VERSYS-X250(2017年型)ノーマル車インプレッション
2018年7月現在、ZZR250と250TRの複数台所有状態が続いています。21年以上経った、あまりに旧いZZR250を手放し1台にしてくれ、と妻から言われていることもあって、2台の性格を足して2で割った面も感じられるVERSYS-X250が多少気になっておりました。以前バイクショップで数km試乗したものの、たいしたことはわからず、今回レンタル車両を数時間、街乗りにワインディングに高速道路にと連れ出しすことに。高速+信号の少ない一般道を合計約90km走り、燃費は27.1km/Lでした。オドメーター表示が900km前後、アタリがついてきたというよりもまだ新車に近い車両ですけど、かなり調子よく走った場面も多く、満タン法なので参考としてお考えください。
本当は自分で所有し、長期間つき合ってみないことにはVERSYS-X250本来の魅力がわからないと感じています。 たった4時間弱の走行でこんなインプレを書くこと自体、少々ナンセンスでしょうけど、興味のある方々の参考になればと思います。
総合
おすすめ度 <☆☆☆ >
[がっしりした車体がもたらす格上の安定感]
旧型Ninja250の高かった安定感をさらに増し、ラクで快適な移動ツールに。カタログ値以上に大きく重く感じる車体に対して明らかにアンダーパワーな傾向ですけれど中速トルクを盛ってネガを感じにくくしてあります。ただし旧型Ninja250の優等生ぶりに比べ、面白味がますます薄れ、さらに道具に徹している印象を受けます。
アドベンチャータイプのオートバイはそうした味付けが求められるのかもしれません。たくさんの荷物を積んだり、長距離を走って疲れたり、悪天候に翻弄されたり。そんなときに刺激は要らないですから。
人によって評価は分かれると思います。アンダーパワー過ぎてちっとも走らない、☆2つだと感じる人。反面250ccらしからぬ車格と安定感に安心してゆったり遠出できて疲れにくい、☆4つだと感じる人。どちらも正解であって、愛車に何を求めるのか、どう使おうとしているかでハッキリ分かれるタイプのオートバイだと思います。
クルージング
おすすめ度 <☆☆☆☆ >
[安定感たっぷりでどこまでも走れそう]
旧型Ninja250譲りのエンジンは低速域で粘りはあるもののトルクが薄い印象で、2,000rpm+αでクラッチをつないでもちゃんと発進加速できるとはいえ、すぐに吹け切ってしまうような感触。250ccならそんなものかもしれませんけれど、ゼロ発進はスピードが乗るまでちょっとせわしなくて、車体の重さを如実に感じる場面です。
もっとも少々残念なのはこれだけ。発進加速を終えて巡行状態に入ってしまえば、250ccにしては非常に快適な場面に移ります。5,000rpm前後以上の中速域はまずまずトルクがあり、加減速がラクだし程よく静か。欲を言えばもうちょっと2気筒らしいパルスが欲しい気もしますけれど、メカノイズや振動を抑えた代償だと思えばこれでいい。
ヒュンヒュン回るエンジン音がどこかアンマッチながら、車体ががっしりとしていて不安な要素は皆無ですし、田舎道をのんびり〜ちょっぴり早めのペースで流すのが合っています。
上体のポジションはほぼ直立に近く視界が広いのもツーリング向きでも250TRのほうがもっと視界が広い気がするのは、VERSYS-X250のスクリーンが大型なせいか、それともしっかり防風されているせいか、いずれにせよスーパースポーツルックな車両に比べ、格段に視界が広いことに変わりありません。
下半身は、膝の曲がりが緩く脚がラクなのはもちろん、広いシートの後方に座るとさらに幅が広くてラクなだけでなく、シート後方にタンデマー用座面との段差があって、腰の位置がバッチリ落ち着きます。こうすると上体はごく軽い前傾姿勢となり、腰の負担も少なめでこれ以上ラクな姿勢はないかもしれないと感じるくらい。長時間走っても250ccクラスとしてはあり得ないほど身体的疲労が少ないと思います。
反面、刺激は全くと言っていいほどありません。バイクそのものに刺激を求めても無駄なキャラクター。そんなことよりも道具として割り切って、景色とかご当地グルメとか、土地の名物とか、いろんなことに目を向けましょうよ。
高速道路
おすすめ度 <☆☆☆ >
[実に快適、だからこそ少し惜しい]
一般道から高速道路に移っても、フロント19インチのスペック以上に直進性が良いだけでなく、評判に違わず防風性能が良好で、快適な移動ツールであることに変わりありません。100km/h前後で巡行するには何の不満も無く、9,000〜10,000rpmまでのアクセルレスポンスもまずまずです。しかし、そこから上があまり伸びません。旧型Ninja250のピークパワー31psに対し、VERSYS-X250は33psというカタログスペックながら、前方投影面積の大きさにパワーが食われてしまうのか、中速域を厚くした代償なのか、高回転域が今ひとつ。
レンタルしたときの条件が悪かったのでしょうが、向かい風+緩い登坂になると+20を維持するのが限界。6速から5速へ落とし、ブン回そうとフルスロットルをあてるも10,000rpmの上が伸びません。その状態に疲れ、少しでもアクセルオフするとみるみる失速していき、結局100km/h前後に落ち着きます。ローギアードに感じるギア比を、スプロケット交換などでハイギアードにすると、最高速度はもっと落ちる可能性があります。とあるバイクショップで、オーナーの方から+50はいきますよ、と言われたこともあったので個人的にはちょっとガッカリしました。
旧型Ninja250も余裕は少なかった覚えがありますが、さらに余裕が削られた感触。ただし今回のレンタル車両が新車に近い状態だったし、詰まり気味のマフラーを交換すればもう少しマシになると思います。
もっとも、刺激を求めないキャラクターですし、ガンガン走るよりもゆったりと巡行するほうが合っているようです。そうなってくると動力性能的には実質250TRよりも少し走る程度、短い区間であれば250TRと劇的な差は無いような気がしてきます。ライバルであり、カタログスペックでは劣るSUZUKIのVストローム250とも、おそらく大きな差は無いでしょう。
250ccらしからぬ安心感のある車体に対し、アンダーパワーを感じるのは高速道路が最も顕著かと思います。高回転型DOHC2気筒から連想する過剰な期待は的外れかもしれませんが、それでもやっぱり少し惜しいと感じてしまいます。
ワインディング
おすすめ度 <☆☆☆☆ >
[思ったよりもよく走るけれど刺激はない]
直進性が良い反面、曲がりにくいイメージを持つかもしれませんが、全く違って、フロント19インチにしてはよく曲がります。ハンドルをこじらずに車体を倒せば、ピタッと舵角がついてスムーズに曲がっていきます。リーンアウトとかリーンインとか、あまり難しく構えなくとも大型車のように、車体に体を預けるかのように、ほぼアクセルコントロールだけで済むところが250ccの枠を超えています。それだけでなく、ややオーバースピードで突っ込んでも、旋回中にリアブレーキで容易にコントロールできるところも助かります。スパスパ向きを変えるキャラクターではないですけれど、概ね意図した向きに進んでいく印象で、若干チグハグな部分もあった旧型Ninja250よりも素直に感じる気がします。それでもS字カーブでヒラヒラ切り返すわけにはいかず、よいしょっとややオーバーアクション気味に操作する必要があります。
エンジンは6,000〜9,000rpmの中速トルクがそれなりにあって、重量級な車体らしくわずかなタイムラグを伴いながらもレスポンスよく加速していき、あまり鈍重さを感じさせません。逆にこの中速トルクがワインディングを快適に走るキモでしょう。
がっちりとした車体はワインディングでも大きな安心感があって、少々荒れた路面に前後のサスが少々バタバタしようが、びくともしません。やや固めながらサスはほどよく動き、暴れるような挙動に陥るシーンは本当に珍しいくらいですけれど。ブレーキも車体の重さに見合った性能があり、不安を感じることはありません。
街乗り
おすすめ度 <☆ >
[軽快さは薄い、ゆったり走ろう]
大柄な車体のわりに取り回しは悪くなく、押し歩きも非現実的というわけではありません。比較的気軽に走り出せるほうだと思います。ただし車体が完全にオーバースペックなだけに、ストレスは少ないものの、やはり発進加速は得意ではありません。不足は無いとはいえ、あまり余裕も無く、ボヤっとスタートすると周囲のスクーターや四輪車に遅れます。個人的にはフルサイズの空冷125ccを連想する動力性能です。
一方、フットワークは400ccクラスを超えていて、すり抜けも苦手です。よほどのことがない限りやめておきましょう。幅広のハンドルには長大なバーエンドが装着され、バックミラーはさらに外側へと張り出しています。それだけでなく、路肩の足元が良くないところで停車すると思ったように車体を支えられないこともあるでしょうから。
厳しい見方をするとあまり街乗りには向いておらず、それほど気負わずに使える、といったレベルになるかと思います。なお、菱形のような異形ミラーは少々見づらくなかなか慣れませんでした。
ZZR250から乗り換えるのはどうか?
オンロードバイクとオフロードの特性が高いレベルでバランスされ、長距離ツーリングにはもってこい、さらに街乗りにも使えるキャラクター。とはいえ、足して2で割ったようだということは、2面性の魅力を併せ持ちつつ、それぞれ半減なようでもあります。
格上の安定感も、疲れにくい乗車姿勢も大いに魅力的なのですが、その代償かライダー自身が積極的に操作してバランスをとる場面がほとんどなく、乗り味に刺激は乏しい。走ってナンボ、いえ、距離を伸ばして納得するタイプですね。バイクそのものに面白さを求めるよりも、もっと外の世界に興味を向けたほうがいいのでしょう。
そんな「道具感」の強いVERSYS-X250に乗り換えたいかと言われると私にとってはビミョーです。もし新型Ninja250のエンジンが載るのだったら楽しいかもしれないし、高速道路ももう少しラクになる可能性がありますが、低中速トルクが薄れて街乗りはストレスが増したりして。
じゃあ排気量? 旧型Ninja250が400ccクラスの車体に250ccエンジンを組み合わせたような印象を受けたのと比べると、VERSYS-X250は600ccクラスの車体に250ccエンジンを組み合わせた印象すら受けてしまいました。
排気量が上がると加速・巡行時のエンジン回転数が下がり、せわしない印象は減るでしょうし、あまり余裕がなかった高速道路もラクに走れることでしょう。個人的な感触ではVERSYS-X250の車体は300cc程度がミニマムな気もします。
だけど面白くはないかもしれません。面白さを求めると、モアパワーな方向に向かいそうです。人間はわがままですね。偏屈な私だけか...
ちなみにレンタルしたVERSYS-X250をお店で返却した後、250TRに乗り換えて発進したとき、VERSYS-X250の感触のままアクセルを回したせいか不必要にダッシュして少し慌ててしまいました。
グダグダ言ってないで、さっさと乗り換えればいいのかもしれません。総合的な完成度が高すぎるわけでもなく、それなりに個性があって飽きないでしょうし、私に向いている部分も多いと思います。
でも今回のレンタル車両での走行、なぜだかわからないですけどどっと疲れました。身体的には疲れていないのに疲労感が大きくて... 聴感神経か? ヒュンヒュン唸るエンジンと体感速度がずれるから? あれこれ考えすぎなのかもしれません。