額田郡校長会                 2004年7月9日(金)

  会長 山本春雄様                三河教職員労働組合

                            執行委員長 畦地  治

   勤務時間についての申し入れ

 我々教職員は日常的に過労状態に置かれています。そのために、精神的にも肉体的にも消耗し、通院治療を受けざるを得ない状態になってしまった教員、長期休暇や退職を余儀なくされた教員が増加しています。

 これは、まず教育委員会や現場校長の「勤務時間」への誤った認識によって引き起こされています。教員の勤務時間は、朝8時30分開始でありながら、8時20分や8時10分と早められてきました。そして、この勤務開始が8時20分ならば、それが子どもらの登校時間と同一視されているのです。8時20分に子どもらの活動が開始されるならば、教員はその何十分も前に勤務を始めていなくてはならないのです。

 そして、「8時20分開始ならば、勤務時間(つまり拘束時間は)5時5分だ。」と校長・教育委員会は強弁します。しかし、この勤務終了時間が守られることはほとんどありません。8時20分の開始以降、8時間以上の勤務継続という違法状態がまかり通っています。そして、この8時間勤務の中に当然入るべき「休息」「休憩」時間は全く無視されています。「休憩時間は給与の対象とならない時間であり、勤務場所から離れることのできる時間」です。しかし、教員は給食指導や子どもらへの対応に追われており、休憩時間を全く取ることはできません。

 そして、教員には基本的に時間外勤務を課してはならないにもかかわらず、教育活動やそれに必要な準備・本来教育活動ともいうべきものが時間外に設定されています。学期末の成績処理などは、本来勤務時間内に確保されるべきものですが、一顧だにされず、子どもらが帰ってからの7時8時の仕事となっていたり、深夜の仕事となっていたりするのです。

たとえば、勤務終了間際に設定されていながら全く配慮されていない休憩時間30分と昼の15分の休憩時間を合わせた45分を1年間の授業日数(200日)倍すると、それはおよそ150時間(19勤務日)となります。また、これも全く顧みられていない休息時間30分は、100時間(12.5勤務日)となります。

また、子どもらへの指導のために必要と考える様々な仕事(名簿作成、資料作成、採点、評価分析、成績処理などなど)は、ほとんど勤務時間内には確保されておらず、勤務時間外に行われています。また、部活のために早朝や午後が使われ、日曜日の各種大会への参加など膨大な時間が教員の負担のもとに費消されています。

時間外勤務については、教員の場合基本的にこれをさせないとなっているにもかかわらず、無制限な超過勤務が放置され、「超勤限定4項目」(生徒の実習、学校行事、教職員会議、非常災害等やむをえない場合)も、守られていない現実があります。また、一部の校長の中には「教職調整額4%を支給しているから、超過勤務を命じることができる」などと明らかな間違いを吹聴する傾向もあります。

このような勤務時間に対する無理解、教職員の健康に対する無理解が横行する現実を放置することは、子どもと教育の成立を支える基盤をあやうくするものであり、改善をはかるよう申し入れるものです。

また、夏期休業期間は教員が充実した研修を行うとともに、精神的にも肉体的にも健康を取り戻す貴重な機会です。この機会に、慢性的な超過勤務状態を改善する対策をとるよう、あわせて申し入れるものです。

 

〔解説〕
 この数年、ただでさえ忙しい教育現場は、前にも増して忙しくなっています。それは、「週5日制」によって、6日分の行事が5日に凝縮されたのに加え、「父母への説明責任」ということで、作成される文書が膨大になったこと。部活過熱は一向におさまらず、新たな行事が作られたり、と。
 教職員は、もっとも重要である教育活動に必要な教材研究やテスト作成、そして成績評価なども「家庭への持ち帰り」仕事となって、睡眠は2〜3時間や多くて5時間と、体を休める「いとま」すらありません。学校の門をくぐる8時前後から子どもらが帰る4時(部活があれば5時)まで、全く休む間もないのです。
 この現状に対して、校長などの中には、「特別てあて4%をもらっているだろ。」「民間はもっときびしい。」などと、全く的はずれなことを言い、職場のヒンシュクをかう方もいます。
 「とにかく、休憩時間がほしい。」「勤務時間内に成績処理がしたい。」などあたり前の要求を、組合としては当然のことと考え、校長会に申し入れを行いました。

額田郡校長会                                   2004年7月9日(金) 

会長 山本春雄様                                    三河教職員労働組合 

                                    執行委員長 畦地 治        

         教育問題・労働条件改善についての要求書

 子どもたちの幸せと教職員の労働条件の改善を願い、下記のように要求をまとめました。

以下の事項について、早急に改善の手だてをとられるように要求します。

 また、私ども組合との意見交換の場を設定されるよう要求します。

                                          記

1.「勤務時間の割り振り」について  

(1) 小中学校教職員の勤務時間に関しては、教職員は子どもの在校時間には本来の休息も休憩もとれないという特殊な勤務条件におかれていることを踏まえ、適正なものになるよう市町村教委に働きかけること。当面、以下のことを実現すること。 

 @ 休息・休憩は一斉付与を原則とすべきことを明確にし、誰もがきちんととることができる条件整備を図ること。また、割り振られた休息・休憩時間にやむを得ず休息・休憩がとれない場合は必ず、他の時間に休息・休憩時間を与えるようにすること。

 A 1日につき8時間をこえる勤務は違法であることを明確にし、そのための条件整備をはかること。また、やむを得ず8時間を超える場合は、必ず勤務時間の割り振りを行うこと。また、「勤務時間外の仕事」を放置することなく、勤務時間内に行えるよう手立てを取ること。

 B 学校現場における勤務の特殊性と30年にわたって定着してきた勤務時間の割り振りをふまえつつ、教職員の長時間過密労働を解消していくための条件整備をはかること。

 C  超過勤務について、「教員には、給特法(給特条例)によって4%の教職調整額が出ているのだから、超過勤務は当然」などという誤った解釈を根絶すること。

(2) 泊を伴う行事のように、正規の勤務時間を超えて計画される場合は、超過した勤務時間に基づき勤務の割り振りをおこなうこと。

(3)  各種行事を土・日曜日や祝日に開催する場合は、以下のことを実現すること。

 @  土曜日で勤務時間が4時間に満たないときにおいても4時間を勤務したものとみなし、4時間を超える場合には8時間を勤務するものとみなして、割り振り変更を行うこと。

 A  日曜日・祝日で勤務時間が8時間に満たないときにおいても8時間を勤務したものとみなして、8時間勤務日との振り替えを行うこと。

 

2.「希望と納得の人事」の実現について 

(1) 教職員の異動に際しては、「本人の希望の尊重は当然の前提」(県教委)に沿い、三河においても以下のことを実現すること。

 @ 具申の前に、全教職員一人一人の希望等を直接に面接聴取し、正確に把握すること。

 A 異動希望の把握にあたっては、各市町村教委の作成した異動希望調査票を使用し、それを各市町村教委に提出すること。

 B 市町村教委及び各地区事務協議会への具申は、本人の希望を正確に反映して確実に行うこと。特に、三河教労組合員を差別することなく、公平・正確に具申すること。

 C 内示前に、本人に対する意向の打診(内内示)をていねいに行い、事前の打診が十分されない「不意打ち人事」を根絶すること。

 D 豊田市教委が例年明言しているように、「希望の尊重・事前の打診」を確実に行い、「本人の意に沿わない人事の場合は必ず校長を通して本人に打診する」という姿勢を貫くこと。

(2) 「内示は決定ではない」(県教委)という当然の前提に立ち、内示に対して不服等の意向が示された場合は、本人の納得を尊重して速やかにその変更・改善をはかるための措置をとること。

 

3.教職員の健康と労働安全衛生について 

(1) 労働安全衛生法にもとづいた、市町村小中学校教職員を対象とする安全衛生管理体制の整備のために、以下のことを実現すること。

 @  小中学校教職員を対象にした「安全衛生管理規定(規程)」を三河部のすべての市町村が持つように関係機関と協力して、指導・助言・啓発活動を行うこと。

  A 職員の安全と健康を確保し、さらに快適な作業環境の促進を行うために各職場に労働安全衛生委員会を設置すること。

  B 安全衛生者(校長=事業者)の責務を明確にし、業務災害の防止・快適な作業環境の実現・労働条件の改善を通じて職員の安全と健康を確保させること。

  C 労働安全衛生法に基づく健康診断を行い、専門医師による健康相談や事後措置の徹底をはかること。 

 D 男女別の更衣室、休養室、喫煙室、洋式トイレの設置など快適な職場指針の適用をはかること。

(2) 教職員・児童生徒の健康安全保持のために、以下のことを実現するよう関係機関に働きかけること。

  @ 校舎の耐震検査を行い、結果を公表すること。また、結果が不十分な場合は校舎の改築計画を示すこと。

 A 校舎の最上階の教室には天井扇または扇風機を設置すること。 

 

4.研修について  

(1) 教員の研修については、教育公務員特例法第1920条をふまえ、「教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない」、「教員は、授業に支障がない限り、本属長の承認をうけて、勤務場所を離れて研修を行うことができる」など、法の趣旨に沿った適正な運用を図ること。当面、以下のことの実現に取り組むこと。

@ 「研修結果報告書」の提出を義務づけることはしないこと。

A 長期休業中以外の行事・試験等、児童生徒の下校後には、これまで通り「勤務場所をはなれて研修を行うことができる」ようにすること。

B 教員の研修希望を尊重し、研修の機会が積極的にもたれるようにすること。

 

5.少人数授業・授業持ち時間数について  

(1) 教材準備時間として、小学校においては最低週7時間、中学校においては最低週10時間確保できるよう関係機関に働きかけること。

(2)  現状の少人数指導は様々な問題を発生させており、少人数学級をこそ検討し、目指すこと。

(3) 少人数指導のあり方について、以下のことを検討すること。

 @  教務主任、「校務主任」が少人数指導として、TT指導の第2担当として入るため、高学年担当の教師の持ち時間が昨年より大幅に増加している職場がある。このような状況を改めること。

       A 児童生徒の間に差別・選別を持ち込む恐れのある習熟度別コースの導入は行わないこと。

 

6.教職員の定数改善について  

(1) 少人数学級の実現に向けて、文科省、県に強く働きかけること。また、市町村独自で少人数学級を早急に実現するよう働きかけること。

(2) 当面、以下のことを実現するよう関係機関に働きかけること。

      @ 35人以上の多人数学級に対して、教員を加配すること。

      A 小学校15〜20学級の一部に措置されている非常勤講師を改め、正規の教員を配置すること。

      B いわゆる「学級崩壊」など、指導困難な学級に対して教員を加配すること。

 C 全小中学校に専任のスクールカウンセラーを配置すること。

 D 障害児学級の教員配当について、以下のことを実現すること。

       ア 年度途中に「2学級11人」になった場合、教員を加配すること。

        イ 男女の児童・生徒が在籍する障害児学級には男女の教員を配当すること。

          複数いる障害児学級の担任を異動させる場合、複数を一度に異動させることのないようにすること。

 

7.教務主任・校務主任の中間管理職化について 

(1) 各市町村の学校管理規則に反して、教務主任・『校務主任』が管理職と同様の異動をしている現状を改め、校長が当該学校の職員の中から選ぶようにすること。

(2) 「愛知県公立学校教頭任用候補者選考審査要項」の以下のことを見直すよう、県教委に働きかけること。

 @ 「教務主任・『校務主任』は学年主任等と同格」,「教務主任・『校務主任』を固定化しない」(文部省通達)に反して教務主任・『校務主任』を特別扱いしている実態を改め,教務主任・『校務主任』の経験を資格要件から除くこと。

 A 「校長の推薦」を資格要件から除くこと。

 B 教職経験15年以上の者全てに受審資格を与えること。

 

8.愛知県教育振興会愛知教育文化振興会について 

(1) 愛知県教育振興会愛知教育文化振興会が発行する補助教材の採択は、他の補助教材の採択と同様に、該当年度の4月以降担当教員の協議によって決めること

(2) 補助教材の採用に当たっては「公正を期すること」とする文科省の指導を遵守し、現在、振興会発行補助教材の注文に関して、校長会として取りまとめをするなどの便宜を図っていることをやめること。

(3) 愛知県教育振興会愛知教育文化振興会発行出版物の斡旋・集金事務を教職員にさせないこと。

(4)  愛知県教育振興会愛知教育文化振興会発行出版物を学校に割り当てたり、購入させたりしないこと。

(5) 愛知県教育振興会愛知教育文化振興会への退職校長の天下り人事をやめ、官民癒着構造を解消すること。

 

9  「指導力不足教員」について

(1) 「指導力不足教員」を「選定し研修を受けさせる」ようなやり方は、この問題の正しい解決ではないことを認識し、職場と校長の対応で解決をはかるようにすること。

(2)  指導力不足教員問題を利用して教員いじめを行う校長のないようにすること。

(3) 「指導力向上を要する教員の取扱いについて」の実施において、年休を申し出た教員に対し て、「これまでのように年休も簡単にとることはできなくなる。年休をたくさんとる者は不適 格教員といわざるを得ない」と脅すなど、校長の不法・不当な言動を根絶すること。

 

10.その他   

(1) 家庭訪問に対して正当に旅費を支給できる場合でも、支給しない学校・市町村がある。学校長の裁量事項とせず、規則通り支給するよう周知徹底すること。

(2)  再任用の際に、校長が「推薦書」の作成を拒否するなどの不当な行為は根絶するよう徹底すること。

(3) 二学期制は実質4学期制であり、現場の負担と困難を増加させるだけです。性急な導入をしないこと。

 

校長会への申し入れ
勤務時間についての申し入れ