小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2024/12/29

だんだん街道と中村街道 2024年11月

  2日目 >3日目-

3日目 窪川→ 須崎→ 高知

予報通り前夜から気温が急降下、朝の気温10℃。朝食を済ませて持参した防寒着を着込み、走り出しました。高知市を目指して中村街道を走っていきます。


朝食は前日買ったおにぎりを


交通量が多くて少々走りにくい

国道56号に入ると交通量が多く、走りにくいです。通勤時間帯だからでしょうか、先が心配になりましたが、幸いにも窪川を離れると高知自動車道へ入る車両が多いのか交通量は減りました。先へ進むとのどかな風情になってきましたが、この日は寒気が入り、北西の強風! 北へ向かう道は向かい風となり、ガクリとペースダウン。


七子峠です


一気に海沿いまで下ります

七子峠からは標高差300mを一気に下ります。向かい風でもハイペースで進みます。あっという間に下りきり、道の駅なかとさで休憩です。


道の駅なかとさ


パンがおいしい!

道の駅併設のパン屋は10:00オープンのはずが、9:00過ぎに開けてくれていました。前日焼きたてパンを逃した妻が喜んで栗の入ったパンを購入。私はレーズンとくるみとクリームチーズが入ったパン¥260税込をチョイス。あっ!パン生地がしっかりしていておいしい! 食べごたえがあって、私の好きな風味です。道の駅はどちらかというと小規模。しかも大都会ではなく、観光地の中でも無い立地なので、顧客の多くが地元の人たちだと想像します。高額ではないけれど安くはないパンを買い求めるのは、地域の人たちが食をおろそかにしていないからでしょう。ここのパンも忘れられない味です。機会があればまた来たいです。

道の駅から近くの土佐久礼大正町市場を通過、まだ10:00だからか開いてない店も多く、人通りもまばら。観光客目当てのお店には寄る気がせず、先を進みます。


土佐久礼大正町市場


焼坂トンネル

標高差100mを上り、暗い狭いコワイ焼坂トンネルを抜けると再び海沿いまで下り、須崎に着きました。ちょっとバテてます。膝が痛くなってきました。道の駅でお昼にします。


道の駅かわうその里すさき


土佐丼¥1,320をチョイス

道の駅の食堂で選んだ土佐丼は、カツオの漬けにたっぷりのネギとしそ、それにニンニクスライスを加えていただきます。薬味やニンニクが疲れた身体に効く! これでまた走れそうです。
とはいうものの、走り出してみると強い向かい風でペースが上がりません。でもキツイながら坂を上っていける。前日と違って食べたものがいくばくかエネルギーに変わっている感覚。上り途中の吾桑トンネルに続き新名古屋トンネルは控え目な照明で真っ暗。あまりに暗くて平衡感覚が無くなるほど。これはこれで危険を感じました。


暗い!コワイ!キケン!


コンビニでひと息

峠を下り、戸波のコンビニで休憩です。しばらく国道を走らずに済むよう、県道287号に逸れました。とたんに交通量が激減し長閑な空気感! いいですねえ。しかもやや追い風。気分はゆったりなのにペースが上がります。点在するショウガ畑も高知らしくて旅気分が盛り上がります! 四万十川沿いに並び、今回の旅のハイライトでありました。


長閑な空気


ショウガ畑だ

しばし快調に進んでいくと、建物が増えて交通量も多くなってきました。土佐高岡市です。疲れが溜まってきたこともあり、まとまった休憩をとることに。事前に調べておいたオシャレなベーカリーカフェは、外観が派手との理由で妻が却下。落ち着いて休めなさそうとのこと。もう少し先にあった、庶民派カフェレストにしました。


庶民派のお店へ


トーストセットを

このお店を選んで正解です。店内はややユルい空気、ベテラン揃いであろうスタッフの方々は程よい距離感。トーストセットは¥580税込とリーズナブル。
最後に温かいお茶のサービスもいただき、ありがたいです。固まった筋肉を伸ばすようにプチストレッチ。すっかりくつろぎました。
さて土佐高岡を出るころには国道56号に戻り、高知市を目指します。


仁淀川大橋!


はりまや橋に到着

仁淀川大橋を超えていくと国道56号の自歩道が思い切り広くて走りやすい。慌てずにゆったり走れます。途中で国道56号を逸れ朝倉方面へ、続いて国道32号を東へ。交通量は多いものの、決して走りにくくなく、快調に走って県庁前を通過。チラリと高知城を拝むことができました。
はりまや橋に到着すると、あいにく工事中のため見物はできませんでした。ここまで来ると観光客らしき人たちも少なくないようです。修学旅行中の男子中学生10人ほどの集団も見かけました。全員スマホを片手に「こっちだ!」と小走りに角を曲がっていきます。紙の地図は持たず、案内標識も目立つ建物も視界に入らない彼らにとって、スマホの画面を見ない旅は考えられないことでしょう。
日が陰ると急速に寒くなってきました。駅前の地元ローカルチェーンビジネスホテルに投宿、素泊まりツイン¥4,400/人 税込。本日の走行距離71km。


夕食は洋食を


日替わり定食がおいしい!

夕食は徒歩で数分の個人店へ。洋食店のようです。いろいろとメニューはあったのですが、日替わり定食をオーダー。待ち時間が15分はあったでしょうか、期待に違わず素晴らしいお味でございました。和風ハンバーグは添えられたワサビとともにいただいて香りが引き立てられたのはもちろん、小さなお好み焼きも、付け合わせのペペロンチーノも一切手抜きが無いことに驚きました。胃袋も心も大満足です。客に提供する料理にリソースを全投入する姿勢が潔くて好印象! 店主の思いを言語化とか、スタッフの接客とか、そんなことは半ばどうでもいいのかもしれません。


疲労した体に対し食べた量が多すぎたらしく夜半まで胃が苦しくて、翌朝は全身筋肉痛... ともかく今日は愛知県へ帰る日です。走らない予定とはいえ、自転車を輪行して担ぐので、朝食をちゃんと食べておきましょう。
宿泊したビジネスホテルの朝食は¥200税込! あまり期待しないでいたら、提供されたプレートを見て仰天! 大ボリュームです。大量のサラダにゆで卵とスパゲティ、分厚すぎるトーストが1枚分。味噌汁まで... 食べても食べてもなかなか減っていきません。


朝食は予想外の大ボリューム


空気が冷たい

時間をかけてどうにか食べ終えました。味も文句ありません。これだけの朝食を大都市圏で食べるとすると¥2,000以上でしょうか? すごいですね。このビジネスホテルはすごく丁寧な接客というわけではない印象ですが、うわべよりも身の部分が充実しています。いや、高知県の特徴の一つかもしれません。口先がうまいわけではなく、客をおだてることもしない。過剰な接客やサービスは省く。外見とか付加価値を充実させるのではなく、本来の実の部分に重点を置く。

外に出て空を見上げると、雲の流れが速いこと! 寒気が入って空気が入れ替わり、朝の気温が低いです。
昨日高知市に入って改めて感じました。他県の都市と異なり、ママチャリに乗る女性が非常に少ない。見た目40歳代以下はほとんどクロスバイク。少数派ですがミニベロの方々も。通学の高校生も男子はもちろん、女子も見かけた全員がクロスバイク。他県では見かける通学車もほぼゼロ。制服スカートでの乗車は何かと面倒でしょう、雨天時の苦労もあるでしょうが、そんなハードルを乗り越えてクロスバイクが支持されていました。ママチャリは近距離通勤らしい、見た目50〜60歳代以上の方々がお乗りでした。ここは同じ日本なのだろうか、と思うほど異なる光景です。
6年前にもクロスバイクの多さに驚きましたが、今もこうして多いことから決して一過性のブームではなく、高知の人たちの気質というか、気概というべきでしょうか。日本では横並びが重視されたり、他人からどう見られるかを意識しがちですけれど、ここ高知市では少々違うようです。ヘンに他人に合わせることなく、行きたいときに行きたいところへ行く。ちょっとカッコイイ。

高知駅で輪行作業。朝食が大ボリュームで苦しいくらいだったので、駅構内のベーカリーチェーンでイギリスパンサンドイッチ¥399税込だけをお昼用に購入しました。


特急 南風に乗車


お昼はサンドイッチのみ

岡山駅から新幹線のぞみに乗り換えると満席... 人口密度の高い移動だけの時間に耐えるという感覚です。と、通路を挟んで反対側の席から乳児が私たちに笑いかけてきます。まだ一人歩きできない時期のようですが、こちらからは手を振って、和やかなひとときになりました。若いご両親も私たちに微笑んでくれました。乳児を連れての新幹線は大変でしょうが、きっと気持ちに余裕があるのでしょう。満席でややイラついた空気感の中、なかなか難しいことなのに。
三河安城駅で新幹線こだまを降り、自転車を組み立てます。自宅へ向けて走り出すと北西の強風! 乾燥した空気に喉が痛い。すっかり晩秋の趣です。

南予〜高知の旅は大満足でした。やはり高知県の空気がとっても好ましい。マウンティングや上下関係など意識することなく、他人との関係性はフラット。多様であることを初めから受け入れている感覚です。村社会というよりも都会的、いえ、閉鎖的で閉じた中の力関係や序列とか秩序を重んじる島国意識というよりも、開放的で多様な価値観ありき、虚飾のない大陸的な感覚と言っていいのかもしれません。
カスタマーのご機嫌伺いなどどうでもよく、細々とした付加価値なんかよりも本質を重視する、愛想はないけれど味が抜群な町中華のようです。

猛暑の影響のみならず、仕事に追われて焦燥感や同調圧力に晒され、虚構と現実が入り交じって己の座標が大きく揺らいでいた私にとって、自らの座標を確かにする機会になったようです。内面的にも良い刺激になりました。
いつかまた、己を見失うようなことがあれば、南予や高知を旅したいと思います。

                          (おしまい)