9 映画鑑賞  2004年〜2006年

2010/08/25

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2006年

題  名 見た日・製作国・監督・俳優 感      想
ロード・オブ・ウォー 06/01/14

アメリカ

アンドリュー ニコル監督

ニコラス ケイジ

 掃除機を売るように、武器を売る”死の商人”の物語。

 死の商人ユーリーは、普通の家庭人のままで、武器の売買で、稼いでいる。家庭には、妻と息子がおり、息子のおもちゃの拳銃をゴミ箱に捨てる男だ。

 その弟は、ともに商売するが、そのプレッシャーで、酒と麻薬に溺れていく。良心の代表格で最後は、その武器で死んでいく。両親も二人の息子は死んだと、縁を切る

 妻は、亭主の仕事に無感心。何で稼いでいるか知らないが、お金の不自由はない。それでも、次第に亭主に疑問を抱き、遂に、証拠を握り、刑事に知らせ、息子と共に去っていく。

 執拗に追求する刑事は、遂に追いつめるが、死の商人は、悠々と世に出て、生きていく。死の商人を解き放す人がいるのだ。

 銃は、戦争犠牲者の9割以上を殺している。一番人を殺しているのは、核兵器ではない。

 今、人間12人に1丁の銃がある。それを1人に1丁の銃を用意するのが、自分の商売。

 結局、死の商人は、特定の個人ではなく、我々みんなが、死の商人。

SAYURI 06/01/28

アメリカ

ロブ・マーシャル監督

チャン・ツィイー 渡辺謙

 

 チャン・ツィイーは好みの女優の一人。で見てきた。

 日本の芸者を、アメリカが作った。多くの日本人も参加している。着物の着付けなど変に思うところがあったが、内容は、芸者をよく描いていると思った。

 貧しい娘千代が置屋に売られ、両親も死に、一緒に売られた姉とも別れ、いじめられ扱き使われる。

 ある時、町で、男に声を掛けられる。

 .「こんな良い日和に泣いてはいけないよ。君のように美しい子が、どうしたのだい?」”会長”と呼ばれたその男は、千代に涙をぬぐうハンカチと小遣いを手渡すと、連れの芸者たちと共に立ち去る。

 この会長との再会のために、芸者になろうと心を決め、励むこととなる。

 仲間との諍い、争いの中で、花街1の芸者になっていく。

 再会という愛を心の支えに、激動の時代を誇り高く生きていく、どんな逆境の中でも、そのプライドが彼女を誰よりも美しく輝かせ、どんな絶望でも、真実の愛が彼女を希望へと導く。

 やがて、会長に再会。例え芸者としてでも構わない、ただ一分一秒でも長く彼の側にいたいと、ほとばしる思いを必死にこらえる。

 しかし、太平洋戦争で、芸者は瓦解し、田舎に疎開。

 戦争が終わり、叉、声が掛かり、芸者再会。

 やがて、会長と再会。会長から、昔、橋のたもとで泣いていた少女に、かき氷をやったことを話し出した。

 ハンカチはどうなったか、忘れた。

 敵対する初桃役の、コン・リー、置屋の女将役の桃井かおりがよかった。

THE有頂天ホテル 06/01/28

日本

三谷幸喜監督

役所広司 戸田恵子

 面白い映画だった。

 大晦日の2時間。ホテルの中で大晦日の夜10時過ぎから年越しまでの2時間を時間を追って、いろんなエピソードが絡み合い、もつれ合う。

 最後には全員が力を合わせる、政治家の脱出劇の末に、登場人物が一ヶ所に大集結する、クライマックスのカウントダウンパーティーがやって来て、終わる。

 まともな役は、戸田恵子の演ずる、アシスタントマネージャーだけでした。

 その他、知っている俳優達、松たか子、佐藤浩市、香取慎吾、篠原涼子、オダギリジョー、麻生久美子、YOU、原田美枝子、唐沢寿明、津川雅彦、伊東四朗、西田敏行らが出ていた。

るにん 06/03/04

日本

奥田瑛二監督

松坂慶子 西島千博

 江戸時代、絶海の流刑島・八丈島。この島に流人として島流しにされ、いつか再び江戸に帰る日を夢見て必死に生きた女たちがいた。

 若い故、火付けで死刑にならず、島に送られた、花魁豊菊がいた。いま、40。身を売って、人を密告して、江戸に戻る日を待つ。

 そして、愛する女のために、絶対不可能とされる“島抜け”に命を賭けて挑んだ男がいた。そして、“島抜け”に成功した物語。

 八丈島が流刑地とした理由を初めて知った。手漕ぎの小さい舟では、黒潮がじゃまをして本土までたどり着けないのだそうだ。ただ、時たま、南下して、八丈島に当たるようになることがあり、その時ならば、黒潮を乗り切る可能性がある。

 博打打ちの若い男、喜三郎は、それをねらい、毎日、潮の流れを見て暮らす。

 役人や流人と豊菊ら女達、島の娘と流人との関わりなど織り交ぜて、脱出に向かって話は進む。

 江戸にたどり着いた、豊菊と喜三郎の、優しい心をひっくり返す事件があり、映画は終わる。

ホテル ルワンダ 06/03/11

南アフリカ、イギリス、イタリア

テリー・ジョージ監督

ドン・チードル、ソフィー・オコネドー

 1994年、アフリカのルワンダで長年続いていた民族間の争いが大虐殺に発展し、100日で100万もの人々が惨殺された。わたしも、このことは知っていた。

 世界の人びと、国連までもが「第三世界の出来事」としてこの悲劇を黙殺する中、一人の男の良心と勇気が、ぎりぎりの所で、殺されゆく運命にあった1200人の命を救った。

 その男は、ルワンダの高級ホテルに勤めていたポール・ルセサバギナ。

 男は命をねらう部族、命を狙われて居る部族の妻。彼の当初の目的は、なんとか家族だけでも救うことだった。

 しかし、彼を頼りに集まってきた人々、そして親を殺されて孤児になった子供たちを見ているうちにポールの中で何かが変わり、たった一人で虐殺者たちに立ち向かうことを決意。行き場所のない人々をホテルにかくまった。

 ヨーロッパ系の超高級ホテルのブランド、少数の国連軍が守るホテル、ホテルマンとして培った話術と機転を頼りに、虐殺者たちを懐柔し、翻弄し、そして時には脅しながら、1200人もの命を守り抜いた。

 現在、この親子は、ベルギーに暮らすという。

白バラの祈り 06/03/19

ドイツ

マルク・ローテムント監督

ユリア・イェンチ、アレクサンダー・ヘルト

 1943年のミュンヘン。“打倒ヒトラー”を呼びかける組織「白バラ」のメンバーであるゾフィーと兄ハンスは、大学構内でビラをまいているところを見つかり、ゲシュタポに連行される。

 そこで尋問官モーアの取り調べを受けるが、無罪であることを主張。モーアはゾフィーを信じかけるが、家宅捜査による証拠品押収によって、嘘がばれてしまった。

 モーアは、捜査結果のデータおよび他人の自白を、最初は伏せつつ絶妙なタイミングで繰り出し、ついに彼女を自白に追い込む。そしてゾフィーは、自分の行為を自白した後は、仲間が助かるように最善の答弁を工夫する。

 貧乏な仕立て屋の生れだが、ゲシュタポの有能な尋問官であったモーアが、恵まれた家庭に育ったエリートである女子学生ゾフィーを批判する政治問答、世界観問答も凄い。

 英米の自由主義ではなくナチスの国家社会主義こそドイツを救うと考えるモーアは、「法」の支配を強調するが、リベラルな家庭に育ったゾフィーは人間の「良心」を強調する。

 そしてモーアは、ゾフィーが自分の間違いを認めれば、「兄を手伝っただけ」と認定して救うことも可能だと提案する。つまり、尋問官モーアはゾフィーの態度に深く影響されて、彼女を救おうと試みたのだ。

 その駆け引きが、細かく描かれている。

 ゾフィーは自分は信念によって行動したことを認め、密告を拒否した。

 裁判が開始されたが、きわめて形式的の手続きのみの裁判。ヒステリックな裁判長、意見を述べない検事、弁護しない弁護士。

 死刑が宣告され、即日の死刑執行だった。断頭台であった。

 逮捕から死刑まで6日間、主に逮捕後の彼女の心の変化、尋問官モーアとのかけひきが、畳みかけて、進行する。

 ゾフィーが一人で泣くシーンが2つあった。1つは、尋問の最中、我慢しきれなくなって、トイレに行った時。もう1つは、判決後、独房に戻ったとき、遺書を書けと言われ時。

 良い映画だった。お客は少なかった。

クラッシュ 06/03/26

アメリカ

ポール・ハギス監督

ブレンダン・フレイザー サンドラ・ブロック ドン・チードル マット・ディロン
 

 ロサンゼルス。ハイウェイで起こった1件の自動車事故が、思いもよらない“衝突”の連鎖を生み出し、さまざまな人々の運命を導いていく。

 ロス市警の黒人刑事グラハムと同僚で恋人のリアは交通事故に巻き込まれる。グラハムは、その事故現場の脇で発見された若者の死体の捜査現場を目にする。

 そこから、時は36時間遡り、物語が展開する。

 刑事たち、自動車強盗、地方検事とその妻、TVディレクター、鍵屋とその娘、病院の受付嬢、雑貨屋の主人...。様々な人種の様々な立場の人々が登場し、互いに関わりが生ずる。

 大都会の片隅で生きる人々。皆、良きものと悪しきものをその内面の中に併せ持っている。

 人種差別主義者の警官は老いた父を優しく介護する優しい息子。

 白人社会の中で頭角を現した黒人のTVディレクターは、人種差別主義者の警官に侮辱される妻を守れず。その警官は、交通事故にあったその妻を、必死に助け出す。(この映画のポスターの女を抱きかかえる男の写真はこの時のもの。意外な場面の写真だった)

 人種差別に苛立ち犯罪を繰り返す黒人青年は身売りされそうになったアジア系の少女たちを解放。

 大都会で孤独に生きながら、誰かと繋がりたい気持ちも捨てられず、得られない愛情に悩んだりもする。そんな人たちが、ぶつかり合い、反発し合いながらも、他人との関わりを求め、時には、誰かと繋がりあうといった大都会の日常の物語。

 降る雪で終わる。

 登場人物の何人かは、自身が体験した”衝突”から何かを学ぶ。で、クラッシュか?

ククーシュカ 06/05/27

ロシア

アレキサンドル・ロゴシュキン監督

アンニ=クリスティーナ・ユーソ ビッレ・ハーパサロ ビクトル・ビチコフ

 ラップランドはフィンランドの北部にある。そのラップランドを舞台にした映画だ。ロシアの映画で、ロシア語、フィンランド語、サーメ語が飛び交い意味が通じない3人の男女のおとぎ話。

 第二次世界大戦の頃、美しく厳しいラップランドの自然に暮らす先住民族のサーメ人アンニに助けられた、出来の悪いフィンランド人兵、ロシア人兵が3人で、言葉が通じないながらも、不思議な共同生活を営みます。

 男2人はいがみ合うが、言葉は解らない。女は2人の男としか見ない。夫が戦争に行って4年経つ。男が欲しくてうづうづしている。

 結局、2人の男に、喜ばせて貰う。実に大らかに。女が欲望のままに行動すること、男より威張っていること、ラップランドの生活だそうだ。

 男2人のとらぶるがあり、フィンランド人兵が死にそうになるが、女の呪文で生き返る。

 子供が2人出来るが、2人は、着る物、食べ物を用意して貰って故郷に帰る。

 ラップランドのおとぎ話だった。戦争否定の平和を求める映画。

嫌われ松子の一生 06/06/09

日本

中島哲也監督

中谷美紀 瑛太

 中学校の教師だった松子は23歳で教師をクビになり、家を飛び出し作家志望の男と同棲するが、自殺されてしまう。

 ソープ嬢になり、店一番の売れっ子になるが、ヒモを殺害して上京。床屋の男と同棲するが、捕まり刑務所へ。8年の刑務所生活。美容師の免許を取る。

 教え子で、ヤクザの龍と出会い、同棲。龍は刑務所行きとなる。美容師で生き、出所した龍と会うが、再び龍は刑務所へ。

 そして、一人暮らしの引きこもり生活。そして、もう一度理容師として、生きようとしたところで、殺され一生を終わる。

 主人公・川尻松子の波乱万丈な一途に生きる人生を真正面から描いているが、歌による説明とミュウジカル、CGとアニメ、色の使い分けと花、明るく明るく描かれている。また、家族への想い、故郷の川への思い入れ、が所々に挿入され、松子の気持ちを映像で表している。

 松子の死んだ後のアパートの片付けを、松子の弟の息子、笙が行うが、その過程で、知らなかった叔母松子の生活を知ることになる。

 良い映画だった。 小説「壬生義士伝」 浅田次郎 を、思い出した。これでもかこれでもかと泣ける話の運びのせいかなと思う。

花よりもなお 06/06/17

日本

是枝裕和監督

岡田准一 宮沢りえ

 元禄時代、江戸のド汚い長屋での、仇討ちに江戸に出てきた、剣の腕前が駄目な侍の物語。

 貧しいながらも人情あふれる長屋で半年暮らすうち、「仇討ちしない人生」もあると知ってしまった。

 たくましく生きる市井の人々の生の物語の中で、侍が変わっていく。

 そして、赤穂浪士の討ち入りの話が絡んだりして、最後は、仇討ちを果たして好きになった向かいの未亡人と一緒に成るだろうと思わせて終わっている。

 ド汚い長屋の生活、大事にしなければならないお犬様を喰ったり、などたくましい庶民の楽しい映画だった。

ジャスミンの花開く 06/07/15

中国

ホウ・ヨン監督

チャン・ツィイ ジョアン・チェン

 親子3代の話。3代の娘役をチャン・ツィイが演じる。日本の侵略を受ける1930年代の茉(モー)、中国発展期の1950年代の莉 (リー)、そして現代1980年代の花(ホア)。

 何気なく描かれる各時代、若い娘の一生懸命の生き様、1代目の娘は、2代目は母に、3代目には祖母になるが、1代目の母、2代目の母、3代目の祖母のジョアン・チェンが良い。

 3代目花が、祖母に死なれ、1人で子を産む。病院に行く予行練習も行うが、生む段になるとそれも役に立たず、雨の降る夜の町中で、子を産んでしまう。

 原題「茉莉花開」 茉莉花(まつりか ジャスミンの1種)開く と言っていいのかな。叉、チャン・ツィイが歌う歌は、中国の民謡「茉莉花」だそうだ。

親密すぎるうちあけ話 06/08/05

フランス

パトリス・ルコント監督

サンドリーヌ・ボネール ファブリス・ルキーニ

夕暮れのパリの街を、ひとりの女が急ぎ足で歩き、薄暗いビルのエレベーターに乗り込み、6階のモニエ医師の診察室へと向かう。

先客と入れ替わるように女を出迎えた男は、「6時に予約を」という彼女に不審な表情を浮かべながらも、オフィスに招き入れる。

おもむろに長椅子に座った彼女アンヌは、煙草をくゆらせながら、いきなり新婚生活の悩みを打ち明けるのだった。

半年間の間、彼女の夫はセックスはおろか、一度も彼女に触れないのだと言う。冷えきった夫婦関係を一気に告白した女は、当惑顔の男の言葉を待つこともなく、次のカウンセリングの予約をして、早々にオフィスから立ち去っていった。

実は、彼はモニエ医師ではなかった。モニエと同じフロアにオフィスを構える妻と別れて一人暮らしの税理士のウィリアムだった。

彼女はノックするドアを間違えてしまったのだ。

2,3度目で、ばれてしまうが、ウィリアムは、本職のモニエ医師に相談を掛けつつ、ウンセリングは続く。

ウィリアムの元妻、も加わり、話が進むが、アンヌは、どんどん元気になり、ウィリアムは話を聞く内に、惹かれていく。服装も、明るくなり、胸のはだけた物に変わっていく。

アンヌは、夫と別れ、行き先を告げず去っていく。ウィリアムもオフィスを畳む。

舞台は、薄暗いパリの一室から、陽光が穏やかに輝く南仏のバレエ教室に移る。アンヌがバレエを教えている。そこに手紙が届く。ウィリアムが後を追って、南仏に事務所を移したのだった。

大人の恋物語。

蟻の兵隊 06/08/12

日本

池谷薫監督

奥村和一

太平洋戦争終戦の時、中国にいた、将兵 約2600人が、ポツダム宣言に違反して武装解除を受けることなく中国に残り、中国内戦で戦った。戦後4年間共産党軍と戦い、約550人が戦死、700人以上が捕虜となった。

日本国政府は、現地で、各将兵の自由意志で、逃走し、勝手に志願し戦ったと解釈し、戦後補償もしていない。

当時の軍司令官の証言(部下を残して帰国している。また、残留将兵等が、直接聞いた軍司令官の現地での言い分と全く反対だった。)と、日本国はポツダム宣言を守っているという建前を守るためである。

残留将兵らは 、当時の軍司令官が責任追及への恐れから軍閥と密約を交わし「祖国復興」を名目に残留を画策したと主張。裁判で係争中とのこと。

元残留兵奥村和一は、証拠、証言を求め、奔走。カメラがそれについて回り、記録した映画である。

映画は、満席だった。事実を知りたい人が多いと言うことと思う。

ゆれる 06/08/19

日本

西川美和監督

オダギリ ジョー 香川照之 真木よう子

出来の悪い息子だが、東京で写真家として成功した猛は母の一周忌で久しぶりに帰郷。

実家に残り父親と暮らしている独り身の兄の稔、幼なじみの智恵子との3人で近くの渓谷に足をのばすことにする。

懐かしい場所で一人はしゃぐ稔(幼い頃の家族団らんの楽しさを思い出してと言う雰囲気)。稔のいない所で、猛と一緒に東京へ行くと言い出す智恵子。 猛は二人から離れ、吊り橋の見える場所で写真を採る。その時事件が起きた。

渓谷にかかった吊り橋で智恵子と稔は争い、流れの激しい渓流へ智恵子が落下してしまう。その時そばにいたのは、稔ひとりだった。直ぐ警察を呼ぶが、智恵子は死ぬ。

状況からで事故となるが、後、稔は突き落としたと自供し(なぜ自供したか理解できなかった。気が抜けたかな)、殺人事件となる。猛は弁護士の叔父に金を積んで、弁護を頼む。

兄弟の駆け引きを絡め、裁判が進む。初めは判らなかったが、この兄弟は幼いときからのわだかまりがあった。要領の良い弟、はっきりしない兄。兄の嘘。共に智恵子が好き。それを見抜いている智恵子。

猛は、吊り橋の争いを見ていたらしいのに、弁護士がくどく念押しするが、見ていないという。

裁判は、稔の少しづつ状況が違う説明が入るが、事故の方向に進み出す。

しかし、兄弟の面談などで、兄の日頃のうっぷなどが破裂し、猛は兄弟の絆を着る決心をする。

弁護士が怒りくるうが、猛は証言に立ったとき、兄は嘘を言っていると、吊り橋を見ていた自分が証言した。殺人は有罪となる。7年経った。

家族はバラバラとなり、稔の出所に出向かいにも行かない。しかし遂に出掛けた。出所に間に合わなかったが、兄を町で見つけ、バスに乗るところで、両者目の合うところで、映画は終わる。

猛は証言で、肝心なことを証言しなかった。兄は、押し倒し橋から落としたが、智恵子の手を掴んでいたが、だが、持ちきれず手を離し落下した。

兄も何も言わずに刑に服した。

多分、兄弟は、仲直りではないかと思う。心の揺れる兄弟の話でした。

脇役も主役達も、なかなかの役者。監督も、何とかして兄弟の心の動きを表現しようと頑張っているのがよく解る。少し難しい映画でした。

太陽 06/09/02

ロシア

アレクサンドル・ソクーロフ監督

イッセー尾形 佐野史郎 桃井かおり

見て、不自然でない映画だった。

日本公開が不可能と言われた映画だそうだ。なぜそうなのか判らない。天皇を描くことがタブーのためか。

空襲の続く東京で、地下壕の生活。唯一焼け残った生物の研究所。1945年8月から1946年1月の話という。

映画は質素な服の着替えから始まった。侍従長からのその日の日程の報告。

御前会議では、玉砕の報告に、平和を望む。長い地下道を通り地上の研究所へ。そして、蟹の標本を楽しんだ。

昼寝で、B29が鳥になって、東京を焼き尽くす夢を見る。

マッカーサーとの会談。アメリカ側の車で出掛ける。あらゆる屈辱を引き受け、何でも受け入れるつもりの会談だった。

兵隊は、天皇としての扱いは出来ない。車の戸を開ける、乗ること、自分でやらなければならない。マッカーサーも扱いきれない人として描かれていた。

2度目の会談。食事会。天皇が広島はむごいことをした、と言うとマッカーサーは、私は命令してないという。マッカーサーが真珠湾はどうだというと、天皇は、命令してないという。

無責任というか、気に入らなかったことは、これ1つだった。天皇とマッカーサーが並んだ写真撮影の場面はなかった。

皇后と子供が戻ってくる。桃井かおりが、綺麗な皇后を演じていた。

子供の所に皇后が天皇の手を引いて飛んでいくところで、映画は終わる。

最近、靖国神社合祀の天皇の言葉が、漏れ新聞に出た。そのような天皇が描かれていたと思う。映画は、2005年の製作だそうだ。

吉田首相が、平和と敗戦国がいじめられないようにがんばって、憲法を受け入れた。そして、日本は経済大国になった。

その憲法を戦勝国に押しつけられたので、作り直すと、今の為政者が言う。戦争をやった、負けた事に対する責任も追及せずに、厚かましい。

紙屋悦子の青春 06/09/09

日本

黒木和雄監督

原田知世 永瀬正敏 松岡俊介 本上まなみ 小林薫

金の掛けてない映画。黒木和雄監督の映画に多い。カメラも動かず、じっくり写している。役者の演技に、なかなかOKを出さない監督のように見える。

忘れてはいけない、ごく普通の人の日常の話。良い映画だった。

私の父親は、南方へ軍属で行く弟(叔父さん 川崎造船に勤務していたと聞いている)を神戸で見送った。その時、柱の影で、見送っていた娘さんがいたそうです。弟は何も言わなかったそうですが、娘さんの方も1度の連絡もなかったそうです。

叔父さんは死んで、立派な位牌が仏壇にあります。

親爺が死んだ時、仏壇を整理していたら、叔父さんからの手紙が出てきた。親爺が大切に持っていた物です。出来の良い弟だったと時々言っていました。

その娘さんは、その後、どうしたんでしょう。何もなかったように、戦後を生きたと思う。子も孫もいるんでしょう。

調べる手段は何もありませんでした。生きていれば、今、80歳前後になっているはずだ。

そのような、日本国民がみんな持っているものの映画だった。

天使の卵 06/10/21

日本

冨樫森監督

市原隼人 小西真奈美 沢尻エリカ

村山由佳の「天使の卵」の映画化。

絵の好きな男と、年長の精神科医の女との恋愛小説。男のスケッチ絵がいい。

通勤電車での、最初の出会い、一目惚れ、がきれい。それがスケッチ絵になる、綺麗な画像。

撮影は京都との事。

父親たちの星条旗 06/11/23

アメリカ

クリント・イーストウッド監督

ライアン・フィリップ  アダム・ビーチ ジェシー・ブラッドフォード

 日米が戦った硫黄島の戦いに関わる映画。アメリカから見た硫黄島。醒めた目で作られている映画なので、見ることの出来た映画。

 すり鉢山に星条旗を掲げた6人の男の物語だ。旗は政治家のちょっかいがあり、2回立てられ、有名な写真は2度目の方だそうだ。また、やtらせの噂があったという。

 厭戦気分の広がった国民を戦争の継続に引き立てた写真となった。政治家が、上手に使った。此処で手を引光という、雰囲気があったようだ。そんな言葉がこの映画の中で、出てきた。

 6人の内、帰ったのは、3人。この3人のその後の話が中心に描かれている。

 3人は、膨大な国債の売りさばきに動員される。大統領の硫黄島の英雄との会見。各地の国債公募の集会において、英雄に祭り上げられ、政治家に賛美され、宣伝する3人。それが、組織的に行われた。戦争遂行のしたたかな国のやり方が、垣間見えた。今の、イラクのブッシュさんも同じように行動している。

 そしてアメリカの勝利。

 国家に捧げた犠牲という文句が出てきたが、いつもの通り、時の政治家のために死んだという実感が強く残る。

 その後の3人。だんだん落ちぶれる男。何とかこの伝手でのし上がろうとする男。何も喋らない男。

 この映画の原作は、喋らない男の長男が、自分で調べ本にしたのだそうだ。

 今までの映画は、敵が死ぬところは描くが見方の死ぬところは描かないのが多かったが、この映画は、両方の死をリアルに描いている。好感が持てる。

 2部作、日本から見た硫黄島 がある。12月公開。見に行こう。

涙そうそう 06/11/23

日本

土井裕泰監督

妻夫木聡 長澤まさみ

 NHKの大河ドラマに、ちょい役で出た女優を見に行ってきた。

 血の繋がらない、兄と妹の物語。

     

 

2005年

題  名 見た日・製作国・監督・俳優 感      想
北の零年 05/06/20

日本

行定勲監督

吉永小百合

 今は、効率化、儲け第一が目標であるが、丁度、今の世の中と似た状況の明治維新。その中で生きた、主に武士階級の人々の話だった。

 明治維新の侍の生き方を描いた、刀を鍬に変えて、いつの時代にもいる、要領の良い連中に、こき使われる人々。地道に百姓に精出す人々。

 最後は、希望の持てる場面で終わった。男と女の話も入り、深刻な内容であったが、気が楽に見ることの出来た映画だった。

 話は別だが、能楽の家元達も、この維新には、北海道で、運送業を営んだと聞いた。世の中が落ち着くまで、数十年が要るようだ。今の儲け第一主義は、すでに10年が過ぎている。が、未だに、問題噴出の世の中だ。

 石原さとみ が、NHK「義経」の静役で出ていたが、しゃべりの間の取り方が、非常に上手だったので、この映画を見てみようと思って、上映館を探し、封切り後6ヶ月のこの映画を見に行った。

 久しぶりの映画だった。

キングダム・オブ・ヘブン 05/06/26

アメリカ

リドリー・スコット監督

オーランド・ブルーム

 12世紀のフランス。妻子を亡くし、妻の十字架の飾りを奪った祭司を殺し、鍛冶屋のバリアン(オーランド・ブルーム)は、父に従い、聖地エルサレムへと旅立つ。

 当時、聡明なキリスト教徒の王ボードワンと、回教徒のカリスマ的指導者サラディンによって束の間の平和が保たれていたエルサレムだった。

 キリスト教徒の王ボードワンは癩病に犯されており、サラディンとの戦いを直談判で回避した。しかし、王の死去に伴い全面対決となり、負けに負けてエルサレムはサラディンに攻められる。

 バリアンは、徹底的に抗戦し、サラディンに講和の申し出をさせることになった。

 エルサレムの引き渡しと、キリスト教徒の無傷の撤退と言う条件が成立した。

 その間に、バリアンの騎士としての成長、王ボードワンの妹、王女との恋愛、戦争場面が、歴史を入り込みながら、発展。

 最後、主人公は、女王を止めた女と、故郷に帰った。

 現在の世情と、宗教観、宗教者を、多少、批判した描写があったが、スペクタクルが見せ場。

female 05/07/28

日本

「桃」 原作=姫野カオルコ、監督=篠原哲男

長谷川京子

「太陽の見える場所まで」 原作=室井佑月、監督=廣木隆一 

大塚ちひろ、石井苗子、片桐はいり

「夜の舌先」 原作=唯川めぐみ、監督=松尾スズキ

高岡早紀

「女神のかかと」 原作=乃南アサ、監督=西川美和

大塚寧々

「玉虫」 原作=小池真理子、監督=塚本晋也

石田えり

 「女性とエロス」がテーマのオムニバス作品、5作。

「桃」 東京のOL淳子は、恩師の葬儀に出席するため、故郷を訪れる。

 昔、中学生だった淳子は、桃畑の中を自転車で疾走した。中学の独身教師が住む一軒家へ。そこで彼とさんざん「いやらしいこと」に耽ったのだ。

 淳子を好きだった、今、桃畑を継いでいる同級生の矢崎に、淳子は言う。「あたしもあの人もただやりたかっただけだよ」

 1人、高台で故郷の夕景を見ながら、淳子は矢崎からもらった桃を、舌をつかってゆっくりと舐めるように、かじり、味わう。

 

「太陽の見える場所まで」 深夜、熟女ホステスのマチコがタクシーに乗り込むと、助手席に隠れていた若い女日出美が顔を出し、「こんばんは、ゴートーです」とナイフを突き出す。

 女性運転手の佳代もすでに売上金の2万円をとられていた。マチコと日出美の乱闘となるが、だんだんと明日までに100万円いるという日出美の事情が見えてくる。ホストに入れ込んだ挙句のこと。マチコも佳代もそれぞれに抱えている事情を吐き出し、「私を殺して」の大合唱に。

 そして日出美が突然アクセルを踏みつけと車は壁に激しく衝突。次の瞬間、太陽の光が降り注ぐ浜辺で『天使の誘惑』をフリ付きで歌い踊る3人となる

 数分後、膨らんだエアバックの間で3人は意識を取り戻す。みんな同じ夢を見ていたようだ。誰からともなく、夢に出てきた海へ逃げようということに。そしてタクシーは夜明けの東京を疾走していく。

 

「夜の舌先」 工場で働く正子は、変態課長とデートする代償に有給休暇を手に入れ、南国へ1人旅をした。

 ホテルの部屋でマリファナを吸って、課長の誘い文句を思い出しては笑い転げる。部屋に置かれた香炉は、昼間、市場で手に入れたもの。

 店のおばさんは「それを見つける人は不幸な人。でもこれで幸せになる。好きな人の髪の毛、この香炉に入れて眠る。好きな人、夢に出てくる。好きなこと、するといい」と言った。

 正子は営業の浅山を思い出す。5つ下。たいした男じゃない。けど、「チュウしたら・・意外といい仕事しそう・・あの白い指でいじられたら、あたし、凄い声出す・・」

 工場で浅山にお土産のネクタイを渡す正子。その時、彼の肩に髪の毛発見。帰宅し、香炉に髪の毛を入れ、常習になった睡眠薬を飲んで横たわる。

 正子はあの南国のホテルのベッドで浅山と全裸で絡み合っている。興奮の極み。それ以来、正子は何度も浅山の髪の毛を入手しては淫らな夢に夢中になっていく。

 

「女神のかかと」 小学生の奈月がボーイフレンドの真吾連れて家に帰る。色気づきだしたお喋りな奈月に、寡黙な真吾は押されっぱなしの様子。

 そんな彼は、出迎えてくれた奈月の母親に胸ときめかせる。白い素肌がまぶしい脚、柔らかそうな髪の毛、ノースリーブから出た腕、その美しさに目が釘付けになる。奈月に算数を教えながらも、母親の梗子が気になって仕方ない。

 自分の部屋に誘う奈月に「女がそんな軽薄で迷惑すんのはこっちなんだから、やめてよ」と口走ると、それまで無表情だった梗子がおかしそうに笑う。

 すっかり心を奪われた真吾は成績ががた落ちに。亭主のいない梗子は誘惑する素振りさえ見せ、彼の心と体は熱くなるばかり。

 そして終わりは突然やってくる。奈月一家は亭主のいるアメリカに旅立つことになったのだ。

 

「玉虫」 田圃の一軒家。古ぼけたテレビに玉虫厨子の映像が流れている。それを見ている女と、女のスカートをまくって腿を愛撫しているじじいの手。女はじじいの愛人で、じじいが来るのをひたすら待ちながらこの家で暮らしている。

 ある晩、泥酔したじじいが若い男を連れてくる。じじいに言われてピンクのバレリーナ衣裳に着替え、『渚のシンドバッド』をフリ付きで歌う。

 じじいが眠りこむと、女と男の間にエロチックな空気が流れ出す。触れそうで触れない唇。女の手が男の股間に伸び、さらにエスカレートしそうになった時、雷が落ち、慌てて体を引き離す。

 暴力団の抗争請うそうで銃の撃ち合いで負傷するじじいと男。じじいの入院中に女と男は安旅館で激しく交わる。

 女は自転車を走らせる。家の前に来るが、何を思ったのか来た道を引き返す。「東京」の標示に目を止め、しばし考えをめぐらせ、その標示の方向へと自転車を漕ぎ出していく。

 以上5作。エロっぽかったが、今時の作り方だった。最近の女性作家は、小説で、きわどい性描写が多い。映画と小説の違いかな、と思った。

いつか読書する日 05/08/12

日本

監督 緒方明

田中裕子 岸部一徳 仁科亜季子

 坂の町、長崎の町で繰り広げられる、男と女の物語。

 女は高校生だった時、母親が、自分の男の父親と、交通事故で死んだ後、疎遠となり、50歳の今も、独身で牛乳配達をしている。

 牛乳を飲めない男の家にも、毎日、同じ時間に配達している。これが、楽しみで、50歳になった。また、多量の本を、ベットの中で読んでいた。

 分かれた男への思いは、誰にも知られず生きてきた。その思いを女はラジオのDJに匿名で書き綴る。「私には大切な人がいます。でも私の気持ちは絶対に知られてはならないのです……」

 男は、ガンに冒された妻を看病し、市役所に勤め、子供の福祉にのめり込んでいる。

 男の妻は、毎朝の牛乳配達の音を旦那と一緒に聞いていた。そして、いつか旦那と女の関係を知り、女に、自分が死んだら、旦那と一緒になることを進めるようになる。

 男の妻が死にんだ後、二人は会い、親の死んだ場所へ行き、二人の疎遠になった理由を知る。

 沸き上がる熱い想いが、女の心をきつく締めつける。何かが始まってしまう。男は突き動かされるように美奈子を抱き締めた。「いままでしたかったこと、全部して…。」

 
 いままでしたかったこと、全部して、朝を迎える。そして男が死んで、二人はまたべつべつになる。

 女は牛乳配達を続ける。これから何をして、生きていくかと聞かれ、本を読むと答える。

 藤沢周作の女の話も良いが、この映画のような新しい表現も気に入っている。ただ、テンポが速すぎる。早すぎて当たり前かもしれない。

ヒトラー 最後の12日間 05/08/31

ドイツ

監督:オリバー・ヒルシュビーゲル

ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ララ、コリンナ・ハルフォーフ、ウルリッヒ・マテス

1945年4月20日。ソ連軍の砲火が押し寄せるベルリンで、ヒトラーとその側近たちは、総統官邸の地下要塞に避難していた。

 もはや敗戦を疑う者はいなかったが、正常な判断力を失ったヒトラーは、わずかに残った軍隊に戦況の挽回を命じが、効果は上がるわけはなく、惨状をさらに悪化させるばかりてある。ヒトラーは、部下が命令を聞かないと、怒鳴る毎日であった。

 最期まで運命をともにしようとする者、逃亡を謀る者、停戦をはかる者、酒と享楽に溺れる者、を描く。

 総統付き秘書のユンゲは、ある日、ヒトラーから遺書の口述筆記を依頼される。

 独裁者アドルフ・ヒトラー。過去、チャップリンの『独裁者』や先鋭的な野心作が、この希代の悪漢をパロディや政治的考察の下に描いてきたが、その人間性を正面から描くことは絶対のタブーだった。そのタブーを当事国のドイツが自ら破ったものだ。

 ナチスと言う、組織の終焉を描いた悲劇である。多くの場合、失われゆくものは美しい。製作者たちはそのあたりを誠実かつ慎重に演出しているが、忘れてならないのは、最期の日々に人間らしい悲哀を見せる彼らが、史上稀に見る蛮行を行った事実である。

 映像は、ドイツがやられる場面ばかりであるが、ドイツがやっつける場面はなかった。勿論、600万のユダヤ人の抹殺もなかった。あえて入れなかったのだと思う。

 映画の最後で、戦後を生きた年老いた女性秘書ユンゲ(本人だと思う)が登場し、地下要塞の中にあって、たくさんの人殺したことは知らなかった、真実を見ていなかった、見ようとしなかった、と。

 少し冷静になれば、分からないわけはなかった、と、かつての自己を反省。若かったことは言い訳にならないと語る。この秘書は、すでに亡くなっているそうだ。

 日本においても、悪いのは、一部の人達であって、国民は被害者とも言われている。確かに指導者が、引っ張って言ったと思うが、国民が付いていった、抵抗する者は、牢に繋がれ、抵抗の芽 はしっかりとつみ取られていった。

 結果的に、少なくとも抵抗しなかった。大きな流れが出来てしまうと、抵抗は、無理かもしれない。

蝉しぐれ 05/10/11

日本

監督:黒土三男

市川染五郎、木村佳乃

 藤沢周平の映画化。政争に巻き込まれ切腹する父親と、主人公文四郎の親子の間のしっかりした生き方の考え。また、隣家の娘、ふくとの20年にわたり、二人がしっかりと持ち続けた恋心。

 映画2時間で表現することは、難しいものだなと思った。あまり、原作と変えることは出来ないし、変えないと長く時間を取ってしまう。

 どうしても、原作が、ちらつくが、小説よりも、あっさりした爽やかさがあった。

四月の雪 05/10/12

韓国

監督:ホ・ジノ

ペ・ヨンジュン、ソン・イェジン
 

 照明の仕事をしているインスの元に、妻の交通事故の知らせが届く。

 海岸沿いの小さな町の病院に着くと、そこには見知らぬ女性ソヨン椅子に座っていた。

 事故に遭った時、インスの妻とソヨンの夫は同じ車に乗っていたのだった。携帯電話には、その事実が記録されていた。突然の出来事に、二人は、それぞれ、戸惑いながらも、不眠症に悩ませられながら、モーテルに泊ま、看病をする。

 二人にしか分からない苦しみを背負った彼らは、いつしかお互いを心の支えにしていることに気付く。

 事故の二人と同じ状態に落ち込んで行く。

 しかし、事故の二人の一方が生き返り、一歩が死ぬ。葬式に出る。相棒を看病する内に、どうしてもすれ違いが生じ、別れていくこととなる。

 日本人には、出来そうもない筋。どうしても、蝉しぐれになる。

     

 

2004年
題  名 見た日・製作国・監督・俳優 感      想
美しい夏キリシマ 04/03/13

日本

黒木和雄監督

柄本佑

 特攻隊の基地があるキリシマで、肺浸潤になった思春の多感な中学生が、勤労奉仕で爆撃に会い、下敷きになった親友を見殺しにした悩みと共に、彼を取り巻く人々の日常が、美しい風景の中で描き出されていく。

 やがて訪れた終戦―その時、彼は、竹槍を振りかざして、進駐軍ののんびりした、隊列に突っ込んで行くのでした。

 淡々と描いているのが、気に入った。

ションヤンの酒家 04/03/27

中国

フォ・ジェンチイ監督

タオ・ホン

重慶の旧市街に一軒の屋台を持っている女性。この心地よい屋台街にも都市開発の波が押し寄せてきた。

 自分の恋も絡ませて、現在、中国が抱える"家族"の問題も抱えて、ションヤンは毎日闘ってい た。

 そこに生きる女を描こうとする。最後、恋人と仲良くなって、一緒に住もうとするが、男は、遊びの対象としかしていなかった。

殺人の追憶 04/04/03

韓国

ポン・ジュノ監督

ソン・ガンホ 

刑事物。田舎の土臭い刑事と都会から来た刑事が殺人犯を追うが、10人の女が殺され、迷宮入りとなる。

 後年、刑事を辞めた田舎刑事が、田圃の中の、その現場に立ち寄ってみると、犯人らしい男も、又、ここを訪れていることを、ここの子供から聞く。映画は、ここで終わっている。

 実際あった事件を元に作った映画とのこと。未解決事件だったそうだ。

カルメン 04/04/24

スペイン

ビセンテ・アランダ監督

バス・ヴェガ

 自由奔放に生きる女と純真な男の物語。演じているのは現在の俳優であり、それは美し過ぎる人達である。

 今日の朝日新聞に、婦人科のお医者さんの「性感染症 小学校から予防策教えよ」の記事が載っていた。性感染症の実態調査のため、匿名無料診察を行ったところ、125名(平均年齢18.7歳)中、108人(80%)が感染していたそうだ。

 もし私が、あのように言い寄られたら、ホセと同じようになるかも、と思う。ただし、私には、声を掛けないだろう。

 一休さん、良寛さん、川田順さん、などは、本当に幸せな人達です。

わが故郷の歌 04/05/01

イラン

監督・脚本・製作:バフマン・ゴバディ

シャハブ・エブラヒミ、アッラモラド・ラシュティアン
 

戦乱のイラクへ! 親子3人のミュージシャンのイランからフセインのイラクへの運命的な旅

クルドの大歌手ミルザのもとに、かつての妻ハナレが救いを求めているという知らせが届く。ミルザは同じミュージシャンの二人の息子を無理やり引き連れて、平穏なイランからハナレの暮らす戦乱のイラクへと旅立つ。国境に近づくにつれ、不気味な爆音が響く中、3人は行く先々でクルドの民族音楽を高らかに演奏した。ようやくイラクにたどり着いた彼らは、美しくも険しい雪山を越え、ハナレがいるという村を目指すが、結局合うことは出来なかった。

クルド語とクルドの音楽を初めて聞いた。

パッション 04/05/15

アメリカ

監督・脚本・製作:メル・ギブソン

ジム・カヴィーゼル

 登場人物は、すべて、当時、実際に話した言葉を使っている。ユダヤ人はアラム語、ローマ人たちはラテン語。だそうだ。

 アラム語、ラテン語は初めて聞いた。

 キリストの最後の12時間を描いている。描写は、残酷で、ありのままにと言う感じの表現だった。日本人の描写は、残酷であっても、どことなく、綺麗に描かれるが、大陸に住む人達の描き方は、随分、遠慮しているだろうが、そのものズバリの描き方だ。

 牧畜の民、陸続きの土地に住み、常に戦争をしていた人達では、殺すことは当たり前の、日常茶飯事だった、と言うことか。

 民衆が、司教など、実力者の言うことに、一緒になって、同じ事を叫ぶ。その司教等を支配する、ローマの総督は、その民衆の声に負け、好きなようにしろと投げ出す。異民族の統治が大変だったことを示しているなと思う。

 最近の「イラク戦争」、「イラクで拉致された日本人3人への一斉非難」を批判しているように見えた。今も、同じ事を繰り返していると言うことか。

 マグダラのマリアを、初めて知った。綺麗な女優さんのためか、印象に残った。

 マグダラのマリアはイエスにつき従い、イエスの処刑を最期まで見届けました。また、誰よりも早く復活したイエスと再会を果たした一人、と言う。マグダラと言う言葉には“更生した売春婦”という意味もあるとのこと。

 映画では、マグダラのマリアと母マリヤと十二使徒の一人(名前は判らなかった)の3人が一緒に最期を見守っていた。

 最後の場面で、手に打ち込まれた釘の穴が開いた、人間が、動き出した。キリストの復活だ。復活は、聞いていたので判ったが、知らない人でも理解出来だろうか、と思う。

ヴァイブレータ 04/05/29

日本

監督:廣木隆一

寺島しのぶ 大森南朋

 頭のなかで聞こえる様々な“声”で不眠、過食、食べ吐きを繰り返す主人公の女は、現代社会に生きる女のひとつの典型だそうだ。

 その女の、特に特別ではない男女のどこにでもある出会い、行きずりの関係と別れの短い時間。

 そして、それが、誰かといると言う心地良さ、他人の温度を体感することの安らぎ、同時に心の渇きを潤してくれる。

「わたし、あなたにさわりたい」で始まり、次の日、「彼を食べて、彼に食べられた。ただ、それだけのことだった」で終わる。

 現代女性の多くは「私のことが書いてある」と共感との事。今は、そんな時代かな、と思うが、あまり驚かなかった。

 赤坂真理作「ヴァイブレータ」を読んでみよう。
 

チルソクの夏 04/06/19

日本

監督:佐々部清

水谷妃里 上野樹里 桂亜沙美 三村恭代

 1977年、韓国と我が国が、まだぎくしゃくしていた時代に下関と釜山の高校生の親善陸上大会があった。出場した高飛びの女高生郁子が、韓国の同じ高飛びの男の子と出会い、淡い恋心を持ち、翌年の大会での再会を約束する。

 文通が始まり、仲の良い女4人組が郁子を応援するが、いろいろな問題が発生し、翌年の大会で再会はしたものの、不本意な別れとなる。

 二十数年後の2003年、親善陸上大会が復活し、郁子は、二十数年前の大会を思い出しながら、その大会を運営していた。

 大会が終了し、昔の4人組戸再会した、郁子に、昔の呼び出しと同じ、呼び出しのメモが届く。多分、二十数年ぶりの大人の再会を果たすのだろう。

 誰もが持っている初恋のお話でしたが、心の底をくすぐる演出だった。

トロイ 04/06/24

アメリカ

監督:ウォルフガング・ペーターゼン

ブラッド・ピット オーランド・ブルーム ピーター・オトゥール

 トロイの木馬のあの物語。

 気軽に楽しく見てきた。ある人が、「たるかった」と言うので、「そうでしょう」と言ってしまったが、楽しんでみれば良いと、自分に言い聞かせて見に行った。

 漸く和平が成った時、トロイの王子パリスが、ひとりの女を略奪した。女は、スパルタの王妃ヘレン。最も、当時は、略奪結婚は当たり前の事だったようだ。

 情熱のあまり他国の王妃を奪って花嫁とした、古代ギリシャの伝説の恋は、トロイとスパルタを始めとするギリシャとの、史上最大の戦いを引き起こす。

 ギリシャ軍は千艘の船、そして、「女神の息子」と呼ばれる無敵の戦士アキレス。

 アキレスは、自らの名誉と栄光のためだけに戦う、誇り高く倣岸ではあるが、この戦いの結末と、運命の恋の行方を、その手に握っているのだった。

 トロイを攻め倦ね、オデッセイが木馬を思いつき、見方を城内に入れ城門を開き、味方を城に導き入れ、あっという間に陥落させた。

 城から出て戦うと言うトロイ王。反対する王子。ピーター・オトゥール扮するトロイ王が城から出る決断をする。が負け。

 トロイの総大将、王子ヘクトルは、アキレスと一騎打ちをするが、負け、敵の陣地に引きずられて行く。

 夜になって、アキレスの元にトロイ王が尋ね、アキレスの手にキスをして、遺体を返すよう要求する。アキレスは、王の勇気を認め返す事にする。その時、良くここまでこれたなとアキレスが言うと王は、ここは俺の領地だからと言う。少し作りすぎ。

 諦めて船を返したギリシャ軍は、トロイの木馬を残した。王子パリスは焼けと言うが、城に持ち込む父のトロイ王。

 アキレスのアキレス腱を射抜くのは、王子パリスとして描かれているが、ギリシャ神話はどうだったけ。

 人の女房を横取りした、王子パリスは、始め、兄、王子ヘクトルにすがりっぱなしの弱い男が、弓を持つと、凛々しい男に変身する。

 世界史年表 歴史学研究会編 岩波書店 の前1250年に1行のみ記述があった。

「この頃、モーセに率いられたイスラエル人、エジプトを脱出か。この頃、トロイア7A市が破壊される」

ブラザーフッド 04/06/29

韓国

監督:カン・ジェギュ

チャン・ドンゴン 、ウォンビン
 

 現代の戦争の話は、楽しんでみる物ではない。実に残酷無比。大らかさは微塵もない。

 1950年、朝鮮戦争の話。母親、弟、婚約者とその兄弟を養う兄と、成績優秀な弟との心の葛藤を描く。

 これほどまでに弟思いは、儒教の教えかな。戦争を自分の為にやっている内容だ。

 仲の良い兄は弟に、貧しい生活の中で万年筆を買ってやる。ある時、兄弟は、掠われるように兵隊に取られ戦場に送られた。兄は、手柄を立てれば弟が除隊出来ると聞き、命知らずの兵士に変わって行く。

 兄を慕っていた弟は、残酷になっていく兄を憎み出す。

 やがて、兄は、韓国の英雄になるが、中国軍の参戦により、退却を重ねるが、途中、自宅に寄った弟は、兄の婚約者と共に、アカ狩に会い捕らえられる。再会した兄は、婚約者を疑い、弟は捕らわれる。

 婚約者は殺され、兄は必死に弟を探すが、囚われの場所は焼き尽くされ、弟に与えた万年筆を見つけ、弟が死んだと思う。そして、弟、婚約者を殺したのは、韓国と思い、今度は、北朝鮮の英雄になってしまう。

 弟は、同僚に助けられ生きていた。南が盛り返し、38度線で、膠着状態に。弟は、兄に会いに戦場に向かう。

 前線を離れ北に潜り込むが、見つかり捕虜となり、兄に連絡を取るも、弟は死んだと言って会わない。

 戦闘が始まり、敵味方入り乱れての戦場で、兄弟は、再会するが、兄は、弟と理解出来ない。兄は負傷し、弟が必死に兄弟しか判らない話をする。

 漸く、弟と理解するが、弟に早く後退しろと言う。兄が万年筆を渡そうとするが、兄は、必ず、家に戻るというので、では、家に帰った時、返してくれと言い残し、弟は後退する。兄は、銃を北に向け、弟を援護し、死ぬ。

 50年後、兄の遺体が発掘され、万年筆が出てくる。それにより、弟に連絡があり、50年目の再会を果たす。

 韓国の映画は、非常に残酷に戦争を描く(本当は、描かれたより以上に残酷と思う)。人を殺す事を描く。又、国際法違反の捕虜を殺す事も。やはり、大陸に暮らす人達なのかなと思う。

 源平合戦、戦国時代、我が国でも、親子兄弟が敵味方に分かれ、殺し合った。しかし、負けた方の大将が死ねば、それでお終いという所がある。

 弟が、北に潜り込み、兄に再会し、無事に、南に後退する所は、作った物語という気がする。

 ただ、韓国は強かった、と言う感じは、全然無かった。それにしても、朝鮮戦争は、残酷な戦争だった。

アドルフ

イザベル・アジャーニの惑い

04/07/31

フランス

監督:ブノワ・ジャコ

イザベル・アジャーニ、スタニスラス・メラール

 

 むずかしい小説の映画化で、映画を理解するのが大変だった。余りよく判らなかった。以下、そのストーリー。

 大臣の父親を持つ、若いアドルフは、赴任先で、10歳年上の伯爵夫人、幸せそうなのにどこか寂しそうなポーランド人のエレノールをひとめ見て恋に落ちた。が、エレノールは余り乗り気でなく、田舎に休養に行ってしまう。

 その後、伯爵の家で逢瀬を重ねる内に、「あなたといる時だけが幸せ」と言う、仲になってしまう。エレノールの方が危険を冒した行動が多くなり、子供を置いて伯爵の家を出た。友人の夫が、彼女の家を訪れ、「あんな若造にはもったいない」と迫られる。

 アドルフは、その友の夫と決闘する事になってしまう。腕を打たれるが、勝ことができた。「愛する者に愛されないのは不幸。だが、愛が冷めても熱愛されるのは大いなる不幸だ」。3ヶ月後、アドルフは帰国する。

 エレノールはアドルフの後を追った。彼女を迎えたアドルフは喜んでいるふりをするが、エレノールはそんな彼の気持ちを見抜き、彼を謗った。激しい怒りが二人をとらえ、憎悪からあらゆることを互いに言い合った。そして、二人は初めて言い訳もせず、仲直りもせずに別れた。

 家に帰ったアドルフに父が言った。「お前のその歳で愛人を持つのはよくない。エレノールは翌日、立去命令を受けるはずだ」。それを聞いてアドルフは、彼女を今までにないほど愛しく思い、その想いを彼女に告げる。「君に命を捧げる。結婚しよう」。しかし彼女は言った。「あなたは愛だと思っているけどそれは哀れみなのよ」

 旅立った二人が国境に着いたとき、アドルフの元に父から手紙が届いた。「お前は24歳だ。青春の最も美しい時期を浪費しているのだ」
 二人は小都市に落ちついた。アドルフは彼女を不安にさせないために、不満と悲しみは胸にたたみこんで、素振りには出さなかった。

 彼女の父親の死の便りがあり、ポーランドへ。

 。「彼女が必要とするならそばにいます」。とアドルフは言ったが、その思いはすべてを言い終わる前に消えていた。二人は毎日顔をつきあわせて、沈黙と不機嫌のうちに、単調な日々を過した。語らいをしようにも泉は枯れていた。

 アドルフは、ついにエレノールと別れる決心をしたと父に手紙を書いた。

 それから数日後、エレノールは重い病の床に伏した。アドルフの手紙が彼女のもとに届けられ、彼女はそれに目に通すなり気絶し、狂乱状態におちいったのだった。

 アドルフは日に日に衰弱していくエレノールを散歩に連れ出し言った。「やり直そう」エレノールは言う。「愛がすべてだったの。でもあなたは違った」。部屋に戻ったエレノールは、アドルフに宛てた手紙を探す。読まずに焼き捨てて言って彼の腕の中で息を引き取った。

エレノールの手紙。「アドルフ、なぜ私を責めるの?なぜ怒りっぽくて弱気なの。何を求めているの?私死ななくてはだめ?近寄るのも嫌なエレノール。本当に邪魔な女。彼女は死んで、あなたは一人群衆の中に出て行く。無関心を有り難がるのも今のうち。ある日彼らに傷つけられ、その時あなたは懐かしむ。あなたへの愛に生き、あなたのために身を投げ出す心。もはや一顧だにされない心を。」 

 すべてを捨てる、年増の女の愛を受けた時、男はそこから逃れようとする。しかし、何処へも逃げる事は出来ない。その女と男の心を表現したんだろう。

誰も知らない 04/08/07

日本

監督:是枝 裕和

柳楽優弥 北浦愛 木村飛影 清水萌々子 韓英恵 YOU

 カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を貰った、柳楽優弥(やぎらゆうや)、平成2年生まれの主演の映画。

 公開の最初の上映を見てきた。席は満席だった。

 親に捨てられた子供、4人の生活を丹念に映像化。その長男の6年生が主人公。4人の男親はみんな異なる。

 小さな子が居るとアパートに入れて貰えないので、母親は長男と2人暮らしと言うことでこのアパートに入った。小さい子2人は、旅行カバンに入れ運び込み、大きい妹は夜連れ込む。

 母親は、小さい子供達に家から外に出たりしないように言う。子供達は、その様な生活に慣れているようだ。

 学校に行かせない、男が出来ると子供を置いて出て行ってしまう。多分、始めは、子供を引き取るつもりが、相手に言い出せなく、置きっぱなしとしているのだろう。この母親が、今の世の母親の一面を表している。

 子供は学校に行かず、長男が家をお守り。母親は、働きに出たが、ある時、好きな男が出来、家を出て行く。この時から、子供4人の生活が始まる。

 食べる、生きる、親の言うことを聞く、そうは言っても、時々、破らざるを得ないの生活が続く。

 金が途切れ、ちゃんと払っていたお金が払えなくなり、電気、ガス、水道を止められ、やむを得ず、公園の水で、洗濯、水浴び。

 お金が無くなれば、元親に金を貰いに行く。しかし盗みだけはしない。出来ないのかも知れない。

 随所に、大人の勝手が映像になっている、子供は母親を慕っている、映像が出てくる。

 途中から、いじめに遭っている女子中学生が仲間になる。また、長男に同年代の仲間が出来る。ゲーム遊びや、野球をやる。普通の男の子の生活も経験する。

 食べる物が無くなると、コンビニの期限切れのおむすびを貰う。応援してくれる、暖かい目の大人もいる。

 ある時、大家が家賃の請求に来る。「親類の子達ね」と言って、去る。のんきな大家のつもりか、理解ある大家か判断しかねた。映画の中では、アパート追い出しの場面は無かった。

 1番下の子が死ぬ。何で死んだか判らずに見終わる。兄弟が死んでも、子供達は、淡々としている。

 この子とは、羽田へ飛行機を見に行く約束があったので、その子を旅行カバンに入れ、羽田に連れて行き埋める。これを手伝う女子中学生。

 映画は、ここで終わる。映画の描き方が、随分と変わってきたんだなと思う。お金は余り掛かっていない。子供の背の大きさが、始めと終わりで違う、1年以上時間を掛けている。

 戦乱の中世の子供達を描いた本は少ないが、その中世の子供を描いているように思われた。

 黒沢明「7人の侍」の三船俊郎の役と、皆川博子「乱世玉響(らんせいたまゆら)」の蓮如の2人の子を思い出した

 「美しい夏キリシマ 」と同じような印象を受けた。何か、こだわった事を表現しようとしているようだ。見る方が考え感じることかな。

LOVERS 04/09/25

中国

監督:チャン・イーモウ

金城武、アンディ・ラウ、チャン・ツィイー

 「紅いコーリャン」、「生きる」、「初恋のきた道」の監督、チャン・イーモウの映画を見てきた。

 映画は、CGなどを使って、動きの大きいアクション映画だった。また、「初恋のきた道」で可憐な少女を演じた、チャン・ツィイーが、凄い踊りと武術の強い女を見せてくれた。

 特に、踊りは、上手と思った。

 唐の下り坂の時代、中央の政治腐敗により治安が悪化、各地で叛乱勢力が台頭する。その中の最大勢力「飛刀門」の討伐を命じられた役人の劉(リウ アンディ・ラウ)と金(ジン 金城武)は、「飛刀門」と繋がりがあると噂される盲目の踊り子 小妹(ショオメイ チャン・ツィイー)を利用して「飛刀門」への潜入を図る話である。

 金が、偽りの浪人の身分で、遊郭の踊り子 小妹と騒ぎお起こし、そこに、劉が乗り込み、小妹を逮捕しようとする。遊郭の女将の取り成しで、鼓打ちの舞を踊ることとなる。この踊りが、なかなか凄い。

 小妹は、踊りの続きで、役人の剱をを取り上げ、振り回す事になり、牢に繋がる事になってしまう。

 ここで、役人でプレイボーイの金が、小妹を助け出す芝居を打ち、劉と金が連絡を取りつつ、2人の逃避行が始まる。

 追っ手との間で、「原野の戦い」、「竹林の戦い」があり、二人は互いに相手を誤魔化しているのを、承知の上で親密度が深まっていく。

 ついに、小妹の「飛刀門」に到着する。

 そこで、劉も捕まり、金の正体がばれてしまう。又、劉の正体も、「飛刀門」の一員で、体制側に潜り込ませたもので、しかも、小妹の恋人だった事が判明。

 しかし、小妹は、劉を拒否し、小妹は、金を殺す役目を負う。劉は、再度、体制側に潜伏へと向かう。

 小妹は、金を殺す事は出来ず、逆に、金と一緒に、風のように生活しようと誘われるが、断り別れる。

 しかし、後を追うことになるが、追いつこうとする小妹は、「絶対に行かせない」と劉に阻まれる。

 ここで、金と劉の戦いが始まる。そして、雪の中で、3人は傷を負う。

 

華氏 911 04/10/02

アメリカ

監督:マイケル・ムーア

 ドキュメンタリーと言うのだろうが、話の進行が早く、字幕を見るだけで精一杯だった。退屈だった。

 映画の前半が、アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュは、911以前から囁かれていたテロの可能性を軽視し、対策を見過ごしてきた、から始まるブッシュ政権批判。

 ブッシュやその周辺がマヌケに見える編集と、サウジアラビア、ビンラディン家、軍需産業(カーライルグループ)、石油利権(ハリバートン社)との深い深い関わりを解説。

 中盤から後半が、アメリカの階層化した社会の問題。失業率の高い地域の若者が学費稼ぎのために軍に入隊している実体。議員に「あなたの息子を戦場に送る署名」を求めにいくムーア。

 イラクに息子を送っている議員は、たった1人だそうだ。

 後半から終盤がブラックホークの墜落で息子を亡くした母親の嘆き。

 このような物を、ドキュメンタリーと言うのだろう。

父、帰る 04/10/30

ロシア

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ

イワン・ドフロヌヴォフ:弟イワン ウラジーミル・カーリン:兄アンドレイ コンスタンチン・ラウロネンコ:父 

 最初の画面は、子供らが高い塔から度胸試しに飛び込む場面から始まる。兄は飛び込むが、弟は、飛び込めず、母に助けられる。

 その兄弟のもとに、12年ぶりに父が帰ってきた。息子2人は、なぜ、父は帰ったか判らない。次の日、父は2人を連れて旅に出た。

 父と3人の生活が始まる。父は、厳しく兄弟に当たる。

 兄は、父に馴染むが、弟イワンは徹底的に反抗する。父は弟をイワンと呼ぶ。”はい、父さん”と言わせる。兄弟を対照的に描いて行く。

 最後、父は、イワンがワーニャに変わり、イワンは、父を必死に呼び続ける。

 普通の父親と子の間にもある葛藤が、突然現れた父親と子の間には、強烈に出るとの設定で物語が進み、あっと驚く結末。

 判らない事:父親が、子供達に黙って、旅の目的地で、箱を掘り出す。結局、中身は判らずに終わる。中に何があったのだろうか?

 最近、難しい映画が多い。従って、制作者の意図に関係なく、自分勝手な解釈となってしまう。映画を見ている間、面白く見られれば良いのかな、と思う。

父と暮せば 04/11/06

日本

監督:黒木和雄

宮沢りえ 原田芳雄 浅野忠信

 原爆で生き残った、後ろめたさから、幸せになる事を嫌い、ひっそりと生きている主人公の物語。原爆で死んだ、父が、突然、幽霊となって現れる。その父は、娘の幸福を願い、励まし、なだめ、すかして、終に、娘を幸福になる気にさせる。

 ほぼ、2人の話で始終する。その中で、原爆が落ちた時の事、その後の娘の生きてきた事が、我々に判ってくる。

 原爆の時、娘は、石の灯篭の影に跪いて、直接、光を浴びなかったが、父は、まともに浴び、壊れた家の柱に挟まれ、身動きできなかった。火事の火が迫る中、娘に早く行けと言う父。終に、父を置いて、逃げた娘。それが、大きな後ろめたさの元だった。

 娘は、原爆の資料集めに夢中になる青年に惹かれ、ついに自分の心に素直になる。その父と娘の4日間の物語。

透光の樹 04/11/13

日本

監督:根岸吉太郎

秋吉久美子 永島敏行

 「私を買ってください」と言う女。金を出す男。しかし、金で買った愛ではなかった。

 東京と鶴来町は、長い距離を隔ててある。白山の麓の鶴来町、手取川、手取渓谷、岩本の十一面観音(岩根宮)、女体后の宮(白山比盗_社)、劔の権現(金剱宮)らの古いお宮。謡曲「歌占」の里、また、隣村、鳥越の鳥越城は、一向一揆の最後の砦であった。昔から、凄いエネルギーを内に占める土地柄の女の物語。

 裸のシーンが随分とあった。「R−15」の指定ある映画だった。

 数回の逢瀬の末、男は癌で死に、女は、後追いできず、娘を育てた。

 その娘が、子を持つ頃の、その母は記憶が薄れた老女になっていた。娘は、その母を見て、「私は知らなかったが、母には、好きな男が居たのだ。そう言えば、時々、家を留守にしていた」と言って、呆然とその母を見ている所でこの映画は終わった。 

海猫 04/11/14

日本

監督:森田芳光

伊東美咲 中村トオル 佐藤浩市 三田圭子

 漁師の兄に嫁ぎながら、漁師になれない弟をも愛してしまった女。吹きすさぶ雪道の逃避行、兄弟の対決、女の死。

 その女の母の生き様も、凄まじい。孫の二人の娘に、母の死に方を、完全に隠し、ばれ始めれば、母は一生懸命生きたのだと言う。

 勿論、母の物語が中心。

 孫娘の、「お母さんに、何があったの」「本当のことを教えて。お願い」 で、祖母は、その母を語り始める。

 やがて夫婦は娘を授かり、はた目には順風の暮らしが続くかに見えたが、静かに夫婦の絆が緩み始める。

 そんな中で、何かと面倒を見てくれる弟との思いが交錯し始める。

 我慢が出来なくなった女は、実家に帰りたいと言い、弟を訪ね、一夜を共にする。「私は、一度だけ、あなたに抱かれにきたの」

 弟の子の二人目の娘が生まれたのを切っ掛けに、後戻りのできない運命の歯車がうねりをもって大きく回り始める。 終にすべてが暴かれ、吹きすさぶ雪道の逃避行が始まる。

 観客は少ないが、この映画も、若い人より、年寄りが多い。年寄り夫婦もいた。何処の映画館でもそうかなと思った。

隠し剣 鬼の爪 04/11/15

日本

監督:山田洋次

永瀬正敏 松たか子。

 幕末の東北の小藩の平侍、片桐宗蔵は、奉公に来ていた百姓の娘きえと、3年ぶりに町で偶然再会する。 伊勢屋という大きな油問屋に嫁いで幸せに暮らしているとばかり思っていたきえの、痩せて寂しげな姿に胸を痛める。

 その後、きえが病で伏せっていると聞いた宗蔵は伊勢屋に乗り込み、強引にきえを連れ帰る。宗蔵の貧しい暮らしが、回復したきえの笑顔で明るい毎日に戻った時、藩を揺るがす大事件が起きる。

 江戸屋敷で謀反が発覚したのだ。首謀者の一人である狭間弥市郎と宗蔵は、かつて藩の剣術指南役だった戸田寛斎の門下生だった。戸田はなぜか、一番腕の立つ弥市郎ではなく、宗蔵に秘剣“鬼の爪”を伝授していた。

 まもなく弥市郎は脱走、宗蔵は家老から弥市郎を斬るように命じられる。

 首尾良く、弥市郎を斬った宗蔵は、弥市郎の敵である家老を”隠し剣 鬼の爪”で殺し、武士を止め、町人に。きえを尋ね一緒になろうと誘うのだった。

 いつも通り、魅力的な女が出て来た。弥市郎の妻桂。夫を助けようと、家老を訪ねるが、弄ばれ、裏切られ、夫の後を追う。

 藤沢周作の甘い時代劇。ほのぼの調のさわやかさ。海猫、透光の樹よりも、こちらかな。

ピエロの赤い鼻 04/11/20

フランス

監督:ジャン・ベッケル

ジャック・ヴィユレ アンドレ・デュソリエ ティエリー・レルミット ブノワ・マジメル

愛すべき小学校教師のジャックは、毎週日曜になると公民館で赤い鼻をつけたピエロを演じて人々を笑わせるのが日課となっていた。息子のリュシアンはそれが嫌でならない。そんなリュシアンにジャックの親友アンドレは、ジャックがなぜピエロを演じるようになったのか真相を語り始める……それは第二次大戦ドイツ占領下の時代に遡る。ある日、にわかレジスタンス活動に身を投じたジャックとアンドレたちか、ドイツ軍の捕虜となり、劣悪な環境の“穴”に閉じ込められてしまうといいう事件が起こった。“穴”の中には激しい雨が容赦なく降り注ぎ、恐怖と空腹と寒さが彼らの体力をどんどん奪っていく。

明日にも処刑かという最悪の状況の中、“彼”はジャックたちの穴の上にふいに姿を現した。“彼”は懐から赤い玉を取り出すと、馴れた手つきで自分の鼻にそれを乗せ、おもむろに道化を演じ始めるではないか。そして“彼”は絶望の淵にあるジャックたちに囁くように語りかける。「生きている限り希望がある」と…。

ロード88 04/12/11

日本

監督:中村幻児

村川絵梨 小倉久寛 長谷川初範

 女子高生・槙村明日香(村川絵梨)は、スケボーを走らせ、元気に四国88ヶ所を巡るお遍路の一人旅。

 彼女は、母には幼い時、捨てられ、父は既に亡く、おばあちゃんとの二人暮らしだった。そして、「骨髄性白血病」という病持ちだった。ある時、四国遍路を思い立ち、そんな苦悩も見せず、一心に旅をやり遂げようとする物語である。

 次第に周りの人々を惹きつけていく。お笑い芸人・佐藤勇太は、相方に見捨てられ芸人としての復活をかけた"ママチャリ遍路"に臨み、明日香に会う。

 生活に疲れ、故郷に帰った伴野一郎は、明日香に亡くなった娘の姿を重ねる。明日香の後を追い、遍路に出るのだった。

 最後は、ハッピーで終わるが、四国遍路に取り付かれる魅力を描こうとしているようだ。

 懐かしい景色に幾つかあったが、目の付け所が少し異なった。年歳の差かなと思う。また、遍路に出たくなった。

 四国八十八ヶ所お遍路とは、空海の修行の跡を歩いて辿る旅であり、死の世界に入り、そこから甦り、同時に生の修行をすることらしい。

 納経帳に寺の参拝の記録を書いてもらうということは、スタンプラリーである。

 四国八十八ヶ所お遍路の旅をすれば、空海のように修行が出来、空海に会う事も出来ると言われている。スタンプも残り、そこには嘘や偽りはない。自分の足で歩いた自信が残る。

 修行道場の四国を一周するには、この決められたコースが最も合理的と思う。

 四国八十八ヶ所お遍路の旅は、いつも死と隣りあわせである。

 お遍路の持つ杖、金剛杖の頭には九輪が切ってあり、お遍路が死んだ時には杖を立てれば墓になる。お遍路は自分の墓とともに旅をしているのだ。それがお遍路の覚悟である。

 沢山の遍路墓がある。お遍路の最中に倒れた人たちの墓である。

 お遍路は歩く。歩く事で、体調は整い、また、歩くことは自分自身の心と向かい合うことであり、いつしか心のリハビリもしている。時間の持て余しもない、不思議な時間を持てる。

 歌の上手な子は、芝居がうまい。

     
 

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