過去掲載した編集◇コラム39
私なりの絶メシロード (23/03/26)
「絶メシ」とは、店主の高年齢化や後継ぎ問題などで、時代とともに次々となくなっている"絶やすには惜しすぎる絶品グルメ"のこと。 テレ東プラス+. 「“絶メシ”というワードはこうして生まれた!」より
(参照 2023-03-26)
2022年は老舗の名店が次々に閉業した年でした。2023年も2月に知る人ぞ知る名店が閉業しました。残念です。日替わりランチが3種類の中から選ぶことができて、いずれもおかず盛り盛り。手作りの気持ちが伝わる絶品が¥660税込というサービス価格。今までありがとうございました。
今後も通っていたお店が続々と閉業されるかもしれません。個人的に応援するつもりで、なるべく訪れる機会を増やしたいと思います。
名古屋市の近郊に位置する昭和レトロチックな喫茶店。喫茶店ながら洋食が充実しており、たいてい片道2時間弱の道のりを自転車で走っていって、日替わりランチ¥950税込をいただきます。手が込んだ洋食のおかず2品、決して他所では味わえない温かさに溢れた絶品だと思います。ややご高齢に見える店主はお元気で、手際よく調理や配膳などを進めていらっしゃいます。いずれ限界を迎えるその日まで、可能な限り通いたいお店です。
続いてご紹介するのは岐阜県美濃加茂近郊の旧街道沿いにある、一部では知られたレトロ店。客が肉や野菜を焼くスタイルとはいえ、ただの焼肉店に非ず。ホルモンは比較的安価ながら鮮度が良く、地元の味噌との相性が抜群。歴史を感じる建物との相乗効果で、深い味わいを楽しめるとともに、お店の方々の隣人愛というか人類愛のようなものを感じてじんわりと元気が出てまいります。
渥美半島へ訪れた際に立ち寄ることが多い、ローカルスーパー併設のカフェ。よくサンドイッチをいただくのですが、ボリューム満点でありながら、材料にも調味料にも配慮されていて、加工度合いの少ない自然な風味がすばらしい。元気よく迎えてくれるスタッフの方々は、客に何ら緊張感を強いることがありません。この店ではご高齢の女性一人客を見かけることが多く、客一人一人のペースに合わせた丁寧な接客は、マニュアル対応ではなく、すべてを受容するような広い心遣いがあればこそだと思います。
私にとっての「絶メシ」は、食欲を満たすだけではなく、栄養素摂取だけが目的ではありません。お店の方々から伝わる、手作りの愛情が、むしろ目的になっているような気がします。
何度か通ううちに、夢ちゃんはすこしずつ微笑んでくれるようになった。入口のガラス戸を開けてその一瞬の表情に触れると、自分の部屋に戻るよりも気持ちが和らいだ。
ボクに付きまとうようになったネガティブな感情は、社会と自分との間にあいた大きな穴に橋を渡すことができないところから来ていたのだと思う。部屋にあいた穴にはおじさんたちが板を渡してくれたが、この穴には自分で橋を架けなければならなかった。
でも、それができないまま日々は過ぎていった。不器用な自分ばかりが、テレビ局やラジオ局のお荷物として、永沢さんの事務所の粗大ゴミとして、そして自身の溜め息の源としてそこに在り続けたのだった。 ドリアン助川著『新宿の猫』(ポプラ文庫)より
グルメとアートのショートツー2023冬 (23/02/19)
寒い日が多くて印象的だった2023年1月下旬〜2月上旬。居住地の愛知県岡崎市では最低気温マイナス7℃という日もありました。
この日の朝も寒く、マイナス3.5℃。せっかくの休日なのになかなか外へ出る気になれず、通勤時間帯を過ぎた朝9時過ぎにGSX250Rで自宅を出発しました。途中、道路わきの気温表示が4℃。マイナスよりはマシですが、それでも体が縮こまる寒さ。
1時間ほど走り、名古屋市の小さな喫茶店でコーヒーを。タマゴロールパンのモーニングサービスが嬉しい。
暖かい店内はシニア客で賑わっており、お喋り派ではなく、1人でゆったり過ごす方々が多いです。私も年齢的にほぼシニア層に差しかかっているのかもしれせん...
1人でもゆったり過ごせる雰囲気を作り出しているのは、ご夫婦と思しき喫茶店経営者の器の大きさですね。地域の方々に愛され続けている年月を感じることができます。もはや半ば公共施設とか公共インフラに近いポジションにも思えます。営業自体はビジネス活動に違いないのですが、市場の論理とは異なる座標軸で動いている空気を、五感で体感できる貴重な時間を過ごしました。
店内ですっかり体が温まり、喫茶店を出て昼食処へ向かいます。市街地走行中心で混雑している個所も多く、先を急がずゆったり走行。刈谷市にある食事処でお昼を。この日の魚ランチは赤魚の煮付けに刺身、鶏と根菜の煮物。¥680税込。
赤魚の煮付けもおいしいですが、その上を行くのが鶏と根菜の煮物。丁寧な出汁がすばらしく、大満足です。お茶のお代わりサービスまで。値上げラッシュだけでなく再値上げのケースも珍しくはない中、この価格でこのクオリティを維持されているのは、大将と女将さんの心意気、いや隣人愛というべきでしょうか。こうした人間性に触れることも、ツーリングの醍醐味の一つだと思います。
昼過ぎ一時的に寒さが緩み、日なたは体感気温10℃を超えました。走りやすい。すっかり気を良くして山間部の麓まで走りましょう。市街地を抜け、郊外へ、標高を上げていくとさすがに冷えてまいります。
到着したのは、山裾の異空間。半年ぶりくらいの訪問になりますが、お店のおねえさんが私のことを憶えていてくださいました。
この日はある作家さんの個展が開催中。お茶とお菓子をいただきつつ、数々の作品を拝見することができました。アートというと少々ハードルが高いように感じる方々もお見えかもしれませんけれど、このように小さくとも個展が開かれるカフェは、敷居を下げると共に、文化インフラの側面も担っているように感じます。
今回ちょうど作家さんがご在廊で、作品群への質問に答えてくださったばかりか、作品の背景やご自身の思いを、ここには書けないような内容も含めてたくさん語ってくださいました。ありがたいことです。娑婆の日常を離れ、豊かな感性の世界に触れることができた気がします。
カフェからの帰路はすっかり気温が下がり、縮こまる寒さの中、GSX250Rを走らせました。寒さで消耗したのでしょう、走行距離たった120kmほどのショートツーリングなのに、帰宅後は疲労感いっぱい、少々ぐったりしてしまいました。
でも、訪れた3か所それぞれに出会いがあり、経済市場原理とは異なる世界をじっくり体感することができました。遠出して距離を稼ぐツーリングもいいですけれど、こうして冬の寒さの中、比較的近場をめぐるツーリングもいいものです。
老舗の名店が次々に閉業 (22/12/31)
2022年は、個人的に時々訪れていた名店が続々と閉業しました。
閉業の理由はわかりません。重い決断だったと思います。店主の加齢に伴う体力的なことや、気力、コロナ禍など複数の要因があることでしょう。昨今の物価高が背中を押してしまったのかもしれません。
都会の場合は新陳代謝が早いせいか「古い店が無くなったのか、次は何だろう?」などという感覚が支配的なのかもしれません。でも地方ではそういうわけにいかないこともあり、自分なりに思い出を記してみたいと思います。
在りし日のお店
チキンカツ定食
愛知県岡崎市にあった喫茶「an」。通うようになったのは1年ほど前からです。分煙されてない店内は、運が悪いと煙たくて、私にとっては少々ハードルが高かったのですが、そのハードルを帳消しにするほどの食事のおいしさ。コーヒーも、古き良き喫茶店の味でした。気さくなママさんがいつの間にか私の顔を憶えてくださり、一言二言、あいさつ+α程度の会話をするようになっていました。
在りし日のお店
名物のオムライス
愛知県名古屋市にあった喫茶「sepia」。自宅から決して近くはないものの、数年前から時々訪れるようになっていました。自転車で訪れたことも。物静かなマスターが、オープンキッチンで一つ一つ手作りするオムライスが格別においしく、今でも忘れ難い味ですし、尊いとさえ感じるマスターの所作はまだ記憶に残っています。
在りし日のお店
歴史を感じる定食
愛知県碧南市にあった食堂「大福」。こちらも気軽に通える距離ではありませんでしたが、たまに自転車で訪れるようになって5年ほどでしょうか。庶民的なメニューの数々は何を食べても素朴なおいしさながら、それぞれに手間がかかっていることがわかる温かい味でした。人懐こい女将さんが私のことを憶えてくださり、忙しいタイミングでない限り、話をしてくださいました。時折訪れるだけとはいっても、ここ数年のお店の変化を見てきただけに、あれこれ思うところが少なくありません。
それぞれのお店で供される料理に、それぞれ気持ちがこもっているようでした。私はありがたく料理をいただきながら、その気持ちを受け取っていた気がします。半ば無意識に込められたかもしれない慈愛を、私たち客がしっかりと受け止めていて、ユルく儚いつながりができていたのだと思います。
閉業になったことで、そのつながりが断たれたような、ある種の喪失感に陥っています。チェーン店とは違い、個人経営のお店は有限なことを改めて認識しました。
これまでありがとうございました。お店の方々がゆっくりと休養し、心穏やかに過ごされることを願っております。
店での日々がよみがえる。
ガラス戸の向こうで列を作った客の顔。
カウンター席ではしゃいでいた中高生たち。
四季折々に姿を変えた桜の木。
その木の下に立っていた徳江。
「どら焼き……」
ボウルやゴムべらの感触が千太郎の手に戻ってくる。
炊きあがった小豆の輝き。ふくよかな匂い。
「どら焼き……いかがですか」
千太郎は唇を噛んだ。 ドリアン助川著『あん』(ポプラ文庫)より
aiwaのスマホを使い始めて (22/12/04)
バッテリーがダメになった古いスマホを、新しい機種へと変えました。選んだのはaiwaブランドのスマホJA2-SMP0601、定価は¥16,800。2022年末現在、白ロム等を除く新品の最低価格帯は一般的に2万円台前半なので、ローエンドの底を割り込んだ印象を受けます。
自宅に固定電話があり、通話専用のガラホを使う私にとって、スマホはデータ通信用途のみで限定的な使い方。出先で調べ物をしたり、メモを取る程度です。毎日使うことはなく、ゲームもしない、動画も見ない、音楽を聴くこともありません。おこづかいのやりくりが厳しい私にとってこの価格は大いに魅力的でした。他機種の中古や白ロムを探す手もありますが、できるだけ長く使いたいと考えてこの機種を選びました。
低価格ゆえにロースペックなことが特徴的で、とてもエントリー層向けとは言えないと思います。ある程度用途が決まっている人向けという印象で、使う人を選ぶスマホと言えるかもしれません。私の場合はライトユーザー以下な使い方ですが、しばらく使ってみた使用感をご紹介したいと思います。
ネット上では良い評判を見かけず、概ね評判通りな印象です。動作がもたつくことが少なくありません。プチフリは日常茶飯事。プチを超えたフリーズもあります。スリープからの復帰も数秒待たされるのが普通で、あれ? 電源ボタン押したはず? なんて感じることも。
アプリから他のアプリを起動すると、場合によっては固まる場面も見られます。マルチタスクをなるべく避けるため、アプリはホーム画面から、使うときに起動。使い終わったら都度終了しメモリーを解放することを心がけています。忍耐強さが求められるとも言えるでしょう。
それでもこういうもんだと割り切れば、たいして不快に感じることはなく、Google検索はもちろん、Googleマップもさほどもたつかず、メモなど文字入力も問題ありません。秋の自転車旅行中も有効活用できました。私の使い方ではまずまず順調に使えていて、この機種を選んで正解だったと思います。
さてネット上で酷評されるカメラ性能についても触れておきたいと思います。カメラアプリを起動し何も考えずそのまま撮影するとなるほどキビシイ。10年以上前のローエンドコンデジを連想させるほどです。何とかならないかとユーザーマニュアルを見ても詳しい使い方は記されておらず、自分で設定をあれこれいじってみました。
風景写真(1)晴天
風景写真(2)曇天
風景写真(1)はそのままオート:画像モードで撮影。悪くはありませんが、彩度不足であまり印象が良くありません。このスマホ、オート性能がショボイのです。なのでマニュアルで撮影しましょう。
風景写真(2)はマニュアル:プロモードで撮影。曇天の夕刻ですが彩度過多になってしまいました。それに遠くではなく手前のガードレールに合焦しているようです。マニュアルで調整するのは彩度のほか、ホワイトバランス、撮影距離、さらにシャッタスピードまでマニュアル設定したほうがいいようです。これらの写真はリサイズとトリミングのみ、明るさや彩度など変えずにそのまま載せています。
料理写真(1)
料理写真(2)
料理写真(1)はそのままオートで撮影。評判通りでおいしそうに撮れていません。
料理写真(2)はマニュアルで撮影。贅沢を言わなければまずまずでしょうか。屋内の場合、ホワイトバランス調整だけ、撮影距離やシャッタースピードはオートのままで特に不都合を感じません。
料理写真(3)
料理写真(4)
料理写真(3)はマニュアルモードで撮影。ローエンドスマホなら及第点でしょう。
料理写真(4)はセンサーが比較的大きいコンデジ:Canon Powershot G7Xで撮影したものです。細かいところをつつかなければ料理写真(3)だって悪くありません。
ある程度はキレイに撮りたいなら手間をかけてマニュアルで撮影する必要があり、彩度や明るさは何とかなるものの、ディテール描写はどうしても甘め。コンデジのほうがはるかに手軽に、キレイに撮影できる印象です。サッと撮影、そのままSNSにアップロードという使い方には合わないですね...
私の場合、たいていコンデジを持ち歩くことが多く、スマホにカメラ性能を求めてはいませんので気になりませんが、合わない人には合わないでしょう。
あれこれ書きましたが、比較的安価なものを工夫して使うには、いろいろと割り切らねばならない部分があります。逆に使い方がはっきりしているなら、ミドルスペックのスマホでも持て余してしまうようでしたら、このaiwaのスマホは有力な選択肢になるのかもしれません。
ちなみに2022年末現在、専用ケースも選択肢がなく、私は外形寸法の近いGalaxy A32用のケースを加工して使っています。何事も、経費を抑えるにはあれこれ手間をかける必要があるということですね。
[追記 23/05/07]
aiwaデジタルより2023年3月にシステムアップデートが配信され、カメラアプリ撮影時の写真の色合いが改善されたとのこと。解像感は変化ありませんけれど、色合いはホワイトバランスが少々変わり、以前に比べてやや暖色系な印象になりました。
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