小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2009/08/16

信州の峠道 大平街道 2009/8月

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木曽見茶屋〜飯田(後編)

たっぷり休憩すると、まだ体がおかしい状態は続いていたものの、呼吸も気分も落ち着いてきました。近くの案内板を見ると、大平峠まで あと2kmほどのようです。

行けるか? 歩いてでも? うん、行ける、たぶんな。
ここまで来たら もう覚悟はできた。どんなに時間がかかってもいい。行こう。
ナイトランになってもいい。バッテリーライトも持ってきたし。防寒着もあるし。

体の具合を確かめるように、そっとペダルを踏み始め、慎重に進んでいきました。
やっぱりツライ。でも、さっきまでとは違い、呼吸が落ち着いてきて、わずかながら脚にエネルギーが供給されているようです。
もう自転車を降りて押すことはありませんでした。
そのまま漕ぎ続け、上り詰めていくと…

とうとう来ました。大平峠!


ついに来ました


感動します

なんとドラマチックなんでしょう!!
良い意味で不思議な、一種神秘的な、独特の雰囲気を持つ峠です。
木曾側の世界から飯田側の世界へ入る、ここが境界線。そんな感覚が味わえます。


感慨にふけった後、峠を下ります。あたりまえですが、先ほどまでの上りと全く違う。
このスピード感! 漕ぐ必要はない反面、慎重で繊細な、ブレーキ操作が必要です。
路面も、枝クズや小石、砂、段差、ウエット面があり、連続するカーブとの相乗効果で、けっこうテクニカルなコースでもあります。
なんて楽しんでいたら あっという間に大平宿に到着しました。


ここまで来るとだいぶ落ち着きを取り戻していて、少しだけ観光する余裕も出てきていました。

かつての質素な暮らしが覗えます。
体験宿泊もできるようですが、何かが違う。私も含めて便利な日常にどっぷり漬かっている現代人には、とても想像できないことのような気がしてきます。俗っぽい、設備の整ったキャンプサイトで泊まるほうが はるかに想像しやすいかもしれません。



まさか もう木曽側には戻りませんよ。飯田目指して出発です。

ここから飯田峠まで少し上り。少しは体力も回復してはいましたが、途中で力尽きました。無理もないことです。朝食にパン1枚とバナナ1本。道中おにぎり1個と塩大福少々。そしてさっきの山菜そば。運動不足中年が、これだけで大平街道を走破しようというほうが甘いですよね。

しかし今度は途中、ひと息入れただけで呼吸が整い、ほんのわずかですが、脚に力が入るようになってます。情けない自分の体を少し見直すと共に、感謝の気持ちまで出てくるようになっていました。

やがて飯田峠に到着しました。大平峠とは違い、それほど特徴的な雰囲気は無い峠です。絶賛するほど特に眺望がすばらしいわけでもありません。ここで最後の非常食に残しておいた おにぎりを食べました。ボトルの飲料も飲み干しました。


着きました


最後の非常食

きっと、車やオートバイで来ると、「これが飯田峠か、ふーん」 「ただの切り通しみたい」 「さあ、早く先に行くか」なんて印象になることでしょう。
いえ、車を止めるところなんて無いですし、そのまま通り過ぎてしまう人たちも多いであろうと思います。もし私がオートバイで来ていたら、きっとほんの1〜2分停まっただけで先へ進んでいただろうと思います。

しかし、自転車で来たからなのか、これまで苦しんだせいなのかわかりませんが、ここが何か特別な場所のような気がしてなりませんでした。
あとは下りばかり、という期待ではありません。目的を達成したという充実感や満足感でもありません。自然との一体感、そんなものとも違います。
よくわかりませんけど何だか目に見えないものに包まれているような、とても温かい気持ちになって、ずっと、いつまでもこの場所に留まっていたいのです。大げさかもしれませんけど、自分自身がこの場所の空気と調和していると言えばいいのか、あるいは、私がここの場所に受け入れてもらえたといえばいいのか、そんな不思議な感覚でした。


時刻は4時を過ぎていました。なかなか出発できずにいたものの、いつまでもこうしているわけにもいかず、後ろ髪を引かれる思いで自転車にまたがり、下り始めました。


爽快な下り


勢いがついてなかなか止まれません

速い速い。スピードが乗ります。これだけ長い下りというのも走り応えがあります。
しかし峠の余韻に浸っていたせいか、疲労のせいか、集中力が途切れがち。
忘れたころにカーブで出くわす対向車に驚いてパニックブレーキをかけてしまい、リアタイヤを何度もスライドさせてしまいました。 危ない。上りだけじゃない、下りでも、体力的に無茶したツケは少なくありませんでした。

これでもか、というほど豪快に下っていくと、猿庫の泉への案内表示が見えました。
でも、あの激坂! 疲れ果てていた私は迷わずパスさせていただきました。

飯田市街地へ入り、ほどなく飯田駅へ到着。
時刻は5時前でした。
なあ〜んだ、日の長いこの時期なら もっとゆっくりしたペースでも良かったかもしれません。これである程度地形もつかめたことだし、今度は紅葉が始まる時期に来てもいいな、そう思えるほど、気持にはゆとりができていました。


しばらく市街を散策


おみやげ買えばよかった



おつかれ〜


マトン焼肉定食

この日はここ飯田で宿泊です。走り終わった後のビールがウマいこと!!
これが最大の楽しみといってもいいでしょう! そして虜になったマトン。ただ、この日は疲れすぎていて咀嚼するのも大変なほどでした...


翌日は飯田駅で輪行し、贅沢に、特急で帰りました。
飯田を出るころには 雨が降ってきたので、今回はタイミングが良かったです。


特急に乗ります


車内はガラガラでした

“旅気分” を満喫しつつ、サイクリストとしての私の短い夏は これで終わりました。
                                (おしまい)