小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2018/06/10

春の南予と中予 2018年4-5月

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3日目 八幡浜→ 長浜→ 伊予→ 松山

宿を出発し、昨夜行った商店街を抜けていきます。視界の先には山。地元の方々は違う感想をお持ちかもしれませんが、周囲に山があって日常眺めることができる環境がうらやましい。少しでも自然を感じるだけで落ち着く気がしますから。
国道197号を西へ、まず名坂峠を越えねばならないかと思っていたら、歩行者用トンネルが整備されていて助かりました。保内から国道378号を北へ進み、しばらく上って行くと、この日の大本命がいきなり出現。瞽女トンネル(2156m)です。


八幡浜の先にはまた山


恐怖MAXの瞽女トンネル

歩道が比較的広く、安心して歩道を進み始めたのですが、しばらく行くと照明の間隔が広いせいで真っ暗な区間がこれでもかと繰り返されます。照明がある場所との明暗さも手伝ってか、真っ暗な区間では平衡感覚と進行方向を維持するのが非常に大変でして、これはこれで身の危険を感じます。上りですし。ここでは私が前を走りましたが、後で聞いたら妻は平衡感覚を失って車道と反対側のトンネル側壁に衝突したとのこと。転倒しなくてよかった...
続く喜木津トンネル(615m)は歩道が狭く、例によって車道を走行。ここも上り(泣)、次の磯崎トンネル(540m)を抜けると、とうとう爽快な下りになりました。あっ、海だ! 絶景です! トンネルで苦しんだからよけいに嬉しい。


海だ!


長浜大橋

海水がきれいだし、潮の香りが爽やかで臭みが全くありません。汚れておらず、純度が高いのでしょう。そうだ、一昨日の民宿で女将さんが、たまに車で松山まで行くことがあり、わざわざこの海沿いを走ることがあると言っていたっけ。これだけの良い道だもの、そうする気持ちがよくわかります。サイクリストもチラホラ見かけるようになりました。 少々アップダウンあるものの、快調に走って長浜に到着。
トンネルで少し消耗したこともあって、喫茶店で休憩しようと探しますが見あたらない。商店街でも農協のほかに小さなお店が並び、ありそうで無い。いくつか菓子店はあるのですけれど。商店街を外れた国道沿いにようやく1軒見つけました。喫茶店ではありませんが、椅子に座ってコーヒーを飲みたかったので助かりました。


長浜商店街に喫茶店が見つからず


国道沿いのレストランで休憩

しっかりと休憩してから海沿いを走り始めました。海風が寒い。全国的に夏日のはずなのに冷えます。ウインドブレーカーを着込んで走りました。しばらく快走し、国道を逸れて狭路を進むと、今や有名になった下灘駅に着きました。
次から次へと観光客がやってきては写真を撮っています。でも決して慌ただしくなく、長閑な空気に包まれているのは国道から外れていること、コンビニなどの施設が無いこと、そして何より目の前の広くて美しい伊予灘がそう感じさせる気がします。
CB400SBにお乗りの、ソロツーリング中のおじさんが話しかけてきました。松山市在住で、ときどきこうしてフラっと走りに来るそうです。いいなあ、これだけ素敵な地域に気軽に来れるなんて。もう1人、古い古いブリヂストン レイダックというビンテージなロードバイクにお乗りのおじさんともお喋りしました、旅先でのこうした触れ合いも楽しい。


下灘駅に寄り道


食事処もカフェも無い!

「もうお腹空いた」ちょっと妻が不機嫌になってきました。そろそろ行きましょう、ランチを食べに。
古いロードバイクのおじさんにおしえてもらった食事処はまさかの定休日。空きっ腹を抱えて走って着いた道の駅ふたみはどうも寄る気がせず、何か無いかそのまま走り続けるも、ありそうでコンビニすら無い。とうとう本格的な上りが始まってしまい、妻が怒り心頭状態に。しかたありません、ほかにどうすることもできず、道端に自転車を停め、補給食タイムとしました。食べておかねば峠を越えることが難しい。ここで持てる携行食のほとんどを消費。前日に蒲鉾店でおまけにいただいたじゃこ天も平らげて元気が出ました。
たいした標高差ではない三秋峠なのに、意外と上りが長く感じました。気づかないうちに疲労が溜まっているのかもしれません。峠を越え、下って下って、それでもお店が見つからず、とうとう伊予市街中心部まで来てようやく定食屋を発見。


歴史ある定食屋


素朴なとんかつ定食

入ってみて初めて知ったのですが、創業明治25年という老舗。建物も古いまま残されており、風格を感じます。なのに、歴史や建築物を売り物にすることなく、定食屋として地道に昔ながらの味を守って地域の方々と歩む姿が、高貴にすら感じるほど。偶然なのに、良いお店に出会いました。
伊予市街からはメインの国道56号を避けて県道を進みます。交通量が増えてきてときどき流れが滞り、私の自転車の目の前を対抗右折車が横切ることも何度か。そうだった、『伊予の早曲がり』です。対抗直進車を待たずに素早く右折する車両が多い。逆に直進車側も右折待ちの車両を見つけると急に止まる。右折車は対抗直進車が止まると思っているだろうし、自転車なんで気にとめることもないでしょう。ここで事故に遭ったら台無し。慎重に進みます。
途中で休もうとするも、喫茶店が見つかりません。代わりにこれでもかと美容院が並びます。美容院の隣にまた美容院というケースも。これほど美容院が多く、喫茶店やカフェの類が無いとは予想外でした。
JR松山駅まで来てしまいました。しかし駅のすぐ近くの喫茶店は休業。冷静に探せば数箇所以上あることを後で知ったものの、このときは駅の周りをひたすら探しても全く見つかりません。諦めてJR松山駅を離れて松山市駅まで走り、どうにか側に自転車を置く場所がありそうな老舗レストランを見つけました。


老舗レストランで休憩


ビジネスホテルに投宿



夕食は大街道へ


鶏料理が抜群です

松山は大都市で交通量もとても多いのに、市電をはじめ全体的に穏やかなリズムに感じ、安心できます。随一の繁華街:大街道に、それほど目立たない小さい店を選んで入ると、アタリでした。今治の鶏焼きは、ねぎまなど定番はもちろん、皮もセセリもハツも、どれも肉質が健康的で私好み。人気店なのでしょう、お店はすぐに常連さんで満席になり、お好み焼きまでいただいた私たちは早々に引き上げました。
この日の走行距離は約70kmでした。


松山駅で輪行作業 未明に激しく降った雨は奇跡的に一時止んだようです。翌朝疲れている体を動かしJR松山駅まで移動、輪行作業を済ませました。

この後、ただ列車に乗って移動するばかりのときに印象的な出会いがありました。
岡山駅で乗り換えた新幹線の中でも。長くなりそうなので別の機会に、このHPのコラムへ掲載しようと思います。


今回の旅も様々な出会いがあって、助けられたり、気づかされたり。
本当にありがたいことです。でも楽しい時間は過ぎるのが早い。あまりにも早すぎて旅に出かけた実感が薄く、なんだか夢を見ていたような感覚に陥ることがあります。足腰、腕だってしっかり疲れているというのに。
                          (おしまい)