<使用上のご注意>
カウンター5555HIT!リクエストSS

bbsでの皆様のレスに かなりインスパイアされてます(^^;)
いつも来てくださって ありがと〜!!
そのせいとゆーワケじゃありませんが かなりイカレタSSです(爆)
覚悟してね〜!!





particular one

「キスしてもらおうかな。それは情熱的なのを」

その言葉を聞いた時、ネオは頭の中が真っ白になった。
ザイオンに生きる25万の人類を救うべく、必要な情報を得る。そのために会いに来た相手が出した交換条件。
10人近く居た用心棒を追い払って、わざわざ場所を変えての言葉が、これだった。

もしかしてこれは、救世主とやらに課せられた試練ってヤツか?
つい、そんな事まで考えて、ネオは相手の顔を改めて見直した。
自称マトリックスの王様、メロヴィンジアン。
デカダンスの薫り漂う、細面の、いかにもナンパなフランス男…そんな形容詞がネオの頭の中を駆け巡った。
実際はグリーンのプログラム・コードのストリームでしかないのだが、どうせキスするなら、このダンナの方ではなくて、さっきまで横に座っていた妻の方が、まだ救いがあるというものだ。
もっとも、それはそれで、同行しているトリニティの反応が不安だが…。
「あ〜〜〜・・・・・」
即答できずに言葉を濁すネオを、当のメロヴィンジアンは興味深げに眺めていた。
「ふ・・・む」
息と共に笑みをもらす。
「いや、長く生きていると退屈でね。まぁ・・・それなりに刺激が欲しいというか・・・」
わかるだろ?というように肩を竦める。
「刺激なら、これはどう!」
背後からトリニティの殺気に満ちた声と、銃を構える音が響く。
「まぁ確かに。刺激的ではあるだろうが・・・」
少々上品さに欠ける…と、メロヴィンジアンは動ずる気配もなかった。
「トリニティ」
努めて冷静な声で、いきりたつ彼女を制止し、ネオはため息をひとつ、ついた。

「本当に、キーメイカーの居所を教えてくれるんだな?」
「それは、君次第だよ。ネオ」
ふんわりと笑みを浮かべたその顔は、赤頭巾ちゃんのおばあさんに化けた狼のそれの様で、思わずネオは後ずさった。
いやまったく、このAIが創り出した世界は…と、ネオは腹の中で悪態をつく。
古参のモノほど、手に負えなくなってくる。
マトリクス直結のエージェント達の、なんと明快だった事か。
「ネオ?」
声にまでフレグランスが有るようなメロヴィンジアンの呼びかけに、思わず思索の淵に逃避していたネオは我にかえった。
「さあ・・・」
「あ・・・ああ」
もう後には退けないと決死の覚悟で、ネオはメロヴィンジアンの前に立つ。
キス一つで25万人の人間が助かるなら、それでいいじゃないか・・・
そう思う。
しばらくは多少落ち込むかもしれないが、まぁ大義名分もある事だし、大した事では無い。
そう。プログラム・コードの一部分に接触するだけの事だ。
あれこれと、自分自身を納得させるまで理屈を積み上げてゆく。
そんなネオの様子を楽しんでいるメロヴィンジアンの腕に触れ、顔を近づける。背中に同行者のモーフィアスとトリニティの視線を痛いほど感じた。
「・・・・・・!」
今まさに接触しようとしたその時。辺りの空気がざわめき、何かが近づいてくる気配があった。
「何だ?」
これ幸いと、ネオはメロヴィンジアンから離れて辺りを見回した。
バタン!と大きな音をたてて、用心棒の一人が部屋に飛び込んで来る。
「どうした!?」
「侵入者です。どうやら、奴を狙っているようです」
「阻止しろ!」
メロヴィンジアンのその様子に、ネオとトリニティ達は目配せをして、部屋を出た。

長い回廊を走り抜け、騒ぎの音を頼りに進むと、広いホールに出た。
メロヴィンジアンの用心棒たちが、圧倒的な数の侵入者に対して抗戦していた。
黒いスーツに真っ白なシャツ。まったく同じ姿の何人もの男。
「噂には聞いてたけど、こんだけ並ぶと壮観だなぁ」
「すげ。選り取りみどりじゃん♪」
用心棒の中でも目立つ二人、白装束の双子が呑気な感想を言っているのが聞こえた。
「みんな同じだけどな」
「どれをとっても不公平にならなくて、いいんじゃない」
「ふーぅん・・・でも俺は、どうせならオリジナルがいいぜ」
「そりゃ俺だって」
まるでダンスに誘う相手を品定めしているかのような会話に、ネオは思わず呻いてしまった。
何しろそこに居るのは・・・・
「スミス・・・・・」
その呟きに気付いたスミス達が、一斉にネオを見る。
「アンダーソン君!」
中の一人が、いつもの口の端を上げる笑みを浮かべて、名を呼んだ。
「どうしてここに?」
「もちろん君と同じ物を求めてだよ。アンダーソン君」
乱闘の続く中、別のスミスが応える。
「ソースへと入るためのキー。そうだろう?」
「君と私との関係を、忘れたのかね?」
次から次へと、たたみかけるように違うスミスが応える。
「馴れ合いかね?」
メロヴィジアンの声が、ホールの入口から切り込むように聞こえてきて、ネオは焦る。
「そうじゃない!」
「そう。馴れ合いなどではない」
否定するネオの声に被るように、スミスの声が応えた。
「なるほど。では、グルか?」
さも驚いたという様に、メロヴィジアンは肩を竦めた。
「予期せぬ事とは有るものだな。よくわかった」
ブツブツと何事か呟きながら、首を横に振る。
「全員殺せ!」
待ってました!とばかりに白装束の双子が前にでる。
そのままフワリと半透明化し、風のように移動する。まるでゴーストのように。
「メロヴィジアン。約束が違うぞ!」
「そうかな?」
ネオの言葉に、メロヴィジアンは肩を竦める。
「条件をクリアすれば、キーメーカーの居所を」
「教えるとは言ったが、渡すとは言った覚えはないよ。ネオ君」
そう言って、嫌味なまでに上品に微笑んだ。

「モーフィアス!いったん出直そう」
すでに収集のめどは立ちそうも無いと判断して、ネオはモーフィアスとトリニティを乱闘の中から出口の方へと誘導する。
「ここは俺が喰い止める」
「ネオ!」
「早く!俺は大丈夫だから」
二人をホールの外へと逃がし、追おうとする者の前にネオは立ちふさがった。
戦いを好んでいるワケではないが、先刻までの状況より、よっぽどマシだった。
時々、双子の姿を目の端で捕らえる。
二人はネオには目もくれず、次から次へとスミス達を襲撃していた。
反撃されれば煙のように解けて、攻撃を無力化してしまう。なかなか手強い相手だった。
ネオの耳に、二人の会話が聞こえる。
「オリジナルは、どれだろう?」
「わかんねーな。でも、どれもイイ感じな奴ばかりだ」
「久しぶりに、楽しめそうだな」
「ああ」
二人の声に、何か嫌な響きを感じて、ネオは気分が悪くなる。
戦うというよりは、何かこう別な事を期待している感じがしたのだ。
「こいつはどうだ?」
双子の片方が、また別のスミスと戦いだした。
鋭い拳をよけ、半透明化して後ろに廻り込み、そのまま羽交い絞めにする。
その拍子にスミスのサングラスが飛び、床の上を滑って、今しも別の用心棒を倒したネオの足に当たった。
「うわぁお!」
もう片方が歓声をあげる。サングラスを失ったスミスは、自分を捕まえている腕を解こうと必死にもがいていた。
「思ってた以上にイイかも」
近づいてくる片割れに、スミスは羽交い絞めにされながらも銃を向け、撃つ。
しかし弾は、あっさりと半透明になった身体を通り抜けていった。
全弾撃ちつくしたのか、デザートイーグルのスライドが止まったまま戻らなくなる。
突然、ホール内の空気が重くなり渦を巻き始めた。
「何だ?」
双子の白銀のドレッドヘアを揺らして、見る間に突風が吹き荒れる。
「あいつだ!」
ネオを中心に空気が渦を巻いて、竜巻のように昇っていた。
そして一気に膨れ上がり、そこにある全てのものを巻き上げる。
一瞬後、ホールの半分が跡形もなく吹き飛んだ。


漆黒のビロードの上に、色とりどりの宝石を撒き散らしたような夜景が眼下に広がっていた。
高層ビルの屋上から、ネオは美しい夜景を睨むように見ていた。
「いつまでそこに居る。出てきたらどうだ?」
振り向きもせず言う不機嫌そうなネオの声に、給水塔の後で人影が動いた。
「ご機嫌斜めだな・・・」
スミスが一人、ゆっくりと現れた。
「うるさいな。誰のせいだと・・・」
思わず口をついて出た言葉に、ネオは我にかえる。
「アンダーソン君?」
揶揄するような声が近づいて来る。
「まったく。あんたは!」
ネオは振り向きもせず、俯いたまま吐き捨てるように呟く。
「最初っから、いけ好かない奴だった!陰険で」
「ほう・・・?」
「嫌味で。人がうんざりする様子を見て、喜んでいるんだ」
すぐ傍らに、スミスの気配を感じた。
「でも君は・・・」
スミスの声に、ネオは顔を上げる。
「そんな私が、好きなのだろう?」
サングラスの無いその顔は、優しいとしか形容のしようがない笑みを浮かべていた。
瞬く夜景を背景に、いつものように隠されてない、深いアイス・ブルーの瞳がネオを見ていた。
「ただのプログラムでしか…ないのに」
その瞳が何よりも綺麗だと・・・そう思いながら、ネオは呟く。
「そうだ」
「実体など無いのに・・・」
「そうだな」
「ならば何故?どうしてあんたの事が、こんなに気になる」
「さぁ?」
笑みとともに囁いて、スミスはどこからか出したサングラスをかける。
「ひとつ言えるのは、君が私を変えてしまったという事だ。こんなふうに」
そう言って、いつもの笑みを浮かべた。
「君が私をどのように思っていようと、私は君と馴れ合う気は無い。私の目的はひとつだ」
素早い動きで、スミスはネオの胸に手刀を突き刺す。
しかし寸前で、その手は阻止された。
ネオは、捕まえた手首を自分の方に引き寄せる。
「俺は、あんたにはならない」
右手首を捕まえたまま、スミスの身体を背中から抱きとめて、耳元で囁いた。
「でも、あんたを逃がしたりはしない」
ネオはスミスの右腕を引き、スーツの袖口からのぞく糊の効いた真っ白なカフスに、しっかりと口づけた。
くっきりと、痕が残るほどに・・・

     



抱いていた身体を解放し、少し離れて向かい合う。
スミスは右腕を左手で押さえて、ネオを睨みつけた。
「何のまねだ。アンダーソン君」
相変わらずの、独特の抑揚を持つ声が問い質すのに、ネオは微笑んだ。
「ルージュを塗っておけばよかった」
「マーキングでもしたつもりか?」
「ああ」
ネオはそう答えると、闇夜の空に舞い上がっていった。


-end-
<03,06,22>


カウンター5555HIT!キリリク本編(爆)
イラスト・・・とりあえず一枚<0624)・・・・これってセクハラじゃ・・・(笑)


周防さま。
『スミス 微笑の爆弾!』
101個も無いですが、ネオのダメージはいくつ程でしょう?(笑)


TAMAKIさま。
かなり凶悪(笑)なサジェスチョン、ありがとございました〜♪