もしも こんな出会い方じゃなかったら


俺たちの関係は もっと違っていただろうか・・・?



もしも 違う場所で出合ったなら


あんたと もっと解り合えただろうか・・・?


ああ・・・


たとえ何処で どんな出会い方をしたとしても


俺はあんたに惹かれるだろう・・・




Holy Night



「なぁスミス。あんたクリスマスは、どう過ごすんだ?」
仕事の途中、例によって何か指示を仰ぐ様なふりをして、アンダーソンはスミスの耳元で囁いた。
「別に何も。特に普段と変わりない」
スミスの応えは素っ気無い。
「俺も予定無しだ」
だからどうした?と言う様な一瞥をくれて、スミスは手にした書類に視線を戻す。
「暇なら俺と、X'masパーティーでもやらないか」
それを一緒に覗き込んで、アンダーソンはさらに囁いた。
スミスの返答は無い。
「イヴの夜に独りだなんて、寂しいだろ?」
そんなことはお構いなく、アンダーソンは先を続ける。
「外にはクリスマスのイルミネーションが輝いてる・・・てのに。暗い部屋に独りで居ると、つい寂しくてさ。いろいろ覗きたくなっちゃうんだな・・・ネット・サーフィンしながら」
コン!
スミスのカフスがデスクに当たって音をたてる。
「君はまたハッキングを・・・」
アイス・ブルーの瞳の色そのままの冷たい視線。それをものともせず、さらに続ける。
「だから。独りだと、だよ」
アンダーソンは微笑んだ。


クリスマス・イヴの夜。
なぜ休みにまで・・・とボヤキながらも、約束の時間きっちりに、スミスはアンダーソンの部屋を訪れた。
相変わらずのスーツで。律儀にも、ワインを手土産に。
仮住まいの室内は、飾りつけこそ無いものの、温かくスミスを迎えた。
テーブルの上にはデリバリーなのか、2人分のディナーの用意が整っていた。
「あんたのために、奮発したんだ」
呆れたように息をつくスミスを促して、テーブルにつく。

窓の外には、街路樹に飾られたイルミネーションが輝いている。
温かい料理と、ワインの酔い。それが思いのほか心地良くて、ついついスミスの表情も緩んでいた。

食事も終り、何本目かのワインを開けて。
ひとつのソファーに座って、他愛の無い話題で時を過ぎる夜。
「あ」
「え?」
「雪だ」
「ああ・・・」
窓の外には、音もなく舞う白い結晶の花。
「ホワイト・クリスマス・・・か」
ふ・・・とスミスが呟いて、ごく自然にメロディを口ずさむ。

I'm dreaming of a White Christmas・・・

「アンダーソン君?」
我に返って、静か過ぎる相手の名を呼ぶ。
アンダーソンはこれ以上無いというぐらい、幸福そうな顔をしていた。
「何だね?」
「ああ?いや・・・」
照れ隠しにかキツイ口調のスミスに笑みを向けて、アンダーソンはリボンのかかった小さな箱を差し出した。
「これは・・・」
「プレゼントだよ。クリスマスの。開けてみて」
言われるままに、スミスは小箱にかかったリボンを解く。
闇色のベルベットに包まれた小箱の中には、光を弾くカフ・リンクス。
「あんたの瞳の色と、同じのを探したんだけどね。無理だった」
だからこれで我慢してよ。とアンダーソンは冗談めかして囁いた。
「ああ・・・そうか。すまない。私は何も用意してないんだ」
「いや、いいよ。そんな・・・俺が無理に誘ったんだし」
「いや、しかし・・・」
「ああ、じゃあ」
アンダーソンはスミスの手をとり、自分の方に引き寄せる。
「カフス。俺に、付け替えさせてくれるかな?」
「アンダーソン君!」
「ジョークだよ。さっきの歌だけで充分おつりがくる」

それに何より、こうして聖夜を共に過ごしている・・・

もうこれだけで、最高なプレゼントだと・・・

そう、アンダーソンはスミスの耳元で囁いた。











たとえ何処で出会っても

たとえ何度 繰り返しても

きっと あんたに惹かれるだろう・・・











Holy Night   -end-

<03,X'mas eve>




X'mas用。如何でございましょ?
パラレルのようでパラレルでないような・・・・・

果たしてここは何処でしょう?