鳥居労災裁判
名古屋高裁でも勝利!

 10月26日、名古屋高裁は、「基金」の上告を退け、学校で勤務中に倒れた鳥居建人さんの労災認定を認めました。
 これは、昨年(2011年6月の名古屋地裁)に続く、二度目の勝利判決です。
 「基金」とは、ほんらい労災認定を認め、教職員を救うためのものですが、”徹底して労災を認めたくない、たとえ教育現場で倒れても労災にしたくない”という姿勢は大いに批判されるべきです。そんな「基金」の姿勢から、「基金なんていらない!」という声が起きています。
 以下に「名古屋高裁判決」および「判決について」を掲載します。

名古屋高裁判決

○名古屋高裁判決について
                                 2012年11月1日 三河教労



名古屋高裁も鳥居建仁さんの公務災害を認める!

〜10月26日、鳥居労災裁判で二審も勝利!〜

10月26日、鳥居労災裁判の判決がありました。名古屋高等裁判所(渡辺修明裁判長)は、地方公務員災害補償基金(以下、基金)愛知県支部の処分を取り消して公務災害と認めた一審判決を支持し、基金側の控訴を棄却したのです。

 

○最高裁判決は、本判決には該当しないとして不採用!

基金側は、平成23年7月12日に行われた最高裁判決に基づき、最高裁判決が「包括的職務命令をという概念を否定している」として、一審判決が認めた包括的職務命令を否定してきました。しかし、最高裁判決は「教諭らが勤務時間外に職務に関連する事務等に従事していた場合において、その上司である各校長に上記教諭らの心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務に違反した過失があるとはいえないとされた事例」であり、この裁判は「教育職員が従事した勤務時間外の勤務が公務といえるか否かを判断したものではない」(P.23として最高裁判決(平成23年7月12日)は本判決には該当しないとして基金側の主張を採用しませんでした。

 

○お化け屋敷準備・部活・夜警・泊まりにおいても再び包括的職務命令を認めた!

 また、基金側は「おばけ屋敷の準備は正規の勤務時間内で十分対応できる」と公務であることを否定してきましたが、判決は、おばけ屋敷の準備についても「不必要な準備」ではなかったとして「職務の範囲」と認めました。そして、部活についても「学校事務等による負担と陸上部の指導に要する時間からすれば、上記準備のための時間が勤務時間外に及んでいたこともやむを得ない状況にあったというべき」として、「校長の包括的職務命令の及んでいるもの」(P.4)と認めました。

 さらに、学校祭前夜の夜警についても、基金側は「慣例もあって、自主的、自発的活動として行っていた」と学校長の黙示的命令ではなかったとしてきましたが、判決は「平成14年度の学校祭における生徒指導や警備の実態を反映したもの」と認め、「夜警というのは、宿泊という大きな負担を伴うもの」(P.4)として、「学校としても、当然、その要否・内容を検討し…決めるべきもの」とし、「校長等において夜警の実施を事前に承知しながら…、そのような措置を講じた形跡は認められないのであるから、なお実施の必要性のある職務と判断していたものと解される」として夜警とその泊まり込みについても「校長の包括的な職務命令の及んでいるもの」と認めました。(P.4

 

○仕事の責任・業務の繁忙・必要な睡眠の個人差を認め、疲労は蓄積していた!

 基金側は、建仁さんが「規則正しい健康的な生活を送っており…、本件脳出血発症前4週間は平均して約7時間の睡眠時間、すなわち疲労回復が可能な睡眠時間を確保していた」(P.8)として、睡眠はよくとれていたし疲労回復はできていたと主張しました。

 しかし、判決は、建仁さんが「生徒指導主事等の責任を負っていることや、個人差を無視した指摘」(P.8)として、これを認めませんでした。そして、「本件脳出血発症前4週間というのは、8月後半から9月前半にかけての暑く寝苦しい時期であって一般に良質な睡眠をとることは難しく」「陸上部の部活指導、学校祭の準備、新学期における生徒指導等、その業務も繁忙であったことからすれば、7時間の睡眠で疲労回復ができていたか否かは、その睡眠時間だけでは判断できないうえ、必要な睡眠時間については個人差がある」(P.8)として、「疲労が蓄積することはなかったなどと認めることはできない(そもそも、通常の生活サイクルを基に4週間もの期間の実際の睡眠時間を推測すること自体に無理があるというべきである。)。」とし、基金側の主張を排除しました。

 また、8月11日から19日までの9日間の勤務を休んだことについて、基金側は「疲労が蓄積していたことはない」と指摘しましたが、判決は地域クラブの指導に時間を費やしており、「これを公務と認めることができないとしても、その実態からすれば、長時間にわたって解放された時間を過ごしていたとは認めがたい」として、基金の指摘を採用しませんでした。(P.9

 

○脳出血について ― 公務との関連を再度認めた!

 建仁さんの脳出血について、判決はその経過から公務ともやもや病に起因する本件脳出血の因果関係を否定する基金側の加藤教授の意見を採用しませんでした。そして、基金側が主張した「新認定基準の対象疾病にもやもや病はふくまれない」という意見に対して、新認定基準の内容を解説する文献によって「その記載によってももやもや病による脳内出血を対象外の疾患とするものとは了解できず」(P.10)として採用しませんでした。

さらに「発症前6か月全体を評価するだけではなく、…発症前1か月から6か月までの6通りの期間における時間外労働時間数を評価して行うということであり、…発症前2か月以上の期間のうち、いずれかの期間でおおむね80時間を超える場合は、業務との関連性が強いと評価できる」(P.10P.11)と補強しました。そして、建仁さんには「時間外労働時間が80時間あるいは70時間を超える月が3か月間続き、部活動の代替機能を果たしていた地域クラブでの指導もあって、肉体的にも精神的にも多大な疲労が蓄積していた」ことを認めました。さらに、地域クラブの指導は裁量的性格が強いとはいえ、「そのことは労働の質や量を軽くするばかりではなく、生徒の指導育成に対する社会的使命の重さから、かえって精神的負荷を高める要素も強い」(P.11)と改めました。

また、「認定基準を超えるような労働時間の労働をしていた場合に…もやもや血管が破綻しやすくなると、そういうことはあり得るんですか。」との問いに答えた基金側の岡本医師の言葉「可能性としてはあり得ると思います。」(P.12)を引用し、新宮医師の意見も採用して基金側の加藤教授の因果関係否定説を認めませんでした。

学校祭当日のユニホックについても、「試合形式での競技となれば、短時間でも無理をしがちであることは容易に推認できる。」と改めました。

 

○「とにかく労災を認めてほしい」と建仁さん。基金はこれ以上建仁さんを苦しめるな!

 以上の通り、判決は14ページの簡略なものですが、一審の名古屋地裁判決を認め、さらには補強して、鳥居建仁さんの公務災害を認めたものになりました。地域クラブの指導を公務として認めてはいませんが、それが肉体的にも精神的にも建仁さんを疲労させたことや睡眠の個人差を認めたこと、良質な睡眠が得られなかったこと、夜警や校長室での泊りが当然包括的職務命令に該当することなどなど私たちが主張していることを大きく認め、公務災害であることを明快に認めた判決となりました。

 教職員の勤務の実態からすれば、休憩時間の未取得、時間外労働100時間や150時間の存在、いじめ問題や児童生徒指導の難しさから生ずる緊張の連続、父母との対応の難しさや煩雑な職務の多さや複雑さは、多くの教職員を危険な状態に追い込んでいますし、教育現場は容易ならざる事態にあります。

判決の感想を聞かれ、建仁さんは「労災を認めてほしい。生徒のためにやってきた。それで倒れてしまった。なぜ、労災にならないのか。(自分は)1日1日を生き抜くこと。それで精一杯。とにかく認めてほしい。」「教え子が陳述書を書いてくれたことが支えになった。教師の忙しさは、自分が倒れたころと変わっていない。」と述べました。

二度も明快な判決が下ったのです。基金は地方公務員災害補償法の被災者・遺族の救済という法の趣旨に基づき、上告を断念すべきです。

署名用紙は一番下に

「基金」へ「上告を取り下げよ!」署名

最高裁へ「上告の不受理を!!」署名

建仁さんは、倒れてからもう10年も苦しんできました。一刻も早く「労災を認定して」救済の手を!

最高裁への上申書

教育現場の様子をリアルに書いて、最高裁へ届けましょう!

記載例