小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2017/11/26

萩〜秋吉台〜門司 2017年11月

  1日目 >2日目

この年は梅雨入りしてもそれほど雨が続かなかった代わりに梅雨明け後ずっとぐずつき、晴れれば蒸し暑く、秋の長雨が10月になっても収まらず、週末になると決まって雨。さらに2週続けて週末に台風がやってきて秋雨前線とともに大雨を降らせるという少々異常な天候。オートバイにも自転車にも乗れないまま、体力が落ちていく一方でした。ただでさえ灰色に塗り込められた平日に加え週末も暗く澱み、自分自身が腐敗していくかのようでした。
無理にとった平日の休みを迎えても、前々日から台風の影響で雨が降り続き、全くテンションが上がりません。出発時間の天候次第では四輪車に積載して最寄り駅まで行くオプションまであれこれ準備したりと、何かと落ち着きませんでした。

1日目 自宅→ 萩

出発の日の平日朝、雨は上がりました。
北西の強い風が吹いているものの、路面は乾き、コンディションは悪くない。通勤通学のかっ飛び自転車に追い抜かれながら、最寄り駅まで慎重に走っていきました。駅での輪行作業は20分少々で完了。
とここまでは至極順調だったのですが、構内の雰囲気がどうも怪しい。エスカレーターに乗っているとドカドカと後方から駆け上がってくる人たちが少なくないのはいつも通りでしょうか、妻と共に大きな輪行袋を担ぎ、3泊4日の荷物を抱えた私のところで行く手を塞がれてかなりイライラしているご様子。
十数秒待つことが我慢ならないのか、「通してくださいッ!」と怒鳴る女性。でも荷物が多くて避けることができず、私は詫びるばかりでした。通勤時間のピークは外したはずなのに、ホームは激しく混雑し、輪行袋を担いでいると身動きできないほどでした。台風通過後、強風の影響で電車が15分近く遅れていて、誰も彼も少々殺気立っていて、遅れて到着した電車に競うように乗り込んでいくのでした。
輪行袋を抱えた私たちは乗車を諦めて次の電車に乗ると、あまり混んでおらず助かりました。ただし順調に進んでいたその電車も名古屋が近づくにつれて速度が急降下。時折ノロノロ進み、名古屋駅に着くと定刻を30分近く過ぎていました。
指定席を予約した新幹線にはどうにか間に合ってほっとしたのも束の間。車内はビジネスマンで埋め尽くされており、戦う男たちや競わねばならない男たちの無言の緊張感に満ちていて、現実から逃げ出してきた私には少し息苦しさを感じるほどでした。何だか申し訳ない。場違いな、自転車旅という全く異質な私たちはどことなく肩身の狭い思いをしつつ、高速で走る新幹線に揺られていきました。


新山口でJR山陽本線へ乗り換え


萩駅から自転車で走り出す

新山口駅でJR山陽本線に乗り換え。車体は旧い。大都市圏ではまず使われない105系でしょうか、2両編成の黄色い車体は走ると大きく揺れ、時折ドスンときます。厚狭でJR美祢線に乗り換えると、車両は1両のディーゼル。とたんにのどかな空気になりました。人の姿が少なくなっていくと共に、戦いや競争の世界から互いを気遣う互助の世界へと変わっていきます。少々ウトウトし、長門市駅で乗り換えたJR山陰本線も1両でした。

東萩駅に到着。ゆっくりと自転車を組み立てて、まずカフェでひと休みすることに。少々走り、着いたカフェは広いながら穏やかな空気です。


趣のあるカフェ


ちょこっと美人という名のケーキ

カフェでいただいた地図を見ながらり、観光名所の武家屋敷界隈へと来てみました。

あれは20代前半の頃だったでしょうか、私は一度オートバイ:当時乗っていたカワサキGPZ250Rで訪れたことがあるはずですが、当時と全く印象が違います。若い頃はどこそこへ行ったという結果が欲しかった。あちこち巡ったという実績を求めていた。現地をじっくりと見ることよりも、いにしえの残照を感じることよりも。


菊屋横丁


この日は民宿へ

ほとんどの施設が開館時間を過ぎ、暗くなり始めてきたのでこの日投宿する民宿へ行きました。控えめで小さな佇まいな建物と、気さくな飾らないご主人と女将にほっとします。他人行儀な大きい施設も悪くありませんが、私はこうした小規模な場所のほうがくつろげます。


夕食は民宿の隣の食事処へ


どれも旨い!

食事処は宿の主人の次男と三男が切り盛りされているそうです。妻は海鮮丼、私はカマ焼き定食。さらにとレンコン餃子と揚げ出し豆腐をいただきました。すべてが旨い。味付けが自己主張せず上品です。地元の食材に対する敬意と、飾らない実直な姿勢が料理に現れているかのよう。しかも2人分全部で¥2,250という安さでした。