二学期制の導入反対!

教育現場に一層の多忙化と混乱を持ち込む

制度を安易にいじるのではなく、30人学級の導入こそ必要!

今、三河のいくつかの市では、教育の目先を変えるような方法で、「2学期制」が導入されています。その導入の方法も教育長の鶴の一声であったり、よくわからない間の試験的実施であったり、試験校を設定して「成果が生まれる」と実績作りをしての導入であったりと、方法はいくつか試みられていますが、教育現場や父母の関心は今ひとつです。
 それよりも、30人学級や少人数学級の実施をして手厚い授業や教育指導の方が父母・教員の希望です。その30人学級は実施されず、「過大学級」(36人から40人学級)は放置されたまま、この「2学期制」だけが、なぜか「積極的に導入される傾向」にあります。
 2学期制になると、「授業時間が増える」といいますが、「夏休みの間に宿題を提出」「9月1日から平常授業」「1・2年生でも5時間や6時間」など、5日制になってから、子どもらには39人や40人学級のすしづめ教育の上、日課も「放課が5分」「朝から帰りまでぎゅうぎゅう」など息つく暇もありません。
 なぜ、教育行政は20人学級や30人学級を実施しないで、この「2学期制ばかりに熱心」なのでしょう。「2学期制なら金がかからないから(実施は)簡単だ」という声も聞こえるのですが。
 私たちは、今年から「2学期制の試験紘の実践」が始まっている豊橋市教委に申し入れを行いました。

豊橋市長    早川  勝様                         2004年8月17日(火)

豊橋市教育長 地宗一郎様                    三河教職員労働組合

                                        執行委員長  畦地 治

                             

2006年度からの2学期制導入を中止する申し入れ

 豊橋市では、2006年度から2学期制の導入がされようとしています。そして、この導入を見越して試験的な二学期制の取り組みが「研究校」と称していくつかの学校で開始されています。

 

1,そもそも現行の3学期制の何が問題なのか。検討の「出発点」や「問題点」に疑問が。

 「学校五日制と新教育課程」がスタートし「しかしその過程や結果をじっくりみることもなく、すぐにクローズアップされてきた問題」(豊橋市学期制検討委員会委員長 戸田文雄)が2学期制導入だというのです。また、この「2学期制の検討」は、「不登校問題対策検討委員会の15年度中間答申で「提言をいただいた」から検討を始めたというのです。そして、「2学期制と3学期制は功罪相半ばといえます。」(前掲)という認識からスタートしているのです。つまり、2学期制は急に出されてきた、そして、どちらも同じだというのです。そして、「学期制の変更が、間接的には不登校問題対策になり得ても、この問題の解消または解決につながるかについては判然としないと言わざるを得ず」と述べている通りです。(豊橋市学期制検討委員会「平成15年度答申」平成16年2月1日)

しかし、教育現場へは、「とにかく2学期制を」というだけで、現行の3学期制に対する問題点について、誰もが納得できる点を指摘してはいません。現状では「授業時間数が足りない。」という指摘がありますが、それは行事の多忙を放置せず積極的な改善を行うことで、解決はかることです。この点、現行の3学期制についての検討がされているとは言えないのです。この点での納得できる説明を求めるものです。

また、教育委員会が配布した「ひびき」(第6号 平成16年6月25日発行)には、「2学期制の導入を教育委員会として決定し」たという理由が5点述べられています。(「ひびき」第6号より)

@    子どもと教師がじっくりと向かい合う時間が増え、きめ細かな指導がより一掃充実する。

A    1学期や3学期の短い学期での評価がより信憑性を持ったものになる。

B    中間テストや期末テストなどの回数は減るが、その分より日常的な学習評価活動ができ、学習の到達度や活動の様子をしっかり把握しやすくなる。

C    学期の日数が長くなるので、学校行事等の見直しがなされ、時期や内容の工夫に今までとは違った観点から取り組むことができる。

D    2学期制のほうが、時間数は確保できるので、じっくり学習に取り組めたり、補充的な学習や発展的な学習の時間確保がしやすくなる。

 @は学期制の問題ではありません。Aは意味不明であり、「では今は信憑性がないのか」「なぜ、信憑性を持つ」のか不信を招く言葉です。Bは、それに変わるテストが増えるでしょうし、「テストが減るから日常的な学習評価活動ができる」という言葉自体が誤解を生むものでしょう。Cは、行事そのものの削減こそ課題であり、行事に費やす時間と労力が多忙の原因となっているのです。「2学期制のほうが、時間数は確保できる」とは幻想であり、何ら証明するものはありません。全国の事例からは「ゆとりがなくなった」という声こそが聞こえるのです。

 

2,「2学期制は、実質4学期制」に。逆効果であり、ますます多忙になる。

「まず、2学期制あり」という姿勢では、すでに実施されている他の市の例のように、「ゆとりが失われた」「逆効果だ。」「区切りがつけにくく、指導しにくい。」「実質4学期制となり、教職員はますます多忙となる。」というように、教職員にとっても子どもらにとっても学校生活がますます多忙で、耐え難いものになる危険性があります。

現状にみる本質的な問題は、指導要領の内容が週6日制を前提としたものであるにもかかわらず、週5日制を導入したことであり、「1年生でも6時間」「入学早々から5時間」と言われるように、授業時数ばかりを優先する教育計画によって、子どもらは超多忙な学校生活を強いられています。

子どもらの生活感覚に立脚し、学校生活を豊かに送ることができるようにするためには、安易な「2学期制導入」ではなく、25人学級や30人学級の真剣な検討、現行の行事多忙システムの解消、教育内容の検討と精選、部活改善と一層の社会教育化など、学校教育体制の改善、そして、何よりも教職員による柔軟な教育計画の立案こそ必要と考えます。

 

3,仙台市の例にみる問題点、「2学期制でゆとりはなくなる」。

数年前から実施されている仙台市ですが、仙台市教職員組合の調査によりますと@教育現場にゆとりがないA学習の継続性に逆効果などと、市教委がメリットとしている効果とは逆の結果が出ています。また、香川県丸亀市の市教委のアンケートでは「2学期制に期待している保護者は36.7%にとどまった」となっています。2学期制のメリットなるものは、保護者・教職員には納得が得られるものではありません。まして、ほとんど情報も得られない一般市民にとっては、考える以前の問題であり、数年かけてでも十分な市民の検討こそ必要です。 

 

4,2学期制よりも、市民が望むのは少人数学級実現と過大学級の解消です。

 市教委には、積極的に市民の意見を聞く姿勢こそ必要であり、その点、市民が望んでいるものは、2学期制導入というようなものなどではなく、少人数学級の実施、過大学級の解消こそ望んでいるのです。豊橋市と同規模の他の市では、大多数の人が「少人数学級賛成」と言っているのに対して、2学期制については多くの父母・市民が「よくわからない」と回答しているのです。市教委は、2学期制や少人数学級の問題について、早急に市民の意見を聞くアンケートの実施を求めるものです。

 

 以上のことから、私ども三河教労は、当面の2学期制導入には反対します。さらに、2学期制導入の根拠としている時間数の増加は、数字のごまかしがあり、2学期制によって授業時数が単純に増加するものではないと考えます。その他の「2学期制に伴う改善」の根拠についても2学期制だからできるというものではありません。返って、「ゆとりがさらになくなり、多忙化が進むことこそ危惧するものです。そして、何よりも教育現場の意見や保護者の意見が十分に聞けていないところで、進められようとしているところが問題だと考えるものです。早急に、2学期制導入に関して話し合いの場を設定すること、保護者・教師・市民の意見を十分に反映する手立てをとることを要求します。

 また、現在の教育現場の重大な問題となっている大規模校の解消、過大学級(38〜40人)を早急に解消するために教職員を増やすこと、設備を充実することを要求します。そして、30人学級実現をこそ中心課題として検討することを求めるものです。それは、豊橋市における学校教育問題を解決する大きな一歩になるであろうことは明白です。

 以上、申し入れるものです。

 

「放課がみじかくなったんだよ。それに、先生は宿題をいっぱい出すんだ。漢字のプリント、算数の計算プリントなんか、毎日あるんだよ。」
「それに、今年の夏休みには読書感想文や工作、プリントや研究なんかたくさんあったよ。」
「いつもは、9月1日に宿題を持っていけばよかったんだけど、今年から8月の終わりに出すんだ。なぜだろう。」
「9月1日から5時間の授業だったんだ。ぼく、疲れた。」
「お母さんは喜んでいたけど、ぼく、いやだよ。こんなの。」