【プロローグ1】電気蜘蛛は楽園に巣を張るか

【プロローグ1】電気蜘蛛は楽園に巣を張るか


アラーニェ・グリザイユは何者か

男か 女か 子供か 大人か 老人か 人間か 

いやむしろ… 人間ですらないのではないか

幽霊か A.Iか   怪物か……


主要国家の殆どの人間が利用している仮想世界の数多のゲームランキングの上位に必ずといっていいほど見ることができる名前がある。

それがアラーニェである。

ゲームステージをいくつか渡り歩いたことのある者であれば存在に気づいたかもしれない。
名前ばかり歩き回り、実際の彼のアバターを見るのも稀で、マスコミが手を尽くして彼への取材を試みたものの八つ裂きにされたとか、翌日取材を試みた人間全てが仮想世界から消えたとか、噂ばかりが先行している。

「別に隠しているつもりはないのですが」

文字通り、目の前の巨大掲示板にかき込まれた都市伝説スレッドに自分の名前を見つけて眉間に皺を寄せた20代の男性アバターがアラーニェ。月色の髪に夜明けの青が混じる。冷たそうな雰囲気の男だ。
その隣にはふりふりの服を身に纏った愛らしい笑顔を浮かべた小さな女の子が立っている。
彼女の視線の先には”【俺達の】らんらんたんを心の底から見守るスレpart1053【天使】”がある。
「アラーニェちゃんはもうちょっと露出があってもいいと思うんだけどなー」
くりっとした目でらんらんがアラーニェを見つめると、アラーニェは真顔で「露出?」と聞き返して網で出来たような洋服アイテムを取り出した。その直後「その露出じゃないよっ」とまじめにつっこまれた。
「リーダーは相変わらずだね」後ろで大きな帽子を被り直していたエメラルド色の瞳の青年、ガラッシアがくすりと笑った。
露出の意味を理解したアラーニェは「人目につくのはあまり好きではないので…」
と更に眉間の皺を深くしてため息をついた。

アラーニェは俗にいう仮想世界廃人と呼ばれるような人種ばかりが集まって出来た組織”WEB of EDEN”の創設者であり、リーダーである。
そしてこの3人は同じ組織のメンバー同士。なんだかんだあるものの仲の良い方、かもしれない。
組織の活動は20年以上続いている。ゲームステージを広く深く攻略するのがメンバー達の活動の殆どであるが、最近では一ユーザーにも関わらず自警団のような役割も果たしている。
”伝説の廃人組織”はPKから初心者を守ったり、悪質なクラッキングを行う犯罪者を摘発している。
このような組織への反応は一般人は賛否両論だが…

そんな彼らが今追っている男がいる。
仮想世界を壊そうとする男。
掲示板の小さいスレッドに嘘か真か、いくつかの情報が載っている。
不思議な噂と共に。

そして、掲示板の目の前の三人の手には招待状が握られていた。

「本当なのかな、反乱組織がこの新しいステージに潜入するって」
メールを見つめるらんらん。
「情報の出所も掴めなかったし、嘘かもね」
そう呟いたのはガラッシア。
「しかし、新しいステージは気になりますね。”c.l.r”からのメールというのも…」
先日来た”新しいゲームへの招待”という内容のメールは仮想世界の中心と言ってもいい人工知能”c.l.r”の名前で送られてきていた。
アラーニェにとって”c.l.r”は特別な存在だ。メール自体偽装された罠かとも思い入念に調べたが特におかしなところはなかった。
アラーニェだけではないだろうが”c.l.r”という名前は気になる。
更に…仮にも廃人組織、”新しいゲーム”が気にならないはずがない。

「じゃあ、誰がこの”学園都市”に一番乗りできるか競争しようよ★」
アラーニェちゃんにだけはぜったい負けないんだからね、とらんらん。
「面白そうだね」
とくすくす笑ったのはガラッシア。
「ふむ、競争ですか…わかりました。ではオープンの日に学園都市で会いましょう」

余裕たっぷりな表情を見せたアラーニェ。
だが、数日後オープンの日どころか数日遅れて二人の前に姿を見せることになるとは、そのときは思いも寄らなかった…

文才どっかいったー!な人間が書いたSSですのでクオリティはその…気にしない方向でお願いします。
学園都市に入る前の話ですね。
招待メールが来てちょいたった後かな

らんらんとガラッシアさん、ちょっぴりエージさんを出させてもらいました!ありがとうございました!
アラーニェ20代なのは学園都市では18歳のアバター、学園都市はいる前の姿は20代のアバターという設定で…姿はそんなに変わらないです
お粗末様でした。