9 映画鑑賞  2009年〜2010年

2010/08/25    <とり>

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2010年
題  名 見た日・製作国・監督・俳優 感      想
 

キャタピラー

10/09/06

日本 2010年

若松孝二監督

寺島しのぶ 大西信満

中国戦線へ出征し正義の名の下に強姦と虐殺の限りを尽くしてきた夫が、妻の元へ、顔面は焼け四肢を失った無残な姿で帰還。

そして、「軍神」として崇められる夫。尽くす妻。

天皇皇后の御真影。勲章と勲功を伝える新聞の記事。軍服、軍帽。夫は、誇りにしているらしい。

「猛烈な食欲と尽きない性欲」だけの肉の塊と化した夫。軍神の貞淑な妻として応じる妻。

「猛烈な食欲と尽きない性欲」だけの夫は、次第に、外国での自ら行った強姦と虐殺に悩まされ始める。

妻は、逆に、夫を性の道具として扱うまでになり、軍神をリヤカーに乗せ、村中に連れ出すようになる。

隣組の竹槍訓練、出征兵士の見送り。出征兵士の見送りに、夫を連れ出そうとするが拒否され、勲章を胸に付けて出掛ける、変身した妻。

そして、例の玉音放送の敗戦。夫は、庭に這出し、水のある水田で動かなくなる。妻は、百姓に励む。

戦争中、抜けた所のある男が、戦争が終わったと、正気に戻った場面もあった。

一般のどこにでも居る夫婦の、日本人の物語でした。

私も、その時に大人になっていれば、同じ事をやっただろうと思う。戦争に行って生きて帰った年寄り達が、戦争体験を何も話さないことも思い出した。

沖縄、原爆、そして、B,C級戦犯の絞首刑が次から次と執行される写真が挿入されていた。

日本の戦争責任を追及する場面、言葉はなかった。また、隣組は、今の日本で復活しつつあるな、と思った。

それにしても、寺島しのぶは、いい女だった。

ザ・コーヴ 10/08/26

アメリカ 2009年

ルイ・シホヨス監督

リック・オバリー チャールズ・ハンブルトン

 

イルカ解放運動家のリック・オバリーは1960年代に世界的なイルカ人気のきっかけを作った人物。自分のせいでイルカたちがストレスにさらされていることを悔やみ、イルカ解放運動を続けている。

和歌山県太地町のイルカ漁の実態を調査。ある入り江でイルカ漁が行われていることを知り、監視網を掻い潜ぐり、イルカ漁と屠殺の模様を盗撮した映像が収められている。

撮影させまいとする町の人々の目を欺き撮影された映像は、確かにショッキングなもの。当然、製作者側の一方的な内容となっている。

そのイルカは、需要に応じてショー用に世界に出荷されていたり、近隣の地域に食肉として流通しているという。

上映禁止などと騒いだと言うが、そう騒ぐことはないと思った。

ハーツアンドマインズ/ベトナム戦争の真実

 

10/08/05

アメリカ 1974年

ピーター・デイヴィス監督

ベトナム戦争(1975年4月)が終わる前に作られたアメリカ映画。

1975年、第47回アカデミー賞の最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞。日本初公開。

 

いろんな人物の演説、発言が、次々と出てくる。

アメリカの歴代大統領、政治家や官僚たち、戦争に従軍した兵士、ジャーナリストやアメリカの一般市民。

ベトナムの人たちの声も。

過去のニュース映像、戦争時の実写フィルム、戦意高揚を狙った劇映画の一部分などが挿入。

この時期に、この映画が出来るアメリカという国は好きだ。しかし。当時も、今も、政治家は格好いいことを言って威張っている。

今の日本は、民意を受けて政治家主導で政治をやるそうだ。政治家は、いつも悪の塊だ。そうしないと、政治は出来ない所があるようだ。

これからも、政治家に任せるではなく、自分で判断しなければならない。大連合などは、翼賛会だ。

そんな映画でした。

必死剣鳥刺し 10/07/15

日本

平山秀幸監督

豊川悦司 池脇千鶴 吉川晃司岸部一徳  

剣の達人・兼見三左エ門は、海坂藩の藩政に良からぬ影響を与える藩主の妾を刺殺。

しかし、処分は軽いもので、その腕を買われた三左エ門は藩主の側に仕える。

無能な藩主冷徹で不気味な存在感を発揮する中老。農民の惨状を藩主に直訴する、腕の立つ別家。

一方、三左エ門の亡き妻の姪・里尾は、出戻りで、三左エ門宅に世話になっているが、密かに恋心を寄せていた。

その事を契機に、別家の廃絶をもくろむ政治的策略に巻き込まれていく。

「必死剣鳥刺し」は、取りもちで、小鳥を捕まえるような、必殺剣。

悪政は進み、ついに、別家が乗り込んでくる。これをいいことに、別家廃絶のカラクリが進行する。

三左エ門は、別家を討ち取る。中老は、三左エ門が乱心して、別家を殺した野で、討ち取れと命令。多勢に無勢、三左エ門は討ち取られる。

中老が、一件落着の宣言する時、「必死剣鳥刺し」が。

その時、里尾は、遠く離れた田舎で、赤ん坊と共に、三左エ門を待っていた。

告白 10/06/17

日本

中島哲也監督

松たか子 岡田将生 木村佳乃

サスペンスドラマ。

ある中学校の1年B組の担任を務める女性教師森口は、娘を学校のプールで殺害される。警察は事故死と判断する。

しかし、森口は、調べ上げ、退職する日の終業式の日に、犯人は自分のクラスのAとBであると生徒に告げる。

Aは、優等生で、殺そうと思ったが、殺さなかった。教師の告白後も、堂々と学校へ。最後は、同級生を殺してしまう。母親は、優秀は科学者で家を出てしまう。父親は普通の男。

Bは、普通の出来の子、殺す気はなかったが、殺してしまう。しかも、生きているのを承知して殺してしまう。そして、不登校。父親は単身赴任のサラリーマン。母親は子をどうしようもなく溺愛。最後は、子を殺そうとして子に殺されてしまう。

生徒達は、親には話さず、メールの遣り取り、匿名メールの世界の中。

後任の教師は、独り善がり。

復讐物語のようにも見えるし、このどうしようもない今の世の告発とも見える。

今の中学校、高校は、これとあまり変わりはないのだろう。

秀才は、威張り、他の連中を馬鹿にする。また世間も、持ち上げる。

出来の悪いのは、虐められ、おべんちゃらを言い、何とか生きていく。また、出来の悪いのは高級な医療など受けずに早く死ねば良いという。

出来の良いのも、悪いのも、その他大勢も、みんなで何十億年を生きてきたのに、嫌な世の中になったもんだ。そんなことを言いたい映画かな。

太宰治の人間失格みたい。

幸福の黄色いハンカチ 10/06/11

日本 1977年

山田洋次監督

高倉健 賠償千恵子 武田鉄矢 桃井かおり

失恋してやけになっていた鉄也は、新車を買い傷心を癒すために車で北海道を旅していた。

一人旅の女の子・朱美をナンパすることに成功しドライブを続けている最中、二人は海岸で島勇作と知り合いになった。

旅をともにすることになった三人だが、島が無免許運転で捕まった際に、彼が網走刑務所を出所したばかりだとわかった。

島は過去をとつとつと語り始める。

愛する妻・光枝がいたこと、子が出来たこと、それを竿に黄色いハンカチで夫に知らせたこと、子供が流産したこと、そして、人殺しをしたこと。

そして、出所直後、一通の葉書を出したことを話した。もし、待っていてくれるならば、庭の竿に黄色いハンカチを張ってくれ、と。

春との旅 10/06/03

日本

小林政広監督

仲代達矢 徳永えり

静かに余生を過ごす元漁師の忠男は、孫の春に「都会に出るから兄弟に面倒見て貰え」と言われ、怒って、親戚縁者を訪ねる旅に出る。

面倒見て来た春は、忠男に帰れと言われながら、後を追う。最後まで追う。

忠男の兄弟を訪ね終わった後、春は、離婚した父親を訪ねることになる。

忠男の髭がだんだん伸びる。話の進行順に、順番撮りらしい。

家族との確執や過去との対面により、忠男と春は人生そのものをじっくりと見つめ直すことになる。観客も、だんだんの彼らの生き方が判ってくる。

春の親父の言い訳が、ちょっとだけあった。ない方が良かったかな、と思った。

密約 10/05/21

日本 1978年

千野皓司監督

北村和夫 吉行和子 

普天間基地の移転先など、今も混迷が続く沖縄問題。

その裏には日本とアメリカの間に交わされた密約により、返還費用などの処理問題がうやむやにされてきた事実があった。

日本政府は国民に真実を告げなかったばかりか、その事実を報道しようとした新聞記者と書類を持ち出した外務省事務官を国家公務員法違反で裁いた。

記者は1審では無罪になったが、高裁で逆転判決が下り、最高裁で「秘密を洩らすようそそのかせた」罪で有罪が確定した。

日米間の密約をめぐる政治責任が「情を通じ…」の起訴状で男女の問題にすりかえられ、政府は「密約などはない」とシラを切りとおしてきた。

真実を報道しようと取材源に密着した記者は記者生命を断たれ、取材に協力した女性事務官は職を失い、家庭は崩壊した。

しかし、映画は、女事務官がほかに不倫があった、政府側に協力したとか、悪い女だったらしい描き方がしてあった。このことは知りませんでした。

one shot one kill 10/05/21

日本

藤本幸久監督

記録映画

 

戦争で人を殺せる兵士の作り方、米海兵隊の新兵訓練所の12週間の記録。

一旦、戦場に出れば自分の身は自分で守らなければならない。普通の社会で暮らしていた人が兵士になるまでの記録です。

新兵の動機は「自らの人生を切り開くこと」。

徹底してシステム化された12週間の訓練が始まる。

最後は、新兵の今後の抱負を語る。イラクへ行く者が多かった。

死なずに帰った兵隊の苦しみを、知っているのかな、と思う。

ゼロの焦点 10/05/06

日本

犬童一心監督

広末涼子 中谷美紀 木村多江
 

生誕100周年を迎えた松本清張の傑作小説の映画化。

 

人間失格 10/04/21

日本

荒戸源次郎監督

生田斗真 伊勢谷友介 寺島しのぶ 石原さとみ 小池栄子 坂井真紀 室井滋 森田剛 大楠道代 三田佳子

太宰治生誕100周年を記念して製作された文芸大作。

津軽の資産家の息子・葉蔵は、幼い頃から周囲となじむために偽りの自分を演じていた。

上京して高等学校に入学した葉蔵は、同じ画塾に通う遊び人の青年・堀木と出会う。

堀木とともに酒におぼれ、放蕩生活を始めた葉蔵は、女にも不自由することがなかったが、そんな生活に徐々に虚しさを募らせていく。

詩人の中原中也が登場する。葉蔵は、太宰治本人らしい、ただし、画家。

律子 葉蔵、堀木、中原が通うバーマダム。この映画の語り部。

礼子 下宿屋の娘。

常子 葉蔵と心中する女給。彼女のみ死ぬ。

良子 葉蔵が初めて結婚する、たばこ屋の娘。

静子 子持ちの未亡人。漫画の仕事を世話する。

寿 薬屋の女主人。麻薬を使うようになる。

鉄 放蕩の果てに田舎に送られたが、葉蔵の世話をする老女。

みんな関係した女。自分は金がなく、困った時は、資産家の家が、ちゃんと面倒を見る。

憧れるが、自分には出来そうもない物語でした。

抵抗 10/04/13

フランス

ロベール・ブレッソン監督

昭和30年代の映画。俳優は、いつも、素人ばかり使ったという。

ナチの捕虜になり、死刑囚の脱獄を丹念に描いた、映画。黙々とありのままに描いて、脱獄できておしまい。

最近の映画は、ありのままを描いて、感情を挟まず終わる映画になってきた。解釈は見た本人がしなくてはならない。「ヴィヨンの妻 」もそうだ。

ヴィヨンの妻 10/04/13

日本

根岸吉太郎監督

松たか子 浅野忠信

戦後の東京。小説家の大谷は酒に溺れ、借金を繰り返し、浮気もするという自堕落な男だった。ある日、大谷は酒代を踏み倒した上に金を盗んでしまう。そこで妻の佐知は、その件を警察沙汰にしない代わりに酒屋で働くことにする。

若く美しい彼女を目当てに通う客で繁盛する。そんな妻の姿を目にした大谷は、いつか自分は寝取られ男になるだろうと呟くのだった。

振られた初恋の男、今は弁護士や、常連客に好かれるが、大谷は、心中事件を起こし、殺人未遂を問われる。

佐知は、弁護士に助けを求め、釈放される。

高額な弁護料の払いに、町でパンパンからアメリカの口紅を買い、塗りつけて、その事務所に向かう。事務所を出て、口紅を道端の花壇に捨て、口を拭う。

夫は、黙ってまた新聞に眼をそそぎ、また僕の悪口を書いている、ここに僕のことを、人非人なんて書いていますよ、と言う。

私は、格別うれしくもなく、人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ、と言いました。

カティンの森 10/02/10

ポーランド

アンジェイ・ワイダ監督

マヤ・オスタシェフスカ アルトゥル・ジミイェフスキ アンジェイ・ヒラ アグニェシュカ・グリンスカ

第二次世界大戦中、ソ連がポーランド将校の数千人を虐殺し森の中に埋めた事件「カティンの森」を題材にした人間ドラマ。冬の軍服を着て、手を後手に縛られ後頭部を拳銃で1発。

「灰とダイヤモンド」などで知られるポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ。父親が事件の犠牲となったワイダ監督が、作れるようになった今、ようやくその思いを描いている。

戦争中の、ソ連の捕虜となった将校の夫の帰りを待つ妻の闘いを中心に描く。そして、ソ連の衛星国となったポーランド国内において、「カティンの森」について触れることは禁じられていた戦後を描く。たんたんと事実を並べ、感情の入らない映画となっている。

組織が起こす戦争。人は、タダ機械的に人を殺す機械になっていく。冤罪を作り出すのに似ている。私もその中に居たならば、同じことをしたと思う。そして、語らない苦しみをしないですんでいる。

戦争で、人を殺すこと、人としての葛藤はあったと思う。死んだ人は語らず、生き残った人は、意識して語らない。

戦争で死ぬと言うことは、はらわたを押さえてのたうち回って死ぬことだが、死んでしまえば、それを語らない。生き残った人も、あえて語らない。

為政者は、語らせない。

それを、たんたんと描いている。

結果はどうあれ、自分で見て、考えて判断することをすべきと思う。

キャピタリズム 10/01/29

アメリカ

マイケル・ムーア監督

マイケル・ムーア

ソ連崩壊後のアメリカの資本主義の有様を、真似するなと描いている。

「1%の富裕層が底辺の95%より多い富を独占しているアメリカ、税金が金持ちを救うために投入されるアメリカ。

ムーアは$マークのついた袋を持ち、「僕たちの金を返せ!」とウォール街へ突入していく。

アメリカの真似をした、今の日本の現状を見てきた。

住宅ローンは、払えなくなった時、その家を売っても、十分補えるようになっているので、ローンが破綻しても十分儲かるようになっている、それを証券にしたらしい。

ローンは、払っても、払わなくても、十分に儲かるように作ってある、十分に承知することだ。

頭のいいことを考えた物だ。車のローンも商売になりそうだ。金額が小さいので、少し無理かな。

儲けることはいいことだ。ローンも、国民に利益をもたらした。

しかし、やはり、やり過ぎは、規制すべきだ。

このところの日本航空の株取引は、儲ければいいという経営者を真似て、一般市民がやっているようだ。ハゲタカだ。証券取引所、証券会社は、絶対に損は生じない。

私は、ハゲタカには成れなかった。タダの紙切れになるらしい。

そうはいっても、今ある制度は、十二分に使うべきと考える。その代わり文句を言うな。

共産党を支持している友は、個人事業主で稼いでいる。もちろん、社会保障はないことは、承知している。破産しても、文句は言わないと思う。

誰がため 10/01/18

デンマーク、チェコ、ドイツ

オーレ・クリスチャン・マセン監督

トゥーレ・リントハート マッツ・ミケルセン クリスチャン・ベルケル

打倒ナチスを掲げるデンマーク地下抵抗組織<ホルガ・ダンスケ>。その組織の一員である、フラメンとシトロンの任務は、ゲシュタポとナチに寝返った売国奴の暗殺だった。

若いフラメンは躊躇なく引き金を引くが、妻子のいるシトロンは殺し屋になりきれない。

自分の有能さを示そうと命令を忠実に実行するフラメンに対し、シトロンはどこか暴力を嫌っている。このシトロンの敵への腰の引けた憎しみの弱さが当時のデンマークの人たちの偽らざる姿という。

任務をこなしていく2人だが、ある標的と対峙した時“何かがおかしい”と、初めて暗殺をためらってしまう。更に、フラメンの恋人であるケティへスパイ容疑がかかり、暗殺命令がくだったことで、組織に対する疑念は急速に膨らんでいった。

組織、そしてケティさえも、本当に信じることができるのか? 誰が敵で誰が味方か、疑心暗鬼にさいなまれ苦しむ中、フラメンとシトロンは死へと追い詰められていく。

自分たちがしていることは正義なのか? 何のために戦っているのか? 実在した2人のレジスタンスの、フランスあたりと少し変わっている、デンマークのレジスタンスを描 いている。

ストーリーの進みが早すぎる。名前を覚えられないこともあり、筋が理解できない部分があった。

銀色の雨 10/01/14

日本

鈴木貴之監督

賀来賢人 前田亜季 中村獅童

父を知らない優等生の高校生。アルバイトの新聞配達で、新分野の親父に文句を言われ、母と喧嘩して家出し、米子駅に。

引退を迫られているプロボクサーが故郷の米子に帰ってきた。

スナックに勤める、天涯孤独な女が、米子駅で、酔っぱらいの客に絡まれているのを二人が助けたことで、奇妙な三角関係の共同生活が始まる。

高校生は、小さい時、ボクサーだった父が試合で意識不明になり、死んでいて、その後、母に育てられた。しかし、父のことは、ほとんど知らなかった。

女は、高校生の母の元で働いていたが今は一人住まい。身寄りが無いこともあり、傷ついたり捨てられたりしたものを、放っておけない。

ボクサーは、米子の悪だったが、米子を出て、高校生の父から、ボクシングを教わりチャンピオンにまでなったが、高校生の父を意識不明にした男だった。

この3人が、いろんなことで関わり合い、最後、再出発する物語。

浅田次郎の小説の映画化。

米子を心の故郷にして、日本の心を描いている。

     
     
     

 

2009年
題  名 見た日・製作国・監督・俳優 感      想
戦場でワルツを 09/12/25

イスラエル フランス ドイツ

アリ・フォルマン監督

アニメ

元兵士のアリ・フォルマン監督が、自身の経験を基に製作した自伝的なドキュメンタリー・アニメーション。

1982年にレバノン・ベイルートの難民キャンプで起きた、キリスト教徒軍によるパレスチナ難民の大虐殺を描いている。

映画監督のアリは、友人から26匹の犬に追いかけられる悪夢の話を打ち明けられる。若い頃に従軍したレバノン戦争の後遺症だというが、アリにはなぜか当時の記憶が全然ない。

不思議に思ったアリは、かつての戦友らを訪ね歩き、自分がその時何をしていたかを探る旅に出る。

やがてアリは、ベイルートを占拠した際に起きた「住民虐殺事件」の日、自分がそこにいたことを知る。

そして、虐殺を見ていたことを知る。

映画は、最後のほんの少しの実写フィルムがあるのみ。後すべてアニメ。

童貞放浪記 09/09/04

日本

小沼雄一監督

山本浩司 神楽坂恵

東大大学院を卒業し、大学講師として勤め始めた金井。30歳の今、女性経験はゼロ。

興味はあるのだが、機会がなかったのだ。そんな時、大学院の後輩である北島萌に偶然再会する。

生まれて初めての恋心を感じる。やっとめぐってきた恋のチャンスに、金井はとまどいながら向き合うが、萌は海外へ行こうとしていた。

そして、挑戦するが失敗。

今の若者には、人気のある話のようだ。

花と兵隊 09/09/04

日本

松林要樹監督

日本に帰らずに、ビルマ(ミャンマー)に残った、元日本兵6人の現在の記録。

技術を生かし、その土地に生きた。現地で出会い、生活をともにした妻が心を支えた。

妻となった、女達が、あっけらかんとして良かった。土地の少数民族の女達らしい。若い時の写真は、皆美人だった。今、成功している6人の話。それが花かな。

日本に帰らなかった理由は、あまり明確でなかった。

医療、灌漑、自動車修理、など技術でもって生きてきた。

後半になり、戦争が語られている。

仲間が、死んだ仲間を食ったこと。現地の子供を殺したこと、など。

命令で、ひどいことをやったが、全部天皇からの命令でそれに従うしかなかった。そう自分に言い聞かせているように語る老人がいた。

この人は、たくさんの遺骨を収集して、慰霊塔を造ったという。すでに亡くなっているという。

淡々としゃべらせ、誘導している所もなく、60年経って、しゃべれることをしゃべっている。1つの記録である。

ビルマの竪琴を思い出した。

セントアンナの奇跡 09/07/27

アメリカ・イタリア

スパイク・リー監督

デレク・ルーク マイケル・イーリー ラズ・アロンソ オマー・ベンソン・ミラー

現代のニューヨーク。郵便局で働く定年間近の真面目な男が、ある日、カウンターに現れた男性客にいきなり銃弾を打ち込んだ。彼の名はヘクター。犯行に使われた銃は、古いドイツ製のルガーだった。理由の分からない殺人だった。

さらに彼の部屋からは、行方不明になっていた歴史的に重要なイタリアの彫像(時価500万ドルと言われた)も発見される。

1944年、第二次大戦中のイタリア。1人の少年を助けた4人の黒人兵たちの戦場での運命を描いもの。

人種偏見、無能な指揮官、などを含め展開する。最後は、ヘクターのみ生き残る。

ドイツ軍による イタリア人の大虐殺を扱ったものだが、その中に「イタリア・パルチザンのメンバーの 裏切りが間接的な原因となって大虐殺が起きた」とするエピソードが盛り込まれている。本当かどうかは知らない。

殺された男は、そのパルチザンだった。

彼は、200万ドルの保釈金で出所する。

ディアー・ドクター 09/07/11

日本

西川美和監督

笑福亭鶴瓶 瑛太   余貴美子 八千草薫

山間の小さな村のただ一人の医師、伊野が失踪した。偽医者だった。

村人たちに全幅の信頼を寄せられていた伊野だったが、偽医者と疑うものは誰一人としていなかった。やがて刑事が二人やってきて彼の身辺を洗い始める。

失踪の2か月前、東京の医大を出たばかりの研修医・相馬が村にやってくる。そして、共感を覚えるようになる。

医者だった亭主と別れた看護師の朱美と3人での診察の日々。

そんなある日、一人暮らしの未亡人、かづ子が倒れたとの一報が入る。癌だった。

かづ子は、医者になっている娘がいるが、嘘をつくように伊野に頼み、共に嘘をつくことにした。

その結果、いつものように、大きな病院へ患者を送り出すことが出来なくなり、伊野は、癌の勉強を始める。

研修医・相馬、看護師の朱美も次第に分かってくるが、かづ子の娘が帰ってきたことで、伊野は逃げ出すことになってしまった。

そんな映画です。この映画を見に来るお客が多かった。

大阪ハムレット 09/07/11

日本

光石冨士朗監督

松坂慶子 岸部一徳 間寛平

悩む3兄弟。

いつも大学生に間違われる老けた風貌の中学生の長男は、女子大生と恋に落ちる。

気性が激しく素行がよくない次男は、学校の先生から「久保君はハムレットやなぁ」と言われ、辞書を片手にシェイクスピアの「ハムレット」を熟読。そして自分の出生に疑問を持つ。

将来の夢は女の子になることと宣言した三男は、学校でからかわれ、思いのまま生きる辛さを味わう。

そんな3人を、そのままに養う、肝っ玉母さん、親父が死んだ日に転がり込んでくる、親父の弟というおっちゃんと同居。

そして、4人目の子が生まれる。誰の子か分からない感じ、誰の子か、誰も思うこともしない集団の生活。

あるがままに、そのまんま生きようという物語。お金が絡まない、大阪の物語。

気楽に見ることが出来た。

愛を読むひと
09/07/10

アメリカ ドイツ

スティーブン・ダルドリー監督

ケイト・ウィンスレット レイフ・ファインズ
中年の弁護士が、15歳の少年であった頃、通学の途中で病気になり、面倒見てくれた市電の車掌をしている、21歳年上の女性との情事が始まり、一夏で終わる。

情事の後で、本を読んでくれと頼まれ、少年は読む。

成績の優秀だった彼女は、ある日、事務職に変わるよう指示を受けた。その直後、彼女は姿を消す。

輝く夏の恋が終わりを告げてから8年、大学生になった少年マイケルは、かつて熱愛したハンナが、ナチス戦犯を裁く法廷の被告席にいるのを発見する。

ナチスの時代、ハンナは事務職の仕事を捨てて、看守となり、数百人の囚人を殺してしまった事件の裁判だった。

主犯は、事件の文書をまとめた者と言うことになり、ハンナが疑われ、筆跡鑑定となる。彼女の前に紙とペン。

ハンナは、自分が書いたと自白。

映画は、過去と現在を行き来する時間が、戦後育ちの青年に突然突きつけられた戦争の影が、甘い思い出に終わるはずだった恋が、マイケルの人生を苦渋の色に染めていく経緯をくっきりと描写していく。

マイケルだけが知っているハンナの秘密を裁判長に告げることで彼女を救えたかもしれない。

死に変えてもその秘密を守ろうとするハンナを裏切ることも出来ず。かといって、彼女を説得して告白させるには、法科の学生であるマイケルには、出来ない。

弁護して救うこともできない。しかし、一緒に苦しみを抱えて生きることはできる。

裁判から、10年後、弁護士のマイケルは、オデッセイ、ドクトルジバゴ、犬を連れたおくさん、など吹き込み、朗読のテープを送り始める。

それからまた、10年。ハンナは出所することになる。

映画の最後は、マイケルが、娘を連れてハンナの墓参りして、今までのことを話そうとする所で終わる。

ミーシャ ホロコーストと白い狼 09/07/03

フランス ベルギー ドイツ

ヴェラ・ベルモン監督

マチルド・ゴファール ヤエル・アベカシス ギイ・ブドス

ナチス占領下のベルギーのユダヤの少女ミーシャの物語。

強制連行された両親を捜しに、1人の旅に出て、ベルギー、ドイツ、ポーランド、ウクライナ、3000マイル、3年の旅をして、最後はベルギーに戻る。

生きるために、ミミズを食い、生肉を食い、盗み、人を傷つけ、狼と仲良しになる。

そして、人間の、戦争の醜さと、動物の純真さ。たくましい、生きようとする生き物に成長する。表情、行動に表れる。これは監督の分野かな。

東へ行く、は戦場を行くことであり、帰りも、ソ連軍の攻め込む戦場。

狼と仲良くなり、狼と家畜を襲う。そして、狼の親は人間に殺されるが、子供たちの最後がどうなったか分からない。ミーシャは猟師を殴りつける。

実話と言うより、ファンタジー。

監督は女らしい。まだ、新人なのかな。

いい映画だった。

四川のうた 09/07/03

中国 日本

ジャ・ジャンクー監督

ジョアン・チェン リュイ・リーピン チャオ・タオ チェン・ジェンビン

三国志の舞台、四川省・成都の、中国の繁栄と衰退を象徴する国営工場が50年にわたる歴史の幕を降ろす。

それぞれの時代と、それぞれの家族を支えた労働者たちが、回想し、語る。

 

リストラされた女修理工の、まじめに仕事をしてきた話。

船で成都に行く途中、立ち寄った港で、子とはぐれ、軍隊のラッパと同じという、船の汽笛に、子を探し出さぬうちに出航した話。

恋をした話。

美しい中年の女の、未婚のまま過ごした話。きれいな女優、ジョアン・チェン。

労働者だった両親を娘が語る。少し軽蔑していた母親を見直した話。

以上5話の語りでした。

世の中の変化を淡々と描き、嫌みはないが、5話の語りは、少し飽きた。

60歳のラブレター 09/05/20

日本

深川栄洋監督

中村雅俊 原田美枝子 井上順 戸田恵子 イッセー尾形 綾戸智恵

3組の熟年男女のラブストーリー。我らと一緒で、いろんな理由で一緒になった夫婦の物語です。

3組とも、ハッピーエンド。肩の凝らない映画だった。何処にでもある話だった。だから、受けるかも知れない。

観客は、多かった。

TV駅路の方が良かった。

レッドクリフ Part II/未来への最終決戦 09/05/02

アメリカ 中国 日本 台湾 韓国

ジョン・ウー監督

トニー・レオン チャン・チェン 金城武 リン・チーリン

 

2,000隻の戦艦と80万の兵士で全軍攻撃を企てる曹操軍。孫権軍と劉備軍の連合軍は、曹操軍の策略により、疫病が襲う。

戦意を喪失し撤退してしまう劉備軍。信頼の絆が揺らぎはじめ、崩壊寸前の連合軍に、曹操軍が襲いかかる。

迎え撃つ周瑜、孫権、孔明の孫権軍&劉備軍の連合軍。圧倒的な戦力差を埋めるため諸葛孔明はさまざまなアイデアを提案し、孫権軍とともに天下分け目の「赤壁の戦い」が始まる。

壮大な戦闘場面が続く。リン・チーリンがきれい。

Part1 は、TVで見た。

ワルキューレ 09/03/24

アメリカ・ドイツ

ブライアン・シンガー監督

トム・クルーズ ビル・ナイ トム・ウィルキンソン

ヒトラー暗殺を実行したドイツ貴族の大佐の命がけの計画(もちろん、失敗した)を描く。

ドイツは、数百万人の捕虜や奴隷的労働者を国内へ連れて来たが、彼らが叛乱を起こした際の対策を取る必要が有るして、反乱鎮圧計画を作った。その隠語名は、ワルキューレとした。

その「ワルキューレ作戦」を改竄し、ヒトラーに承諾サインをもらいに行き、サインを貰ってくる。事実らしい。

特に大佐が爆弾入りブリーフケースを手に総統本営に乗り込むまで、観ている方も、緊張の連続。そして爆発。その時、大佐は部屋を出ていたので、ヒトラーを見ていなかった。

ヒトラーが死んだものとして「ワルキューレ作戦」を実行する。

ヒトラーが生きていることがばれ、挫折。銃殺。

大佐の女房は、捕まることなく、21世紀まで生きた。

いのちの戦場 09/03/17

フランス

フローラン・シリ監督

ブノワ・マジメル アルベール・デュポンテル オーレリアン・ルコワン

1999年、フランス政府が、初めて公式にその存在を認めた、「アルジェリア戦争」を描いた作品

「アメリカがベトナムを描いたように、フランスもアルジェリアを描かなければならない」という

フランスはアルジェリアを植民地ではなく「フランス」だと主張している点が,第一次インドシナ戦争やアメリカのベトナム戦争などと異なる。戦争ではなく、暴徒鎮圧。

アルジェリア戦争の大きな特徴である「同胞同士」の戦いは第二次大戦のフランス軍の英雄敵味方となり戦いあう。

理想主義の若手将校が戦場の現実を受け入れられず、反動として自らも残虐行為に荷担するようになる。

捕虜を銃殺する時、サングラスを掛けて目を隠す場面が象徴的。

一方、中尉に自らを重ねていたベテラン軍曹は絶望のあまり脱走。

拷問に荷担した中尉は自ら救った少年に見捨てられ殺される。

最近の映画の特徴である、一方に、一方的に荷担した描き方はしていない。

懺悔 09/03/17

ソ連

テンギズ・アブラゼ監督

アフタンディル・マハラゼ ゼイナブ・ボツヴァゼ ケテヴァン・アブラゼ

ソ連の、1984年に製作されたグルジアの社会派ドラマ。20年ぶりの日本公開。

スターリンの粛清を喚起させ、ソ連崩壊につながったペレストロイカを象徴する作品で、1987年カンヌ国際映画祭審査員特別大賞を受賞。

地方都市で高名な市長が死去し、その市長の墓を掘り起こした罪で、女性が逮捕される。

彼女は法廷で市長の粛清の過去を告発し、埋もれつつあった悲劇の歴史を訴える。

彼女の両親は無実の罪で捕らえられ、収容所で亡くなった。

真実を聞いた市長の孫はパニックにおちいってしまい、死んでしまう。

戦場のレクイエム 09/02/10

中国

フォン・シャオガン監督

チャン・ハンユー ドン・チャオ ユエン・ウェンカン

この映画も、淡淡と描写している。

中国の内戦の頃の戦争映画。

反戦映画ではないが、戦争を礼賛しているのでもない。

連隊長が、炭坑の死守を命じられ、退却ラッパを聞いたら、撤退するように命じられた。

しかし、戦闘中に、退却ラッパを部下は聞いたと言うが、本人は聞いてなく、全滅させてしまう。

一人生き残った連隊長は、自分が撤退命令のラッパを聞き逃したせいで仲間を失ったと自責の念にかられていた。

また、部隊は、行方不明で、失踪扱いとされてしまっていた。

最後に、事実が判明し、戦友の名誉回復となるまでの奮闘する話。

チェ/28歳の革命

 part 2

09/02/09

スペイン・アメリカ・フランス

スティーブン・ソダーバーク監督

ベニチオ・デル・トロ カルロス・バルデム デミアン・ビチル ヨアキム・デ・アルメイダ

革命を成功させてカストロに次ぐキューバ革命政権のナンバー2になったチェ・ゲバラは、国連での歴史的な演説を終えた翌年の1965年、突然キューバ政府の役職をすべて辞して再び放浪の旅に出る。

チェの突然の失踪を不思議に思った国民に対し、カストロは自分に宛てられたチェの「別れの手紙」を公開する。

チェはキューバを去って、南米ボリビアの反政府ゲリラ活動に身を投じた。

チェは行く先々で失望や落胆、思惑違いの状況に出くわし、仲間の数はクシの歯が欠けるように次々減っていく。

現地の人々の支持は得られず、現地で味方してくれるはずだった活動家たちの支援も得られず、ゲリラ兵たちの思いばかりが空回りする。

最後は、負傷し、捕まり、銃殺される。

映画は、これを、何日目の日数を表示して、チェ、個人を、淡淡として追う。

チェ/28歳の革命

 part 1

09/02/01

スペイン・アメリカ・フランス

スティーブン・ソダーバーク監督

ベニチオ・デル・トロ デミアン・ビチル サンティアゴ・カブレラ

チェ・ゲバラのキューバ革命成功までの第1部作。

カストロと出会い、医者を捨て、ゲリラ・革命家になっていく一人の男を描いている。最近の監督は、祭り上げる描き方はしない。この映画もそうだ。淡淡と描いている。

実録のフィルムが挿入され、特に、演説などの場面が多く取り入れてある。

ゲリラの生活は、描かれているより、もっと惨めだろうと思う。

これら指導者に、次から次と、志願者が入ってくる。そのような国になったら、革命が起こると言うことだ。

我が国の現状も、相当ひどくなっている。もたもたしていると、革命、テロ、武力蜂起が起こると思った方がよい。為政者よ、考えよ、だ。

     

 

 

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