高校英語の創造的な扱い方No.5
ドングリから大きなオークの木が育つ
Team-Teachingを成功させるレシピー


「新英語教育」2000年8月号掲載

ALTに関わって
 現任校はAssistant Language Teacher (ALT)の拠点校になっている。その担当者として関わって3年目になる。現在はALTとしてアイルランド出身の女性Lynsey Roche さんが、赴任している。拠点校へは週3日来校、他2校へ週1日ずつ訪問している。
 担当者としては、制度の改善を求めたいことが色々ある。ALTの住むアパートの賃貸契約、それに付随する経費など、何とかならないものかと思う。それはともかく、本稿では、ALTをより有効活用するためのレシピー法を紹介したい。同じような悩みを抱えている先生方の参考になれば幸いである。ALTとの1年間の流れに沿って記したい。

1. A slice of welcome
 6月末には新しく赴任するALTが決まる。早速、歓迎のメールを出したい。在任のALTと一緒に直接電話もかけると喜ばれるのでは。私の場合、2回とも相手が真夜中に電話を掛け、しかも彼女たちがまだ私たちの学校に赴任することを知らなくて、ビックリ!という一幕もあった。
 emailのアドレスがあれば、2,3度は連絡を取りたい。アパートの件などは、在任のALTと連絡を取りスムーズに移行できるようにしたい。また、新ALTに対して、生徒にも歓迎のメッセージや町のダウンタウン情報を模造紙に書かせ、それをアパートに貼れるように準備しておくと良い。

A spoonful of preparation
 初めて受け入れる場合など、一番大変なのはアパートを見つけ、住めるように前もって家財道具を用意することだ。台所用品、日常の生活用品など、必要なものをリストし、教職員に配り寄付を呼びかけたい。
 英語科だけでなく、事務、用務員の方々にも協力を依頼したい。引っ越しの手伝いに体育科の先生や養護の先生に大変お世話になった。日頃からヒューマンネットワークを作っておくのも、担当者として必要なことだ。

Two cups of staff support
 ALTが来日して、すぐ生活が始まる。銀行での口座開設。市役所での外国人登録。電気、ガス、水道、電話の手続き。学校で職員への紹介。訪問校への挨拶。果ては、スーパーでの買い物に付き添ったりと、いっぱいすべきことがある。
 これも少しずつ英語科の同僚に協力を依頼しておく。普段から人間関係を良くしておくことが肝心だ。アパートの支払いなどは最初、費用がかさむ。事務との交渉も必要になってくる。

Three glasses of preparation
 さて、2学期が始まる前に、準備したいことがある。team-teachingに備えて自己紹介、出身国(町)紹介を中心にした授業プリントだ。これがあれば1ヶ月は何とかもつ。
 夏休み中に地方の歴史に触れる機会も持ちたい。希望者を募って出掛けても良い。同僚に余り期待できない場合などは、卒業生とか、留学から帰ってきた生徒などに頼むと、気軽に引き受けてくれたりする。料理の得意な人に頼んで、アパートで歓迎パーティを兼ねて食事会も行いたい。

パソコン・ファックスは必需品
 教案などをやりとりするのには、ファックスが便利だ。また、教材を作ったりするのに、パソコンも自宅と学校で使えるものが欲しい。ワープロ機能とインターネット接続が可能なものなら中古品でOKだ。
 

Team-Teaching Tips
 さて、肝心なティーム・ティーチングについて。まず、学校の年間計画に合わせて、ALTの訪問計画を立てておく。他校への訪問予定日は、1ヶ月前まで。2週間前までにはどの授業でteam-teaching をやるかの計画。それをもとに1週間前までには、授業をするJapanese Teacher of English (JTE) とおおまかな授業案を相談出来るようにしておきたい。
 時間の余裕があれば、それだけ協同で授業プリントを作成できる。価値あるteam-teaching成功の鍵は、どれだけ打ち合わせるかにかかっている。だんだん慣れてくれば、時間を節約できるが、特にはじめの頃は時間を取りたい。

オーラルのteam-teaching
 現在1年生のOral Communication Bの授業に多くteam-teaching を組んでいる。そこで前もってteam-teachingするレッスンを選んで、ALTにレッスンプランを依頼しておく。それをrecycling 出来るようにするとALTとJTEsの負担も減る。一石二鳥 (killing two birds with one stone) だ。
 かつてのALTとして活躍してくれたマイケルが、こう新しいALTにメッセージを残している。"Utilize a communicative approach in teaching the lesson. Make your lessons student-centered, not teacher-centerd. Make your lessons task-based."

Newsletter の発行
 英語科全員がteam-teachingに参加するわけでもない。ALTの訪問する3校をつなぐためにも、Team-Teaching Newsletter を毎月発行している。ALTの体験、授業のアイデアなどを掲載している。
 生徒会などの新聞があれば、それに毎回コーナーを設けて寄稿して貰っても良い。全校生徒向けのバイリンガル・ニュースレターなども面白いかも知れない。教科書では味わえない生きた教材になる。

タスクは生徒の英語学習を助く
 週に1回、国際コース1年の英語Iでteam-teachingをしている。前もって教科書のレッスンから私とALTのダイアログ、本文内容の英問英答をパソコンで作り、フロッピーをもらう。その日に当たればどこであろうとteam-teachingができる。
 生徒にはいつも4人ずつで11のグループを作ってteam-teachingの授業をする習慣を付けてある。そしてなるべくstudent-centered, task-based な授業展開になるように工夫する。
 簡単に出来るのは、英問英答のプリントなどを廊下に貼り、グループのひとりが順番に見てきて、グループメンバーに口頭で伝えて、答えを書かせるアクティビティだ。こうすれば、listening, writing, speaking, reading のすべての要素が盛り込まれる。ALTとJTEは巡回して、出来具合をチェックしたり、励ましたりする時間を多くとれる。インターアクションの中で言葉を獲得するのが、一番有効だ。

テスト期間中にワークショップを開催
 ALTは、テスト中比較的暇だ。訪問の必要もないという事もある。こんな機会がチャンス。ぜひ、英語科でワークショップを持ちたい。アイルランドの歴史、文化、伝説などをALTに語ってもらった。知的興味を刺激すること請け合いだ。

Team-Teaching Tips 集の編集と発行
 ALTが帰国前には、1年間(または2,3年間)の活動を小冊子にまとめたい。開発した教材、授業のアイデア・工夫などを項目別にまとめて、パソコンでプリントアウトし、それを印刷所でオフセット印刷してもらう。学校の予算に入れておけば、数万円で出来る。
 3年間我が校でALTを勤めたMichael Galli氏が "28 Ways an AET Can Contribute to Team-Taught Lesson"を編集した。幸い好評で、愛知県下のALTのteam-teachingテキストとして利用されている。ひとつの教材を28通りに料理して教材化するという例を示してある。その手法を真似すれば、どんな教材にも応用できるところがポイントだ。
 次ぎに1年間ALTを勤めたのは、カナダ人女性のHeather Anderson さん。その成果を "Team-Teaching Ideas"という小冊子にまとめてくれた。彼女は芸術大学出身で、教材をいつもイラスト化してくれた。「サウンド・オブ・ミュージック」の教材も絵にして、生徒たちがその絵にセリフを付けるといったワークシートが掲載されている。オーラルのインタビューテストの手法も紹介されている。

Farewell Party
 任期が終わり帰国する前には、お別れ会を企画したい。会費500円、会議室でジュースとクッキーを用意し、心のこもった会にしたい。英語科だけでなく、色々関わった人に参加してもらい、一言ずつ話して貰うと良い。

ALTが生きた教材、team-teachingが異文化理解そのもの
 もちろん失敗もある。来日早々の新ALT数名を観光案内した。お昼に食堂で和風定食を取った。出てきたのは、鮎の煮物と鮎の塩焼き。当然「お頭」付きだった。ALTの一人は、気分が悪くなり吐いてしまった。国や地域にもよるだろうが、魚のお頭はグロテスクな印象を与えるようだ。今となっては、笑い話だ。
 英語のことわざに、 From little acorns great oaks grow.(小さなドングリから大きなオークの木が育つ)というのがある。制度や待遇面では色々な問題をはらんでいるが、実際にその国の言葉を話し、文化を直接伝える「生きた教材」を教室に、学校にいるのは貴重なリソース・パーソンになる。一人一人に努力はドングリのようにささやかかもしれないが、それが積み重なり大きなオークの木に成長することを願いたい。
 アドラー心理学では、「勇気づけ」「励まし」が子供の発達・成長には不可欠だという。ALT とJTE がともに生徒達の外国語学習を勇気づけ、励ます存在であり続けたい。大きなオークの木になるよう、オークの若者を育てたい。

 実際のteam-teaching授業のレシピーは、今年夏に北海道で開かれる「新英語教育研究会全国大会」の特別分科会で報告します。では、札幌でお会いしましょう。


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