勤務時間に関する文部科学省2006・4・3通達

2006年4月3日、文部科学省は勤務時間の監督者による現認などについての「通達」を出しました。
これは、教職員の長時間勤務が異常な状態にあることの反映によるものと思います。しかし、各県教委は、この「通達」を「おろさない」と。「おろすと、現場が混乱する。」という理由で。
「弔意強制のような、おろさなくてもいいものはすぐにおろすくせに。こういう教員に必要なものはおろさないのか。」という声が起きています。
その「4・3通達」を添付します。

文科省の06年4・3通達 (写し)

都道府県知事                               平成18年4月3日

指定都市市長

各都道府県

指定都市教育長   宛

文科省初等中等教育局初等中等教育企画課長

同 高等教育局高等教育企画課長

同 スポーツ・青少年局学校健康教育課長

労働安全衛生法等の一部を改正する法律等の施行について

 労働安全衛生法等の一部を改正する法律(平成17年法律第108号。以下「改正法」という。)については、平成17年11月2日に、また、労働安全衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令(平成18年政令2号)及び労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成18年厚生労働省令第1号)が、平成18年1月5日に、それぞれ公布され、別添1及び別添2のとおり厚生労働省から都道府県知事等に通知されました。

 ついては、以下の事項について、周知徹底するとともに、労働安全衛生対策に万全を期していただくようお願いします。

 なお、都道府県教育委員会及び都道府県私立学校主管課においては、域内の市町村教育委員会及び所管の学校(専修学校・各種学校を含む)に対しても周知されるようお願いします。

                 記

1.長時間労働者への医師による面接指導の実施について

 今回の労働安全衛生法の改正によって、全ての事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場は平成20年4月から適用)において、事業者は、労働者の週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められるときは、労働者の申出を受けて、医師による面接指導を行わなければならないこととされました。

 また、長時間の労働(週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超えた場合)により疲労の蓄積が認められ、又は健康上の不安を有している労働者、事業場で定める基準に該当する労働者についても面接指導を実施する、又は面接指導に準ずる措置を講じるよう努めなければならないこととされたところです。

 各学校の設置者におかれては、常時50人以上の教職員が働いている学校等においては、産業医を活用する等の方法によって面接指導を実施すること、産業医を選任していない学校等については、改正法の規定は平成20年4月1日から適用されることから、その間に、保健所等と連携して、面接指導を実施できるような体制を整えることについて指導していただくようお願いします。

 また、私立学校については、地域産業保健センターの活用も有効であることから、十分に連携をとっていただくようお願いします。

 なお、公立学校の教職員のメンタルヘルスの保持等については、平成17年12月28日付け17初初企第29号初等中等教育企画課長通知において各教育委員会へ依頼しているところですが、国、私立学校においても以下の方策などにより、所属の教職員のメンタルヘルスの保持等について一層取り組んでいただきますようお願いします。

(1)学校における会議や行事の見直し等による校務の効率化を図るとともに、一部の教職員に過重な負担がかからないように適正な校務分掌を整えること。

(2)日頃から、教職員が気軽に周囲に相談したり、情報交換したりすることができる職場環境を作ること。特に管理職は、心の健康の重要性を十分認識し、親身になって教員の相談を受けるとともに、職場環境の改善に努めること。

(3)教職員が気軽に相談できる体制の整備や、心の不健康状態に陥った教職員の早期発見・早期治療に努めること。

(4)一般の教職員に対して、心の健康に関する意識啓発や、メンタルヘルス相談室等の相談窓口の設置について周知を図るなどの取組を推進すること。併せて、管理職に対してメンタルヘルスに対処するための適切な研修を実施するよう努めること。

 

2.労働時間の適正な把握について

 労働時間の適正な把握については、平成13年4月6日付け基発339号厚生労働省労働基準局長通知「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(平成13年4月27日付けで総務省自治行政局公務員部公務員課長から各都道府県・指定都市に通知)において、具体的な方法等が示されているところですが、今後とも、各学校等における勤務時間の適正な把握に努めていただきますようお願いします。

 なお、基準として示されている主な内容は、以下のとおりです。

(1)使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとに始業、終業時刻を確認し、これを記録すること。

(2)使用者が、始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として、次のいずれかの方法によること。

  ア 使用者が、自ら現認することにより、確認し、記録すること。

  イ タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

(3)労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存すること。

(4)事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。

 

3.労働安全衛生体制の整備について

 従来から、学校等における労働安全衛生管理体制については、各種会議等の場を通じて産業医の選任等を進めていただくようお願いしておりましたが、その重要性にかんがみ、一層の整備を進めていただくようお願いします。

4.労働安全衛生に係る教育について

 改正法の附帯決議第9号(別添3参照)において、「企業間競争の激化や働き方の多様化が進む中で、労働者の協力・参加の下で行う事業者の自主的な安全衛生活動の役割が一層重要となることを踏まえ、その促進に向け格別の配慮を行うとともに、学校教育の場においても労働安全衛生の必要性について指導の徹底を図ること」とされたことを踏まえ、各学校の設置者におかれては、働く人の健康の保持増進は、職場の安全管理や健康管理と共に、心身両面にわたる総合的、積極的な対策の推進が図られることで成り立つこと、さらに、この対策では、ストレスに対する気付きへの援助、リラクゼーションの指導などメンタルヘルスケアが重要視されていること等について、各学校で適切な指導がなされるようお願いします。

以上

 

(解説)
教職員の勤務状態は劣悪です。
部活、持ち帰り仕事、成績処理、授業準備、教材研究、家庭との連絡、個別指導、進路指導などなど。問題なのは、これらが勤務時間を無視して、勤務時間外に行われており、管理職(校長ら)もそれを見て見ぬふりをしていることです。
そんな状態に対して、教員が「勤務が…。」と言うと、「子どもらのために…」「教育に命をかけなさい。」などという言葉が返ってきます。「教員に勤務時間はない。」という管理職の言葉はそれを物語っています。つまり、これは、「教職という崇高な仕事に『勤務だ』『勤務じゃない。』などとみみっちいことは言いなさんな。」ということなのです。
しかし、教員も人の子。家族もあれば、健康への不安もあります。睡眠2〜3時間では良い教育などできるはずもありません。

そのような全国の教職員の置かれた劣悪な状況に対して、きびしい批判があり、それに対して、文部科学省が労働安全衛生法の改正(改悪)に関連して「4・3通達」を出したものだと考えます。その内容は、重要です。
しかし、県教委は「こんなものおろせない。」「おろすと、現場が混乱する。」と。
確かに、県教委は「教職員に時間外勤務はない。」と強弁し、改善する姿勢が微塵も感じられません。
憲法違反の日の丸・君が代強制には熱心でも、こういう教職員の健康を守る事に関しては、一向に理解を示さない教育委員会では、困ったものです。