小さい二輪車ライフ、小さい旅

最終更新日: 2004/05/23

バイクライフこぼれ話2

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その3:あと2秒...

 これも若かりし頃、学生時代の話です。
ソロ(1人)でロングツーリングに出た私は、そのとき静岡県を走っていたと記憶しています。ポカポカ陽気の昼下がり。直線の国道。信号も交通量も少なく、そう、皆様お察しの通り、居眠り運転の条件はすべて整っていたのです。

 運転中激しい眠気を感じていた私は「うーん、どこかでお昼寝しようっと」と思っていました。ところが不思議なことに眠くなるにつれて途中の休憩ポイントというか止まるタイミングを逃してしまうのです。気がつくと「ああ、あそこで止まっていれば良かった」と思ってばかりなのです。
 そして自分でも気づかないうちに瞼は重く、目は細くなり、1mmぐらいしか目が開かなくなったころです。ここで私の「おサル回路」にスイッチが入りました。

 「もしかして運転中でも、ちょっとだけなら目をつぶっても大丈夫だよね」
                             (おいおいっ!)
 (注)「おサル」の話ですよ。良い子の皆さんは決してマネしないでください。

あえなく誘惑に負けてしまった私は「うんうん、ちょっとだけならダイジョーブ」と1人で納得し、運転中に目をつぶるというとんでもない行動に出ました。1秒後目を開けると前車も後車もそのまま。それまでとなんら変わらない平和な光景がそこにありました。
「なんだ、大丈夫なんだ。じゃあ2秒ぐらいいいよね」「次は3秒...」 3秒間目を閉じた私はそれから目を開けるのが面倒になり、「うーん、あと2秒...」とまさに居眠り運転に突入していました。
ねむい... そして2秒後、1mm開けた私の目に映ったのは 眼前に迫った赤信号だったのです。
「??...はっ!!」
あわてて急ブレーキ! 前輪ロックさせていました。
あわや大惨事というところでした...

  教訓:眠気を感じたらすぐに休憩するべし。惰性で走り続けてはいけない!

その4:カンカンカン!

 皆さん、タイヤの空気圧補充はどうされていますか? 自宅に空気入れをお持ちのDIY派から、ショップにお任せのお気楽派まで さまざまだと思います。
 あれは私がバイクに乗り始めて1年ほど経ったころでしょうか。バイク雑誌を読んでいた私は、どうやら「クーキアツ」というものを日ごろ点検すべしという記事にぶつかりました。家にある自転車用の手押し空気入れではうまくいかないことがわかり、そしてガソリンスタンドで給油のついでに空気も入れてしまうのが手っ取り早いことも学習しました。

 さて意を決して近所のスタンドへ。おろおろして他人の迷惑にならないよう、すいている時間に行きました。給油の後、おそるおそる店員に「あ、あ、あのー、空気入れをお借りしても よよよよろしいでしょうか?」と小心者の私が訊くと、店員は「ん? どうぞ」と面倒くさそうに古い体重計のような装置を指さしました。
 「あ、じゃあ お借りしまーす」とその装置に向かった私は 体重計のような目盛りを見て考えました。「ははーん、どうやらこれが空気圧の設定らしいぞ。いくつに合わせればいいのか事前に調べておいたもんね。2.0が指定値なんだけど高速走行とかを考慮して2.2ぐらいにしておけばいいんだもんね。」と、さもその装置を使い慣れているフリをしながら目盛りの横についているダイヤルを回して2.2に合わせました。 GPZ250R

 いよいよ空気注入です。バルブにホースの先をを差し込みます。「プシュ!」とその直後「カンカンカン!」と、けたたましい音が警報音のごとく がらんとしたスタンドに響きました。
「ひゃー! しまった! 何だこの音は? すすすすみません! ハズカシイ! もう空気入ったのかな? なんだかわからないけど、もういいんだよね、とにかく撤収だ!」とそそくさとその場を後にしました。
 だいぶ後になって「カンカン」は空気がどんどん入っているときの音で、その間隔が空いてきて鳴らなくなったころが設定空気圧になった目安だと知りました。
ひゃーハズカシイ。

  教訓:聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。

その5:小鳥のさえずり

 会社員生活も2年目、まだ20歳台前半のころの話です。
当時私は会社の独身寮に住んでいました。うーん、独身寮にはあまり良い思い出はないですよ。皆さん想像してみてください。“知性” とか “芸術” の香りなど全く無い、ン十人の、清潔とはいえない むさ苦しい男どもが わんさと集まっている所なんですよ! うえっ!(失礼) そう言いながら、私も “むさ苦しい” 1人だったことを思い出しました...。

 そんな独身寮の平日の朝は、少し異様な雰囲気となります。
現在のように “フレックスタイム” とか “裁量労働” なんていうカッチョイイ制度は 当時には無く、どんなことがあろうと全社員 朝の8:30までに職場に着いていなければならなかったのです。ということで独身寮では朝6:30にもなると あちこちからドタバタ物音がするようになり、共同の洗面所は7:00すぎともなるとヒゲ面の男どもが歯磨きしたりしながら もごもごうごめくという、何とも不気味な光景となるわけです。(洗面所やトイレは共同でした)
7:30を過ぎる頃には ほとんど皆出勤していき、8:00前には それまでとは想像もつかない静けさが訪れるのでした。
 例外なく私も7:00前に起き、異様な光景の中、フゴフゴと歯を磨き、もぐもぐパンなどを口に押し込んでは7:30過ぎに部屋を出て出勤するという毎日を繰り返しておりました。

 朝は いつも目覚まし時計と格闘しながら、不快極まりない気分で起床する私でしたが、その日の朝は違っていました。
 ドタバタという音もせず 静か。「チッ、チッ」「ピイピイ」という小鳥のさえずりまで聞こえます。 カーテンの隙間からは眩しい朝の日差しが...。
「ああ、なんて平和な朝なんだ」と実に珍しくすがすがしい気分で起きた私の目に入った目覚まし時計の表示は “8:05”。
「ん? 8:05?...!!□※#%△!!」
そうです。私は思い切り寝坊して独身寮の皆が出払った後に目を覚ましたのです!
「しまった! 寝坊した! 課長に怒られる...職場で笑いものになる...
も、もしかしてボーナスに響くのかも...」
 そこで私の「おサル回路」にスイッチが入りました。
「会社まで約7km。
バイクでブッ飛ばせば間に合うかも...!」
それから私は尋常ならざるスピードで物事を処理していました。
8:08着替え終了。
8:10寮の駐輪場に。
8:12暖機運転もそこそこにスタートダッシュ!!
8:26会社の駐輪場に到着、そして職場へダッシュ!!
自分のタイムカードを取り、打刻機へダンク・シュート!!
“8:29” と打刻されました。セーフ!!
え? 途中どう走ったかって? ううむ、今思い出すだけでもオソロシイ。
ヘッドライトをハイビームにしたまま、トッテモイケナイスピードでブッ飛ばし、信号もギリギリいやアウトのタイミングも...。当時ご通行中の皆様には大変ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。

  教訓:目覚まし時計は2個以上セットするべし。

その6:左と右?

 これも私が まだ200歳台前半のころの話です。
無理して新車で買ったZXR250の慣らしも終わり、嬉しくてしかたないころ。乗るたびに「おサル回路」にスイッチが入り、12,000rpm以上のパワーに感動しつつ、イケナイスピードで走りまわっておりました。

 そんなある日の夕方、流れの速い県道を走っていました。そして橋の上にさしかかったのですが、ここは片側2車線から3車線に変わるところで、自車の前が空く機会も多いのです。ちょうどそのときも目の前が空き、「おサル」な私は「よし、クリアラップだぜ!」とおバカなことをつぶやきながら、思い切りアクセルを開けました。
DOHC4気筒エンジンの咆哮! 集合マフラーからレーシングサウンドが響きます! ゆるい左カーブの橋の上を今までにないヒジョーにイケナイスピードで走りながら、私はニヤニヤ陶酔しながら運転していました。
 いくつか橋の継ぎ目を通過した後、「パカン!」という妙な音が聞こえました。 「?」と同時に車体は宙に浮き、後輪は空転、「ギャウウン」とタコメーターは勝手にはね上がったのです。
「おサル」な私が訳がわからないまま前方を見ると、道は左カーブなのに、ハンドルは右、前輪はあさっての方向を向いているではありませんか!! 「左と右?...」
 次の瞬間、着地。変にハンドルをこじらなかったのが幸いしたのか、何とか体制を立て直すことができました...。それ以来「おサル」の私にも “ビビリミッター” が はたらくようになり、スピードを控えるようになったのは言うまでもありません...。

  教訓:スピードは控え目に。公道では何が起こるかわからない。


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