JK03) ノーマル車インプレッション
2024年7月、主に通勤、ときどき約300km離れた帰省先への往復に使っていた四輪車トヨタ AURISを手放し、売却金をもとにリアボックスや車体カバーなどの用品と併せて購入しました。ほぼ通勤、たまに買い物やプチツーに利用しています。
比較対象は主にスズキSWISH(2019年式、空冷125cc)、それに約30年前に乗っていたLEAD125(JF01、2サイクル)です。
何といっても日本ブランド原付二種の中では圧倒的な低価格! 原付一種ばかりか、電動アシストサイクル上級機種とも競合できる価格です。
それでいて安かろう悪かろうではなく、主に平坦路 60km/h前後以下で使う限り 動力性能に大きな不満は無く、十分実用的なミニマムコミューター。ホンダは廉価車種を見捨てていません。庶民にはありがたいことです。
総合
おすすめ度 <☆☆☆ >
[平地主体の短距離通勤や買い物向き]
価格の話が続きます。2024年12月現在、定価が税別¥198,000、税込¥217,800と他社スタンダートクラスを圧倒する価格設定。ヤマハ アクシスZは税込¥283,800(2025モデルは¥3,300 UP)、スズキ アドレス125は税込¥273,900と、全く競合しません。両車ともリアキャリアがオプションですし。車格が違うイメージにはなりますがヤマハ ジョグ125は¥267,300。(2025モデルは¥3,300 UP) こちらも約5万円の差がついていて競合しません。
では実際乗ってみて、使ってみてどうかというと、評価が分かれると思います。ありがちな評価は上述した他社スタンダードクラス125ccと比較するケース。そのままでは不公平で、価格差を考慮して評価すべきですね。価格帯をもとに評価対象を選ぶと原付一種のホンダDunkやジョルノ、ヤマハ ビーノ、... しかしこれではまっとうな評価になりませんね。
ここで申し上げたいのは他社125ccと比較するように期待値レベルを上げるとDIO110の評価は低くなり、原付一種と比較するように期待値レベルを下げるとDIO110の評価は高くなるということ。ですので人によって評価が異なってきます。
前置きがだいぶ長くなりましたが、私の主観です。低価格ゆえに安かろう悪かろうなのかというと、全然違い、ある程度用途が限定されるものの、価格からは想像できないほど良い工業製品な印象です。
都市部の短距離:1回の移動距離が 5-20km前後を走る手段として最高のパフォーマンスを発揮すると思います。細かいユーティリティはともかく、軽い車両重量も相まって、道具としての使い勝手は抜群だと思います。
DIO110(JK03)最大の特徴の一つである、超ロングストロークエンジンがすばらしい。低回転域からクラッチが繋がり、緩い発進加速も渋滞走行もラク。110ccなりではありますが、低回転から実用的なトルクが感じられ、少なくとも60km/h以下かつハーフスロットルあたりでフツーに走る分には、125ccに劣ると感じることがないばかりか、特に40km/h以下はむしろ扱いやすい。それでいて振動が少なめでスムーズにエンジンが回り、ストレスが少ない印象です。
前後14インチホイールの効果もあり、車体は安定感たっぷり。細いタイヤなりのヒラヒラ感も無くはないですけれど、カーブの走行も、交差点を右左折するときも安定感優先。フレームも価格に対して秀逸、フツーに走る分にはたわみやよじれを感じることが皆無。
乗り心地は、舗装の良い道路では抜群なほう。ただし路面が悪い箇所ではそれなりにガッと衝撃が来ます。前後サスのスプリングレートが2段階、おそらくバネレートが高いほうが2人乗車用で、一人乗車では固すぎる傾向なようです。まぁ慣れます。
燃費は市街地の通勤用途で概ね50km/L以上。慣らし運転中は市街地メインで58.0km/Lをマークしたことも。
工業製品として優れ、道具として抜群な反面、カスタムやドレスアップなどの趣味の対象にはなり得ないし、所有満足度とは縁がありません。安定感の反面、操る楽しさは薄く、刺激が無い。用途を割り切ったベテランには理解できても、経験の浅いビギナーにはわかりにくく、ついついネガな部分に意識が向いてしまうのではないかと想像します。つまらないとか、加速力(感)が無いとか、シートが固いとか、足元が狭いとか...
いろいろ書きましたが、仕事帰りの疲れた身体には負担が少なく、安全に走れる印象です。低回転からトルクがあることも、軽量なのに安定した車体も、実はすごいことです。どちらかというと、このすごさを体感できるベテラン向けだと言えましょう。
用途も、ライダーもある程度限定されることから、評価を☆3つとしました。
市街地
おすすめ度 <☆☆☆☆ >
[余裕はないがストレスは少ない]
市街地における通勤や買い物用途がこのDIO110の真骨頂。低回転域でつながる遠心クラッチは、発進時のショックが穏やかなばかりか、前走車がゆったり発進する場合や、流れの悪い混雑時に助かります。また、低中回転域でしっかりトルクを発生するエンジンのおかげで、おおむね60km/h以下の、あらゆるシチュエーションに合わせやすく、しかもフラつきにくい14インチホイールの効果と相まって疲れにくい。このあたりはスズキSWISHよりも優れていると感じます。
ただし早朝深夜にありがちな、日中とは異なるハイペース走行になると少々厳しい。60〜65km/hを超えるとはっきり加速力が鈍り、前走車にペースを合わせることが難しくなります。それに幅がスリムなせいか、後続車に煽られたり、信号待ちで極端に車間を詰めてこられたりします。SWISHはこういうことは少ないのですが...
ほかに、ドライ路面では制動力に不安を感じなくても、特に冬の雨天時は制動距離がやや伸びる傾向です。ウエット路面で制動距離が伸びるのは当たり前とはいえ、タイヤが細いせいか思ったよりも長く感じるのは、数少ない小さな弱点かと思います。
クルージング
おすすめ度 <☆☆ >
[ツーリングには向いてない]
短距離の通勤や買い物に向いている反面、中〜長距離ツーリングにはあまり向いていません。移動の道具と割り切ればツーリングに行けますし、荷物の積載などいくらでも工夫できますけれど、最大の特徴がファントゥドライブの要素がゼロに近く、淡々と移動するだけになりがちなことです。カーブでも安定して走れ、疲れにくいのは助かるとはいえ、なんだか「走った」という満足感が非常に薄く感じます。
超ロングストロークエンジンは上り坂にさしかかっても急に失速することがなく、だけど油断してすると徐々に失速します。また、排気量的にしかたないことですが、追い風だとラクに走れる反面、向かい風がキツイと60km/h巡航もやや辛い。
ほかに、薄いシートは、私の場合さほど気になりませんが、舗装が悪い部分でのガツガツとした衝撃は地味に身体に響きます。
あれこれ書きましたが、期待値レベルを上げるから評価が下がることになるわけで、期待値レベルを下げれば評価が上がり、意外によく走り快適です。70km/h以上で流れるような幹線道路やバイパスを避け、さらに服装は夏でも薄いボトムスではなくバイク用ジーンズを着用するなど準備を怠らなければ、また、走りではなく風景や買い物など別の要素に集中すれば、ツーリングにも十分行けます。
ワインディング
おすすめ度 <☆☆ >
[スポーツ性は薄い]
DIO110で好んで峠を走るライダーはほとんどいないでしょう。性能が悪いわけではありません。走ってみれば、前後タイヤのグリップ感こそ薄めなものの、14インチホイールの安定性と軽量な車体の効果、低回転域からトルクのあるエンジンのおかげで60km/hあたりまでならそつなく、意外にいいペースで走れてしまいます。
14インチホイールは油断するとアンダー傾向になりますが、後輪荷重を意識するように、足と尻で車体をバンクさせるイメージで走ると良い傾向です。
それでもスポーツ走行にはまったく向いておらず、カーブ手前で十分に減速、ブレーキレバーをリリースしてから後輪に加重し旋回するイメージになります。カーブ終了後の直線区間の加速もどこか牧歌的... ワインディングが目的ではなくて、移動途中にワインディングがあってもそれなりに走れる、といった印象です。ここでも期待値レベルが高ければがっかりし、期待値レバルが低ければ満足することでしょう。
流れの速い郊外路やバイパス
おすすめ度 <おすすめしません>
[避けたほうが無難]
60km/h前後で流れているならストレス少ないですが、70以上の流れに乗るのはキビシイ印象です。70-80でも走れないことなないですけれど、前走車がスルスルと60から70へ加速した場合、大きく遅れることになり、ストレスが溜まります。また、急な登坂区間では60km/h以上を維持するのが難しくなるケースもあり、場合によっては後続車の迷惑になってしまいます。常時ハイペースで流れるバイパスなどは初めから避けるのが賢明でしょう。
取り回し・ユーティリティ
おすすめ度 <☆☆ >
[価格なりと言えるでしょう]
96kgの軽い車重の恩恵で、押し歩きや取り回しは非常にラク。SWISHよりも一層軽く感じます。乗車の際、足元は狭いものの膝回りに窮屈感はありません。私の場合、ハンドル位置が低く、やや前傾姿勢になりがちですが、価格的に文句は言えません。
シート下の収納スペースは、渋滞はもちろん混雑した道を走るケースでは熱くなる傾向があります。特に夏期は買い物帰りなど食品を入れておくのは避けたほうがよいでしょう。買い物に使う場合、背中にリュックを背負うか、あるいはリアボックスを設置するか、ユーティリティ面ではマイナスです。
気になる部分など
細かい部分では左側のスイッチ ホーンとウインカーが他社と逆。しばらく乗れば慣れます。ですが市街地でもかなり暗い道を走行する際、ヘッドライト上向き/下向き切り替え操作を頻繁に、さらにウインカーと操作するため親指を行き来する際にホーンボタンを触ってしまうことがあって気になります。
それとメーター自体は見やすいのですが、真っ暗な中走行するときに難点があって、ヘッドライト上向きのインジケーターランプが明るすぎで目に刺さり、メーターを直視しづらくなります。時計があるとよかったですが、無ければ無いで慣れます。手軽な手段として時計を貼り付けても、暗がりでは見えませんし。
微妙な特性として、低回転で遠心クラッチがつながり、アクセルを開け始めてすぐ加速する半面、停止寸前までクラッチがつながっていて、低速ではエンジンブレーキが相対的に強めに感じます。慣れの問題とはいえノロノロ走行時など気になるときは気になります。
なお、新車で購入してから走行距離 500kmくらいまではエンジン回転がやや重く、サスが馴染んでいなくてガツガツ衝撃が来ました。ブレーキの制動距離もド新車は いくぶん長めなので無理は禁物です。エンジンに本格的にアタリがついてきたと感じたのは走行距離 1,200km前後から、リアサスが馴染んできたのは2,000km前後からです。
このDIO110は短距離な通勤や買い物用途に特化してあると言ってよく、潔さすら感じるほど。その割り切りが、通勤や買い物には抜群のコストパフォーマンスを発揮している印象です。プラスアルファの用途は切り捨てられています。
他の用途を考えるなら、ホンダは原付二種クラスに多くの選択肢を用意しています。
バイパスも走るのなら、ユーティリティを重視するなら、リード125。
スポーツ走行なら、グロム。CB125Rは本格的ながら高価。
レジャーやツーリングなら、モンキー125や、ダックス125、クロスカブ110。
タフさなら、スーパーカブ。
万能さなら、PCX。
逆にこれだけの選択肢を用意しているからこそ、DIO110のようなリーズナブルで実用一点張りの車種をラインナップに加えることができるのですね。他メーカーにはできないであろう、すごいことだと思います。