小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2018/06/10

春の南予と中予 2018年4-5月

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2日目 宇和島→ 大洲→ 八幡浜

パンクなどのトラブルがあっても大洲までサイクルステーションのような設備が無いからコンビニを利用してくださいなどと、民宿の女将さんが自転車の旅をあれこれ心配してくださいます。初心者の学生さんのような方々もこの民宿を利用するらしく、まれにトラブルに遭うことがあるそうです。パンク修理キットも空気入れも持っているし携行工具も持ち合わせていることを申し出ると女将さんは安心されていました。ご心配ありがとうございます。


蒲鉾を購入


穏やかな和霊神社

民宿でおしえてもらった蒲鉾店でじゃこ天を購入したら、ご親切におまけをつけてくださいました。初めての、遠方からの一見さんなのにありがとうございます。(後々、購入したじゃこ天ばかりかおまけで助かることになるのでした)
民宿の女将さんに勧められた和霊神社に寄ってみました。実に穏やかで、地域から大切にされている空気に満ちていて気持ちが温かくなります。ガイドブックの観光情報だけでは決して知り得ない場所です。こうした小さな出会いが嬉しいですね。
宇和島中心部を出て国道を北へ、大洲方面へ向かって走って行きます。
天気予報では降水確率10%だったのに雲が分厚い。金光を過ぎるとポツポツきまして、本格的な上りが始まった頃にまさかの本降りとなりました。まったくの偶然ですけれど道路脇に果物店がポツリ、店を開けていて、緊急避難。
店先にはバレーボールほどの大きさの立派な文旦が並んでおり、良い香りに包まれておりました。1個300円とはいえ、さすがに買って自転車に積むわけにもいかず、なんて店の人と話していたら、ご好意で試食用の文旦を出してくださいました。大きな文旦1個の3分の1ほどの大きさながら、妻と2人で分けても腹いっぱいに。店の人によると、今年の冬はあまりに低温で柑橘類類が全滅に近い状態で、まともに売り物になるのは文旦だけだそうです。すみません、そんな貴重な文旦をいただいてしまって。見ず知らずの私たちに親切にしてくださり、本当にありがとうございます。


偶然飛び込んだ果物店


トンネルが連続10連発!

30分ほどで雨は止みました。お店の人に丁重に礼を述べて坂を上り始めます。勾配はそれほどでもないものの、長い上りに慣れてないせいか、少々キツイ。しかも小刻みにトンネルが幾つも続いたかと思うと10個目に本命の法華津トンネル(全長1320m)が登場。交通量が少なくない上に実質歩道無し、しかもやや上りという悪条件が揃い、体力だけでなく神経も消耗します。走る順番を入れ替えて妻が先に、リアライトを装備した私が後になって走りましたが、自転車経験の浅い妻は私以上に当惑したようです。
トンネル内は途中から勾配がフラットになり、トンネルを出て下ると卯之町。少々消耗した私たちはコンビニで休憩しました。朝購入したじゃこ天を食べてエネルギーを補給します。


コンビニで休憩


じゃこ天でエネルギー補給

続いて国道をさらに北へ、町を抜けるとローカルな風景が拡がり、気持ちが解放されます。と同時に上り勾配に。ノロノロとゆったり進むと意外にラクに上れました。
鳥坂トンネル(1117m)も歩道の無い狭路。トンネル内は暗くて危険、空気クサイ、キツイの3K状態。やっとのことで通り抜けると豪快な下りでした。こんなに上ってたんだと驚くほど下っていきます。が、数々のトンネルで消耗した私たちはポケットパーク札掛で一息入れました。


恐怖のトンネルは続く


ポケットパークでひと息

お遍路さんも利用する休憩施設で、私よりも一回りは年上に見える、茨木からいらした男性の方や、台湾からいらして歩き遍路に挑戦中の青年と話しました。話したといっても、台中出身だという青年はあいさつ数語の日本しか話せず、私はずいぶん忘れかけた片言の中国語しかできず、たいしたことは喋れませんでしたけど楽しかったです。皆様ご無事に歩き通されることを願っています。

ポケットパークを出発し、ずんずん下ってからまた短いトンネルをやり過ごすとじきに大洲の街に到着。空腹だった私たちはさっそく食事処へ。GW中の観光地ですから、やはり行列ができておりまして、1時間待つこととなりました。


食事処


郷土料理でほっこり

妻は牛肉のさつま汁を、私はいもたき(いも煮)と鯛めしがセットになった郷土料理のランチをチョイス。いもたきはしっかりとした出汁が美味で、特に良い意味できめ細かくねっとりした里芋が素晴らしい。そうだ、昨夜宿泊した民宿の女将さんに、ここ大洲の肱川流域が里芋の産地だって教えてもらったことを思い出しました。

食後はゆっくりと大洲市内を観光。おはなはん通りが有名で観光客が大勢でした。でもひねくれ者の私にとっては、造られたかのような通りよりも、生活感のある地元の小さな商店街のほうが好印象でした。


大洲城


肱川の眺め

十分観光したところで進路を西へ。県道を抜け、国道197号に出ると交通量が多い。宇和島〜西予〜大洲間以上です。しかもここから上り坂。ここ南予は都市と都市の間に必ず山がある地形なのですね。けっして高い山ではないですけれど。 旧道を行く選択肢もあったのですが、入口を見落としたのかとうとうこの日の大本命いえラスボス:夜昼トンネル(2194m)に来てしまいました。

ひっきりなしに車が行き交い、途切れることがありません。さすがに危険度が高く、下手をすると生命の危機すらありそうです。歩道を走れないか見てみましたが、歩道の幅が50cm程度... 歩行者だってすれ違いできない幅ですもの、自転車で走るなんて到底不可能です。何のための歩道でしょう? 何かあったときの緊急避難帯としか思えません。
覚悟を決め、これまで同様妻を前に、私が後ろになってトンネルへ突入しました。私の自転車に取り付けたリアライトだけが頼りです。あいにく若干上り勾配。ごうごう音を立てて車やトラックまでもが背後に迫り、横を抜かしていきます。心臓バクバクであります。妻も恐怖のあまり必死にペダルを漕いでいるらしく、十数m先行してしまい、私は追いつくことができず... 生きた心地がしないまま2km以上のトンネルを走破、抜けた後にどっと疲労感が襲ってきました。
恐怖の後は下って下って... コンビニで倒れこみまして。


夜昼トンネル2194m 恐怖最大級!


落ち着いた小さな旅館に投宿

十分に休憩して走り出すと、あっけなく八幡浜中心部に着きました。この日はビジネス旅館に投宿。この日の走行距離たった56kmなのに疲れた。神経が消耗した感触。
宿のおじさんにいろいろと話を伺いました。ここ八幡浜は水産業が主力だったけれど、徐々に縮小。四国一の水揚げを誇っていたのが今は愛媛一か二に。
みかん栽培も昔は盛んだったのに今では後継者がおらず、行政も支援し公募しているそう。観光資源にはあまり恵まれておらず、人口減少が続き、この30年ほどで半減。若者は学校を出ると東京や大阪で就職、愛媛へ戻っても松山どまりとのこと。海や山に恵まれた、大きな八幡浜市も地方都市の例に漏れず厳しいようです。しかし時代の流れを個々人が止められるわけでもありません。ただフラフラ旅をしている私は、今この瞬間の八幡浜をしっかりと目に焼き付けておくしかできないのです。


地元の銭湯


八幡浜の銀座商店街

お風呂は近所の銭湯へ。きれいな銭湯です。トンネル内の煤やほこり、己の汗にまみれた体がサッパリしました。番台のおばあちゃんに少しだけ話を伺いました。2年前に改装したばかりだそうですが、下駄箱やロッカーは昔のまま。「変えないで」というなじみ客のわがままで古いものを残して使っているとのこと。簡単なようでいて大変なことだと思います。それに厳しい環境の中、こうして地元の方々に愛されながら銭湯を続けていく心意気も素晴らしいです。私にとっても、いつまでも残っていてほしい。また来たいですから。

番台のおばあちゃんに教えてもらった八幡神社は商店街の愛らしいお社でした。いい所です。夕食は95%シャッターが下りている銀座商店街の中の小さな食堂へ。八幡浜ちゃんぽんとチャーハンハーフ、ビールもね。あっさりとしたちゃんぽんが素朴で好印象でした。毎日食べても飽きない味だと思います。


地元の食事処へ


八幡浜ちゃんぽん¥550がウマイ