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金曜の夜、必死に働いて仕事を切り上げ、まずManchesterへ向かいました。
駅の時計が7:30を指していますが、朝ではありません。 夜の7:30です。 緯度の高いイギリスでは この時期、22:00ごろまで明るかったりします。 朝は3〜4時には明るかったり。 調子狂いますね。
列車内はガラガラ。
Manchesterが近づくとガラの悪い若者が何人も乗り込んできました。 オヤジ狩りに怯えながら、終点を待つ私。
でも良く見れば、確かにガタイは大きく、派手に着飾ったり化粧がキツかったりするものの、表情には幼さが残っていて、ハイティーンどころかローティーンかもしれません。
“週末だ! 街に繰り出すぜ” 的なノリかと思うと、なんとなく微笑ましくも思えてきました。
ちなみに日も暮れて真っ暗なManchesterに到着し、駅を出た後でしっかりドツかれました。 コワっ...
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プチ冒険旅といえども準備が肝心です。
地図は必携。
他にも飲料とピン食(注)
ピン食
携帯用の食糧のこと。
菓子パンや缶詰、ソーセージなどを指す。
、傘も用意しておきました。
地図を見ると、この国立公園、それなりに規模が大きいことがうかがえます。
ともかく最寄り駅であるGlossapを基点とする、Dark Peak areaのハイキングコースへ行ってみることにしました。
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翌朝、Manchester駅からGlossap行きのローカル線に乗りました。
こういう旅は鉄ちゃん系にはたまらないのかもしれませんね。
ところでPeak Districtは広い。 私にはGlossap駅から徒歩しか手段が無く、行動半径は限られます。
無理せずに、駅の東側に延びているROMAN ROADを歩くことにしました。 中間地点であるDoctor's Gateまで8km無い程度か。 そこからWoodlands Valleyまでさらに6〜7km。 さらに東の、美しいと評判のDervent Daleは無理せずやめとこう。
このときはそう思ったのです。
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さあ、プチ徒歩旅の開始です。
駅を出発、ROMAN ROADに入り、Shire Hill付近に来ました。
のどかで、いいところです。 誰もいません。 いるのは羊だけ。
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Mossy Lea Farmと地図にあります。 農場なのでしょうか。
ハイキングコースとはいえ、実際は岩場あり、ぬかるみありで、厳しいコースなのでした。
空には雲が垂れこめていて、どんよりと、地表の空気まで重いような感覚にとらわれます。 あまり日本では感じることのできない、何ともいえない空気感とも言えます。
無理に例えるなら、暑くない夏の北海道北部海岸沿いで ゆるい海風を体に受けている感覚と言いましょうか...
ウエットで、まとわりつくような、でも暖かさの無い感覚。 好き嫌いは別として、これが実にイギリスらしい空気ではないかと思っています。
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牧歌的ではありますが、現実は そこらじゅうに羊のフンが散らばっていて臭いのです。
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店とか自販機とか、人工的なものは一切ありません。
日本のハイキングコースでは珍しくない、ベンチやテーブルなんてものはありません。
もちろん公衆電話も無いです。
当時は携帯電話が一般的ではなかったし、仮にあったとしても圏外だったでしょう。
どこまで行っても誰も通らないのです。
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岩が多くなってきました。
ここら辺りから勾配が徐々にキツくなり、写真を撮る余裕が無くなっていったのです。
私はスニーカーで来たことを悔やんでいました。 ハイキングコースといえども、日本にありがちな、ファミリー向けの散策路ではありません。 トレッキングシューズを履いて、それなりの装備をし、英国のありのままの自然を味わうために歩くためのものなのです。
自然に親しむ? いえ、穏やかな表情はしていても、逆に自然は厳しいことを教わったような気がします。
このままでは楽勝どころか、帰りに日が暮れてしまいます。
いえ、その前に体力が尽きて途中でへばってしまい、動けなくなりそうでした。
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Doctor's Gateです。
とっくに昼を過ぎ、夕方の時間帯になっていました。
相当へばってます。
Woodlands Valleyなぞ行けるはずもなく、Glossap駅まで車道沿いを引き返しました。
間もなく降り出した大雨と強風で さらに悲惨な事態に見舞われた中、一人でトボトボと駅まで歩き、とってもみじめでした...
プチ冒険って、案外こんなもんかもしれませんね。
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翌日、ズブ濡れになった服を洗濯中。
ホテルのLaundry Serviceなんて使わない主義です。
高いから...
自分で洗うのがキホンですよね。