-存在理由-


俺の個人演算装置内のプライベート空間に造った部屋に、彼が来ていた。
彼のために造った部屋なので、当然と言えば当然だが。

一緒に過ごせる時間はあまり長くない。
彼には大切な使命が有るし、無論、俺にも仕事がある。
それでもこうして、好きな相手と過ごせる時間が有るのは幸せだ。
会う前は、あれもこれもと思い巡らせた予定が、いざ顔を見たら、もうそれだけで満足で。
ただのんびりと、取り留めの無い事を話して時が過ぎてゆく。
細組の窓格子からは、いつも瞑想をする庭が見える。
整然とした静かな空間。静かな時間。
それにも似た、天使の名を持つ白い衣の彼・・・

「何か?」
ふいの問い掛けに、俺は我に返る。
「え?何?」
意味がわからず怪訝そうに問い返した俺に、彼は微かに笑みを浮かべて目線をずらした。
その後を追うと、彼の手を、俺の手が掴んでいた。
「・・・!」
声もなく、固まってしまった俺の手を、彼の手が握り返してくるから、俺はそのまま動けない。
「どうか・・・したか?」
静かな声が問い掛ける。
「あ〜・・・その・・・」
俺は手を握られたまま、小声で呟く。
実は不安になったのだ、と。
「・・・そうか」
それだけで彼は理解したらしい。
丸い小振りのサングラスの陰で、アーモンド型の目が微笑んでいた。
「あんたがあんまり、ここに似合ってるから・・・」

だって『ここ』は、俺が作ったプログラムの中。すべてが俺の嗜好で彩られている。
その中に在って、まるで違和感の無い彼もまた、自分の創り出したモノではないかと・・・

そんな不安。

「確かに、私はプログラムだがね」
「すまない」
「何を謝る?ほんとの事だ」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「え?」
言葉が続かず、お互い黙り込む。手を握りあったまま。
どちらからも離そうとはしない。
「生きてるって・・・なんだろうな?」
「生きてる?」
「そう」
握ったままの手を引き寄せて、改めて両手で包み込む。
「あんたの手は温かい。もちろんそれは、俺の脳にそう電気信号が送られてるから、
そう感じるんだってのは知ってる。でも、そういう事じゃなくて、
もっと違う部分であんたは生きてる、って感じる。
でもあんたはプログラムだと言う。だとすると、生きてるって・・・命ってのは何だろうな?」
身体がある事=生きているという事とは言い切れないこの世界。
「名前・・・だろうか」
「名前・・・?」
「または目的・・・?自分がここに存在するための理由?」
そう言いながら、彼はそっと手を引き抜いた。
「形とか触れられるような実体は無いが、それでも存在するために必要な物とでも言うか」
その手を見つめながら彼は呟く。
「こんな答えでは駄目か?」
「いや・・・」
生きる=存在するための理由なら・・・
「セラフ・・・」
未だ手を見つめたままの彼の名を呼ぶ。
うつむいた彼の顎に手を添えて、こちらを向かせて問い掛ける。
「では今、あんたは何のために生きている?」

ふうわりと、柔らかな羽毛が揺れるように綻んだ彼の唇に、俺は自分のそれを重ねる。

そして俺は、問いの答えを受け取った。


-end-

<03,11,28>





いやいやまぁまぁ、ねぇ・・・(何?)
いまいちキャラが掴みきれて無い・・・つーか?いや、2人とも。
ホント、どーしたらいいんだよっ!誰か教えて〜〜!

つか早く原稿送ってきてくれよ〜!お〜〜〜いっ!!(場つなぎにも限界が)

う〜〜ん…実はネオスミ用のネタなんだが
あの2人だったら、展開がもっとバイオレンスになるだろうな。きっと・・・