東加茂郡における不当人事

不当な人事の実態が浮き彫りに!

 

 今年3月に行われた川合先生に対する不当な人事は、「あんたは足助に勤めたことがないから」という教育事務所足助支所の加藤主査の事実誤認など、その当初から異常さが明らかでしたが、その後県教委の「答弁書」からもますます東加茂における人事の異常さが浮き彫りになっています。以下、8月8日に提出した「反論書」からそれぞれ問題を明らかにしたいと思います。

 

○ 今回の人事は川合先生に対する異常な姿勢にある

 1 平成13年度の申立人に対する異動は「あてつけ」というほかない

   処分者は申立人に対して「あてつけ」といった人事異動は行っていないと主張する。しかし、申立人に対して行われた平成13年度の異動は例年にない形態でした。東加茂郡の養護教諭23人中毎年の異動数を挙げると、以下のようになります。

 

年  度

  10

  11

  12

  13

  14

異動数

   3

   9

   3

   

   8

備 考

 

1組入れ替え

 

※入れ替え

 

 

 ここから明らかになるのは、平成13年度のみ2人という最小の異動であり、それも「入れ替え」というやり方です。これは他に例を見ません。「入れ替え」という人事異動は、平成11年に一組ありますが、これは9人の異動のなかで起きたことです。このような異動は他の年度にはなく、平成13年度の養護教諭の異動が特別珍しい形で行われたことは明らかです。

 教職員の職場では、「入れ替え」という形態の異動は、制裁的な異動、または一方の異動者に対して低い評価が行われた結果の異動と受けとめられています。平成13年度の異動が、申立人が自ら異動を希望したために行われたことは「答弁書」も認める通りです。同年度の異動は、申立人が異動希望を出したことに対して嫌悪があり、これに対する「あてつけ」として行われたというほかない人事です。

 
2 通勤上の不利益は重大!それを省みないひどい人事!

   平成15年度人事異動実施要項には、「教員人事 転任」の項に、「異動後の通勤時間は、原則として公共交通機関で片道1時間30分以内となるよう配慮する。」とあります。これは、教職員の異動に伴い通勤上の不利益が生じうることから、それを考慮し、その不利益が拡大しないよう最低限の基準を設定したものです。

実際に、大蔵小に異動した後の申立人の通勤は、公共の交通機関を利用すれば、家からバス停まで徒歩7分、大桑バス停から大沼バス停まで下山村の村営バスで30分、大沼バス停から伊賀バス停まで47分、伊賀バス停から足助バス停まで60分、足助バス停から町営バスを利用し、豊岡まで10分、豊岡から徒歩で大蔵小まで歩いて30分として、計184分(3時間04分)もかかってしまいます。バスの本数の少なさや、運営される時間からみて通勤は実際上不可能なのです。

東加茂郡においては、公共の交通機関を利用しての通勤がほとんど不可能な現実があります。教育委員会は、このような現実に甘んじて、人事異動実施要項に書かれた「異動後の通勤時間は、原則として公共交通機関で片道1時間30分以内となるよう配慮する。」を全く考慮しないばかりか、実施要項の趣旨である通勤上の不利益の緩和ということを一顧だにしなくなっているのです。このような、東加茂郡における処分者の姿勢は、異常といわざるをえません。

  

 3 教職員の通勤上の不便さを無視する人事の横行!

「答弁書」で処分者は、2001年「教育白書」を引用し、「自家用車での平均通勤所要時間は約30分、通勤距離についても20〜25qが最も多いとされている。また、冬の時期、通勤に困難を伴うことはほとんど全ての教職員に当てはまることであって、申立人のみの特殊事情ではない」などと主張しています。

  しかし、「教育白書」は、「一昨年の調査に比べ、通勤距離で20q以上、通勤時間で30分以上に相当する組合員が1.2倍と増加傾向にある」述べており、通勤距離、通勤時間が増大し続けていることを指摘しています。処分者は申立人の通勤に困難を伴うことを認めながら、通勤上の困難を解消する努力をすることなく、かえって通勤上の不利益を増大させる異動を拡大しているのです。このように、処分者が「ほとんど全ての教職員に当てはまること」などと言って、「通勤上の不利益を甘んじて受けよ」などと言うことは開き直りといわざるをえません。

 また、教育白書では「運転での気苦労がたえない」という回答が寄せられています。これは、急カーブが多く、勾配が10%以上という急勾配の道で通勤を余儀なくされることから生じているものであり、通勤事情を考慮しない人事に教職員の負担は増加しているのです。

 

 4 通勤上の不利益は「手当によって是正されている」とは到底言えない!

処分者は、通勤上の不利益は手当によって是正されていると主張しています。しかし、申立人が受給している通勤手当は、和合小通勤時が月額2300円(通勤距離2.4q)であったのに対し、大蔵小通勤時は月額1万6200円(通勤距離25.6q)であり、通勤距離がおよそ10倍増えているにもかかわらず、手当は7倍でしかありません。大蔵小通勤に要する費用は、ガソリン代だけからみても、1リットル100円として1リットル7q走行する車の場合、1月あたり(1月23日として)1万6800円余を消費することとなり、通勤手当はガソリン代を充当する程度にすぎず、車の維持管理費(約5万8000円)、雪道対策の実費(約4万5000円、費用は「教育白書」1997年による)など年間およそ10万3000円かかり、不十分であると言わざるを得ません。

    したがって、手当は通勤上の不利益の是正措置とはとてもいえないのです。

 

5 処分者には申立人の通院事情を配慮すべき義務があります

      川合さんが通院していることは和合小学校の杉本前校長も認識していたことであり、処分者は申立人の通院事情を配慮することはできたのです。また、処分者は通院事情を全く個人的な事情であり、「特別な事情が存在しなければ、教職員の人事異動において、配慮すべき事情とはいえない」などと主張しています。これは、大変な暴論です。処分者には、安全配慮義務が課せられていることはもちろん、疾病労働者の処遇に関しても、勤務場所、勤務内容等に配慮することが求められているのであって、このような事情を考慮することなくなされた処分は全く妥当性を欠くものです。

したがって、申立人が通院をしていることを承知していながら、具体的な調査をすることなく、上記に指摘したように通院事情は個人的な事情であるとして、処分にあたって考慮しなかったことは、本件処分が妥当性を欠くことを示すものです。なお、処分者は年次有給休暇を取って通院すればよいようなことを示唆していますが、年次有給休暇の使途にまで介入するような態度は許されるべきではありません。

 

6 人事は全く一方的で、弁明も矛盾だらけ

      処分者は、県費負担職員の転任について、任命権者の裁量に委ねられており、全県的立場から異動方針に則った異動を行うものであり、何ら適正手続違反にならない旨主張しています。

しかし、申立人が申立書で主張したように、多くの教育委員会では異動に当たって「教職員の希望を尊重」することを行っており、東加茂郡においても「申立人が研究委嘱校での勤務を希望しなかったため、転任となったもの」と希望に基づく異動の存在を認めているのです。しかし、教職員の希望を嫌悪する校長および教育委員会は、教職員の意思を無視する態度が特に横行しています。それは、「各々の希望を聞いていては、人事ができない。」「内内示をすれば、文句が出て混乱する。」という教育事務所足助支所の加藤主査の言葉がそれを象徴しています。

   

7 全くいい加減!「羽布小学校と和合小学校の統合」という事情についても!

      処分者は、今回の人事が「統廃合」という特殊事情によるものであり、統廃合によって生じるであろう「両学区の児童の指導面・心理面(特に、従前からの児童にとって全ての教職員が変わってしまうということであれば、心理的に不安感が生ずることも予測でき統廃合後も両校にいた教職員を適正に配置する必要性があった。)」と述べています。

しかし、東加茂郡において1987年(昭和62年)から行われた統廃合の7例を調べてみると「両学区の児童の指導面・心理面(特に、従前からの児童にとって全ての教職員が変わってしまうということであれば、心理的に不安感が生ずることも予測でき統廃合後も両校にいた教職員を適正に配置する必要性があった)」という主張に基づく異動が全く行われてこなかったことが明らかとなるのです。以下の通りです。

  

   東加茂郡における養護教諭の異動の状況(特に統廃合における)

  @ 1987年(S62年)

   A、足助町立御内小が足助小へ統廃合 

     →御内小養護教諭は足助町立佐切小へ異動

   B,足助町立大多賀小が明和小へ統廃合  

     →大多賀小養護教諭は足助町立新盛小へ異動

 

  A 1995年(H7年)

   A,足助町立大見小が足助小へ統廃合   

     →大見小養護教諭は下山村立田平沢小へ異動

   B,足助町立椿立小が足助小へ統廃合   

     →椿立小養護教諭は旭町立旭中へ異動

 

   B 1996年(H8年)

A,旭町立旭中と浅野中が統合し新旭中となる

→浅野中養護教諭は萩野小へ異動

 

  C 1997年(H9年)

   A,足助町立大河原小が大蔵小へ統合   

     →大河原小養護教諭は下山村立三巴小へ異動

   B,旭町立生駒小が小渡小へ統廃合    

     →生駒小養護教諭は足助町立明和小へ異動

 

   4つの年度、7例の統廃合に際して、いずれも統廃合となった学校の養護教諭は子どもらと一緒に(子どもらについて)異動した例はありません。7例とも全く違う学校に異動しているのです。これらのことから、統廃合に際して子どもらのために養護教諭が一緒に異動するということで「児童の指導面・心理面」に配慮するというようなことは、一切行われていないことが明らかとなるのです。

また、Bからすれば、和合小に勤めていた申立人が引き続き勤めることが順当であるのです。この点、答弁書に「特に羽布小学校の児童に対する精神面でのケア等の配慮が必要との観点から、統合後の養護教諭については羽布小学校の従前の養護教諭に担ってもらうこととした」と述べていますが、上に挙げたいずれの事例もそれに全く相反する養護教諭の異動が行われているのです。

   従って、今回の統廃合にあたって「子どもらが寂しがるから養護教諭が一緒ついていくように配慮した」などということは、何ら根拠のないことであり、人事異動実施後にこのような方便を持ち出すこと自体、不謹慎です。逆に、「今回だけ養護教諭がついていく」ようにしたことについて、「統廃合」とは別の事情があったことを推測させるのです。

 

8 人事を道具に教員管理、教育計画を侵害し、考慮しない人事の横行

   養護教諭は、全校の児童・生徒の名前を覚えるだけでなく、日々の健康状態および心の状態を把握し、そのケアに努める役割を負っています。そして、児童一人ひとりに対応し、問題を抱える子どもの家庭の状況を把握し、食生活やその対人関係への配慮、担任との連携、各種健康調査やその結果に基づく対応など様々な責務を負っているのです。

      申立人は、和合小において1年目は相談活動を通じて、子どもらの実態を知るとともに、子どもらの信頼を得るための取り組みを開始していました。それは、子どもからさらに親との連絡を通して、親の理解と信頼をえる活動に入っていたのです。子どもや親との信頼関係の構築は時間のかかる日々のねばり強い取り組みなくしては不可能です。そのような基礎の上に3年目に本来の意味における相談活動を予定していたのです。

   和合小では1年目から友達関係で悩んでいる子どもが時々相談に来ていました。その子どもとの対応や担任との連携を行いつつ、全校児童の健康相談も行っていたのですが、2年目には「心のおそうじ」というストレス解消法を実施したところ、2人の子どもが興味ある反応を示したのです。このような心の問題や成長期にある子どもらの心の発達の問題に対応するには、長期の時間とねばり強い努力が必要とされるものです。

   また、申立人は、平成15年からは羽布小の子らが和合小に来るから顔なじみになるよう努力も行っています。羽布地区の防災訓練や閉校の集いにも意識して参加し、羽布の子を迎える準備をしてきました。学校の行事に慣れ、年間の計画を理解し、受け入れのための施設の活用や子どもらの交流に果たす養護教諭の役割は特に重要であり、それは受け入れ側の学校の養護教諭が引き続き勤務することで無理なく、より効果を上げうるのです。

     これに対して、東加茂郡では養護教諭は2〜3年で異動させられており、養護教諭の仕事に対する配慮が全くありません。「養護教諭は、担任ではないから」というような管理職の言動が象徴するような人事が行われているのです。申立人も2年で異動させられており、申立人に「何か落ち度があった」と感じさせるような異動なのです。そして、学校についても、「大蔵小学校は足助町北部の中核校」などと較差をつけて憚らない姿勢があり、それでいて便宜的に「これまでの実績と豊富な経験を生かし、足助町北部の中核校である大蔵小学校で幅広く活躍してもらいたい」などと、教職員の取り組みや教育計画を人事の添え物としか考えず、このようない言い方に示されるように、人事をもてあそぶ姿勢を自ら暴露しているのです。このような処分者の姿勢により、申立人の教育計画が侵害されたことは明らかです。