小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2020/06/28

GSX250R(2017年式)ノーマル車インプレッション -レンタル車

2018年初め、新型Ninja250と400に試乗した際、GSX250Rも同時に数km試乗しました。スムーズで振動が少ないエンジン以外、これといって良い印象が持てなかったのが当時の感想。でも短時間の感触がさほど良くないバイクに限って長い時間乗ってみると違った面があるかもしれません。
そこで2020年3月に半日レンタル、これまで試乗してきた車両同様、街乗りとワインディング、高速道路を走ってみました。高速+一般道を合計約100km走り、燃費は31.9km/L。このバイクにしてはかなり回して走ったほう、おそらく通常はもっとゆったりペースで走ることが多いはずです。参考程度にお考えください。

レンタル車両のオドメーターは12,000km弱。初期の硬さが取れて本調子が出ている頃だと思います。全然走らないだろうという先入観をスタートにしたインプレなので、少し偏った見方になっているかもしれません。 本当は自分で所有し、長期間つき合ってみないことにはGSX250R本来の魅力がわからないはず。 たった4時間弱の走行でこんなインプレを書くこと自体、ナンセンスかもしれないことをご了承ください。

総合

おすすめ度 <☆☆☆☆ >

[力まず使い切れる、ちょうどいい250cc]
カタログスペック24psだからあまりにも非力だろう、常用域ではそんな予想を完全に覆す動力性能を見せてくれます。
10,000rpmあたりまで無理なくキレイに吹け上がるエンジンは静かで振動が少なく快適。直進性が強めでどっしりと落ち着いた車体と相まってツーリングに向いている反面、刺激が少なくてNinja250(2018年式)やYZF-R25(2017年式)とは対照的なキャラクターに感じます。スポーツバイクなんだから非日常を味わえる刺激が欲しい、そう考えるライダーには全く合わないでしょう。
GSX250R ゆったりのんびり走るのが合っているようでいて、しかし回して走っても楽しい面を併せ持っており、これはこれで好印象。少なくとも一般道でNinja250やYZF-25に置いて行かれるシーンはごく限られていると思います。疲れてきたら低中回転域を使い、そこそこのペースでラクに流して走れるという安楽さを享受することができるのはGSX250Rならでは。他の車種には無い魅力を持っています。

 GSX250Rオーナー車のインプレッションはこちら

クルージング

おすすめ度 <☆☆☆☆☆>

[250ccにしては抜群のクルージング適性]
エンジンの出力特性がかなりフラットで、高回転側のピークパワーを引き上げたライバル勢とは全く異なり、体感的には台形的な出力カーブ、それも割と極端な印象で、アイドリングあたりから加速できて3,000rpm回っていれば十分。なのに上も回っていき、10,000rpmあたりまで無理なくスムーズに回るだけでなく、7,000rpm以上はそれなりに力感があって楽しい。比較的リラックスしたポジションで直進性が強めな車体はNinja250などとはやや質の違う安心感があり、座り心地がよろしいシートも手伝って、ゆったり走るのには250ccの枠を超えた快適さ。エンジン音は静かで振動も少なく、淡々と走りつつも意外に速いアベレージスピードで距離を伸ばしていけます。ただし刺激は少ない。少々刺激が欲しくて7,000rpm以上を多用するような走り方をすると、いつの間にか思ったよりも車速が上がっていて、気を付ける必要があるのも、ある意味250ccの枠を超えているかもしれません。ツアラー的だった先代Ninja250(2013〜)に比べ、快適性はこちらのほうが1枚も2枚も上手に感じます。
実に残念なのがタンデムシートまわりに荷かけフックが全く無いこと。タンデムステッププレートのフックを使うとして、ほかにはリアフェンダーかウインカーステー部分くらいしかありませんが、シートカウルに傷つけずに済むのか気になります。

高速道路

おすすめ度 <☆☆☆☆ >

[意外に得意科目かも]
何といってもエンジン出力がカタログスペック24ps。高速道路は苦手科目であって、実用100km/h程度までであり、100km/h巡行すら疲れるのかもしれない... そんな予想は完全に覆されました。確かにGSX250Rならではの250cc2気筒とは思えない低振動域で走るなら90km/h以下になります。疲れているならこの領域が快適で、250ccにしては淡々と距離を延ばせることでしょう。
Ninja250 しかしアクセル全開にせずとも、上まで回るエンジン特性は高速道路でも同様で、10,000rpmあたりまで無理なくキレイに吹け上がってくれます。アクセルレスポンスが大きく鈍ることもなく、その10,000rpm前後を維持するのに苦しげなそぶりはなく、どっしりとした直進性も変わらず、ノーマルスクリーンの整流も悪くなく比較的穏やかですらあって、250ccにしては快適な部類に入ると思います。さらに回転数を上げようとすると急に伸びが鈍って頭打ち感がはっきり出てきます。
個人的な感触ですけれど、ピークパワーがもっと上の先代Ninja250(2013〜)よりはるかに走りやすく、実用面では現行Ninja250(2018〜)と比べてもさほど見劣りしないように思います。仮に最高速アタックを試みれば現行Ninja250やYZF-R25がずっと先行するのは疑いようもありませんが、そんな走行状態を長時間続けることは考えづらく、地味ながら疲れにくいGSX250Rが同程度のアベレージスピードを維持できる可能性は十分あります。

ワインディング

おすすめ度 <☆☆☆☆ >

[決して遅くないし、意外によく走って楽しい]
ルックスから連想するSS的な走りを期待すると☆3つ、ツアラー的に流すペース+αなら☆5つに感じます。直進性に優れた車体は、他社スポーツ車両と比べて簡単に向きを変えてはくれません。ゆったり走って快適なGSX250Rは、流す走りが大得意なのですが、調子に乗ってスピードを上げていくとあまり安楽ではなくなってきます。現行Ninja20(2018〜)をはじめ視線を向ければバイク自体が曲がっていってくれる他社スポーツ車両とは異なり、ライダーが意図して操作する必要が出てきます。速さを競うという面では見劣りし、少々手を加えてもあまり速くならない気がします。
Ninja250 とはいえ、先代Ninja250(2013〜)のようなクセは無く、ある程度振り回せるし、フラっとバランスを崩すことも無い。エンジン回転が落ちて失速することもありません。安定感たっぷりとは言えないですが安心感は高い。瞬発力には欠けるものの7,000rpm以上でパワー感が出てくるエンジン特性と相まって、ある程度はワインディングを楽しむ走りもできるのは予想外でした。このエンジン特性が良くて☆4つとしました。
もっとも、現行Ninja250など他社スポーツ車両に比べればピークパワーが明らかに劣り、ストレートエンドでの車速がワンランク低いだけでなく、一気にバンクさせていく応答性が鈍いことはどうしようもなく、峠をブイブイ走りたいライダーには全く向いてないと思います。

街乗り

おすすめ度 <☆☆☆☆ >

[市街地走行もラク]
それほどアクセルを開けない範囲の発進加速が2気筒にしては強力でスタートダッシュがラク。あまり回さなくてもそこそこにトルクがついてくる上に、回しても振動が少ないエンジンはストレスが低くて疲れにくい。Ninja250のように格上の車格を持て余しているような感触もありません。安楽に走れます。
5km/h前後の低速域でもバランスを取りやすく、お気楽とはいえないもののUターンもしやすいし、タンデムシート裏のヘルメットホルダーもそこそこ使えます。
少々残念なのが降りた後の取り回し。押し歩きが重い... 特に押して後方へ下がるときにずっしりと重さを感じます。タンデムシートがライダー側に対し高めになっている段差に手をかけないと厳しい場合もあり、この点は走行中の安定感とのトレードオフでしょう。

GSX250Rはカッコだけの、街乗りコミューターなのか?

カタログスペックはたった24ps。ロングストロークSOHC2気筒、車体は重めでキャスター角も寝かせてあります。実用速度域90km/hまでの下道専門鈍足コミューターのイメージを持ってしまうのも無理ありません。動力性能は水冷DOHC単気筒と同程度かそれ以下。単気筒のほうが圧倒的に軽くて運動性が優れているはずですし、GSX250Rを選ぶ理由が見つからない。私も数時間乗ってみるまではそう思っていました。
スペックだけで判断すると「割り切って100km/h以上を切り捨てた」ようにも思えてしまう面がありますが、実際はそうでなく「割り切って10,000rpm以上を切り捨て、低中速にトルクを割り付けた」という印象です。10,000rpmあたりまで、無理なくフツーに使えます。
このエンジン特性、私はZZR400のような旧い400cc4気筒を連想します。上を回らなくした400cc4気筒... 低中回転域はレスポンスはいいものの、トルクは少し遅れてついてきて程よく穏やか、一般道をフツーに走るには十分です。
確かに絶対的な動力性能は水冷DOHC単気筒並みに感じます。ですけど走行中の振動騒音や車体の安定感が全然違うし、250ccにしては高速道路100km/h巡行のストレスが大変少ない。鋭さは無いにせよ100km/hあたりからの加速もラク。一般道でも瞬発力こそ物足りない反面、実にラクだし回せばそれなりに楽しく走ってくれます。