「新英語教育」199年9月号に掲載したものです。

英語2の授業をインターアクティブに
--杉原千畝の物語を通して--


はじめに
 英語の授業の中で、お互いに学び合うcooperative-learning (協同学習)が提唱されて久しい。具体的にどんな活動が可能かを、高校2年の英語授業を例に、まとめてみたい。使用教科書は、LIGHTHOUSE ENGLISH 2(研究社)。ここでは、Lesson 4: The Story of Chiune Sugihara を題材に話を進めることにする。

1 ALTに補助教材作りの協力を
 教科書のレッスンは、杉原千畝氏がリトアニア領事時代にユダヤ人にビザを発行して、6,000人の命を救ったというお話。この物語を実際の授業で展開するために、ワークシートを前もって用意した。
 たまたま、私の学校に来ているALT のヘザーさんは、このストーリーを以前扱ったことがあり内容を知っていた。そこで彼女に導入用のダイアログ、各セクションの内容理解をチェックする英問英答を作って貰うように依頼した。授業のTeam-Teaching だけでなく、教材作成 にネィティヴの協力を求めることが、教師とALTの関係を密にし、授業を協力的に進める出発点にもなる。

2 英文ダイアログを使った導入
 こんなダイアログをALTに作って貰った。
A: Chiune Sugihara was the Japanese Consul to Lithuania during World War Two, but what did he do to become so famous?
B: He was a man who risked his family, himself, and his job to help Jewish people escape concentration camps.
A: I know during World War Two many Jewish people were being sent to concentration camps and many were killed there. What happened?
B: Well, very early one morning, he heard the voices of many people outside the consulate. He looked out the window and saw hundreds of people waiting outside the gates!
(後半省略)
 英文の内容は、センスグループ毎の英日通訳方式(後で説明)で取ってゆく。難しそうな単語表現もプリントにまとめておく。意味が分かったところでダイアログの練習を2人でおこなう。
 センスグループ毎になるべく記憶して、相手の顔を見て話しかけるように指示を出す。ただ読むのではなく、インターアクションをするのが目標。必ずしも全員が出来るわけではないが、それを絶えず目指し、やろうとする生徒が増えることを年間通じて指導したい。


 英問英答のプリントを次に配布する。2問だけ、例を載せる。
Question 1: Who was Chiune Sugihara?
Chiune Sugihara was the Japanese Consul to Lithuania.
Question 2: When did he live in Lithuania?
He lived in Lithuania during World War Two.


 ペアーでこの英問英答をやった後、グループで競争をさせる。やり方はChain Practice 方式を利用する。具体的には、次のように行う。
 この導入ダイアログには8つの英問英答があるのだが、それを各列を1グループにして、最初の生徒がQuestion 1 を2番目の生徒に尋ね、2番目の生徒が答える。次にQuestion 2 を2番目の生徒が3番目の生徒に尋ねる。このように順番に答え、質問するというようにして、どのグループ(列)が速く8問を終えるかを競うわけだ。リレー感覚で、グループが協力し、クラスが盛り上がる場面だ。

3 本文の学習をペアの同時通訳方式で
 各セクションの導入は、ディクテーション用のプリントを用意してある。
One day ( ) August, 1968, a foreigner called ( ) a trading firm in Tokyo.
"I'd like ( ) see Mr. Sugihara," the visitor said.
"I'm Sugihara," replied a silver-haired man.
"( ) earnest the stranger asked,"Do you know ( ) I am!"
"Sorry, ( ) I don't remember...," replied the old man.
"My name is Nishri."
"Then, you're Israeli?"
"That's right, ( ) I know you very well. Never a day goes ( ) that I don't think of you."
 (以下省略)


 ディクテーションで穴埋めさせるのは、内容語をなるべく避けて、前置詞などの機能語にしている。ディクテーションを通して、大まかなストーリーの流れを掴ませるのが目的だから。語彙学習のために、英英辞典から定義を取り出して、セクション毎5つの単語を当てさせる問題をプリントに付けておく。
 たとえば、先ほどの部分では、firm にアンダーラインを引いておき、a business or company especially a small one という定義と結びつけるようにする。日本語訳だけでなく英英辞典の説明を読むことにより、言葉の理解を深めることが出来る。これも年間を通して指導したい。


 さて、本文の学習だ。私は、訳読作業を逆にしている。つまり、教師が英文を読んで生徒が日本語に訳すのではなく、センスグループごとに教師が日本語を言い、生徒が英文を読む、という「同時通訳方式」を採用している。その実際を再現すると、


教師:8月のある日
生徒: One day in August,
教師: 1968年の
生徒:nineteen sixty-eight
教師:一人の外国人が貿易会社を訪れました
生徒: a foreigner called at a trading firm
教師:東京にある
生徒: in Tokyo.


 このように1文をchunkに分け、生徒にそのchunkを意識して英文を読むという風にして、English-Japanese Interpretationをおこなう。生徒は、英文を読みながらノートの本文にchunkの切れ目のスラッシュを入れてゆく。次のchorus reading の時に、そのスラッシュの位置を確認する。
 次のアクティビティは、スラッシュ毎に英文を覚えて、それをパートナーに話しかけるペア・ワークだ。各セクションを半分に分け、途中で読むのを交代する。どちらが先かは、ジャンケンで決める。生徒は全員起立して、終わったペアから座る。
 教師はその間に重要な文やフレーズを板書しておく。そして、全員がPair-Reading の練習が終わったところで、板書の英文を日本語でなんというか確認のために書かせる。
 生徒の書いた日本語を元に、英語をchorus reading して定着を図る。この際、黒板消しで英文を1回目読みながら消し、2回目は英文が消えた状態で生徒にリピートさせる。
 仕上げとして、また、ペアーワークをする。ジャンケンをして勝った生徒がスラッシュごと英文を読み、負けた生徒が日本語通訳をする。これもセクションの途中で交代をする。ともあれ、授業の力点は、日本語をヒントに英文が記憶の中に残るように様々な活動を作り出すことだ。

4 英問英答はCrossfire or Treasure Hunt?
 セクション毎の英問英答は、色々なアクティビティが考えられる。今まで試みて楽しかった方法は、ふたつある。
 一つは、Crossfire。これは、ALTのヘザーさんに教えて貰った方法。全員が起立した状態で、英問を出す。答えが分かった生徒は、挙手する。教師が指名し、答えられたらその生徒だけでなく、前後左右も着席できるというものだ。生徒数が少なければ、左右だけにしても良い。生徒は早く座りたいから、必死になって答えようとする。しかも、周囲も座れるとなると、協力しようという意欲が湧く。一石二鳥だ。
 もう一つは、YMCA のインストラクターが教えてくれた宝探し(treasure hunt)の方法だ。教室をいくつかのグループに分け、一人をリーダーに選ぶ。教師は英問の答えを教室の廊下に張り出しておく。生徒は、各グループで代表を決め、廊下へ行ってその答えの張ってある場所を探し、覚えて来てみんなに伝える。それを聞いて班の全員は、プリントに記入する。早くできたグループは、教師の所へ持ってゆき、順番を競う。黒板に答えを早く書いたグループが勝ち、ということでも良い。


 セクション1では、こんな問題をALTが用意してくれた。
Question 1:
Who did the foreigner want to see at the trading firm?
(Answer: He wanted to see Mr. Sugihara.)
Question 2:
Where was the stranger from?
(Answer: He was from Israel.)
 全部で8問が用意されていた。難しければ、英問に日本語で答えるのでも良いだろう。生徒の実態に合わせて工夫がすればよい。

5 Action Researchで理論と実践の積み重ねを
 いつでも問題になるのは、theory とpractice をどう結合するかだ。実践を積み重ね、そこから理論を導き出し、共有財産にしてゆくプロセスが肝要だ。そのために有効なのが、Action Research という手法だ。
 これは、実践上の問題点を明らかにして、その解決のための仮説を立て、実験をしてその結果を分析する、という手法だ。次のような6段階がある。


1. Problem Identification
A teacher identifies a problem in her classroom. 'My students aren't using target language.' (German)
2. Preliminary Investigation
What's going on? Recording and observing class over several days.
3. Hypothesis
Teacher uses too much English. The important stuff is done in English.
4. Plan intervention
Teacher increases target language use.
5. Outcome
Dramatic increase in use of German by students.
6. Reporting
Article in teacher's newsletter.
Nunan, D. 1993. Action research in language education. In Edge, J. and K. Richards(eds.) Teachers Develop Teachers Research. Heinemann.


 このアクションリサーチは、教室が出発点になっている。実際の授業を行いながら問題点をどう克服してゆくか、それを仮説実験しながら、理論化して共有化してゆくというプロセスが、重視されている。
 今まで新英研のサークルで報告されてきたこと、雑誌で発表されたこと、それらを21世紀に向けて理論体系化する時に、この手法が使えるのではないだろうか。
 レポートや、実践報告の書き方も、このアクションリサーチに沿って書くと、共同研究、集団検証がし易くなると思う。

さいごに--プロセスが学習そのもの
 集団作りが先か、学習内容が先か、よく議論される所だ。グローバル教育に見られるように、プロセスそのものが学習であり、教室という集団の中でお互いがインターアクトすることが英語学習そのものだと思う。
 英語という言葉を通して学習者が理解し合い、また、教室から広がって世界の文化を知り、人々と手をつなぐきっかけになれば、外国語学習の目的は達成されれるのではないだろうか。21世紀に向けて「地球人」という意識を育んでゆきたいものだ。




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