紀伊半島の海岸線2025秋 2025年10月
1日目 >2日目
今回はちょうど私自身の定年退職のタイミングと重なりました。種々の手続きや、次の仕事探しなど不安定な日々が続き、独居高齢老人の父の支援も必要。行ける状態ではないと言えばその通り。
だけど行く気になれば、行く方向でいろんなことを考えれば、行けるのです。いえ、憂いを放り出して行ってしまうという言い方のほうが正しいかもしれません。
妻が同行してくれるとのことなので、なるべく坂道を避け、可能なら途中鉄道を使ってエスケープ、さらにあまり遠くない地域で費用を抑えるほか、2025年秋は連日各地で熊による人身被害が報道されていて、絶対に熊が出没しないという条件が加わり、紀伊半島南岸を選びました。決め手になったのはJRきのくに線(紀勢本線)のサークルトレインPR動画。若い女性サイクリストが「初心者でも簡単に行ける」「坂道が少なく走りやすい」と話していたこと。さほど体力がなくてもゆったりのんびり走れそうだと3泊4日の旅程を計画したのでした。
2025年の10月は極端に雨天が多く、晴れる日が珍しいほど。3日と続いて持ちこたえない天気が続き、一度立てた計画を日程を変更して雨予報を避け、直前に宿の予約、JRの切符を購入しました。
1日目 自宅→ 名古屋→ 紀伊勝浦
前々日は日中29℃、真夏日を思わせる暑さだったのに、出発当日の朝は11℃。体がついていかず、重ね着を。しかも予報に反して天候が悪化、未明から雨が降り出しました。
あれこれ考えてもしかたない。覚悟を決めて雨具を着て自宅を出発、自転車も荷物も濡れたまま、最寄り駅で輪行作業です。濡れた雨具を丸めて収納するのが気後れしますがほかにどうしようもありません。
気を取り直して電車に乗ると通勤客でほどほどに混み合います。JR東海道本線の新快速に乗り換えると、通勤時間帯から外れてきたのか比較的空いていて助かりました。
名古屋駅で特急「南紀」へ乗り換え。しかしこの特急、2両編成。輪行袋を置くために車両最後尾の席を予約したのですが、これが大失敗でした。2号車の1番、つまり進行方向先頭車両の最後尾ですが、何とこの車両の出入口は先頭の1箇所のみ。つまり輪行袋を座席後ろに置くには先頭の出入口から乗車し、狭い通路を車両最後尾まで移動しなければならず、不可能です。しかたなく後続車両の1号車先頭部分の出入口から乗車しましたが、新型車両(HC85系)だからかデッキがかなり手狭で、洗面所が備わった通路はカーブを描いており輪行袋を置く場所がありません...
2両編成だからか指定席が満席、自由席も混雑しています。1号車のほうに車椅子スペースが3台分あることを見つけ、1台分は車椅子の乗客が占有していましたが、2台分は空いていそうです。発車時刻が迫る中、車内からはアクセスできず、いったん車両外に降りて車掌室をノック、車掌さんに許可をいただき、どうにか車椅子スペースに2人分の輪行袋を置くことができました。

名古屋駅から特急「南紀」に乗車

お昼は復刻弁当
これで落ち着くことができ、名古屋駅のホームで購入した「復刻弁当」¥1,040税込をいただきます。派手な要素はいっさい無く、地味ながらフツーにおいしい。
外は雨。雨のち曇りという予報がどんどん悪化し、曇りマークが無くなって終日雨の予報に変わってしまいました。しかも晴れ予報だった翌々日まで曇り予報、降水確率40%に... 私の運の無さを象徴しているかのようですが、嘆いてもしかたありません。なるようにしかならないのです。
尾鷲駅で車内が一気に空き、新宮駅で降車。計画ではここから自転車で走り始めるつもりでしたが、外は大雨。何でも日本のずっと南を台風24号が進んでいて、紀伊半島は少なからずその影響を受けているらしく、運が悪いとしか言えません...
この日宿泊予定の紀伊勝浦までは普通列車で移動することにし、輪行袋を抱えていったん改札の外へ出ます。待ち時間を利用して自転車を組み立てました。改めて切符を購入し再び改札を通ります。この区間はサイクルトレイン対象になっていて、自転車をそのまま載せることができるのです。
改札のある1番ホームから線路をまたいだ2番ホームへ渡るのですが、エレベーターは無く、地下通路のみ。駅員さんに尋ねると地下通路への階段端にスロープが設置してあるとのことでしたが、自転車のタイヤ2〜3本ほどの幅のコの字断面レールが、階段の端つまり階段と同じ急傾斜で備えてありました。これではごく軽いロードバイクしか使えない。今回の私のように3泊4日の荷物を載せて重量のある自転車はもちろん、ママチャリや重い電動アシスト車はスロープを使った移動が危険を伴い実質不可能。理解に苦しむ設備ではありますが、何も悪気はないのでしょう。地方の自転車振興策の実態が一つ現れたと思うしかありません。

雨の新宮駅で自転車を組み立て

新宮〜紀伊勝浦間はサイクルトレイン
到着した那智勝浦駅も大雨、しかも寒い。まだ宿へ向かうには早く、雨予報に備えて持参してきた折りたたみ傘(!)をさし、徒歩でスーパーへ。駅から約10分間、大雨の中を歩くと足元がビショビショに、冷たくてしかたない。それでも明日の朝食用におにぎりを購入できました。明日の天気は大丈夫なのでしょうか...
再び駅へ戻り、やや小降りになった瞬間を狙って自転車でこの日の宿へ。雨具を着ないままなのでそれなりに濡れてしまいましたが、到着した民宿で女将さんが水滴を拭くタオルを貸してくださり、助かりました。

紀伊勝浦も大雨...

この日は駅近くの民宿へ
夕食は傘をさして、と考えていましたが、おいしいと評判のお店へ民宿の女将さんが車で送迎してくださるとのこと。せっかくのご厚意ですし、大雨と寒さを避けたく、ありがたくお話を受けます。この日宿泊の若い女性客も一緒に、居酒屋兼食堂へ。

まぐろユッケ丼!

くじらお造り定食!
妻はまぐろユッケ丼¥1,980税込をチョイス、意外にもごはんが少なく、盛大な量の、おそらく生マグロが盛られていて、それはそれは美味!
私はくじらお造り定食¥2,000税込をチョイス。昔々学校給食で鯨の竜田揚げがメニューにあった世代ですが、それでもお造りは想像以上に滋味深い濃厚な味で忘れ難い思い出になりました。
夜はますます冷え込み、体調を崩しかけたような...