小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2025/09/21

管理人はたぼうの編集◇コラム

命の洗濯 (25/09/21)

 定年退職目前の2025年9月、組織の歯車として長年働いてきた心身の疲れに加え、その夏の酷い猛暑による疲弊を癒やすべく、長野県南部の大鹿村へ向かいました。なぜ大鹿村なのか、合理的に考えることが難しいほど脳活動がダウン気味だったと言っていいでしょう。それほど簡単に行ける道程ではなく、何度も休憩を挟みながらでしたが、うまくいかないというか、不思議にも感じる巡り合わせもありました。

 自宅のある愛知県から下道で飯田市街へ、ここでお昼にしようと事前に調べておいた食事処に着くと臨時休業でした。しかたない、途中で見かけたカフェに入るも食事の提供はしていないとのこと。それではと、たまに訪れる別の食事処へ向かうと運悪く臨時休業... なんてついてないのでしょう。
 記憶を頼りに、以前食事したことのある喫茶店へ行くと、ここも休業。すぐ近くのおにぎり店も休業... 完全に手詰まりになってしまい、もう大通りのチェーン店へ向かう途中、旧市街から外れた場所に洋食店を発見。営業中です。助かった!
 ハンバーグなどの肉料理が主力のようでしたが、ランチを求め探し回って疲れた体に軽めの食事をとオムライスを選びました。これが当たり! これまで食したことのない、あっさりさっぱりした風味ながら、手がかかっていることがわかる逸品。よかった、また食べたい味でした。


上品な風味のオムライス


手づくりシフォンケーキ

 食後は国道を北上、県道へ逸れるところで休憩。町営駐車場に車を止め、すぐ近くの小さなカフェへ。初めて訪れたカフェでしたが、温かみのある店内が好印象。ルバーブのシフォンケーキがすばらしい! あまりにも良い風味だったので、ママさんに尋ねるとやはりすべて手づくりされているとのこと。ベーキングパウダー不使用だそうです。こだわりがすごい。コーヒーもさっぱりした風味で、素敵なカフェです。昼食のオムライスと言い、おやつのシフォンケーキといい、娑婆の毒素がいくらか浄化されるようでもありました。

 大鹿村への県道は、リニア工事の影響でダンプが異常に多く、行き交う車両の2/3はダンプではないかと感じました。コロナ禍以前に比べて新たにトンネルができたりと部分的にラクになった箇所もありますが、それでも山間の挟路。大鹿村に着いたときには疲れが溜まっておりました。


大鹿村に到着


素朴な夕食

 何回か泊まったことのある旅館に、今回もお世話になります。日中は暑かったものの、日没後は気温が下がっていきます。夕食は派手さはないけれど、手がかけられていて滋味豊かでした。脳ではなく体が喜んでいるように感じます。大事なことです。


 気温25℃よりももっと下回る体感。風呂でしっかり温まったのは3か月ぶりくらいでしょうか。客室は和室。
 何もしない。スマホもテレビも見ない。外は灯りもなく真っ暗。窓際で川の音と虫の音をずっと聞いていました。何も考えない。私の意識にとっては無駄な時間なのかもしれませんけれど、私の無意識にとっては豊穣の時間だったことと思います。命の洗濯ってこういうことかもしれません。昼があれば夜があるように、人間は意識と無意識で構成されている気がします。両方が整ってこそバランスがとれるのでしょう。


 翌日は気分爽快、すっかり元気を取り戻し、素朴な朝食をいただいて宿を後にしました。帰路の道中、早めの昼食にそばを。
 よく知られているお店でしたが、ざるそば¥780税込は、わりとボリュームがあってよかったです。
 愛知県の平野部近くまで下りてくると、暑さが強烈! 娑婆に戻ってきた感覚ですね。県境付近でサイン会が催されていて、少々身構えましたが、平野部に入ったくらいのところ、全くノーチェックの箇所でもサイン会! しかもあまり見通しが良くない道路脇に一般人を装った若い男性が座しているという認識しづらいシチュエーション。
ここ、通常は60km/h以上で流れていますが、制限速度は40km/hです。直前で前走車の軽トラが急減速し左折することがなかったら、私もサイン会に参加していたことでしょう。あぶなかった... 娑婆の厳しさを思い起こしました。
 命の洗濯なんて甘い。私は娑婆の臭気にまみれ、生きていかねばなりません。

 人は知恵をつければ、必ず楽をしようとする。農具の改良も、街道の整備も、物品の流れも、すべては楽や便を求めた果てに発展を見た。一方で、それと引き換えに、大切なものからはしだいに遠ざかる。
 土の温もり、水の冷たさ、日の有難さ、森の息吹、風のざわめき──便を得るたびに何らかの形で、自然とはかけ離れてしまう。 西條奈加著『無暁の鈴』光文社文庫より

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