GSX250R(2020年式)ノーマル車インプレッション -オーナー車
レンタルしてみて意外に好印象だったのがきっかけで、2020年5月、23年以上乗り続けたカワサキZZR250からGSX250Rに乗り換えました。自分で所有し走り込んでみると短時間ではわからなかった面がいろいろ見えてまいります。
オドメーター約2,000km、エンジンが快調に回るようになり、各部の動きも渋さが抜け、タイヤのグリップも本来の状態になってきたところです。前所有車がZZR250、その前がZXR250という少し偏った車歴なため、やや変わったインプレになっているかもしれません。
総合
おすすめ度 <☆☆☆☆ >
[非日常領域をかなぐり捨てた250cc]
大きく評価の分かれる車種だと思います。スーパースポーツ的ルックスなのに、非日常域を完全に捨てて日常域にフォーカスしてあるオートバイ。速く走ることや非日常性に価値を置く人にとってはほとんど価値のない、ただの鈍足マシンでしかないでしょう。だけど常に競う(競わされる)ことは疲れるし、非日常性を体感するため適切な場所まで移動するには日常領域をたっぷり通過する必要があります。
競うことは不得手。非日常を求めるのではなく、日常と地続きの延長にある旅を楽しむキャラクター。オレが先だとばかりにダッシュする走り方は全く合ってないし、そもそも周りはそんな走り方を期待していません。
友人達と連れだって先を争う走りには合ってないし、サーキットなど頻繁に加減速する走りかたにもまるで向いていません。マシンと対話する要素は薄い。あえて薄くしてあるような気がします。己のマシンや走りに集中するのではなく、周囲の景色や自然に意識が向くようなタイプです。
ただしすべてが実用的な、カッコだけのなんちゃってスポーツではありません。ブン回せば僅かながら刺激的な部分もあり、攻め込んでも破綻しにくい車体性能を持っていて、決して侮れない面も併せ持っていると思います。
比較すべきはNinja250でもYZF-R25でもなく、実はREBELあたりかと。いえ、V-Strom250も良きライバルでしょう。V-Strom250のデカさに戸惑った人、そこまで積載量が多くなくてもよくて、もっと手軽さを求める人が選ぶオートバイなのかもしれません。
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クルージング
おすすめ度 <☆☆☆☆ >
[流す範囲なら最も得意なシーン]
先行車両がいようと車間を取ってゆったりと、後方から速い車両が迫ったら張り合わずにパスしてもらいつつ、自分のペースで流す範囲では250ccの枠を超えた安楽さ。緩い前傾姿勢、膝下のスペースもキツくなく、しっとりとした直進性が優れているばかりか、カーブが多い区間も特に意識せずとも曲がっていけます。バイクの挙動とかパワーバンドとかはそこそこにしておいて、周囲の景色を楽しみましょう。草も、樹も、虫も、山も、海も、川も、沿道の民家も、人々もまた、走りやツーリングの構成要素なのですから。のんびり流す走り方だと40km/Lを超える、125ccレベルの燃費をたたき出すところもツーリング向きだと思います。
ただし登坂路で急加速するようなシーンではパワー不足が露骨に表れます。ノロノロ走っていた前走車両が登坂車線に移った直後、イラついてそうな後続車の列がプレッシャーとなり、自分は一気に加速したい場合、そのままではモッサリしすぎるため、2速あるいは3速まとめてシフトダウン、8,000〜9,000rpmあたりを使うことになります。それでも、こんなもんしかパワーが無いのか、と感じることも。ですので、ブッ飛ばす大型バイクはもちろん、Ninja250など他社スポーツ車がハイペース走行を始めるとついていけないことになります。
高速道路
おすすめ度 <☆☆☆☆ >
[急がなければ意外に快適]
いかにも高速道路は苦手そうな印象を持たれることもありますが、まったくそうではないどころか、淡々と走る限りにおいては意外にも得意科目に感じます。90km/h以下で走ると振動が非常に少なく下道と変わらないような快適さですけれど、個人的には100km/h@7,500rpmも、110km/h@8,250rpmでも250ccにしては十分快適で、どっしりした車体と相まってパワーのない400ccな乗車感です。
120km/h@9,000rpmでも巡行可能ですけど、さすがに振動が目立つようになり、長時間続けるのは厳しい。それに100km/hを超えると急に燃費が悪化する印象なことから、長く走る場合は100km/h程度を維持したほうが良さそうです。
加速性能にはあまり期待できません。100km/h前後以上では加速が鈍り、10,000rpm以上が爽快なNinja250(2018型)より明らかに劣ります。2気筒というよりも並みの水冷単気筒エンジンレベルな印象です。
それでも直進性と座り心地のいいシート、ほどほどに防風性も併せ持ち、加速は鈍いものの向かい風や登坂で急に失速しないエンジン特性は巡行に適していて、過度な期待をしなければ高速道路走行にかなり向いているとも言えます。
ワインディング
おすすめ度 <☆☆☆☆ >
[運動性能よりも安定性重視]
最も好みが分かれるシーンになります。ツアラー的に流すペース+αなら☆5つ。クラスを超えた快適性を持っています。カーブ入口でフロント荷重に移行しきっかけをつくって、といったようなバイクの操作に集中し過ぎる必要はなく、フツーにハンドルを逆操舵すると素直にゆったり車体がバンクしていき、旋回中も安定したまま、少しアップライトな乗車姿勢は周囲の景色をたっぷりと味わうことができます。
一方、ルックスから連想するスポーツ走行は☆3つ。フロント荷重に移行してもレスポンスの鈍い安定志向の車体はスパッとバンクせず、アクセルレスポンスも開け始めがやや鈍く瞬発力は無い。おまけにエンジンもノーマルマフラーも静かすぎ、7,000rpm前後以下では風切り音ばかりでエンジンサウンドもエギゾーストノートもあまり聞こえません。これじゃあスポーツ走行なんてまるでダメ、☆2つも無いんじゃないかと評価する方々もおられることでしょう。
ところが、まっとうなライダーの方々からお叱りを受けてしまうかもしれませんけれど、速く走ろうと思えばGSX250Rなりに走ることは可能。カーブ手前の減速をガマンし突っ込み重視、比較的高い速度でも旋回中の車体は安定しています。クリップ前後は走行ライン変更でしのぎ、先が見える前からある程度アクセルオン、加速の鈍さをカバー... 250ccクラスの走り方ではありません。パワーの無い125ccクラスの走り方です。余裕あるパワーをコントロールするのも良いですけど、パワー不足をいかに工夫して切り抜けるかも奥深く面白い。この面白さを評価し☆4つにしました。
ただしこの場合、7,000rpm以上をキープし、間違っても6,000以下には落とさないようにしてどうにか現行Ninja250(2018-)の手抜き走りについていけるレベル。突っ込み重視というリスクも孕んでいます。ビギナーにはまったく向いてないし、ステップアップの練習にもなりませぬ。
ペースを上げてもさほど意識せずカーブをクリアできてしまう現行Ninja250(018-)と大きく違い、ペースを上げるとライダーがしっかり意識して旋回操作する必要があり、それを乗りにくいととらえるか、面白いととらえるか、好みが分かれる特性でしょう。こんな方向の話になってしまうのもルックスから走りをイメージしてしまうせい。REBELやV-Strom250のように肩の力を抜いて、ゆったり〜程々のペースで走るのがGSX250R本来のリズムです。
街乗り
おすすめ度 <☆☆☆ >
[周囲と調和するキャラクター]
安定感重視の車体はあまりキビキビ走るイメージを持たず、スッと前に出る瞬発力も薄めなエンジン特性も合わさって、車列を縫ってすり抜けするよりも周囲と協調してゆったり走るキャラクターです。3,000rpm以下のトルクもまずまず充実していて発進や極低速走行のストレスも少ないですし、市街地でも刺激は少なく疲れにくいのが大きな特徴になります。
気になるかと問われれば気になるのがショート気味なギヤ比。フツーに発進加速するとすぐに5〜6,000rpmに達し、中回転域以上を使って走るよう強いられているかのように錯覚することも。また、交差点で右左折するために減速したとき3速にするか2速まで落とすべきか迷うことも時々あります。ひょっとしたら2名乗車や荷物満載状態を想定したギヤ比なのかもしれません。
ほかに、乗り始めてしばらく押し歩きの重さが気になりましたが、じき慣れました。
[追記〜乗車姿勢のこと 2021/11月]
上体がやや前傾姿勢となる一方、ステップ位置は比較的前方に位置し、膝の曲がりが緩くて脚が疲れにくいと思います。体格的な個人差の影響なのですが、身長173cm胴長短足の私の場合、確かに脚はラクな反面、前傾した上体を支えるのに背筋を使い、そのほとんどを腰で支える格好。短時間なら問題なくても、ツーリングなど終日走行するケースでは1時間程度で休憩を入れても腰に疲労が蓄積、特に寒い季節は血行が悪化して腰痛に陥ることがあります。
腰の負担を減らすには、ハンドルを上方に移動し、前モデルGSR250の位置に近づけるか、あるいはステップ位置を後方へ下げて腰だけでなく脚も使って上体を支えるようにするか、何らかの対策が必要だと感じました。
なお、自転車:RALEIGH CRNやARAYA Diagonaleではもっと深い前傾姿勢で走り続けるにもかかわらず、長時間走行でも腰が疲れるようなことはありません。きっと脚の筋肉を効率よく使えている気がします。
GSX250Rはビギナーに最適なのだろうか?
極低回転域でもエンストしにくく、豊かとはいえないまでも低中速トルクが充実していて、アクセルレスポンスが穏やか。振動も少なく、素直な車体特性でラクに走れるため、オートバイの挙動に神経を使うこともなく周囲の交通状況に気を配れるため、ある程度はビギナー向きだと思います。しかし軽量クラスとはいえない車体は、単気筒車より明らかに重く、やや前傾姿勢なことも手伝って体格的に若干恐怖心を感じるライダーもいることでしょう。
大きな懸念点が、Ninja250など他のスポーツ車両と連れ立って走るとき、他車が飛ばし始めると同じようについていくのは容易ではないこと。他が空冷単気筒車なら、全然問題ありませんが、排気量が上の車種が多いような集団走行の場合、ペースが上がっていくと置いてきぼりになる可能性もあり、そうなるまいと無理するとリスキーなシーンが増えてきます。ビギナーにはやや難しい自制心や、マイペースを貫く意志が必要な気がします。
ZZR250から乗り換えてみてどう?
乗り換え前は手を入れすぎた感のあるZZR250マニア仕様、あまり比較してもしかたありません。それよりZZR250購入当初のフルノーマル状態を思い起こしてみます。
ZZR250を購入したのは1997年、車両価格¥499,000でした。何とGSX250R税別価格¥488,000よりもわずかに上回っています。
乗り始めてすぐに「なんじゃあ、こりゃあ」とガックリしたのを憶えています。ふわっとしたアクセルレスポンス、ゆっくり上昇するエンジン回転数、少々鈍い初期旋回、ノーマルタイヤの特性も手伝って少し不安を伴う旋回中の安定性、ブレーキフィーリングの薄い質感、何といってもツーリングバイクなのにエンジン音と振動が大きい... だからこそ手を入れまくったのでした。
ZZR250に比べればGSX250Rは、ハッタリの効かないローテクなSOHCロングストロークエンジン、リンクレスのリアスイングアームなのに、最高速と積載性以外のあらゆる面で上回っていると感じます。(標準タイヤのIRC RX-01は500〜1000km使い込んでから本来のグリップ感を発揮するようですけれど)何といっても静かで振動の少ないエンジンがツーリング向き。ZZR250のデビューは1990年、基本設計は昭和の終盤だと思います。GSX250Rは2017年デビュー、基本設計は平成の終盤。約30年の歳月はそれだけ大きく、比べること自体ナンセンスなのかもしれません。