【プロローグ2】電気蜘蛛は白と黒の夢を見るか
白 白 白 黒 黒 …
均整に並んだ升目の中を白と黒が埋め尽くす。
真新しいオセロのボード。
しかしよく見れば、いやよく見なくてもわかる、その盤面は巨大であった。
1升10m×10mはあろうか。その升目の中の石も巨大。現実ではありえないサイズだ。
意識を天に向け、見渡せば盤面が一望できる。
「g6」の升目に立つ男が見えた。
月色の長い髪に夜明けの青が混じる。瞳は彼の持つ雰囲気をそのまま凝り固めたかのような冷たい空色。
彼の目の前には巨大な升目。何かを呟くと魔法のように白い石が空に出現した。
重力に沿って石は升目の中に収まり、その瞬間フィールドに数少なく残っていた黒の石が乾いた音を立てて全て白に返された。
白一色になった盤面の上に"YOU WIN"の文字が派手に踊り、クラッカーのエフェクトが飛び交い、紙吹雪が舞った。
たった今、彼はこの仮想世界"Ish"でのオセロゲームステージでチャンピオンになったのだ。
数日飲まず喰わず、寝ることも忘れていた人間とは思えないほど機敏な動きで紙吹雪を避けながら盤上から降りると、傍に設置されたランキングボードに目をやる。
日時が目に入った。
「………しまった」
苦々しく呟いたのには理由がある。
慣れた手つきでヘッドフォンに触れると紫色のエフェクトと共に蜘蛛の糸のようなか細い光が現れた。糸の先にはいくつかの文章が並んだ透明な紙のようなものがついている。
先日届いた送り主が”c.l.r”と書かれたメール。
それは新しいステージの招待状だった。しかもオープン日時は数日前…
(一番乗りを狙っていたのに…自業自得とはいえ悔しい。らんらんに先を越されましたね…)
小さい体にバカにされる様子が想像できる。
(いや、それよりも怒られますかね)
小さい体よりも更に小さく正座させられる様子もありありと想像できた。
熱中すると周りのことを忘れてしまうのは自覚している悪い癖の一つだ。
メンバーの一部の人間に招待状は届いた。
招待状の届かなかったメンバーは待機してもらうことになったが、いつでも困ったことになれば助けに来てくれる有能なメンバー達……のはずだ。
いや、各々自由に世界に散らばっているものが殆どなので、すぐには助けにきては…むしろ見捨てられる?少し頭を抱えた。
そのステージには彼の率いる組織がマークしていた男が潜り込む、という眉唾な噂があった。確かめねばなるまい。
噂が真実かそうでなくてもステージには行くつもりだった。
廃人という嬉しくない称号でよく人から呼ばれる彼には新しいゲームは魅惑的に見えた。
”どんな願いでも叶うゲーム”
招待されたゲームに参加するには”願い”が必要だという。
(私の願いは……)
まさか叶うはずがない願いを思い浮かべる。
心の奥底に常に淀み続けた願い。
叶うならばどんなにいいか。
メールのリンクに触れ、掻き消える体。
アラーニェ・グリザイユはその日、オセロステージから姿を消し、今もなお”新しいステージ”から戻って来ていない。
白に塗りつぶされた盤面だけが彼を見ていた。
学園都市インするお!の前です。オセロ!
白黒企画だからモノクロオセロ…とかいうことではなく、ただの冗談を実現させただけなんですけどねorz まじ申請の嵐すごかった…
ちょっぴりらんらんお借りしました!ありがとうございました!
この文の中では5月はじめあたりでしょうか。
正直白一色になるオセロなんてないと思ってみたり…
ひどい文章ですがもう仕方ない…
例のごとく色々捏造というか、ついったでの妄想を組み合わせたりしてますので、うちの子はこんなこと言わないよー!ということがあれば遠慮なくついったでお願いします!速攻直させていただきます。
このssで誰かの動きを制限するつもりはありませんのでゆるふわーでお願いします。