生活を見つめ、立ち向かい、高めようとする子どもを目ざして(理論編)        

                豊かに書くことを通して豊かな子どもの心を。

              1992.4.6 

1、作文教育の意味 

 ・こどもたちは、書くことを通して、その時、その時の自分の生活や心の動きをもう一

  度みなおすことができる。そうすることによって、毎日の自分自身の生活の仕方、生

  き方をみなおし、自分のなかにもっとよい生活をつくりだしていく力をつけていくこ

  とができる。そのように、作文教育の基本を考える。 

 

2、豊かに、ありのままに書く子 

 ・目や耳、心を働かせ、豊かに、ありのままに書く子を目ざす。書くことの意味を

 

 

 ・書くとは、ものをしっかりみていくこと。

 ・書くとは、ものをしっかり考えていくこと。

 ・書くとは、自分の心がはっきりしていくこと。

 ・書くとは、みんなの気持ちがつながっていくこと。

 

 

   と、意義づけ、書くことを通してものをしっかり見つめる子、そして、考える子を

  めざす。また、作文を書くことによって自分自身を見なおすとともに、作文を読み合

  うことを通して、子どもたちの心を結びつけていこうとするのである。

   よい作文は、生き生きした生活の中からうまれる。自分の生活があるかぎり、だれ

  だって書けるし、書く力をもっている。子どもを取りまく生活(家族、友達、学校、

  地域)を、いつでも、どこでも、目や耳や心を働かせて、どんなことも見逃さずに、

  おどろいたり、よろこんだり、くやしがったり、心配したりできるように、心にみが

  きをかけていくこと。そのための根幹に作文をすえる。

 

3、題材観を         「なにを書くか。」が大切な問題。

 ・作文を書くことは、そこに自分をさらけだすこと。楽しいことや悲しいこと、心配ご

  とや悩みも、自分の気持ちを率直にさらけだして書くことだ。          

 ・だから、子どもが「何を書くか」「何が書けるか」が、重要である。子どもの関心の

  所在、考えをつかむとともに、子どもの悩み、思いを書ける場としての作文の意義が

  ある。

  A 仲間・地域・遊び(自然にふれた遊び、異年齢集団、今の子どもの人間関係)

  B 家・くらし(家庭の問題、子どもの家事労働、父母、祖父母、身近な人間関係)

  C 仕事 (子どもの成長と労働)                      

  D 学校・勉強(子どもにとって学校・勉強・教師とは)            

  E 自分・社会・いのち(社会と子ども)                  

 ※「      をなぜ書くか」は、「その子にとってそれを書くことの意味は」に結びつく。

  したがって、「題材観」が重要になる。子どもと題材との関係を子ども論から充実す

  ること。       

 

4、作文指導は、子どもの生活作りという観点を。

 ・そのための大前提として、                          

 ・生活をつくりだすこと      自分のやりたいことや目標をもち、自分のからだ全体

               を使って取り組んでいくような。

 ・心にみがきをかけること    いつでも、どこでも、目や耳や手や心を働かせて、ど

               んなことも見逃さずにおどろいたり、よろこんだり、

               くやしがったり、心配したりできるように。

 

 ※そのためには、それができる子どもと教師の人間関係と子どもたちどうしの関係がつ

 くられていなければならない。子どもの心をつかもうとする教師の努力によって、友だ

 ちの生活をリアルに見つめ、自分の生活の中に価値あるものを見つけていこうとする時

 その作文を読む子どもたちも、また友だちから学ぶ。

 ・生活実感を大事にする。

 ・子どもたちの関心を引き出す。

 ・こどもたちの生活を全面的にとらえようとする。

 

5、「ありのままにかく」ということについて

 @ 書くことの意味

   方法の特質だけをねらいにしてはいけない。綴り方の場合には、書くということが

  特性であり、それを生かすこと。書く方法の問題ではなくて書く内容の問題なのだ

  そこを、充実させてやること。書かなければならない内容をその特性に応じてはっき

  りさせていくこと。(P・113)

 A 「ありのまま」について

   「ありのまま」の質が低かったり、「ありのまま」としてみる鋭さに欠けたり、「

  ありのまま」がくわしさをともなっていなかったりするけれど、どこかに現実をその

  ままに反映する部分がある。「ありのまま」は深めるものであって、子どもの発達に

  したがって深まっていくし、高まっていく。「もっと、ありのままにしていく」ため

  には、その能動的な働きかけを、もっと意識的にする。(P・101)そういう意味

  では、「ありのまま」ということは、行動を通して具体化することがなかったら、深

  まりはしない。(P・102)

 B 生活実感と真実と現実

   生活実感を大切にすること。いちばん土台になるのは、自分の五体を使って自然や

  社会に働きかけ、現実をつかむことを通しながら、人間の内面に事実に基づいた理解

  をきちんとたくわえていくこと。それは、実際にことにあたり、それにぶつかってみ

  るなかで、そこから真実を発見していくこと。(P・96)

 C 子どもをまるごとつかむ

   「生活の実感」を大切にすることが、生活綴り方の基本になる。人間を丸ごとつか

  むことの基は、生活の実感をどうひきだし、どう理解するかというところにある。つ

  まり、子どもを丸ごとつかむために、私たちは生活の実感を引き出すことを可能とす

  る生活綴り方の役割を重視するのである。(P・96)

 D 生活を自覚させる

   子どもたちに生活を自覚させる。生活というのは、たんなる動物的・生理的に生き

  つづけている状態をいうのではなく、意識的・意図的に現実とふれあい、自然や社会

  に能動的に働きかけていく、その働きかけやそこから受ける影響をいうもの。それを

  自覚させる作用をいう。(P・96)

 E 生活の質を高める

   生きている生活そのものを自覚させる。そして、その生きる質を確かめてみる。自

  覚した生活を確かめることの中で、もっと意図的に生きていく生活の量をひろげるよ

  うにする。また、生活の質を自覚的に高めるようにする。(P・96)

 F 生きるねうち

   今日においては、自覚する生活の幅を広げて、その質を変えていくことは、本当に

  わかるという働きをするし、本当に生きる値打ちを自分でさがして生きる自信を身に

  つけていくことなのであって、子どもの上にあらわれている社会的な状況の特徴に対

  応して、生活綴り方の役割が位置づけられてくる。(P・97)

 G 具体的に書く

   物事を具体的にみていきながら、そのままに生活を綴るというように、具体的な生

  活をそのまま綴っていくこと。方法上の特徴。(P・99)

                   以上、『恵那の生活綴方教育』より

 

O 具体的指導について    (6.7.8は疑問多いものとして書く。)

6、書く時のこと           上記に従属するものとして。

 @ 「くわしく書くこと」「生き生き書く」ということを目ざして         

  ・書く機会を年間に位置づける。   計画の作成、「教師の考えと    意図」の具現化。

   個人日記、グループ日記、生活ノート、時々の作文、教科、その他

  ・書く時の視点として「このような書き方をしよう」と指導する。

   @ どうしてもこのことが書きたいのだということがわかる文

   A このことは、どうしても書かずにはいられないという気持ちがよくでている文

   B 何が一番書きたいのかということ、つまり中心点はどこかがはっきりわかる文

   C どこのところを、みんなに一番読んでもらいたいのかすぐわかる文

   D 中心にふれたところをくわしく書き、そのほかのところはあっさり書いた文

 A 教師の指導は、

  @ したこと、見たこと、聞いたこと、思ったこと、考えたこと、かんじたことなど

   いっしょに、会話をたくさんいれて、その時の順序に従ってよく思い出しながら、

   そのとおりに綴ればよいことをわからせる。

  A 子どもたちの綴った文の中には、悲しい、嬉しい、楽しい、美しい、恐ろしいな

   どの言葉であらわれていることが多い。そこで、うれしい、かなしい、楽しいとい

   う言葉をつかわないで、その時のようすをそのままあらわすようにさせる

  B どこをどのように綴るのか、教師が赤ペンをいれる。赤ペンの内容が子どもの意

   欲を喚起する。

  D すぐれた作品、友だちの作文にふれさせる。

  E 同一題材の作文を比較させる。友だちの「見る目」に触発されるように。

  F 書きたいことをはっきりさせ、題をつける。 

  G 学級でうまれた作品を一枚文集にして共同研究する。

  H 「題みつけカード」の実践。題材、つまり「書きたいこと」の「発見」。

  I 父母に返し、子どもの「見方」「生活」を再確認させていく。父母の参加。

 

7、年間の計画に関連して

 ・「私の教育課程」の作成

 ・学級通信、学年通信、一枚文集、文集

 ・学年の発達段階を考慮 低学年「すなおに見つめ、思ったことをかく。」

             中学年「ありのままに見つめ、気持ちをそのままかく。」

             高学年「くわしく見つめ、自分のこころをかく。」

8、作文指導上で問題になること                 

 ・くわしく書く ・生き生きした会話 ・順序どおり書く ・生活があらわれた書き方

 ・書きたいことを中心に ・よく見て書く  ・心が動くこと ・よくわかる書き方

 ・ありのままに書くこと ・取材・構想・推敲

  たんなる「美文書き」でも、「技術」だけでもなく、生き方に結びつく作文を。

 (例)題材として              恵那の作文題材を参考。

  ・親は私のことをどうみているのか    ・おじいさんのボケとわたし   

  ・家族の生活、その中での疑問      ・わけがわからなくなっていること

  ・父親の仕事と私、つかれている父    ・友だちとのこと ・勉強のこと 

  ・性の問題(書きづらいこと)            

              (1986.11.9作成したものを再度検討し掲載する)

      

 現在の問題、課題          1992.4.6

1、現実の子どもたちは。

  その子の、生活が、その子らしい題材の選び方や、書きぶりに表れる。

 ・「長くねばり強く書ける子」

 ・「題材がよく、あわせて生活がよくとらえられている子」

 ・短くても、一つや二つの言葉の中に、その子の実感が色濃く表れている子」

 しかし、

 ・「背伸びした文、自分の言葉でないものを書く子」

 ・「経過報告文になっている子」、「…した。…した。」としかならない子。

 ・「個性不明?」つまり、誰が書いたのかわからない無個性文の子。

 ・行事の「行程・過程だけ」書く子。

 ・テーマが浅く、例えばファミコンのこととか、塾のことしか書かない子。

 ・「短い文、それも、ほとんど書けない子」

 などがある。

 

2、「子どもたちの書くテーマ」とは、何か。どんなものがあるだろう。それは、子ども

  たちの「まわりを取り巻く生活」そのものであろう。それを、個々について上げれば

  いろいろなひろがりとつながりをもつ、

 ・親、兄弟、親戚などを含む「家」のこと。

 ・友達、遊びなど、子どもたちの活動のこと。

 ・学校、教師など子どもたちの生活の大半を占める「学校生活」と、勉強のこと。  

  そして、その時々の出来事、たとえば、

 ・学校生活上での出来事。

 ・旅行などのこと。

 ・1年間、季節、行事等のこと。

 が考えられる。それが、「その子とのつながり」において、どのような意味を持つかが

 「作文のテーマ」となると考えられる。

  それは、失敗・満足・不満・希望・不安・怒り・悲しみ・楽しみなど、その子の「生

 る」姿勢とも絡み合ってくるものである。現実の社会が様々な問題を持っているのに、

 ひとり子どもだけが「道徳的・規範的」生活を送れるはずもなく、子どもたちの「成長

 」の軌跡も複雑な行程を辿ること。

  それは、「一路成功」の物語でもなく、常に前向きの文だけでもない。「常に、前向

 きで、常に成功」それにこしたことはないが、子どもの生活も、我々の生活もいろいろ

 複雑な「行程」をたどり、「順風満帆」にいかないことはよく知っている。

  作文は、だから、その時々の子どもの一生懸命な姿、葛藤する心、悩みを、すぐれた

 記述(それが、個性的で、具体的だからこそ)にみることができるから、人々を感動さ

 せる(共感させる)のである。

  したがって、「教師が作り替えた作文」は、「教師が描き替えた絵」ほどに「偽作」

 というべきであると考えられる。「子どもの生活」を「他人が書く」ことが「ウソ」で

 あるように。

  ここから、「子どもたちがぶつかっている現実」の表現が、「生き生きとえがかれる

 ため」には、それを「つかみうる教師の感性」が要求されること。

 

3、「文集」作成の観点について

 ・テーマを設定すること。それは、教師の教育的目標でもある。

 ・子どもの作品を年間通して集め、季節・行事・活動などを通してよく表現された作

  品をのせること。

 ・子どもたちが考えた(のせてほしいと思う)作品ものせる意味があること。ただし、

  この点では、教師と子どもの意見が違った時、子どもの気持ちを十分検討して作品を

  選ぶ必要があること。

 ・「表現」「技術」的な点においては、学年の発達段階や、指導過程を検討して、無理

  を強いてはならないことも。

 ・子どもが「大切にしておきたい」と思うような文集を模索すること。

 ・「絵」と「文」の関連を考え(まだ、絵や文が密接な関連を持っている段階で)子ど

  もの「表現意欲」を満足させるような「文集」(作品集)とすること。

 

4、文集の具体的内容は、

 ・目次

 ・写真

 ・年間の作文から(季節の中で、出来事から)

 ・一年間の「思い出」となるような作文(心に残ったこと)

 ・子どもの自筆の作品。(絵、カット、版画等)

 ・写真等。

 ・テーマ別企画。

 ・その他。