チャップリンの「独裁者」より      最後の演説の部分から

 

  私は、皇帝なんかになりたくない。

  征服も柄じゃない。ただ、皆を助けたいだけだ。

  人間は、お互いの幸福で支え合って生きている。

  憎んではダメだ。大地は、必ず皆に恵みを与える。

  だが、私たちは方向を見失った。

  欲望に毒され、他人を貧困や死に追い込んでいる。

  乗り物は速くなったが、人は犠牲になった。

  知識は増えたが、豊かな感情をなくした。

  機械より人、知識より心が大切だ。      

  でなければ、人生は無だ。

  発明品は、本来、人に戒めを求めているのだ。

  今も、私の声は全世界の人々に届いている。

  絶望している女や子供、組織の犠牲者などに

  そんな人々に言おう。「絶望してはならない。」と。

  絶望は、やがてしぼむ。

  独裁者は滅び、再び民衆の力が芽吹くだろう。

  人は死ぬが、自由は残る。

  兵士たちよ、独裁者に耳を傾けてはならない。

  君たちは、感情までも統制され操られている。

  独裁者の心は、冷たい機械でできている。

  君たちは、機械じゃない。人間なんだ。

  愛を持て、憎しみは捨てよう。

  諸君「神の国は汝らの中にあり」と言うが、

  特定の人でなく、皆の中にあるんだ。

  誰でも、人生を楽しくする力を持っている。

  その力を結集し、社会のために役立てよう。

  働く意欲がわく社会のため。

  独裁者も、初めはそう言って人心をつかんだ。

  だが、それはウソだった。

  独裁者は、自己の欲望だけを満足させたのだ。

  国家間の障害を取り除こう。

  偏見をやめて、理性を守るんだ。

  そうすれば、科学も幸福を高める。

  諸君、持てる力を集めよう。

 

 ハンナ、ぼくがわかるかね。どこにいても、元気をお出し、
 
 雲がわれ、日がさし始めた
よ。
 
 暗やみを抜け、僕達は生まれ変わる。
 
 もう獣のように憎しみ合うこともない。

 元気をお出し、ハンナ。人はまた歩き始めた。
 
 行く手には、希望の光が満ちている。

 未来は、誰のものでもない。僕達全員のものだ。
 
 だから、元気を。