周防大島と松山 2013年10月
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異常なまでの猛暑と立て続けに襲来する台風に翻弄された2013年の夏〜秋。
ただでさえ消耗していくのに加え、日々の仕事で心が擦り切れてきたように感じていました。“秋バテ” なのか何なのか、とにかく元気がありません。自分の心が弱いだけのなのかもしれません。でも、自分ではどうにもならないほど固くなった心を解きほぐす必要があって、それには心を開放できる場所に行かなければなりませんでした。穏やかな自然が、優しく迎えてくれるような場所へ。
1日目 自宅→ 広島→ 周防大島 下田
季節外れの台風は東の海上に去り、冷たい北西の風が吹き荒れた翌日の朝は、秋が深まってきたことを示すかのように冷えこみ、気温がやっと10℃に届く程度でした。
起毛のシャツの上にウィンドブレーカーを羽織り、荷物満載で重量級となった自転車をこぎ出すと、鎌倉・江の島へ訪れた、前月の暑かった時期とはまるで違います。体を動かし、熱が生まれて体が温まり、体がほぐれてさらに動くようになる、秋を感じます。
ちなみに妻は夏に患った熱中症の影響が抜けず、今回は自転車は見合わせて無理せず公共交通機関での移動。日中はほぼ別行動することにしました。
輪行作業を始めた最寄り駅では、部活らしき高校生が数十人、バス乗り場に列をつくっていました。くたびれた中年の私とは違って活気があり、輝いています。いいなあ、と素直に思います。だけど、私は高校生に戻りたいとは思わない。高校生活は楽しいことも多いでしょうが、将来への不安が多い日々でもありました。学校や家庭、バイト先では、他人の役に立つことが求められていると教えられ、終始他人と比較され、社会に貢献する人間にならなければなりませんでした。裏を返せば役に立たない人間には価値がなく、将来も無かったのでした。私が屈折しているだけなのでしょうが、そんな世界に戻りたいとは思いません。
名古屋から乗車した新幹線のぞみ号の車内は、観光客を中心に混み合っておりました。そんなざわついた車内だけでなく、時速300km/h前後の恐るべきスピードや、せわしない揺れに異和感を感じない自分に驚きました。それだけ現代社会にどっぷり浸ってしまっているということなのでしょう。
広島で新幹線を降り、JR山陽本線に乗り換えました。宮島口駅でどっと乗客が降りてからは車内が閑散とし、ローカル線の風情が強くなってきました。
途中、岩国駅で乗り換えると、さらにローカル色が濃くなりました。旧型車両の鈍行列車は大きな騒音と共に、しかしさほど速度は上がらず、時折大きく揺れました。それは都会の汚れを身震いして振り落としているかのようにも感じられるのでした。
大畠駅からスタート
大島大橋を渡る
大畠駅で下車。ここから自転車の旅が始まります。早速自転車を組み立ててスタートしました。大島大橋へのアプローチを上り、大畠瀬戸の速い潮を眼下に見ながら、周防大島へと入りました。
もう少しゆったりとした、平和な空気を予想していましたが、島の北側の国道は交通量が多くて戸惑いました。日曜なのにもかかわらず、車がひっきりなしに行き交っていて、落ち着きません。コンビニも点在し、どこかドライで、本州とそれほど変わらないような雰囲気でした。
周防大島北岸を東進
久賀の集落を抜けて
庁舎のある久賀に入るころには、それでも時折車列が途切れるようになってきました。観光協会の施設で案内図を一部拝領、近くのカフェでひと休み。ドライというか、何となく溝のようでもある違和感は、ここでも拭えませんでした。
久賀の集落を散策した後、国道沿いに大崎をまわってUP-DOWNを何度か繰り返すと、たいした距離を走ったわけでもないのに、少しバテてきました。輪行や電車移動、乗り換えの疲れもあるのでしょう。無理することはありません。途中で休憩し、携行食を補給しながら東和にある道の駅「サザンセトとうわ」に着きました。
失礼な表現ですけど、島の規模に対してやや不釣り合いにも感じる大きい施設で、しかも間断無く客が訪れ、そこそこ賑わっているようでした。私にとっては違和感が消えず、島のリズムが感じられない。本州に引きずられた、どこか無理のある経済活動に見えなくもありませんでした。
島の主要産業は、みかん栽培と漁業、それに観光なのでしょうか。しかし失礼ながら、それらの産業はジリ貧な気がしてきます。
夕刻、風が冷たくなってきました。風邪を引いたのか頭痛がします。早めに宿へ移動し、ゆっくりすることに。
海に面した民宿へ
すばらしい夕食
夕食にはアジやタイ、ヒラマサのお刺身に、タチウオのフライ、メバルの煮つけ、タイの焼き魚にタコ飯... すみません、とても全部は食べきれませんでした。
宿の人たちが、どこか他人行儀なことだけ引っかかります。そもそも島の人たちは皆このような気質なのかもしれませんけれど、まさか民宿でも違和感があるとは... もっとも初めての宿泊客にフレンドリーに接してというほうが無理なのかもしれませんし、期待するほうがおかしいのでしょう。
他の宿泊客のおじさんが、宿のおねーさんにからんでいました。しつこくて、みっともない。
この夜注文した、本州の岩国産だという熱燗、なぜか頭痛が酷くなりました。