雲助

雲助とは浮き雲の行くへ定めぬを以て、名付けたるなるべし。この男子等、肩に「しびね」起こ りたると股に「よこね」といふもののあとなきものはあらずといふ。肩における手拭と、ふどしの色 はひとしく、たそがれの色にかよひ、顔とからだの色は赤く、巳の時の色に同じ。髪は獅子の頭に、 手足は松の木に似たり。齢は二十三、四より四十あまりなるものもあり。
かの問屋場の裏に、小 家作れるに多くつどへり、また木賃宿といふに住めるもあり。夏冬おほかた裸体にてあるが多し。さ れど冬いと寒く成りては、彼の言葉に「ぼつこ」といへるを纏へると、損料蒲団といふものいとよく 着たるものあり。飯は「どんぶり」といふものに盛りたるを食ひ、酒は茶碗につぎてのむ。博打に勝 てば小屋にあり、博打に負ければにだち(仕事)に出づ。常に小屋にのみあるを長とし、長持ちをか つぐを上の品とし、駕籠をかつぐを中の品とす。一人持ち物をかつぐを、これが詞にひらびと(平人) かつぎと唱えて、下の品とす。
これが出るのもと、多くは彼の助郷といふものに出づるおのこな ど博打打つ技にふけり、終にこの雲助に落ち入るがありとぞ、また折々はいやしからぬがなり下りた るもあるなり。これが常にいふ事に、先祖より雲助といふものにあらず。雲助の子の雲助もあらずと いへり。げにさることなるべし。或る人いふ、諸侯と雲助の交わり同じ事なりと云ふ。そを如何にと いふに、雲助のそのどち互いに呼ぶに、薩州といひ、加州、因州などよべばなりといふ。をかしきこ となり。

     
参考図書
雲助道中女・・・・・・・・・和田篤憲著・・・日本公論社版
江戸時代の交通文化・樋畑雪湖著・・・臨川書店刊
一揆・雲助・博徒・・・・・田村榮太郎著・三笠書房版