胃の調子が悪かったので
胃カメラでの検診を受けることになった。
朝、指示どおりに前日の21時からは何も食べないで、病院に行った。
胃カメラ検査を行う人が、既に2人来ていた。
以前、一度検査を受けたが、どんな手順だったのか 今はもう忘れている。
先生が、ワシの名前を呼んだ。
診察室に入ると紙コップに入った液体を右手に持つように言われた。
素早く、右手に持ったら、先生は言った。
「ハイ、左手は腰に当てて、いっきに飲み干しましょう!」
ワシは、左手を腰に当てて いっきに飲んだ。
おんや〜 この飲み方は、どこかで見たような・・聞いたような・・・。
思い出そうとしていると、隣の部屋に行くように指示された。
隣の部屋に入るとベットに仰向けに寝てください。と看護婦さんの声。
どっこいしょ。
仰向けになったら、先生が言った。
「ハイ、さきほどの液体で胃を洗いましょう。右周りで7回、ぐるぐる回ってください。」
「1回、2回、早く早く、もっと早くハイ3回・・」
ワシはマッハで回ったつもりなのに先生はもっと早くと言っている。
何で右回りなんじゃ?
ワシは左回りの方が早いぞ。
右回りにすると なんかメリットがあるのかのー。
そのうち 上半身が先にいって、足のほうがついていかない。
「ハイ、7回!」
先生はどこを基準に7回と言ったのか・・。
止まったら、顔は天上を見ていたが、足はかかとの方が天上を向いていた。
過酷な運動を終了して ホッとした矢先、
先生に口を大きく開けるよう言われた。
ぐぐぐっと迫ってくるスプーンに柔らかいゼリー状の物が・・。
昨日から何も食べていないので、ワシの目がキラリと光った。
そして パクッ。
2秒後に目をキラリとさせた事を後悔した。
口の中の物は とてもまずかった!
飲み込んではいけないものらしい。
喉と舌をしびれさせるものなんじゃと。。。
その、まずいものは ワシの口の中に10分も居座っていた。
飲み込んではいけないものを 何も言わずに受け入れてくれた
小さな流し台に感謝していると
診察室に入るよう言われたので、入った。
他に二人の胃カメラ検査を受ける人もいた。
先生が注射器を持って近づいてきた。
(オイオーイ、ワシは最後に入ってきたんじゃよ。
一番はあの人、あの人)と心の中で叫んだが、
先生には届かなかった。
「これは、胃の動きを鈍くするものです。ちょっと痛いですからね」
(ひぇ〜 ちょっとじゃないよ、いっぱい痛いよ〜。)
こう叫びたかったけど これから受ける二人の前で痛そうな顔は出来ないとグッとこらえた。
注射器を引き抜いた先生は、血止めにする小さな四角い物を
ペッタンと貼った。
ワシは貼られた所は注射の痕でなく
吹き出物をかいて血が出たところだと瞬時に分かった。
(もしも〜し、間違ってますよ〜)と
一応 自分の中で主張しながら、
四角いペタンを正当な位置に貼りなおした。
痛かった注射の部分をもんでいると ワシの名前を呼ばれた。
さて、いよいよだなと思って検査室にそーと入った。
薄暗い部屋がいっそう不気味だ。
よっしゃー、喝を入れてベットに上った。
横を向いて寝るように言われた看護婦さんに、
ミシン糸の芯のような・・・背骨の一関節のような・・ものを
くわえさせてもらった。
真ん中に穴が開いていて そこからチューブを入れるらしい。
味・・・なーんもない。
先生が「ハイ入りますね。楽にして目は開いていてくださいね、モニターを見ていてもいいですよー。
そして、「ハイごっくん」と言われたので、
「ごっくん」と言った。
先生にも聞こえたのか 先生の手がちょっと止まった。
やはり、「ごっくん」と言っただけでは入らないらしい。
先生が、「本当にごっくんと飲み込みましょう」
と穏やかに言ってくれた。
ゲェー と言うのに忙しくしていると、いつの間にやら
胃の中にカメラが入っていた。
先生が「ハイ、楽にして、ゲェゲェー言うのは自然なことですよ。どんどん言っていいですからね。」
どんどんと言われても、気持ち悪いがともなわければ、
リクエストにお答えもいたしましょうが・・・
いやいや、答えたいとか そういう問題じゃなくて・・・
ゲェーすることが 許されようと許されなくても
それは、出るんです。
ワシの希望はただ一つ。
早く「終わり」のお言葉が欲しい〜。
お言葉を心待ちにしていたら、
「ハイ、もう終わりですよ〜」
そっか、終わりかい。よかった。ゲェー。
「ハイ もうすぐですよ〜」
そっか、終わりかい。ゲェー。
「今、チューブを抜きますからね〜」
そっか、ゲェー
「ハイ、今 胃の天上付近を見ていますよ〜」
ゲェー
「ハイ、胃の入り口のところまできましたよ〜」
・・・・・。
「もう、ひと息で終わりますよ〜」
・・・・・。 ・・・・・。
あの〜先生、
終わりですよ〜ってずいぶん前に聞いたのだけど・・・。
いさぎよく、スパッとチューブを引き抜きましょう。
ね、そうしましょうよ。
そして、やっと、ワシの願いが叶った。
看護婦さんが、よく頑張りましたねと褒めてくれた。
褒められると 難関を乗り越えて ちょっと偉くなった気がした。
次は胃を洗う時 左回り7回をしてみようかなと
思いながら検査室を出た。
面白い先生 ありがとさん。又 診ておくれ〜。
胃カメラ体験報告書 終わり