孫文

 

 孫文、この中国の偉大な革命家を私たちはあまりに知らなさすぎると思う。歴史の中で「三民主義」と聞いたら、「ああ、孫文ね。」と答える人は、どれほどいるだろうか。

 そして、この孫文が生き、活動した時代については更に知らない。つまり教えられていないのでは。中国に、辛亥革命(1911年10月10日=武昌起義)が起き、そして、清朝滅亡と中華民国の建設、その後の袁世凱などの軍閥割拠と国民党の北伐などなど。その時の中国や日本の歴史がどれほど教えられているだろうか。

 この孫文の夫人は、宋慶麗であり、後の中華人民共和国副主席として中国の民衆から愛された人であることも。

 その孫文が、1919年1月に発した「国際共同発展中国実業計画」には、

「国際戦争は組織的大強盗行為である。…欧州大戦においても戦敗国ドイツは勿論、戦勝国フランスも実際において得たところはない。いま日本の軍国主義者がその侵略政策を中国に強行しようとしても、目覚めた中国は全力でこれを拒否するし、列強もまた日本の独占を許す者でない。」

 と述べている。

 そして、その遺書には、

「余の力を国民革命に致すことおよそ四十年、その目的は中国の自由平等を求めるにあり。四十年の経験を積んで、この目的に到達せんと欲するには、必ず須らく民衆を喚起し、世界の平等をもって我に対する民族と連合して共同奮闘すべきことを知る。現在、革命なほ未だ成功せず。すべてわが同志よ、須らく余の著はすところの建国方略、建国大綱、三民主義及び第一次全国代表大会宣言によって継続努力し、目的を貫徹すべし。最近主張せる国民会議の開会、不平等条約の廃除は、特に短期間内にその実現を促すべし。ここに至嘱す。」(遺書の一、国民党党員に対してのもの)

            『孫文傳』鈴江言一著(岩波書店 昭和47年第八刷)