<使用上のご注意 : だから あまりマジに読んじゃイヤ (^^;>



 - cable action -

行く手を阻む敵を一瞬で蹴散らして、ネオは道を急いだ。
いつに無く切迫した雰囲気が彼のまわりを取り巻いていた。
今日はネオひとり。
連れは居ない。

立ち止まって、何かを探るように頭を巡らし耳を澄ます。
そしてまた、建て込んだ夜の路地を足早に歩き始めた。

「アンダーソン君」
懐かしい名を、聞き覚えのある低音の声が呼ぶ。
それを無視して、ネオは路地を曲がった。
「お急ぎかね?」
後ろから聞こえたはずの声の主が、前に立っていた。

ああ…そうだった…
ネオは呟く。
元エージェントだったこの男は、AIの束縛から自由になったと同時に、
自分を増殖させる事ができるようになっていたのだ。
だから何人いても不思議ではない。
きっとこの路地のそこかしこに身を潜めて、こちらを窺っているのだろう。
「悪いが、あんたに関わっているヒマは無いな」
「ほう…そうかね」
深く低い、まとわりつくような声で言い、口角を片側だけ上げる。
「君には無くても、私には有る」
キン…と、辺りの空気が張り詰めたような気がした。

多くの気配を察知したネオの耳が、それとは別のモノを聞き取る。
刻限が迫っている事を悟り、ネオは焦った。
「スミス」
「何かね?アンダーソン君」
「時間切れだ」
その言葉と共にネオはスミスに向かってダッシュすると、掴みかかろうとする手をかわし、その肩に手をついて頭上を回転して飛び越えた。
そのまま後も見ずに走り去る。
目的地は、もうすぐそこなのだ。

背後に大勢の足音を聞いて、ネオは立ち止まった。
このままでは、いけない。
これはデリケートな問題なのだ。
増殖したスミスまでも、その場所へとなだれ込ませるわけにはいかない。
振り返り、予想したままの、居並ぶスミス達を睨み付ける。
「諦めたのかね?アンダーソン君」
「違う!」
一人のスミスが楽しげに言うのに、ネオは言い返した。
「付いて来たければ、来るがいい。ただし一人だけだ!」
そう言い放つネオの背後には、夜の街のライトに浮かぶ一台の屋台が在った。


「へい!ピリ辛味噌ネギもやし大盛りのチャーシュー抜き、お待ち!」
威勢のいい声と共に、湯気の立つラーメンのどんぶりが二人の前に置かれる。
待ってました!とばかりにネオは割り箸を持った手を合わせると、即、食べ始めた。
その様子を、隣に座ったスミスが、どんぶりに手もつけずに眺めていた。
「喰えよ。美味いぞ」
そう言って、ネオはまたラーメンを食べる。
「アンダーソン君。君は・・・・・」
怒りをこらえているのか、スミスの声は震えていた。
「その名で呼ぶのは、もう…あんただけだな」
しみじみとネオが呟く。
「いや、ここのオヤジが頑固でさ。気に入った出来のスープにならないと、店を出さないんだ。そのスープにしたって、大した量作らないから、すぐ終わってしまう。俺はここのラーメンの大ファンだったのに、滅多に食べられなかったのさ。だから見つけた時には、何があっても食べてやる!って決めてたんだ」
たとえ現実でなくても・・・
そう、口の中で続けた言葉は、ラーメンと共に飲み込んだ。
「私は、食物を摂取する必要は無い」
静かな、それでいて身体の芯に響くような声でスミスは応える。
「ああ。それがあんたたちの欠点だな」
「何故かね?」
「ま…食欲ってのは、人間を人間たらしめている最たるものだからな」
「わからんな」
「そうだろうさ…」
あっさりと応えるネオに一瞥をくれ、スミスは息とも笑みともつかぬものを吐いた。
そして意を決したように、ラーメンを食べ始めたのだった。





「まいどあり〜〜!」
屋台のオヤジの威勢のいい声に送られて、二人は屋台から出た。
充分離れた、人通りの無い路地でネオは立ち止まった。
「待たせたな。さあ、どうする?」
間合いを取り、わずかに腰を落とす。
「…ふん」
それを鼻で笑って、スミスは背を向けた。
「スミス?」
「食後の運動には、まだ早すぎる」
片手を軽く振り、そのまま路地の奥へと去っていった。

ネオはその背中に同じように手を軽く振り、反対側へと歩き出した。




                            -end-



5,27の「ズームイン」のインタビューで、ラーメンを熱く語るキアヌ(^^;)
それをネタに友人とのメールでできたお話
笑ってくだされ〜〜(爆)

(03,05,28)