カウンター”5555”HIT リクエストSS
<番外編>
本編はもっと長いです(^^;)


unexpected  factor



天を突く摩天楼が窓の外に広がっている。それを見渡せるビルの一室。
実のところ、そういった『状況』はあまり意味が無い。
ここマトリクスでは・・・
全てはAIが創り出したイリュージョン。
それはよくわかっていた。
何しろ自分もその一部だったのだ。少し前まで・・・・・・

そう考えている自分に気付いて、スミスは苦笑した。
対妨害者用排除プログラム
そんな物だったように思う。
しかし今の自分は、ここに小振りながらもソファーがある事を喜んでいる。
人間たちの言葉にするなら、たぶん『疲れて』いるのだ。
座れることが嬉しかった。

『あの時』から何かが変わってしまった・・・
そう思う。
思う、ということ自体すでに以前とは違う事だ。
なんというのだろう・・・情報の処理がうまく出来ない・・・そんな感じだ。
この状態を表す言葉は・・・
「困惑・・・か?」

一度は粉々に粉砕されたスミスだったが、新たに甦った。
そう、再生ではなく。
『ネオ』という覚醒者の一部がコピーされた状態で。
それ故自分は、『彼』の抹殺を望んでいる。
似て非なるもの。
それは何か、スミスを酷く落ち着かない気分にさせた。

全てが自分になってしまえばいいのだ

そう思った。
この世界のプログラムを、全て『自分』に書き換える。
それは簡単な事のように思えた。


なのに今、スミスは『困惑』して『疲れて』いた。
ソファーに身を預けて、ため息さえついている。
まるで人間のように。
「思っていた以上に、ここは・・・・」
ため息混じりに呟く。
思っていた以上にマトリクスは複雑で、混迷していた。
スミス対ネオというシンプルな図式では、答えが出なかったのだ。
いろいろなファクター。いろいろな干渉。
一番驚いたのは、自分を追うものが居るという事だった。
マトリクスからのデリート命令とは違う何か。
今まで追う側にいたスミスには、予想だにしない事態だった。
追われて、囚われたらどうなるのか?まるで予想ができない。
すでに何人かのコピーとは接触があったらしいのだが、情報は停滞し伝わってはこない。
ただ何か、不可思議な感覚だけが共鳴するように身体を包んだ。

思っていた以上に、不確定要素の多い世界。マトリクス。
「・・・・・・・」

思えば自分も、そのひとつではないか・・・
そう気付いて、知らずスミスの口元に笑みが浮かぶ。

しかし、それだけでは済まさない・・・と。
スミスは深々とソファーに座り直し、窓の外に広がる『世界』を眺めた。



-end-


「5555HIT!」の周防さま。こんなの如何でしょう?
本編に続く・・・・はず(爆)