番号 |
短歌 |
作者 |
1 |
駒とめて袖うち払ふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮れ |
藤原定家 |
2 |
ながらえばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき |
藤原清輔 |
3 |
心なき身にもあはれはしられけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ |
西行 |
4 |
ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲 |
佐佐木信綱 |
5 |
秋風やいくさ初まり港なるただの船さえ見て悲しけれ |
与謝野晶子 |
6 |
むらさきの日傘すぼめてあがり来し君をし見れば襟あしの汗 |
川田順 |
7 |
ひとりする行をたのしとおもいつつだいご山路のけわしきをふむ |
吉井勇 |
8 |
大らかに耳遠きこと人に告ぐあるがままなる老い生くるべく |
山田正代 |
9 |
追い回す孫ら帰りて妻の膝に老いたる犬はいびきかき眠る |
将積茂 |
10 |
今年また小さくなりたる父母が卵のように並びて座る |
安川道子 |
11 |
なめくじと同じくらいはまどいたし 行きつもどりつ跡残しつつ |
入江みち |
12 |
のびやかな手脚をさらす孫娘八月の古都ならびて歩む |
湯朝俊道 |
13 |
「別れた」とぽつりと告げし子のための食事は普段通りに作る |
西村愛美 |
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1 |
菜園に借りし荒れ地の開墾に幼子付き来て小さき鍬振う |
服部俊介 |
2 |
雨止みて工事現場を巡回す重たき靴をよいしょと上げて |
服部俊介 |
3 |
妻の髪洗いてやりし浴室のリホーム終に成らず逝かしむ |
服部俊介 |