管理人はたぼうの編集◇コラム
亡母からの手紙〜根無し草の痕跡 (26/01/18)
『今度は六畳一間、台所とトイレがついていて、二畳ぐらいの広さでたっぷり収容できる物置付きす。住宅街というのか静かで、高校や中学が2、3分のところにあり環境も満足です。家賃9.500円はイタいですが、手足も充分のばせないでは働く英気も養われませんものネ』 昭和40年3月10日の消印が押された手紙より
極めて個人的な内容で恐縮ですが、ご容赦ください。
還暦のジジイが母のことを語るなんてキモイかもしれませんが、母が他界してから48年、相変わらず私には話す相手がおらず、ここに記しておこうと思います。
私が中学校のときまで暮らしていたのは東京都大田区池上にあった小さくボロいマンション。今では既に解体されましたが、2歳ごろだったか、引っ越してきた日のことを憶えています。
それ以前、出生から2歳ごろまでを過ごしたのはいったい何処だったのかずっとはっきりしないままでした。戸籍上は出生地が池上と書かれていますが、それはおそらく産院の住所で、当時の居住地は違うと感じていました。微かに憶えているのは、多摩川沿いの、草が伸び放題の原っぱ、それに父に連れられて行った、プロ野球読売ジャイアンツの練習場。
母が存命中に尋ねる機会は無かったですし、そもそも小学生時分で過去のことを訊こうとすることもなく、母が他界した後に1年ほどで再婚した父は、過去の記憶を閉ざしてしまい、再婚相手を亡くした現在も、訊くのは半ばタブーになっています。
昨年の晩秋、母方の叔母が古い手紙の束を渡してくれました。10年前に渡してくれた手紙は母が親しい友人宛に出したもの、今回の手紙は私が出生する前に、母が叔母宛に出したものです。
手紙を読んでみると、母の姉妹(私にとっての叔母たち)のことはともかく、勤務先や友人たちに関することは私にはわからないながら、当時の暮らしぶりが垣間見えて興味深い。
ただ、手紙の束のうち目に留まったのが、引っ越したということが書かれたもの。
東京都渋谷区伊達町から、大田区安方町へ越したと記されています。今は町名が廃止されているので安方町の当該番地が何処なのかピンポイントではわかりませんが、ネットで調べると多摩川〜東矢口〜池上らしい。
これだ! ズバリの場所はわからないながら、自分自身のおぼろげな記憶と、手紙に書かれている『高校や中学』から推測すると、東急多摩川線(旧目蒲線)の矢口渡駅付近でしょう。
ああ、現地へ行ってみたい。根無し草である私にとって、根の痕跡があるのかもしれません。しかし、私の記憶では小学生のころ大規模工事の末、矢口を分断する形で環八が開通し、この辺りの雰囲気が様変わりしたはず。60年経つのですから、いくら東京都の端とはいえ、大きく変容していることでしょう。
訪れたとしても、何もかも変わっていて徒労に終わるかもしれません。それでも、もしかしたら神社や商店街、銭湯あたりには何らかの面影を見ることができるかもしれません。いつか折を見てぶらりと行ってみたいと考えています。
長年大切に保管してくださった叔母には大変感謝しています。当時メールはもちろん、電話を持っていない世帯も珍しくはなく、手紙が現実的な通信手段だったであろうとはいえ、60年以上の時を経て、還暦を迎えた息子が目にすることになるとは、母も完全な想定外だったでしょう。母が他界して半世紀近くになった今、私としては改めて宿題をもらったような、不思議な気分になっています。
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